便秘の診方 消化器内科柴峠光成 高松赤十字病院モーニングセミナー 2018.4.12
基本の便秘薬 まずはこれだけ!
塩類下剤 酸化マグネシウム ( カマグ ) 1954 年 5 月販売開始 効果 効能 : 制酸剤 緩下剤 尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防 用法 用量 : 通常成人 1 日 2g(330mg 錠 6 錠 ) を食前又は食後の 3 回に分割経口投与するか 又は就寝前に 1 回投与 腸内で難吸収性の重炭酸塩又は炭酸塩となり 浸透圧維持のため腸壁から水分を奪い腸管内容物を軟化することにより緩下作用を現す 高マグネシウム血症に注意! 実は先発品がない ; マグミットもジェネリック 実は胃薬でもある 1 日 1g で始めることも多い H2RA や PPI との併用で効果減弱の可能性 呼吸抑制 意識障害 不整脈 心停止に至ることがある
刺激性下剤アントラキノン系 プルゼニドセンノシド 1961 年販売開始 ( プルゼニドが先発品 ) 効果 効能 : 便秘症 用法 用量 : 通常成人 1 日 1 回 12 24mg(1 2 錠 ) を就寝前に経口投与 高度の便秘には 1 回 48mg(4 錠 ) まで増量できる センノシドは 大腸に至り 腸内細菌の作用でレインアンスロンを生成し大腸の蠕動運動を亢進 通常投与後 8 10 時間で作用を発現 連用による耐性の増大等のため効果が減弱し薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避ける アローゼン顆粒 ( センナ センナジツ ) ヨーデル S( センナエキス ) ダイオウ末等も同効
刺激性下剤ジフェニール系 販売開始 1980 年 4 月 ラキソベロンピコスルファートナトリウム 効果効能 : 各種便秘症 術後排便補助 造影剤 ( 硫酸バリウム ) 投与後の排便促進 手術前における腸管内容物の排除 大腸検査 (X 線 内視鏡 ) 前処置における腸管内容物の排除 用法 用量 : 通常 成人に対して 1 日 1 回 10 15 滴 (0.67~1.0mL) を経口投与 大腸細菌叢由来の酵素アリルスルファターゼにより加水分解され 活性型のジフェノール体に シ フェノール体は 腸管粘膜への以下の作用により瀉下作用を示す 1. 腸管蠕動運動の亢進作用 2. 水分吸収阻害作用
便秘対策の基本のキ 少ない 便の回数 センノシド 1 2 錠 / ピコスルファート 10 15 滴頓用 酸化マグネシウム 1 2g/ 日 便の硬さ 硬い
腸管洗浄剤を見てみよう 一気に便を出す方法
注腸 X 線検査 大腸検査と緩下剤 バリウムを腸管壁に付着させて 撮影 腸管粘膜は乾燥気味の方が適している 大腸内視鏡検査 内視鏡 ( スコープ ) を肛門から挿入 腸管粘膜は滑る状態が適している
塩類下剤 マグコロール P クエン酸マグネシウム レモネードのような味 販売開始 1988 年 1 月 効果 効能 : 大腸検査 (X 線 内視鏡 ) 前処置における腸管内容物の排除 腹部外科手術時における前処置用下剤 用法 用量 < 高張液投与 > 本剤 50g(1 包 ) を水に溶解し 全量約 180mL とする 検査予定時間の 10 15 時間前に経口投与 < 等張液投与 > クエン酸マグネシウムとして 本剤 100g(2 包 ) を水に溶解し 全量約 1,800mL とする 検査予定時間の 4 時間以上前に 200mL ずつ約 1 時間かけて経口投与 腎障害のある患者には禁忌 高マグネシウム血症
ニフレックポリエチレングリコール 4000 含有腸管洗浄剤 販売開始 1992 年 6 月 味がない ( かすかにレモン味 ) 油臭い感じもある 効果 効能 : 大腸内視鏡検査 バリウム注腸 X 線造影検査及ひ 大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除 ニフレック 用法 用量 :1 袋を水に溶解して約 2L とし 溶解液とする 溶解液 2~4L を 1 時間あたり約 1L の速度で経口投与 排泄液が透明になった時点で投与を終了し 4L を超えての投与は行わない 検査の約 4 時間前から投与開始 体液と等張なため 血清 Na + Cl - 及ひ 血液 ph をほとんと 変化させず 血清電解質バランスを大きく崩さない
モビプレップ新型ポリエチレングリコール 4000 含有腸管洗浄剤 2013 年 6 月販売開始 塩っぽい味 効果 効能 : 大腸内視鏡検査 大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除 用法 用量 : 本剤 1 袋を水に溶解して約 2L の溶解液とする 溶解液を 1 時間あたり約 1L の速度で経口投与する 溶解液を約 1.2L 投与した後 水又はお茶を約 0.6L 以上飲用する 検査の約 3 時間前から投与開始 モビプレップ
ピコプレップヒ コスルファートナトリウム酸化マグネシウム無水クエン酸含有 2016 年 8 月販売開始 オレンジ味 効果 効能 : 大腸内視鏡検査及ひ 大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除 用法 用量 :1 回 1 包を約 150mL の水に溶解し 検査又は手術前に 2 回経口投与する 1 回目の服用後は 1 回 250mL の透明な飲料を数時間かけて最低 5 回 2 回目の服用後は 1 回 250mL の透明な飲料を検査又は手術の 2 時間前までに最低 3 回飲用する
新しい便秘関連薬
膨張性下剤 ポリフル / コロネルポリカルボフィルカルシウム 2000 年 10 月販売開始 効果 効能 : 過敏性腸症候群における便通異常 ( 下痢 便秘 ) 及ひ 消化器症状 ポリカルボフィルカルシウムとして 1 日量 1.5~3.0g( 錠 :3~ 6 錠 細粒 :1.8~3.6g) を 3 回に分けて 食後に水とともに経口投与 胃内の酸性条件下でカルシウムを脱離してポリカルボフィルとなり 小腸や大腸等の中性条件下で高い吸水性を示し 膨潤 ゲル化 下痢及ひ 便秘には消化管内水分保持作用及ひ 消化管内容物輸送調節作用により効果を発現すると考えられる
上皮機能変容薬クロライドチャネルアクチベーター アミティーザルピプロストン 2012 年 11 月販売開始 効果 効能 : 慢性便秘症 ( 器質的疾患による便秘を除く ) 用法 用量 : ルビプロストンとして 1 回 24μg(1 カプセル ) を 1 日 2 回, 朝食後及ひ 夕食後に経口投与 腸管分泌及ひ 腸管輸送能促進作用 特に若い女性で 嘔吐の副作用が出やすい 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと
上皮機能変容薬グアニル酸シクラーゼ C 受容体アゴニスト リンゼスリナクロチド 2017 年 3 月販売開始 効果 効能 : 便秘型過敏性腸症候群 用法 用量 : リナクロチドとして 0.5mg(2 錠 ) を 1 日 1 回 食前に経口投与する 症状により 0.25mg に減量 腸管分泌及ひ 腸管輸送能促進作用並ひ に大腸痛覚過敏改善作用
上皮機能変容薬胆汁酸トランスポーター阻害剤 グーフィスエロビキシバット 2018 年販売予定 効果 効能 : 慢性便秘症 ( 器質的疾患による便秘を除く ) 用法 用量 : エロビキシバットとして 10mg(2 錠 ) を 1 日 1 回食前に経口投与 回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーター (IBAT) を阻害し 胆汁酸の再吸収を抑制することで 大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加 胆汁酸は 大腸管腔内に水分およひ 電解質を分泌させ さらに消化管運動を亢進させる為 本剤の便秘治療効果が発現する
便秘にまつわる状態 疾患
大腸癌 虚血性腸炎
器質性疾患を疑うリスク徴候 (red flag) 1. 45 歳未満で家族歴がある 2. 45 歳以上で発症 3. 病悩期間が短く 症状が進行性 4. 異常な身体所見 5. 6 か月以内の予期しない体重減少 (3kg 以上 ) 6. 夜間の腹痛 下痢 持続性の強い腹痛 7. 発熱 嘔吐 粘血便 便潜血検査陽性 8. 尿 末梢血 血液生化学検査の異常 腹部 X 線 腹部エコー 腹部 CT 大腸内視鏡等での精査
直腸粘膜脱症候群
大腸 ( 偽 ) メラノーシス アントラキノン誘導体の長期間の連用は上皮細胞のアポトーシスに引き続く大腸 ( 偽 ) メラノーシスを引き起こす 大腸運動異常が認められることもあるが大腸 ( 偽 ) メラノーシスとは必ずしも連動しない アントラキノン誘導体を含む生薬 アロエ カスカラサグラダ ケツメイシ センナ 大黄
ガイドラインの超エッセンス 増加し続ける高齢者における便秘有症状者の割合は高率であり 特に介護の現場では 便秘やその合併症への対処が大きな問題 本邦初の 慢性便秘症診療ガイドライン の出版
便秘の定義 分類 本来大概に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態 症状名 でもなければ 疾患名 でもなく 状態名 原因による分類 器質性 機能性 症状による分類 排便回数減少型 排便困難型 病態による分類 大腸通過正常型 大腸通過遅延型 便排出障害
慢性便秘症の薬物治療 推奨度 1( 強い推奨 ) 浸透圧性下剤 : 酸化マグネシウム ラクツロース 上皮機能変容薬 : アミティーザ リンゼス 推奨度 2( 弱い推奨 ) 膨張性下剤 : コロネル / ポリフル 刺激性下剤 : アローゼン プルゼニド ラキソベロン 消化管運動賦活薬 : ガスモチン 漢方 : 大黄甘草湯 麻子仁丸 大建中湯 坐剤 : 新レシカルボン テレミンソフト 便秘症 での保険適応なし さあ 自己流でなく エビデンスに基づいた 満足度の高い便秘治療へ
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