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J&W DB-Sulfur SCD GC カラムとイナートフローパスを用いた石油留分中の硫黄化合物の分析 アプリケーションノート エネルギー 化学 著者 Yun Zou and Chunxiao Wang Agilent Technologies Shanghai Ltd 概要 Agilent イナートフローパス GC/SCD と Agilent J&W DB-Sulfur SCD カラムを用いて ASTM D523 に従ってガソリンサンプル中の硫黄含有成分を分析しました 低ブリードと優れた不活性という特長を備えた 0 m 0.32 mm 4.2 μm の DB-Sulfur SCD カラムを使えば 反応性の高い硫黄化合物でも優れた分離能とピーク形状が得られます 硫化水素と硫化カルボニルを室温付近できわめて良好に分離できるため 極低温冷却を用いる必要はありません この分析の優れた結果は DB-Sulfur SCD カラムで構成したイナートフローパス GC/SCD が 硫黄化合物の分析に適していることを示しています

はじめに 石油製品中の硫黄化合物のモニタリングは 高価な触媒を保護し 製品品質を確保するうえできわめて重要です ガソリン中の硫黄化合物は マトリックスがきわめて複雑で しばしば物質の濃度が大きく異なるため 分析が困難となることがあります 各種石油中の総硫黄濃度のみの測定にはいくつかのメソッドを使用できますが 最近では 石油サンプル中の硫黄化合物を選択的かつ詳細に分析する傾向が強くなっています 一般的なピーク同定の場合はガスクロマトグラフィ / 質量分析 (GC/MS) が有効ですが 石油マトリックスの場合 共溶出する炭化水素のかく乱効果により 分析が難しくなっています そのため 硫黄化合物の定量には 硫黄検出器を用いたガスクロマトグラフィが広く用いられています 化学発光硫黄検出器 (SCD) は 硫黄化合物に対して直線的な等モルレスポンスを示し 炭化水素の干渉も受けにくいことから 硫黄化合物の分析に適した検出器といえます たとえば ASTM メソッド D523-94 では ガソリン中硫黄化合物の検出に SCD が用いられています 厚膜の 100 % ジメチルポリシロキサンタイプのカラムは 揮発性硫黄分析で優れた分離能が得られるため広く採用されています しかし そうした厚膜カラムは 一般にブリードレベルが高くなります SCD では SCD セラミックの汚染や感度の低下を避けるために 低ブリード GC カラムの使用が必要となります また 揮発性硫黄化合物は反応性が高いことに加えて 吸収性 吸着性 金属触媒特性も有しています そのため 硫黄化合物の分析で信頼性の高い結果を得るためには サンプル経路 特に GC カラムに不活性のものを使用することが求められます Agilent DB-Sulfur SCD GC カラムは 硫黄化合物分析専用に開発され GC/SCD に最適化されたカラムです この新しいウォールコーティング式のオープンチューブラカラムは 低ブリードと硫黄化合物に対する優れた不活性という特長を備えています そのため 活性の高いさまざまな化合物を低濃度で分離することが可能です このアプリケーションノートでは ガスクロマトグラフィとイナートフローパスコンポーネント SCD DB-Sulfur SCD GC カラムを用いた石油留分中の硫黄化合物の分析について説明します 実験手法 Agilent 355 DP SCD と Agilent 783 オートサンプラ (ALS) を備えた Agilent 7890 ガスクロマトグラフを用いて実験をおこないました Agilent イナートフローパススプリット / スプリットレス注入口とウルトライナートライナ ウルトライナートゴールドシールを使用しました トルエン中硫黄標準を J&K Chemical ( 上海 中国 ) から購入しました 成分情報を表 1 に示しています 20 種類の硫黄化合物を含む硫黄標準原液を 濃度 100 mg/kg でトルエンに溶解しました 内標準には硫化ジフェニルを使用しました 硫黄原液をトルエンで希釈し 種類の濃度のキャリブレーション用溶液を作成しました 各標準溶液には 5 mg/kg の内標準が含まれています 分解ガソリンサンプルを地元の石油会社から入手しました 各サンプルに内標準を濃度 5 mg/kg で添加してから注入しました 条件 : GC カラム : Agilent J&W DB-Sulfur SCD 0 mx0.32 mm 4.2 µm(p/ng3903-3001) 注入口 : 275 C スプリット比 10:1 ( イナートフローパス スプリット / スプリットレス注入口 ) キャリア : ヘリウム 定流量モード 2.8 ml/min オーブン : 35 C で 3 分間 10 C/min で 35 C~250 C 250 C で 10 分間 注入量 : 1 µl 条件 : SCD バーナー温度 : 800 C バーナーの真空 : 34 torr 反応セルの真空 : 5 Torr 水素 : 40 ml/min 空気 : 0 ml/min 消耗品セプタム : ノンスティックブリード温度最適化 (BTO) セプタム (p/n 5183-4757) ライナ : ウルトライナートライナ (p/n 5190-2295) シール : シリンジ : ウルトライナートゴールドシールおよびワッシャ (p/n 5190-144) 5 µl テーパード 固定ニードル 23-2s/42/HP (p/n 5181-1273) 2

表 1. 硫黄標準 No. 化合物 CAS No. 分子式 濃度 (mg/kg) 1 硫化水素 7783-0-4 H 2 2 硫化カルボニル 43-58-1 CO 3 メタンチオール 74-93-1 CH 3 SH 2000 4 エタンチオール 75-08-1 C 2 H 5 SH 2000 5 硫化ジメチル 75-18-3 (CH 3 ) 2 二硫化炭素 75-15-0 CS 2 2000 7 2- プロパンチオール 75-33-2 C 3 H 8 8 2- メチル -2- プロパンチオール 75--1 C 4 H 10 9 1- プロパンチオール 107-03-9 C 3 H 8 10 エチルメチルスルフィド 24-89-5 C 2 H 5 SCH 3 2000 11 チオフェン 110-02-1 C 4 H 4 12 2- メチル -1- プロパンチオール 513-44-0 C 4 H 10 13 ジエチルスルフィド 352-93-2 (C 2 H 5 ) 2 14 1- ブタンチオール 109-79-5 C 4 H 10 15 ジメチルジスルフィド 24-92-0 (CH 3 S) 2 2000 1 2- メチルチオフェン 554-14-3 C 5 H 17 3- メチルチオフェン 1-44-4 C 5 H 18 ジエチルジスルフィド 110-81- (C 2 H 5 S) 2 2000 19 5- メチルベンゾ [b] チオフェン 14315-14-1 C 9 H 8 20 3- メチルベンゾチオフェン 1455-18-1 C 9 H 8 21 ** 硫化ジフェニル 139--2 C 12 H 10 ** 内標準 結果と考察 分離能 通常 揮発性 極性 反応性の高い硫黄化合物の分離には 無極性の厚膜カラムが用いられます 一般に 4.0 μm 厚膜の結合無極性 ( ジメチルポリシロキサン ) 固定相でコーティングされた 30 m 0.32 mm id のフューズドシリカカラムを用いれば 揮発性硫黄化合物の十分な保持力が得られます また 硫黄化合物の分離では 初期オーブン温度を周囲温度よりも低くします そのため 極冷温冷却が必要となります この研究では 0 m 0.32 mm id 4.2 μm フィルムの DB-Sulfur SCD GC カラムを使用し 分析を 35 C で開始しました 図 1 に示すように このカラムにより トルエン中硫黄標準について満足のいく分離能が得られています 特に 硫化水素と硫化カルボニルでは 周囲温度で優れた分離能と保持力が得られます そのため 極低温冷却が不要です 通常 30 m 0.32 mm 4 μm の無極性カラムでは チオフェンと 2-メチル-1-プロパンチオールが共溶出しますが DB-Sulfur SCD ではベースラインで分離することができます 5 C/min という低いオーブン昇温速度で 優れた分離能が得られています また 流量を半分に減らせば 感度を高めることが可能です ただし その場合には分析時間が長くなります 3 15 18 4 5 7 10 11 14 9 13 12 1 17 19 20 8 1 2 21 5 10 15 20 25 30 図 1. Agilent GC/SCD システムと Agilent J&W DB-Sulfur SCD カラムを用いて分析したトルエン中硫黄標準のクロマトグラム ピーク番号については表 1 を参照してください 3

図 2 に 濃度 0.1 mg/kg ( オンカラムで約 0.01 ng) の各硫黄標準のクロマトグラムとシグナル / ノイズ比を示しています 低ブリードの DB-Sulfur SCD では 分析全体をつうじて検出器の安定性が維持され 不安定になる兆候は見られませんでした 低ブリードと優れた不活性という特長を備えた DB-Sulfur SCD カラムを使えば 極性と反応性の高い硫黄化合物について 優れた分離能 ピーク形状 レスポンスが得られます 直線性 種類の濃度の標準から得られたデータをもとに 検量線を作成しました この分析メソッドは 濃度 0.1~10 ppm のほとんどのターゲット硫黄標準の測定に適用可能です 揮発性と極性の高い硫化水素と硫化カルボニルについては 濃度範囲は 2~25 ppm となります また サンプル中の濃度が比較的高いチオフェンの濃度範囲は 0.1~50 ppm です SCD は このメソッドの分析対象であるすべての硫黄化合物に対して 直線的な等モルレスポンスを示しています 分析した硫黄化合物の相関係数は 0.997 (R 2 ) を上回りました 表 2 に 各硫黄化合物の直線性を示しています 表 2. ターゲット硫黄化合物の直線性範囲 化合物 濃度範囲 (ppm) 直線性 (R 2 ) 硫化水素 2 25 0.997 硫化カルボニル 2 25 0.9990 メタンチオール 0.1 10 0.9987 エタンチオール 0.1 10 0.9995 硫化ジメチル 0.1 10 0.9991 二硫化炭素 0.1 10 0.9990 2-プロパンチオール 0.1 10 0.9998 2-メチル-2-プロパンチオール 0.1 10 0.9989 1-プロパンチオール 0.1 10 0.9990 エチルメチルスルフィド 0.1 10 0.9998 チオフェン 0.1 50 0.9997 2-メチル-1-プロパンチオール 0.1 10 0.9991 ジエチルスルフィド 0.1 10 0.9992 1-ブタンチオール 0.1 10 0.9990 ジメチルジスルフィド 0.1 10 0.9987 2-メチルチオフェン 0.1 10 0.9985 3-メチルチオフェン 0.1 10 0.9994 ジエチルジスルフィド 0.1 10 0.9990 5-メチルベンゾ [b] チオフェン 0.1 10 0.9984 3-メチルベンゾチオフェン 0.1 10 0.9978 15 µv 1200 3 4 5 7 8 9 10 11 12 13 14 15 1 17 18 19 20 S/N 4.5 4.8 5.1 8.1 4.2 2.5 5.7 5.9.1 4.7 5.5 5. 10.5 4.7 7.1 10.8 4.5 4.0 1000 800 00 400 200 3 4 5 10 11 13 9 7 12 14 8 15 1 17 18 19 20 0 5 10 15 20 25 30 図 2. 0.1 mg/kg ( オンカラムで約 0.01 ng) の硫黄標準のクロマトグラムとシグナル / ノイズ比 ピーク番号については表 1 を参照してください 4

再現性 再現性を評価しました 結果を表 3 に示しています すべてのデータは 異なる濃度のターゲット硫黄化合物の 回反復分析により得られたものです 図 3 からは 2 ppm における硫化水素と硫化カルボニルの優れた再現性が見てとれます 相対標準偏差 (RSD) は 3.5 % 未満でした 表 3. 各濃度の硫黄化合物の再現性 No. 化合物 10 ppm 1 ppm 0.1 ppm RSD% RSD% RSD% 1 メタンチオール 2.94 4.4 5.12 2 エタンチオール 2.53 3.00 4.38 3 硫化ジメチル 2.53 2.79 4.79 4 二硫化炭素 2.13 3.29 5.43 5 2-プロパンチオール 2.49 3.98 4.85 2-メチル-2-プロパンチオール 2.89 4.47 4.41 7 1-プロパンチオール 2.81 3.88 4.91 8 エチルメチルスルフィド 2.34 4.17 5.24 9 チオフェン 2.24 3.0 3.49 10 2-メチル-1-プロパンチオール 1.87 2.31 5.8 11 ジエチルスルフィド 2.00 2.97 4.80 12 1-ブタンチオール 2.4 3.3.47 13 ジメチルジスルフィド 3.2 4.15 4.23 14 2-メチルチオフェン 3.59 4.2 5.95 15 3-メチルチオフェン 2.85 3.90 4.90 1 ジエチルジスルフィド 2.74 3.1.34 17 3-メチルベンゾチオフェン 2.48 4.87 5.29 18 5-メチルベンゾ [b] チオフェン 2.42 4.25 7.37 石油留分の分析 検出器の等モルレスポンスとは モルベースで等量の分析対象物に対して等量のレスポンスが得られることを指します Agilent SCD の等モル性を活用して 石油留分サンプル中の硫黄化合物を検出し サンプル中のすべての硫黄成分 ( 既知および未知 ) の硫黄含有量を合計し サンプル中の総硫黄の質量濃度を算出したところ ASTM D523 で推奨される全硫黄濃度に達しました 図 4a に 分解ガソリンサンプルのクロマトグラムを示しています このサンプルには 3.5 % を超える芳香族炭化水素と 25 % の非芳香族炭化水素が含まれています 図 4b に 5 ppm の硫黄標準のクロマトグラムを示しています 分解ガソリンサンプル中の各硫黄化合物は リテンションタイムをもとに同定することができます GC/MS を用いて さらなる同定と確認をおこないました 内部標準化により 主要な各硫黄化合物の値を算出しました ターゲット硫黄化合物の RSD は 2.74~4.34 % でした 分解ガソリンのクロマトグラム中のすべてのピーク面積を合計して総硫黄量を算出し チオフェンのレスポンス係数を用いて定量しました 表 5 から 分解ガソリンサンプルの重複分析で優れた再現性が得られていることがわかります また 4.85 % を下回る RSD は 分析において炭化水素の干渉が生じていないことを示しています 図 3. 2 ppm の硫化水素と硫化カルボニルのクロマトグラムの重ね表示 5

表 4. 分解ガソリン中の主要な硫黄化合物 硫黄化合物 平均含有量 (mg/kg) RSD% (n = 5) 二硫化炭素 3.58 2.74 チオフェン 30.75 4.08 2-メチルチオフェン 8.72 4.34 3-メチルチオフェン.98 3.75 表 5. 分解ガソリン中の全硫黄の再現性データ サンプル全硫黄 (mg/kg) 平均 RSD% 分解ガソリン 91.4 91.0 100.0 94.89 100.88 95.89 4.84 15 µv 25000 20000 4A 11 15000 10000 1 17 5000 0 15 µv 5 10 15 20 25 30 25000 20000 4B 15000 10000 5000 0 1 2 3 4 5 7 9 10 1112 13 14 8 15 1 17 18 19 20 5 10 15 20 25 30 図 4. 3.5 % を超える芳香族炭化水素と 25 % の非芳香族炭化水素を含む分解ガソリンサンプルのクロマトグラム ( 上 ) 5 ppm の硫黄標準のクロマトグラム ( 下 )

結論 GC/SCD 検出を用いた石油留分分析における Agilent J&W DB- Sulfur SCD カラムの性能を評価しました 分析の結果から このカラムを使えば 約 20 種類の硫黄化合物で優れた分解能と左右対称のピーク形状が得られることが示されています 特に 硫化水素と硫化カルボニルについては 極低温冷却をおこなわずに 周囲温度で分離することができました すべてのターゲット化合物で優れた直線性と再現性が得られました イナートフローパス DB-Sulfur SCD カラム 化学発光硫黄検出器を組み合わせれば 石油サンプル中の揮発性硫黄化合物の正確な定量と定性が実現します 参考文献 1. ASTM D523-94 Standard Test Method for Sulfur Compounds in Light Petroleum Liquids by Gas Chromatography and Sulfur Selective Detection ASTM, Philadelphia, PA, USA. 2. W. Liu, M. Morales Detection of Sulfur Compounds According to ASTM D523 in Gasoline with Agilent s Dual Plasma Sulfur Chemiluminescence Detector (G03A) and an Agilent 7890A Gas Chromatograph Application note, Agilent Technologies, Inc. Publication number 5989-9233EN (2008). 3. Anon. Agilent 355 化学発光硫黄検出器による液化石油および天然ガス中の着臭剤と硫黄化合物の分析 技術概要 アジレント テクノロジー 資料番号 5989-788JAJP (2007). 詳細情報 これらのデータは一般的な結果を示したものです アジレントの製品とサービスの詳細については アジレントの Web サイト (www.agilent.com/chem/jp) をご覧ください 7

www.agilent.com/chem/jp アジレントは 本文書に誤りが発見された場合 また 本文書の使用により付随的または間接的に生じる損害について一切免責とさせていただきます 本資料に記載の情報 説明 製品仕様等は予告なしに変更されることがあります アジレント テクノロジー株式会社 Agilent Technologies, Inc. 2013 Printed in Japan September 5, 2013 5991-3108JAJP