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ダイバーシティ 年に向けた政策展開のポイント テレワークが当たり前になる社会 の実現に向け 多様な主体と連携した普及啓発や導入支援への取組を強化 地域での就労支援やマッチング強化により 女性や高齢者の就業を推進 働き方改革と併せて時差 Biz の定着に向けた取組を推進 強化した政策

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図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 1.4 65 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) 45 1.2 15~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計 4 35 1. 3.8 25.6 2.4 15 1.2 5. 195 55 6 65 7 75 8 85 9 95 2 5 1 15 2 25 3 35 4 45 5 55 6 65 ( 年 ) ( 注 )215 年までは実績 22 年以降は推計 ( 資料 ) 総務省 国勢調査 ( 各年版 ) 国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 (212 年 1 月推計 217 年 4 月推計 ) より みずほ総合研究所作成 図表 2 労働力人口と労働力率の見通し ( 万人 ) 1, 9, 8, 6. 58.1 労働力人口労働力率 ( 右目盛 ) 56.7 55.5 54.4 53.2 52. 5.9 5.2 49.9 49.9 7 6 7, 5 6, 4 5, 4, 3 3, 6,648 6,44 6,149 5,88 5,587 5,268 2 2, 1, 4,942 4,64 4,382 4,157 3,946 1 216 2 25 3 35 4 45 5 55 6 65 ( 年 ) ( 注 )216 年は実績 22 年以降は 男女別 年齢 5 歳階級別の労働力率を216 年と同じとして算出 (75 歳以上は 216 年の75 歳以上の労働力率を75~79 歳の労働力率とし 8 歳以上はゼロとして算出 ) ( 資料 ) 総務省 労働力調査年報 (216 年 ) 国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 (217 年 4 月推計 ) より みずほ総合研究所作成 2

2. 就業希望のある非労働力人口 (1) 非労働力人口の 8.6% は就業希望者総務省 労働力調査年報 によると 216 年の非労働力人口 4,418 万人のうち 就業を希望していながら求職していない就業希望者は38 万人 ( 男性 16 万人 女性 274 万人 ) と 非労働力人口の8.6% を占める 2 非労働力人口のうちの就業希望者の推移をみると 2 年代初めには5 万人を超えており 非労働力人口に占める割合も12% 強であったが 2 年代後半以降徐々に減少しつつある 就業を希望していながら求職していない理由としては 男性は 適当な仕事がありそうにない が 32.6% 健康上の理由のため が27.4% と多く 女性は 出産 育児のため が33.% 適当な仕事がありそうにない が28.7% と多い ( 図表 3) (2) 労働力率と希望労働力率の乖離男女別 年齢 5 歳階級別に216 年時点の実際の労働力率と 非労働力人口のうちの就業希望者全てが労働力人口となった場合の 希望労働力率 を比較すると 男性は 若年層と6 歳代で両者にやや差がみられる ( 図表 4 左 ) 一方 女性については 若年層と6 歳代では両者に男性と同程度の差がみられることに加え 男性ではほとんど両者の差がみられない2 歳代後半から5 歳代で差がみられる ( 図表 4 右 ) 特に3 歳代の差が大きく 3~34 歳で9.8% ポイント 35~39 歳で1.5% ポイント 図表 3 就業希望者の非求職理由 介護 看護のため 男性 適当な仕事がありそうにない 32.6 3.2 健康上の理由のため 27.4 その他 36.8 女性 28.7 出産 育児のため 33. 6.1 14.2 18. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 ( 資料 ) 総務省 労働力調査年報 (216 年 ) より みずほ総合研究所作成 1 8 6 図表 4 年齢階級別の労働力率と希望労働力率 (216 年 ) < 男性 > 1 8 6 < 女性 > 4 2 希望労働力率 労働力率 4 2 希望労働力率 労働力率 ( 注 ) 希望労働力率は 労働力人口と非労働力人口のうち就業希望者の合計が人口に占める割合 ( 資料 ) 総務省 労働力調査年報 (216 年 ) より みずほ総合研究所作成 3

希望労働力率が実際の労働力率を上回っている 3. 就業希望が実現した場合の労働力人口 (1) 就業希望が実現すれば労働力率は 63.5% と 3.5% ポイント上昇非労働力人口のうち 就業希望者 38 万人の全てが労働力人口になった場合の労働力率 ( 希望労働力率 ) は 216 年時点で63.5% と 労働力率の実績 (6.%) より3.5% ポイント上昇する (2) 希望労働力率が実現すると 265 年の労働力率は 52.7% へ希望労働力率が実現した場合の265 年時点の労働力人口を 将来推計人口 から算出する 216 年の男女別 年齢 5 歳階級別の労働力率と同じであれば前述の通り265 年の労働力人口は3,946 万人まで減少するが ( 図表 5の265 年 1) 216 年の希望労働力率と同じとすれば4,165 万人となる ( 図表 5の265 年 2) 労働力率でみると 216 年の男女別 年齢 5 歳階級別の労働力率と同じ場合の265 年 1は49.9% となるのに対して 216 年の希望労働力率と同じとした場合の265 年 2は52.7% とやや上昇するものの 2.8% ポイントの上昇にとどまる 265 年時点の労働力率は 希望労働力率が実現したとしても 216 年の実績 6.% と比較すると7.3% ポイント低下する (3) 女性の労働力率が男性と同じになれば 265 年の労働力率は 57.2% へ女性の労働力率を男性の労働力率並みに引き上げることができれば 265 年の労働力率は216 年の実績 6.% に近づく 265 年の男女別 年齢 5 歳階級別の労働力率を 男性は216 年の希望労働力率とし 女性は216 年の男性の労働力率と同一とすると 265 年の労働力人口は4,527 万人 労働力率は 57.2% となる ( 図表 5の265 年 3) 図表 5 労働力人口と労働力率 ( 万人 ) 1, 8, 6. 49.9 52.7 57.2 58. 労働力率 ( 右目盛 ) 7 6 5 6, 4 4, 2, 6,648 3,946 4,165 4,527 4,589 労働力人口 3 2 1 216 年 ( 実績 ) 265 年 1 265 年 2 265 年 3 265 年 4 ( 注 )265 年 1は 男女別 年齢 5 歳階級別の労働力率が216 年と同じ場合 265 年 2は 同希望労働力率が216 年と同じ場合 265 年 3は 男性は2と同じ 女性は男性の216 年の労働力率と同じ場合 265 年 4は 男女とも男性の216 年の希望労働力率と同じ場合 ( 資料 ) 国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 (217 年 4 月推計 ) 総務省 労働力調査年報 (216 年 ) より みずほ総合研究所作成 4

また 男女とも216 年の男性の年齢 5 歳階級別の希望労働力率と同じになれば 265 年の労働力人口は4,589 万人 労働力率は58.% まで上昇する ( 図表 5の265 年 4) したがって 将来の労働力率を現状と同じ程度とするには 現状の希望労働力率を実現させるだけでは不十分であり 女性の労働力率を男性並みに引き上げることも課題になる 4. 労働力率の引き上げに向けて今後 労働力率を引き上げるには まず 就業希望者が就業できる環境を整えることが必要である 前掲図表 3でみた通り 男女ともに本来 就業希望がありながら 適当な仕事がありそうにない ことを理由に求職していない人が多いが この点については職業紹介の仕組みの見直しや労働需給のマッチングに向けた取組強化 時間や場所に関する柔軟な働き方の拡充などの実施が求められる また 男性では 健康上の理由のため を挙げる人が多い 健康状態により状況は異なるものの 病気の治療をしながら就業を継続することが可能な場合も少なくない 政府の働き方改革実現会議は 217 年 3 月に 働き方改革実行計画 を決定したが 3 同計画では非正規雇用の処遇改善や長時間労働の是正などとともに 病気の治療と仕事の両立 も改革項目の一つとして掲げられている 厚生労働省によると 労働者の約 3 人に1 人が何らかの疾病を抱えながら働いている 今後 労働者の平均年齢が上がっていくことを考えれば 疾病を抱えながら働く人の割合はさらに拡大することが予想される 病気の治療と仕事の両立が難しい理由としては 仕事を続けることに関して職場の理解が乏しいことなどが指摘されている 企業の意識改革を早急に進めるとともに 柔軟な働き方の導入をはじめとする社内制度の整備を促すことが必要であろう 一方 女性は 希望労働力率と実際の労働力率の差が大きい3 歳代を中心とした子育て世代に対する対策が急務である 育児と仕事の両立については 働き方改革実行計画 において待機児童の解消などについて言及されている ただし 前述の通り 女性の労働力率を男性と同程度に引き上げなければ 将来の労働力率を現状並みとすることはできない 待機児童の解消にとどまらず 非正規雇用の処遇改善や 残業を前提とした正社員の働き方の見直しを進めることなどにより 女性の就業希望者を増加させる視点が欠かせない 高齢者の就業に関しては 21 年代以降 65~69 歳の就業率の上昇が顕著であるが 7 歳以上の就業率はほとんど変化がない ( 図表 6) 図表 6 65 歳以上の就業率の推移 5 36.2 4 65~69 歳 42.8 3 2 15.4 7 歳以上 13.7 1 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 16 ( 年 ) ( 資料 ) 総務省 労働力調査年報 ( 各年版 ) より みずほ総合研究所作成 5

働き方改革実行計画 では 高齢者の就業促進のポイントは 年齢に関わりなく公正な職務能力評価により働き続けられる エイジレス社会 の実現であると指摘されている しかし 企業による雇用延長の拡大では 7 歳以降の雇用を全面的に確保することは当面困難であると考えられる 定年のない働き方をする就業者数を増加させることで中長期的な高齢者の就業拡大を目指すことも重要であろう 今後の労働力率の引き上げの実現は 働き方改革 の進捗にかかっているといえよう 1 15 歳から 49 歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの 2 詳細集計による 3 働き方改革実行計画の決定後は 労働政策審議会において本実行計画を前提に審議が行われ 政府は関係法律案等を早期に国会に提出する方針である 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり 商品の勧誘を目的としたものではありません 本資料は 当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが その正確性 確実性を保証するものではありません また 本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります 6