消費税の消費への影響 ( 駆け込み需要と反動減 ) について 平成 25 年 1 月戦略企画部統計課 消費税の消費への影響について 平成元年の消費税導入時と平成 9 年の税率引き上げ時における駆け込み需要と反動減について分析を行いました なお これまでの消費税導入 税率引き上げは 直間比率の見直しの側面が大きく 個人所得税や法人税の減税が同時実施されており トータルでは増税とはなっていないため 一時的な駆け込み需要 反動減があったとしても 景気への影響は理論上小さいと考えらます 今回の消費税率引き上げは 減税があったとしても トータルで実質的な増税となります 1 家計消費の動き ( 全国 ) 消費税導入時及び平成 9 年引き上げ時における総合的な家計消費の動向について 消費水準指数の月別の推移を見ると以下のグラフのとおりとなっています 消費水準指数 : 消費支出から世帯規模 ( 人員 ),1 か月の日数及び物価水準の変動の影響を取り除い て計算した指数で, 家計消費の面から世帯の生活水準をより的確に把握することができる 消費税導入時 ( 平成元年 ) 114 112 消費水準指数 ( 世帯人員分布調整済 )- 二人以上の世帯季節調整値 ( 平成 22 年 =1) 消費税導入 11 18 16 14 12 1 12か月移動平均 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112 税率引き上げ時 ( 平成 9 年 ) 114 112 11 消費水準指数 ( 世帯人員分布調整済 )- 二人以上の世帯季節調整値 ( 平成 22 年 =1) 12 か月移動平均 景気後退期 (H11 年 1 月まで ) 金融危機山一 拓銀等破綻 18 16 14 12 1 税率引上アジア通貨危機 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11112 平成 8 年平成 9 年平成 1 年 12 か月移動平均からの乖離でみると 駆け込み需要は 導入時は 3 月の 1 か月のみ 引き上げ時は 4 か月前の 12 月から動きが始まり 2 か月前の 2 月から顕著となっている 反動減については 導入時は 4 月 5 月の 2 か月間 引き上げ時は 6 月までの 3 か月間見られる 1
平成 11 年以降の消費水準指数と消費者物価指数の推移は次のグラフのとおりとなっており 家計消費 消費者物価ともに低下を続けてきたことがわかります なお 12 か月移動平均を見ると 家計消費は平成 24 年 2 月 (97.6) を底に上昇に転じており 9 月 ~12 月に頭打ちとなりかけたところ アベノミクス効果で一段の上昇となっています 11 18 16 平成 11 年以降の消費水準指数 ( 季節調整値 ) 及び消費者物価指数の推移 ( 平成 22 年基準 ) 網掛部分は景気後退期消費水準指数 ( 総合 ) 12か月移動平均 14 12 1 98 消費者物価指数 96 リーマンショック東日本大震災 94 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 H24 H25 2 昭和 61 年以降の消費関連指標の推移 昭和 61 年以降 消費税の導入 税率引き上げを経過した消費関連指標の推移は次のグラフのとおりであり 消費水準は消費税の影響は見られず 実質可処分所得と連動性が強いことがわかります 特に平成 12 年以降は実質 GDP の上昇が可処分所得の上昇につながっておらず 消費水準及び消費者物価指数の下落傾向が続いてきた要因になっていると考えられます 14 消費水準指数 ( 二人以上の世帯 ) 実質 GDP 可処分所得の推移 ( 平成元年 =1 として置き換えた指数 ) 消費税導入 税率引上 網掛部分は景気後退期 13 12 11 1 9 消費水準指数 8 実質 GDP 7 実質可処分所得 ~ 消費者物価指数 6 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 15 16 17 18 19 2 21 22 23 24 実質可処分所得は 家計調査の可処分所得を平成 22 年基準消費者物価指数 ( 帰属家賃を除く総合 ) を用いて実質化したもの 2
3 費目別に見た家計消費の動き ( 全国 ) 消費税導入時及び平成 9 年引き上げ時における費目別の家計消費の動向について 消費水準指数の 12 か月移動平均からの乖離率の月別推移を見たのが次のグラフです 3 2 1-1 -2-3 住居 消費導入前後の分類別消費水準指数の推移 (12 か月移動平均からの乖離率 ) 光熱 水道 家具 家事用品 交通 通信 被服及び履物諸雑費 消費税導入 食料 教育 教養娯楽 保健医療 12 1 2 3 4 5 6 7 8 平成元年 食料住居光熱 水道家具 家事用品被服及び履物保健医療交通 通信教育教養娯楽諸雑費 3 2 1-1 -2-3 交通 通信 消費税率引き上げ前後の分類別消費水準指数の推移 (12 か月移動平均からの乖離率 ) 諸雑費 教育 光熱 水道 家具 家事用品 被服及び履物 保健医療 食料教養娯楽住居 税率引き上げ 12 1 2 3 4 5 6 7 8 平成 9 年 食料住居光熱 水道家具 家事用品被服及び履物保健医療交通 通信教育教養娯楽諸雑費 最も駆け込み需要が大きいのは 家具 家事用品 で 直前月は 2% 以上高い水準となっており 引き上げ時は 2 か月前にも 1% 以上高い水準となっている 反動減も大きいが 導入時はバブル景気の最中であり 3 か月後には回復している 被服及び履物 保健医療 教養娯楽 食料 住居 交通通信 にも駆け込み需要が見られるが 反動減は 被服及び履物 以外はそれほど大きくない 住居 ( 家賃 修繕等で住宅取得は含まない ) 光熱 水道 教育 諸雑費 は駆け込み需要は見られない 3
4 大型小売店販売額の動き ( 三重県 ) 消費税導入時及び平成 9 年引き上げ時における三重県の大型小売店販売額の動向について見たのが次のグラフです 消費税導入時における大型小売店販売額 ( 全店 ) の推移 ( 百万円 ) 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 平成元年 4 月消費税導入 ( 出所 ) 経済産業省 商業動態統計調査 大型小売店販売額 ( 全店 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 16. 14. 12. 1. 8. 6. 4. 2.. -2. -4. -6. -8. -1. -12. ( 百万円 ) 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 消費税率引き上げ時における大型小売店販売額 ( 全店 ) の推移 平成 9 年 4 月税率引き上げ ( 出所 ) 経済産業省 商業動態統計調査 大型小売店販売額 ( 既存店 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 平成 8 年平成 9 年平成 1 年 16. 14. 12. 1. 8. 6. 4. 2.. -2. -4. -6. -8. -1. -12. 販売額をで見ると 導入時 引き上げ時とも 1 か月前に駆け込み需要が見られるが それ以前は顕著ではない 導入時はバブル景気であり反動減は 4 月の 1 か月のみで 5 月には回復したが 引き上げ時は反動減が 4 月 ~6 月の 3 か月間続いた 4
5 自動車登録台数の動き ( 三重県 ) 消費税導入時及び平成 9 年引き上げ時における三重県の自動車登録台数 ( 季調値 ) の動向について見たのが次のグラフです 消費税導入時における自動車登録台数 ( 三重県 季調値 ) の推移 ( 台 ) 1, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, ( 出所 ) 日本自動車販売協会連合会三重県支部 新車登録台数 ( 備考 ) 新車登録台数 の季節調整済値は 三重県戦略企画部統計課にて算出 平成元年 4 月消費税導入 自動車登録台数 ( 季調値 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 5. 4. 3. 2. 1.. -1. -2. -3. -4. -5. ( 台 ) 1, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 消費税率引き上げ時における自動車登録台数 ( 三重県 季調値 ) の推移 ( 出所 ) 日本自動車販売協会連合会三重県支部 新車登録台数 ( 備考 ) 新車登録台数 の季節調整済値は 三重県戦略企画部統計課にて算出 平成 9 年 4 月税率引き上げ 自動車登録台数 ( 季調値 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 平成 8 年平成 9 年平成 1 年 5. 4. 3. 2. 1.. -1. -2. -3. -4. -5. 導入時は同時に物品税の廃止があり 自動車購入は導入後の方が有利となったため 4 か月程前から買い控えが見られた 消費税導入 ( 物品税廃止 ) 後はバブル崩壊まで登録台数の増加が続いている 引き上げ時は 6 か月前の前年 9 月から駆け込み需要が始まっており 引き上げ後は反動減に金融危機等の影響も重なり 低迷が長引くこととなった 今回は取得税の減額があるため 自動車については前回ほどの駆け込み需要は見られないと考えられる 5
6 新設住宅着工戸数の動き ( 三重県 ) 消費税導入時及び平成 9 年引き上げ時における三重県の新設住宅着工戸数 ( 季調値 ) の動向について見たのが次のグラフです ( 戸 ) 3, 2,5 消費税導入時における新設住宅着工戸数 ( 三重県 季調値 ) の推移 平成元年 4 月消費税導入 ( 出所 ) 国土交通省 建設着工統計 6. 4. 2, 2. 1,5. 1, -2. 5 新設住宅着工戸数 ( 季調値 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12-4. -6. ( 戸 ) 3, 消費税率引き上げ時における新設住宅着工戸数 ( 三重県 季調値 ) の推移 ( 出所 ) 国土交通省 建設着工統計 6. 2,5 平成 9 年 4 月税率引き上げ 新設住宅着工戸数 ( 季調値 ) 4. 2, 2. 1,5. 1, -2. 5-4. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 平成 8 年平成 9 年平成 1 年 -6. 導入時は法案成立から導入までの期間が短かったこと それまでもバブル景気で着工戸数が多くなっていたことから 消費税導入前の 1 年間の駆け込み需要は見られない 引き上げ時は約 1 年前から駆け込み需要が発生しており 反動減は契約日の関係から引き上げ日の数か月前から始まり約 1 年後まで続いた 今回は住宅ローン減税拡充や すまい給付金 の措置が取られるため 駆け込み需要や反動減は軽微にとどまると考えられる 6
7 直近の消費関連指標の動き 平成 26 年 4 月の消費税率引き上げに向けて 直近の消費関連指標の動きを見たのが次のグラフです 12 直近の消費関連指標の動き ( 消費水準指数及び消費者物価指数は全国値 それ以外は三重県値 ) 11 1 9 大型小売店販売額 ( 既存店 ) 前年同月 =1 自動車登録台数 H24 年平均 =1 新設住宅着工戸数 H24 年平均 =1 消費水準指数 8 7 8/1 消費税増税法案成立 8 9 1 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 平成 24 年 平成 25 年 1/1 8% を閣議決定 消費者物価指数 新規住宅着工戸数は 平成 25 年は 24 年平均を上回っている月が多いが 平成 2 年のリーマンショックからの回復過程にあるため 今のところ 駆け込み需要が起きているかどうかの判断は難しい その他の指標も上昇を続けている状態ではなく まだ駆け込み需要は起きていないと考えられる 7