3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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日本基準基礎講座 収益

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

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課税売上割合 消費税の課税売上割合の計算は 次の算式により計算します 課税売上割合が 95% 以上と未満では 仕入税額 控除の計算方法が変わってくるため算定する必要があります 課税売上割合 = 課税売上 ( 税抜 )/( 非課税売上 + 課税売上 )( 税抜 ) 消費税の課税売上割合が 95% 以上

日本基準基礎講座 有形固定資産

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

目次 1. 回収可能性適用指針の公表について (1) 公表の経緯 (2) 税効果会計プロジェクトの全体像 (3) 適用時期 2. 回収可能性適用指針の概要 (1) 繰延税金資産の回収可能性の基本的な考え方 (2) 課税所得と一時差異等加減算前課税所得 (3) 企業の分類に応じた取扱い総論 (4) 各

図表 1 将来減算一時差異とは 課税所得の計算上 差異が生じたときに加算され 将来解消するときに減算されるものです 税効果会計の適用において最も取り扱う機会が多いのが将来減算一時差異です 貸倒引当金の損金算入限度超過額 賞与引当金及び退職給付引当金の額 減価償却費の損金算入限度超過額 棚卸資産等に係

作成する申告書 還付請求書等の様式名と作成の順序 ( 単体申告分 ) 申告及び還付請求を行うに当たり作成することとなる順に その様式を示しています 災害損失の繰戻しによる法人税 額の還付 ( 法人税法 805) 仮決算の中間申告による所得税 額の還付 ( 法人税法 ) 1 災害損失特別勘

「経済政策論(後期)」運営方法と予定表(1997、三井)

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

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30. 収益認識基準 1. 改正のポイント (1) 趣旨 背景収益認識に関する会計基準の公表を受け 法人税における収益認識等について改正が行われる 大綱 90 ページ (2) 内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後終了事業年度 (4) 改正の影響 返品調整引当金が廃止され 買戻し ( 返品権付販売 ) の取扱いについては 会計処理と差異が生じ税務調整が必要となる 長期割賦販売等の延払基準の選択適用は廃止され 販売時に全額益金認識されるため納税資金に影響が生じる 2. 改正の趣旨 背景 平成 26 年 5 月に国際会計基準において 顧客との契約から生じる収益 が公表され 平成 30 年 1 月 1 日以後開始する事業年度から適用されることとなった この状況を踏まえ 国内でも収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討を着手することを決定し 平成 29 年 7 月に 収益認識に関する会計基準 ( 案 ) を公表するに至った 上記の国内での検討状況とその結果を踏まえ 企業の税負担の帰属年度の変動と事務負担に配慮する観点から 所要の措置を講ずるため 法人税における収益認識等についても改正が行われるに至った 30-1 ( 法人税 )

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡しの時における価額 ( 役務の提供時の価額 ) 通常得るべき対価の額に相当する金額 1 収益認識時の価額 収益認識時の価額について 法令上明確な規定なし 貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においては その可能性がないものとした場合の価額とする 資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額を実質的な取引の単位に区分して計上できる また 値引き又は割戻しについて 客観的に見積もられた金額を収益の額から控除することができる 2 収益の認識時期 収益の認識時期について 法令上明確な規定なし ( 一部法人税基本通達における規定はあり ) [ 原則 ] 目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入する [ 例外 ] 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って 上記引渡し等の日に近接する日の属する事業年度の収益の額として経理した場合 上記引渡し等の日にかかわらず 原則として当該事業年度の益金の額に算入する 会計基準において 一定の場合 出荷基準等が認められる この例外の規定により 税務上も 一定の場合 会計上と同様に出荷基準等が認められると考えられる ( 注 ) 法人税法 22 条において 益金の額は収益の額とし 収益の額は一般に公正妥当と認められる会計処理に基準に従うと包括的に規定されている しかしながら 収益認識時の価額や収益の認識時期など個別的な規定は明示されていなかった 30-2 ( 法人税 )

内容改正前改正後 返品調整引当金制度は廃止となる 3 返品調整引当金 4 長期割賦販売等の延払基準 出版業等のうち 棚卸資産について一定の買戻し契約を結んでいるものが その買戻し特約に基づく買戻しによる損失の見込み額として損金経理したものは 返品調整引当金損金算入限度額に達するまでの金額を損金の額に算入する 長期割賦販売等に該当する資産の販売をした場合に その資産の販売等に係る収益の額及び費用の額について その目的物又は役務の引渡し等を行った事業年度以後に延払基準の方法により経理した時は 当該各事業年度の益金の額及び損金の額に算入する [ 経過措置 ] 対象 : 平成 30 年 4 月 1 日において返品調整引当金制度の対象事業を営む法人 平成 33 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度 改正前の処理が可能 平成 33 年 4 月 1 日 ~ 平成 42 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度 現行法による損金算入限度額に対して 1 年ごとに 10 分の 1 ずつ縮小した額の引当てを認める等 長期割賦販売等の延払基準は廃止となる ( 注 ) 消費税法においても長期割賦販売等の延払基準による計算制度は廃止となる [ 経過措置 ]( 消費税法も同様 ) 対象 : 平成 30 年 4 月 1 日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等を行った法人 平成 35 年 3 月 31 日までに開始する各事業年度 改正前の処理が可能 平成 30 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度については 延払基準の適用をやめた場合の繰延割賦利益額を 10 年均等で収益計上する ( 注 ) ファイナンス リース取引については改正なし ( 消費税法も同様 ) 30-3 ( 法人税 )

4. 適用時期 平成 30 年 4 月 1 日以後終了事業年度 なお 企業会計基準第 29 号において 収益認識に関する会計基準の適用時期は次のように記載されている 原則 平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首 早期適用 平成 30 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首 5. 改正の影響 (1) 収益の認識時期収益に関する会計基準では 収益の認識時期について 一定の場合 出荷基準等が認められる この取扱いに合わせて 法人税法上も 一定の場合 出荷基準等が認められることとなる (3. 改正の内容 2 参照 ) (2) 返品調整引当金の廃止返品調整引当金の計上が認められなくなり かつ 買戻しの可能性がある場合についても その可能性がないものとした場合の価額となるため 買戻し ( 返品権付販売 ) の取扱いについて会計処理と差異が生じ 税務調整が必要となる また 消費税についても 課税標準は実際に収受をした対価の額となり 会計上の収益の額と差異が生じるため 別途管理が必要になると考えられる 30-4 ( 法人税 )

(3) 長期割賦販売等の延払基準の廃止長期割賦販売等の延払基準を適用している法人について 従来よりも益金の額の認識時期が早くなることにより 実際に代金が入金されるよりも前の段階で多額の課税が生じることとなる 消費税においても 長期割賦販売等の延払基準による計算制度が廃止されることにより法人税と同様の影響が生じることとなる 前提 :1 個 15,000 千円の製品 ( 原価 9,000 千円 ) の割賦販売契約 ( 1) を結び 毎年 1,000 千円支払を受け 15 年で回収を行う 1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 15 年目 1 入金 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 2 所得 2 400 千円 400 千円 400 千円 400 千円 400 千円 400 千円 3 4 改正前 税金 (2 実行税率 4) 手取りキャッシュ (1-3) 改正後 119 千円 119 千円 119 千円 119 千円 119 千円 119 千円 881 千円 881 千円 881 千円 881 千円 881 千円 881 千円 1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 15 年目 1 入金 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1 < 改正前 > 入金ごとに収益を認識し 同時に収益に対応する費用を認識する < 改正後 > 販売時に全額を収益認識し 同時に収益に対応する費用を認識する 2 収益 1,000 千円 - 費用 600 千円 = 所得 400 千円 3 収益 15,000 千円 - 費用 9,000 千円 = 所得 6,000 千円 4 税金については 所得金額に対して 平成 30 年 4 月 1 日以後開始事業年度の法人実効税率 ( 外形標準課税適用法人 )29.74% を使用 2 所得 3 6,000 千円 0 千円 0 千円 0 千円 0 千円 0 千円 3 4 税金 (2 実行税率 4) 手取りキャッシュ (1-3) 1,784 千円 0 千円 0 千円 0 千円 0 千円 0 千円 784 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 1,000 千円 30-5 ( 法人税 )

6. 実務のポイント (1) 返品調整引当金制度廃止に伴う経過措置制度廃止に伴い 平成 33 年度より現行法による損金算入限度額に対して 1 年ごとに 10 分の 1 ずつ縮小した額の引当てを認める 出典 : 経済産業省 平成 30 年度税制改正について (2) 長期割賦販売等における延払基準廃止に伴う経過措置制度廃止に伴い 延払基準の適用をやめた場合 適用をやめた時点における繰延割賦利益額を 10 年均等で収益計上する 出典 : 経済産業省 平成 30 年度税制改正について 30-6 ( 法人税 )