資料

Similar documents
PowerPoint プレゼンテーション

3. 以下によって特徴づけられる対立傾向 a. 敵意 : 持続的あるいは頻繁な怒りの感情 ; 些細なことに反応した怒りや苛々 そして短気さ C. 人格機能の障害とその個人の人格傾向の表れは 時間を通じて そして状況を通じて比較的一定している D. 人格機能の障害とその個人の人格傾向の表れは 物質 (

Ⅰ 向精神薬の合理的な用い方 ④ 3 理学的および生化学的検査 身長 体重 体温 脈拍 血圧などの測定とともに 心電図およ び血液生化学的検査を施行し生体の病的状態の有無を評価してお く 脳波 CT MRI SPECT PET NIRS 等も必要に応じて施行 する 2 薬物療法の実際 ① 適切な薬剤

2013_ここからセンター_発達障害

< F2D90B8905F8EE892A08EC08E7B977697CC B8C292E6A7464>

01 表紙

2012 ( 平成 24 年 ) 10 月 12 日実施 0 年次試験 試験科目 : 精神 No. 1-1 統合失調症は遺伝病である 解答 : 解 説 : 遺伝性があるとされている 統合失調症の子が統合失調症にかかる危険率は16.4% 同胞( 兄弟姉妹 ) では10.8% 孫では3.0% おい めい

11総法不審第120号

11総法不審第120号

統合失調症ってどんな病気? 統合失調症は 全世界で共通してみられる さまざまなこころの症状を示す病気です 多くは思春期や青年期に発症し 決して稀な病気ではありません 一生のうちにこの病気にかかる人の数は 100~120 人に1 人と言われています また 現在わが国すべての診療科に入院している人の数は

2 1. 精神科薬物療法の基本 医療チームの士気を高め, 心理社会的治療への導入をも容易にする. 薬物療法の効用を最大限に引き出す技術を身につけることは今日の精神科臨床において必須である. 1 薬物療法の目的 a. 対症レベルでの改善薬物治療は必ずしも病態や病因の本質に作用しなくてもよい. 認知症の

睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン_プレス資料

11総法不審第120号

wslist01

漢方薬

1/5 第 19 回介護福祉士国家試験問題 解説 ( やまだ塾 ) =10 精神保健 = ( 問題 69~ 問題 72) (2007 年 5 月 24 日ホームページ掲載 ) 精神保健 問題 69 精神障害とその症状に関する次の組み合わせのうち適切なものの組み合わせを一つ選びな さい A. 神経症

臨床心理学・臨床精神医学

のつながりは重要であると考える 最近の研究では不眠と抑うつや倦怠感などは互いに関連し, 同時に発現する症状, つまりクラスターとして捉え, 不眠のみならず抑うつや倦怠感へ総合的に介入することで不眠を軽減することが期待されている このようなことから睡眠障害と密接に関わりをもつ患者の身体的 QOL( 痛

INDEX 1. どのような病気ですか? 2. どのような症状ですか? 3. 病気の経過と症状は? 4. 治療はどのように行われますか? 1p 2p 4p 6 p 5. 精神科リハビリテーションとは? 10p 6. 再発しやすい病気です 12p 7. 再発のサインを見逃さない 13p 8. 制度を上

11総法不審第120号

スライド 1

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

11総法不審第120号

認定看護師教育基準カリキュラム

精神障害者支援機関での自殺に関する支援者ニーズの調査 中間報告

インフルエンザ定点以外の医療機関用 ( 別記様式 1) インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査のお願い インフルエンザ定点以外の医療機関用 インフルエンザ様疾患罹患時及び抗インフルエンザ薬使用時に見られた異常な行動が 医学的にも社会的にも問題になっており 2007 年より調査をお願いしております

重症筋無力症 うつ病

改訂内容 ( 部追加 改訂 部削除 ) ビ シフロール 錠, ミラペックス LA 錠 共通 改 訂 後 改 訂 前 2. 重要な基本的注意 2. 重要な基本的注意 (5) レボドパ又はドパミン受容体作動薬の投与により 病的賭博 ( 個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず 持続的に

陰性症状 認知機能障害 感情鈍麻 感情の平板化 記憶力の低下 注意力 集中力の低下 思考の貧困 意識の欠如 自閉 判断力の低下 ( 優先順位を決められない ) 原因はまだはっきりとわかっていなく 脳神経の一部に失調をきたしたり 脳の中で働く 神経伝達物質のバランスが乱れ 過剰に分泌されることで症状が

PowerPoint プレゼンテーション

‰²−Ô.ec9

スライド 1

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

もくじ 目的 目標 支援体制図 4 運用規準 ) 運用地域 ) 運用開始時期 ) 実施方法 4) 実施手順 5) 個人情報の取扱い 6) 運用に関する留意事項 5 資料 精神障害者の治療中断 4 精神障害者の治療中断の アセスメント項目 適用例 考え方 6

うつ病について

11総法不審第120号

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

自分をつかみたい E さん 21 歳 女性 フリーター 主訴 : どう生きたらよいか分からない 自分をつかみたい 現病歴 : 高校卒業以来 いくつかアルバイトなどをしながら生活してきた 両親は子どもの頃に離婚し 母親と 2 人暮らしで色々と大変だった 母のことは大好き 前はすごく優しかった彼が最近冷

賀茂精神医療センターにおける精神科臨床研修プログラム 1. 研修の理念当院の理念である 共に生きる 社会の実現を目指す に則り 本来あるべき精神医療とは何かを 共に考えて実践していくことを最大の目標とする 将来いずれの診療科に進むことになっても リエゾン精神医学が普及した今日においては 精神疾患 症

医療連携ガイドライン改

Taro 情緒障害のある児童生徒の理解

第四問 : パーキンソン病で問題となる運動障害の症状について 以下の ( 言葉を記入してください ) に当てはまる 症状 特徴 手や足がふるえる パーキンソン病において最初に気づくことの多い症状 筋肉がこわばる( 筋肉が固くなる ) 関節を動かすと 歯車のように カクカク と軋む 全ての動きが遅くな

本日のテーマ 認知症について 精神科で扱う病気とは うつ病について 統合失調症について

( 別添 ) インフルエンザに伴う異常な行動に関する報告基準 ( 報告基準 ) ( 重度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 重度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください ( 軽度調査 ) インフルエンザ様疾患と診断され かつ 軽度の異常な行動を示した患者につき ご報告ください イン

す しかし 日本での検討はいまだに少なく 比較的小規模の参加者での検討や 個別の要因との関連を報告したものが殆どでした 本研究では うつ病患者と対照者を含む 1 万人以上の日本人を対象とした大規模ウェブ調査で うつ病と体格 メタボリック症候群 生活習慣の関連について総合的に検討しました 研究の内容

11総法不審第120号

神経発達障害診療ノート

第二問 : 睡眠障害 ( 不眠症 ) の種類は大きく分けて 入眠障害 中途覚醒 熟眠障害 早朝覚醒 の四つがあります それぞれの種類についてどのような症状であるか それぞれの図を参考に説明 してください 入眠障害 床についてもなかなか寝付けない症状が入眠障害である 日常的に 1 時間以上眠れずに苦痛

Ⅴ-2-2 うつ病とは 心のエネルギーが低下した状態 生涯でかかる割合は~% 女性は男性の約 倍多い 働く世代で増加している からだの不調として現れることがある 症状 ( 次頁の資料次の資料 )) がが 週間以上続くようなら 2 ら うつ病の可能性が高い うつ病とは ストレスなどの理由から 脳がうま

難治性腹水患者の患者指導

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

精神障害者に対する職業訓練の実践報告書

Microsoft PowerPoint ⑤静岡発表 [互換モード]

助成研究演題 - 平成 23 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 重症心不全の集学的治療確立のための QOL 研究 東京大学医学系研究科重症心不全治療開発講座客員研究員 ( 助成時 : 東京大学医学部附属病院循環器内科日本学術振興会特別研究員 PD) 加藤尚子 私は 重症心不全の集学的治療確立のた

ADL 通称 エクスポージャー SST エーディーエル エクスポージャー エスエスティー 日常生活動作 エクスポージャー ソーシャルスキルトレーニング ニチジョウセイカツドウサ エクスポージャー ソーシャルスキルトレーニング 75 食事 更衣 移動 排泄 整容 入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行

精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(平成30年度)

函館市認知症ケアパス

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

精神医学教科書 躁うつ病

11総法不審第120号

Microsoft PowerPoint - 参考資料

II 睡眠の状態をたずねてみてください 睡眠の状態はその人の精神的ストレスの強さを敏感に反映します 睡眠についてごく自然にたずねるのが良いでしょう たずね方としては 例えば ところで 夜はよくお休みになれますか あれこれと考えて 夜眠れないことはありませんか 最近よく眠れない 眠りが浅く何度も目が覚

ハートクリニック大船家族教室 統合失調症について

kisaihouhou

第三問 : 認知症の主な症状にどのようなものがあるか 下枠に二つ記入してください 例 ) 同じことを何度も言うなど ( 答えはたくさんあります ) 例 ) ささいなことで怒るなど ( 答えはたくさんあります ) 第四問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには

< 評価結果 ( 点数 ) について > 項目評価点 ( 合計 ) ストレスの要因に関する項目心身のストレス反応に関する項目周囲のサポートに関する項目合計 <あなたのストレスの程度について> あなたはストレスが高い状態です ( 高ストレス者に該当します ) セルフケアのためのアドバイス < 面接指導

 

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

概要 特別養護老人ホーム大原ホーム 社会福祉法人行風会 平成 9 年開設 長期入所 :100 床 短期入所 : 20 床 併設大原ホーム老人デイサービスセンター大原地域包括支援センター 隣接京都大原記念病院

漢方薬

英和対照表

子どもの保健 Ⅰ・Ⅱ .indd

SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

公的医療保険が対象とならない治療 投薬などの費用 ( 例 : 病院や診療所以外でのカウンセリング ) 精神疾患 精神障害と関係のない疾患の医療費 医療費の自己負担ア ) 世帯 ( 1) における家計の負担能力 障害の状態その他の事情をしん酌した額 ( しん酌した額が自立支援医療にかかった費用の 10

* 関連する重要な人物クレッペリン : 早発性痴呆ブロイラー : 分裂病 schizophrenia ( 独 Schizophrenie) 4つのA(Assoziations= 連合 Affect= 感情 Ambivalent= 両価性 Autism= 自閉性 ) クルト シュナイダー : 一級症状

研究の背景 古くから精神疾患を診断する補助として 病前の性格や体型に興味が持たれ 多くの仮説が提唱されています 有名な所では メランコリー親和性気質 ( まじめで几帳面など ) は うつ病に罹患しやすいというものがあり 臨床的にも受け入れられています 体型との関係も実は有名で 奇妙に思われるかもしれ

 

統合失調症患者の状態と退院可能性 (2) 自傷他害奇妙な姿勢 0% 20% 40% 60% 80% 100% ないない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 尐ない 中程度 高い 時々 毎日 症状なし 幻覚 0% 20% 40% 60% 80% 100% 症状

P01-16

- 12 -

ビックデータ解析により、知られざる睡眠薬の処方実態が明らかに

こころの病気 「あなたは大丈夫ですか?」


<4D F736F F D E937892CA926D81698E7B8D7394C CA8E86816A2E646F63>

<4D F736F F D F935F82C98AD682B782E988E38A D8CA92E646F6378>

( 別紙 ) 精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準 精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定は ⑴ 精神疾患の存在の確認 ⑵ 精神疾患 ( 機 能障害 ) の状態の確認 ⑶ 能力障害の状態の確認 ⑷ 精神障害の程度の総合判定という順 を追って行われる 障害の状態の判定に当たっての障害等級の判定基準を

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

社会保険審査会裁決集平成27年版

障害について、用語解説

 

<4D F736F F F696E74202D AAE90AC94C5817A835F C581698FE39E8A90E690B6816A2E >

85.d 世代別うつ病の特徴を以下に示す ( 小児期 ) 自分の気持ちをうまく言葉で説明できないため 身体症状や行動面の症状のほうが目立つという特徴がある また 軽症うつ病の場合が多く 一見すると うつ病らしく見えない ケースも少なくないので 注意が必要 ( 思春期 青年期 ) 憂鬱感や自責的な傾向

診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準

A. 思春期 3 表 2 PMS の診断基準 (ACOG による ) PMS 2 30 PMS 7 PMS premenstrual dyspholic disorderpmdd DSM PMDD PMS premenstrual exacerbatio


のもの 7 発達障害によるものにあっては その主症状とその他の精神神経症状が高度のもの 8 その他の精神疾患によるものにあっては 上記の 1 ~ 7 に準ずるもの 2 級 1 統合失調症によるものにあっては ( 精神障 残遺状態又は病状があるため 人害であっ格変化 思考障害 その他の妄想幻て 日常生

ICD-11 β draft の訳について ( 要点のみ ) ICD-11 β draft の依存領域の全体的翻訳は別添資料 2 をご覧ください この資料 1 で は 先生方のご意見をいただきたいポイントを 7 項目にしぼって記載しています 1. 大項目について ICD-11 β draft では

Transcription:

Lecture1 統合失調症 統合失調症の概要 青年期に主に発生し長期間にわたって 思考や行動などを目的に沿って行う能力が低下し 幻覚 妄想 奇異な行動などの症候がみられる疾患である 原因は明らかにされていないが ストレスへの脆弱性やドパミンの関与が示唆されている 症状は前駆症状を経て陽性症状と陰性症状が起こる 生涯有病率は 1% と言われており性差はない 発症のピークは男性で 20 歳 女性で 30 歳であり女性では 40 歳以降にもピークがある 発症の仕組みはいまだ不明であるが 発症しやすい素質と環境などの心理学的な因子がかさなって発病すると考えられている ストレス脆弱性仮説は自分の対応力を超えるストレスを受けた場合に発症が起こるという考えで 同じ程度のストレスでもより脆弱であるほうが精神症状が現れやすくなる 一方 脳内神経伝達物質の異常としてドパミン仮説が多く支持されているが それはドパミン受容体遮断薬が効果を示すことや アンフェタミンなどのドパミン作動薬が幻覚や妄想などの統合失調症様作用を示すこと 脳機能の研究により線条体からのドパミン放出が増加していることが根拠となっている 診断 診断にはアメリカ精神医学会による基準 (DSM-Ⅳ) や WHO の基準 IDC-10 が使用される 以下にアメリカ精神医学会による基準を示す (DSM-Ⅳ) A B C D E F 特徴的症状 : 以下のうち 2 つ以上を示す 各々は 1 ヶ月の期間 ( 治療が成功した場合はより短い ) ほとんどいつも存在する (1) 妄想 (2) 幻覚 (3) 解体した会話 (4) ひどく解体した または緊張性の行動 (5) 陰性症状すなわち感情の平板化 思考の貧困 または意欲の欠如妄想が奇異なものであったり 幻聴が患者の行動や思考を逐一説明するかまたは 2 つ以上の声が互いに会話しているものであるときには 基準 A の症状一つを満たすだけでよい 社会的または職業的機能の低下 障害の持続が少なくとも 6 ヶ月間存在する 分裂感情と気分障害の除外薬物乱用や一般身体疾患の除外 自閉性障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば 1 ヶ月以上 ( 治療が成功し場合はより短い ) 存在した場合に診断する 症状 前駆症状 神経衰弱状態や強迫などの神経症症状 抑うつが起こり登校拒否や欠勤など社会への適応不足が起きる 陽性症状 (C) 2017 NIHON CHOUZAI Co.,Ltd. 1

陽性症状には他人から危害を加えられると感じる被害妄想や自己を過大に評価する誇大妄想などの思考内容の障害 文法的に誤った発言や頻繁に会話が脱線するなどの思考過程の障害 実在しない知覚情報を感じる幻覚や幻聴などの知覚の異常がある 陰性症状 陰性症状は刺激に対する感受性が低下し無関心や喜怒哀楽の感情が鈍くなる感情の障害 自発性の低下や社会的引きこもりなどの意欲の障害などがある 分類 発生や症状の特徴などによりいくつかの亜型に分類される 妄想型 最も一般的な型であり 妄想を主体として幻覚 特に幻聴を伴う 陰性症状は顕著ではない 破瓜型 陰性症状が特徴的であり 感情の鈍麻 意識低下が起こるほか 思考障害なども見られる 妄想や幻聴は一時的であることが多い 緊張型 精神興奮 軽度の意識障害などが起こる カタレプシーが起こる場合がある Lecture2 気分障害 気分障害の概要 気分障害は文字通り通常の気分が障害される疾患であり うつ病相のみを示す単極性うつ病と躁病相と交互に繰り返す双極性障害 ( 躁うつ病 ) がある うつ病の生涯発生率は 15% と非常に高く 男性に比べると女性が特に高いといわれている (C) 2017 NIHON CHOUZAI Co.,Ltd. 2

発症の仕組みは不明であるが うつ病の発症には環境要因である周囲の心理的なサポートの不足とストレスが直接の引き金になる ストレスに対応する適応能力は遺伝因子や環境因子が関与しており そのストレス応答の機構にはセロトニンや視床下部が関与している 双極性障害では比較的遺伝因子の影響が大きいとされており 細胞のシグナル伝達を介した神経の障害が考えられている うつ病 うつ病の診断はアメリカ精神医学会の作成した基準 (DSM-Ⅳ) ではうつ病の診断で確認する項目が 9 つあり 抑うつ気分あるいは興味の低下が必須の項目となっている また 特に不眠を認めることが多く うつ病患者の 90% 以上が何らかの不眠症状を訴えている 1 その人自身あるいは他者の観察による抑うつ気分 2 興味 喜びの著しい減退 3 著しい体重減少あるいは増加 4 不眠または睡眠多寡 5 精神運動性の焦燥または制止 ( イライラや動きが少ない ) 6 易疲労性 気力の減退 7 無価値観または過剰 不適切な罪悪感 8 集中力の減退 決断困難 9 自殺企図 以上のうち 1 または 2 を含む 5 つ以上の項目が 2 週間以上存在する うつ病相の診断基準 (DSM-Ⅳ) より 双極性障害 ( 躁うつ病 ) 双極性障害は典型的な躁病相を伴うものと 軽度な躁病相を伴うものに分かれる 生涯有病率は前者で 1% 後者でも 2~3% 前後で高くは無いが再発率が高く慢性の経緯をたどることが多い 1 自尊心の肥大 または誇大 2 睡眠欲求の減少 3 普段よりも多弁であるか 会話し続けようとする心迫 4 観念奔逸 思考の競合 5 注意転導性の亢進 6 活動の増加 精神運動性の焦燥 7 無謀な行為 気分の高揚 開放的または易怒的気分が一週間以上続き 上記の 3 項目を満たす 躁病相の診断基準 (DSM-Ⅳ) より Lecture3 神経症 心身症 神経症 心身症の概要 心理的 社会環境的な要因が原因となる心因性の精神障害の中で 異常な不安を呈するものを神経症と呼び 不安そのものが主体であれば不安神経症 特定の状況などに対する恐怖であれば恐怖症 強迫観念などであれば強迫神経症と呼び 不安などの精神症状よりも潰瘍や血圧上昇など身体的な障害が主に現れる場合を心身症とよぶ 最近では原因から病名の診断をつけるのではなく状態 症状から診断をする傾向にあり 不安障害 パニッ (C) 2017 NIHON CHOUZAI Co.,Ltd. 3

ク障害 (PD) 強迫性障害 外傷後ストレス障害 (PTSD) などの分類がされている 原因は不明であるが 脳内の海馬や前頭前野など不安の感情が関わる分野に機能の異常があることが指摘されている 臨床的に使用される薬剤などから神経伝達物質はノルアドレナリン セロトニン ドパミン γ- アミノ酪酸 (GABA) などが関わっていると考えられている 症状 状態 不安障害 不安や悩みが毎日続きうまくコントロールできない状態が 6 ヶ月以上続き 心配の内容はごく一般的で仕事 金銭 健康などに関することで 妥当と見られる範囲を超えて不安が続く 従来の不安神経症に相当する パニック障害 (PD) 身体症状を伴う 非常に強い不安が急に発生する発作を起こし 動悸 心悸亢進 発汗 ふるえ 息苦しさ 胸痛 吐き気 眩暈 恐怖などが突然現れ 10 分以内に最高潮に達する 強迫性障害 強迫観念 つまり自分でも変だと思いながら感じる不安や不快感を感じ それを避けようとする行動 ( 強迫行為 ) を行う状態 またはそのどちらかを持つ状態であり 強迫行為には 手の汚れが気になり何度もあらう 鍵やガスの元栓を閉め忘れた気がして何度も確認をする などがある 外傷後ストレス障害 (PTSD) 生命の危機を感じるような出来事に直面あるいは体験 目撃し 非常に強い恐怖や無力感を感じることによって引き起こされる障害で 事後にそのときの出来事を繰り返し擬似体験する状態 Lecture4 不眠症 不眠症の概要 身体症状や精神症状など様々な原因により不眠の症状をきたすことがあるが 一過性であれば積極的な治療の必要は無い しかし 不眠症状が長期に及び身体への影響が出ると 日常生活や就労に支障を来たし さらに また眠れないのではないか? このまま眠れなかったらどうしよう? などさらに不眠症状を悪化させる不安を生じ慢性化を起こすことがある 不眠症の要因は様々であり一般に多数の要因で起こることが多く 原因を多面的に評価することが必要である 不眠を比較的起こしやすい不安や抑うつなどの性格や元来の寝つきの悪さ 40 歳を超えると見られる加齢の影響など比較的大きく変動しない基礎的要因に加え 一過性であるストレス 旅行などの促進的要因が加わり不眠を起こす 促進的な要因がすぐに取り除かれば不眠症状は改善するが 持続した不眠症状により不眠症状が続くと不眠に対する過剰なこだわりや不安などが生じ永続的要因となる 不眠症のタイプ 不眠症のタイプはいくつかの種類に分けることができるが 最も多いのは寝つきの悪い 入眠困難 である 中途覚醒 比較的他のタイプと合併することが多いが 単独の場合は睡眠時無呼吸症候群を 夜間頻尿を伴う (C) 2017 NIHON CHOUZAI Co.,Ltd. 4

場合には前立腺肥大や水分の過剰摂取を疑う 早朝覚醒 は高齢者で生理的に起こる場合も多いが うつ病でも生じることがある 治療 薬物療法では患者の様々な要因などに関わらす不眠状態を解消することができるため一般に非薬物療法よりも選択される事が多く 治療にはベンゾジアゼピン系 非ベンゾジアゼピン系 場合によってはバルビツール系の薬剤を使用する 非薬物療法は患者の生活習慣などを改善することにより不眠症自体を治療することが可能であり 理想的であるが 有効性や時間がかかることが問題である うつ病や適応障害など他の疾患の症状として不眠がある場合は併せて治療を行う (C) 2017 NIHON CHOUZAI Co.,Ltd. 5