大型放射光施設の現状と高度化 図6 摸擬信号によるPDアンプ系のレスポンス また XFELのコミッショニングプロセス初期において 自発光やアラインメントアンジュレータ光をPINフォトダ イオードで直接検出する場合は 103光子/パルスという 微弱な光を扱うことが要求される さらに施設が大きいた め 信号を長距離伝送しなくてはならない 上記測定を可能とするシステム構築のため 1 6桁の 広ダイナミックレンジ電荷有感型アンプと波形整形による SN比の改善及び長距離伝送 2 パルス形状から出力電 荷量をリアルタイムに計算するADC変換系 の2つの開 発項目を定めた 図6に示すように 開発したアンプ系は パルス入射から33 μsにおいて 各ゲインで同様の整形波 形を出力することが確認された また計測波形からの電荷 の算出は このアンプ系の伝達関数を用いたフィッティン 図7 a 旧加速器安全インターロックの概略図 電子銃 GUN とRF電源に許可を与えるインターロックシステムと そ れを統括するモードインターロックから成る インター ロック間で複雑な接続となっている b 更新後の加速 器安全インターロックシステムの概略図 エリア単位の インターロック Li, Sy, SR, L3, NS と電子銃 GUN の許可を司るインターロックから成る インターロック 間の接続を大幅に単純化した グを行うアルゴリズムをADC上のFPGAに組み込むこと で実現する予定である ロックを動作させる方式とした これにより 施設単位で 1-3 のメンテナンス性が向上し さらに 加速器施設の増設に インターロック系 インターロックチームは2010年度夏に 加速器インター 柔軟に対応できるようになった 施工を 2010年度夏期点 ロックの高度化を行い その構造を大きく改良した ほか 検調整期間に完了して 全て動作検査も完了した 秋以降 にも 入退管理システム ビームラインインターロックシ に新システムで運用を始め 2010年度内は支障無く運転が ステムの管理と高度化を行った 継続できた 1-3-1 1-3-2 加速器安全インターロック 入退室管理システム 2010年度は大きなトラブルも無く順調に稼働した また 加速器安全インターロックに対して 運転の安定化やメ ンテナンスの効率化などを行うために 2010年度夏に大幅 安全管理室からの要望があり 管理区域内に滞在している な改良を行った 新しいインターロックは エリア管理 人数をマップ上で一覧表示する機能を追加した という考え方で動作する 図7 今までは 各エリアへの ビーム輸送運転と単独エリア蓄積運転の組み合わせ 運転 1-3-3 ビームラインインターロック モード をインターロックで管理する方式 運転モード 全てのビームラインインターロックシステムのハードウ 管理 を行っており 運転モードに対応する運転のシーケ ェアメンテナンスを行った ユーザーが使用するシャッタ ンスがインターロックのロジックに組み込まれていた し ー操作キーを交換し グラフィックパネルを約20式交換し かし 加速器施設や運転方法が増えるにつれて 組み合わ た また インターロックで使用していたケーブル 架橋 せの総数が急激に増えていくため この方式では限界があ ポリエチレン製 に 紫外線による劣化を発見した 特に った 新たに導入した エリア管理 では 加速器運転の 白色のケーブル 劣化部を切除して 対策を施したケー 組み合わせではなく 加速器施設単位で独立してインター ブルに交換するなどの対策を行った ソフトウェアメンテ 156
大型放射光施設の現状と高度化 るシリコンセンサーの標準的な厚さは320 μmで 吸収に X線が生成する大きな電荷量の測定のための利得切り替え よるX線検出効率は20 kevで27% 30 kevでは9%程度で 機能 下限のみでなく上限のエネルギーを弁別できるとい あり 更なる高度化として検出効率の向上が求められてい う機能を新たに搭載した 2010年度はSP8-01テストボード た 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 を用いてこれらの性能に関する詳細な評価を行い 高利得 の技術協力を受け SPring-8が世界に先駆けて放射光実験 モードでは15 40 kev 低利得モードでは30 100 kevに での実用化を目指してCdTeピクセル検出器 CdTeスト 渡り高いエネルギー線形特性が得られていることを実証し リップ検出器開発を行っている 共通方針として 高コン た 図2 トラストと高感度を兼ね備えた性能を達成すべく素子厚は SP8-01プロトタイプにより要求性能が満たされているこ 500 μmとした これにより50 kevまでほぼ100% 100 kev とが確認できたのを受けて 2010年度は ピクセル数を でも約45%の検出効率が達成できる 20 50に拡大するとともに 隙間なく並べてより広視野が 得られるように設計したSP8-02集積回路の製作を行った 2-4-1 CdTeピクセル検出器 2011年度以降 SP8-02シングルチップ型からマルチチップ ピクセル検出器開発の3要素には 碁盤の目状に電極を アレイ化したピクセルセンサー開発 各画素の電荷信号を 型へと拡張していき 最終的にはPILATUS検出器規模の 大面積検出器の製作を目指している 並列処理する集積回路開発 及び センサーの各電極と読 み出し回路のバッドを接合させるフリップチップ実装技術 2-4-2 CdTeストリップ検出器 開発がある 特にセンサーの性能を劣化させずに実装する MYTHENは1次元型ではあるがストリップピッチが には電子部品を実装する民生技術をそのまま用いることは 50 μmと高い位置分解能が得られる利点があり粉末x線回 できず 独自のノウハウが必要であり 最もハードルの高 折などでの利用が広がってきているが PILATUSと同様 い技術である に現在のシリコンセンサーを用いたタイプの検出効率の向 SPring-8では 実装技術にCdTeセンサー用に開発された 上が課題となっている ストリップ検出器開発の3要素も 金スタットバンプボンディング法を用い この実装法に適 ピクセル検出器になぞって考えることができるが センサ 合したピクセルセンサー及び読み出し集積回路を独自に開 ーと読み出し集積回路の実装にはワイヤーボンディングが 発している これまで2008年度にプロトタイプ検出器SP8- 用いられる点で技術的に異なる シリコンセンサーの場合 01 ピクセルサイズ200μm 200μm ピクセル数20 20 は比較的実装が容易であるが CdTeはもろく割れやすい 用の読み出し集積回路のシミュレーション及びレイアウト ためワイヤーボンディング法では製作が難しいという問題 設計 2009年度には読み出し集積回路及びCdTeピクセル がある SPring-8では CdTeピクセル検出器の実装方法を応用 センサーの実製作とセラミックパッケージへの実装を行っ し 先ずインターポーザ セラミック或いはガラス基板 た SP8-01とPILATUSの読み出し集積回路は 各ピクセル にCdTeストリップセンサーを金スタットバンプボンディ にプレアンプ 波形整形アンプ コンパレータ 20ビットカ ング法により接合し 次にインターポーザと読み出し集積 ウンターが搭載されているという基本設計は同じである 回路をワイヤーボンディングで接合することで この問題 さらに 正負両極性の電荷の入力への対応 高エネルギー を克服している 図3は MYTHENモジュールコントロ 図2 入射X線のエネルギーとコンパレータの閾値をスキャンして求めた閾値電圧との関係 159