今月の話題 消費増税 8% 時の住宅ロー ン減税 すまい給付金 Q&A 消費増税を巡っては 今秋に最終判断するという条件付きながらも 14 年 4 月には 8% に引き上げることになっている 住宅は消費税が上がる前に買うべきか 上がった後に買うべきか迷っているお客さまも少なくない中 消費増税による負担増や住宅ローン減税の拡充 現金給付の購入支援策などについて 相談があった場合には 的確な回答ができるようにしておきたい 一般社団法人金融検定協会試験部藤井耕一 1 消費税の引上げ Q 消費税増税のスケジュールはどうなっていますか また 来年 4 月の消費税 8% 引 上げは決まったことですか? A 昨年 8 月に成立した消費増税法では 14 年 4 月に 8% 15 年 10 月に 10% に引き上げることになっています スケジュールは上記のとおりですが 消費増税法には 経済状況を総合的に勘案した上で その執行停止を含め所要の措置を講ずる とした 景気条項 が盛り込まれています つまり 消費増税を判断する時点で 景気が目標の成長水準に達していない場合などは 増税凍結も含めた見直しを行うということになっています 14 年の 8% への消費増税を判断する時期は今秋ですが 安倍政権は 予定通り消費増税するかどうかを判断する際の参考にするため 有識者からの意見聴取を今月 26 日から 9 月 2 日まで実施し その後安倍首相が自ら判断するとしています 現状 自民党の中でも 8% 引上げを予定通り実施すべきであるという意見に対して デフレ脱却を狙うアベノミクスに悪影響があるとして 実施を先送りすべきとする意見 増 1
税幅を 1% ずつ小刻みに引き上げるべきであるといった意見も浮上しており 予定通り引上げが実施されるかは 不透明な状況です Q 消費税増税で住宅取得時の税負担は どのくらい増加しますか A そもそも住宅購入にかかる消費税は 土地にはかからず新築物件なら建物部分のみです 仮に図表 1の モデル のように 建物が 2,500 万円の住宅を購入した場合 消費税が 8% になる段階での税負担の増加は 125 万円から 200 万円へと単純計算では 75 万円 消費税が 10% となると 200 万円から 250 万円へとさらに 50 万円のアップとなります 図表 1 住宅取得時の税負担 モデル 建物価格:2,500 万円 土地価格:2,000 万円 ローン借入額:2,500 万円 ( うち建物分 :1,500 万円 ) 消費税率 5% の時 8% の時 10% の時消費税 125 万円 200 万円 250 万円取得時税負担合計 152 万円 227 万円 277 万円 保有税 ( 固定資産税等 ) 他の流通税( 不動産取得税 印紙税 登録免許税 ) を加えた負担額 ( 出所 ) 平成 25 年度国土交通省税制改正要望について ( 国土交通省 ; 平成 24 年 10 月 23 日 ) より なお 中古住宅の売買については 事業者が行った資産の譲渡等には ( 中略 ) 消費税を課する とされており 事業者が住宅を買い取って個人に売る 買取再販 は課税対象となりますが 売主が事業者ではない個人間の売買は非課税です Q 予定通り増税となった場合 14 年 4 月以降に引き渡される住宅は すべて税率引き 上げ後の 8% の税率が適用されるのですか A 消費税の額は 引渡し時点の税率により決定します 住宅は契約から引渡しまで長期間を要する場合が多く 例えば注文住宅であれば数カ月かかるのが通常です 一方で 引渡し時期により消費税率が変わるとなると 安心して契約を締結することができません このため 住宅については 半年前の指定日の前日 (8% 引上げ時は 13 年 9 月 30 日 ) までに契約したものについては 仮に引渡しが税率引上げの基準日以降になっても 引上げ前の税率を適用することとされています また 請負契約だけでなく マンション等の売買契約でも 注文者が壁の色またはドアの形状等について特別の注文を付すことができることとなっている場合には 同様の経過措置が適用されます 2
2 住宅ローン減税などの税制拡充 Q 消費税増税により 住宅ローン減税制度はどのように変わりますか A 高額消費である住宅については 増税の影響が大きいために 減税措置と給付金で増 税の負担を軽減することが決まっています 減税措置の中心となるのが 住宅ローン減税 制度の拡充です 住宅ローン減税制度は 住宅ローンを借りて住宅を購入する場合に 購入者の金利負担 の軽減を図るための制度です 毎年末の住宅ローン残高の 1% が 10 年間にわたり所得税の額 から控除されます ( ただし 年間に控除できる限度額があります ) また 所得税からは控 除しきれない場合には 住民税からも一部控除されます この住宅ローン減税制度は 14 年 4 月からの消費税率の引上げにあわせて 大幅に拡充されることになっています すなわち 住宅ローン減税は 13 年末までの入居が減税の対象でしたが これを 17 年末 まで 4 年間延長します また 現行の制度では 13 年に入居する人で 住宅ローン残高が 2,000 万円以上の人は 年間 20 万円ずつ (10 年間で最大 200 万円 ) 減税される仕組みでし たが これを拡大し ローン残高が 4,000 万円以上の人は 年間 40 万円ずつ (10 年間で最 大 400 万円 ) 減税されるようになります ( 図表 2 3 参照 ) 図表 2 住宅ローン減税制度の拡充 現行制度 ( 消費税率 5%) の場合 消費税率 8% または 10% の場合 借入限度額 控除率控除期間 最大控除額 ( 通算 ) 借入限度額 控除率控除期間 最大控除額 ( 通算 ) 2,000 万円 (3,000 万円 ) 1.0% 10 年間 200 万円 (300 万円 ) 4,000 万円 (5,000 万円 ) 1.0% 10 年間 400 万円 (500 万円 ) ( ) 内は長期優良住宅 低炭素住宅の場合 図表 3 現行の住宅ローン控除制度 ( 一般の住宅の場合 ) 居住年 借入金の年末残高の限 控除期間 控除率 最高 合計最高控除額 度額 2009 年 5,000 万円 10 年 1.0% 50 万円 500 万円 2010 年 5,000 万円 10 年 1.0% 50 万円 500 万円 2011 年 4,000 万円 10 年 1.0% 40 万円 400 万円 2012 年 3,000 万円 10 年 1.0% 30 万円 300 万円 2013 年 2,000 万円 10 年 1.0% 20 万円 200 万円 2014 年 1~3 月 2,000 万円 10 年 1.0% 20 万円 200 万円 2 2014 年 4 月 ~2017 年 12 月 ( 1) 4,000 万円 10 年 1.0% 40 万円 400 万円 2 3
( 1)14 年 4 月以降でも経過措置により 5% の消費税率が適用される場合や消費税が非課税とされている中古住宅の個人間売買などは 14 年 3 月までの措置を適用 ( 2) 長期優良住宅 低炭素住宅の場合はそれぞれ 300 万円 (~14 年 3 月 ) 500 万円 (14 年 4 月 ~17 年 ) 消費税率の引上げは 前述のとおり 14 年 4 月に 8% 15 年 10 月に 10% と 2 段階に分けて行われる予定ですが 住宅ローン減税は 14 年 4 月から 17 年末まで同じ拡充内容となっています ただし 所得税の納税額が限度となりますので 所得税から控除しきれない場合は 翌年の住民税からも控除できることになっています こちらも 消費税が8% または 10% が適用された場合は 控除枠が最高で年間 9.75 万円から 13.65 万円に拡大されることになっています < 投資型減税 > なお ローンを利用せずに 自己資金のみで取得する場合 住宅ローン減税は利用できません そこで 耐久性や省エネルギー性に優れた住宅の場合には 自己資金のみで取得する場合にも所得税が控除される制度として 投資型減税制度があります この制度についても 消費税率の引上げを踏まえて拡充されています 具体的には 所管行政庁の認定を受けた長期優良住宅に加えて 新たに所管行政庁の認定を受けた低炭素住宅が対象になります 所得税からの控除は これらの住宅の性能強化に必要な 標準的な掛かり増し費用が対象となります この掛かり増し費用についても見直し 拡充が行われます 掛かり増し費用 ( m2当たり ) 床面積 ( m2 ) 10%= 控除額 ( 但し 限度額あり ) 3 すまい給付金 Q 住宅ローン控除以外にも 現金給付の制度もあると聞きましたが A 収入が少ないなどで所得税や住民税の納税額が少ない人は 所得税と住民税から控除しても控除可能額を使い切れない場合が考えられます これらを考慮して 別途現金給付を設けることになっていましたが このたび すまい給付金 という名称で詳細が明らかになりました すなわち すまい給付金制度は 消費税率引上げによる住宅取得者の負担をかなりの程度緩和するために導入を予定している制度です 住宅ローン減税は 支払っている所得税等から控除する仕組みであるため 収入が低いほどその効果が小さくなります すまい給付金制度は 住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して 4
住宅ローン減税とあわせて消費税率引上げによる負担の軽減をはかるものです このため 収入によって給付額が変わる仕組みとなっています Q すまい給付金の給付額は いくらですか A すまい給付金は 収入によって住宅ローン減税の負担軽減効果が及びにくい人を対象とするものですので 対象者の収入に上限があるとともに 住宅ローンを利用せず現金で購入した場合も 一定の要件を満たせば 給付を受けることができます 給付額は 消費税率及び収入に応じ以下のとおりです (1) 消費税率 8% の時収入額の目安 給付額年収 425 万円以下 30 万円年収 425 万円超 ~475 万円以下 20 万円年収 475 万円超 ~510 万円以下 10 万円 (2) 消費税率 10% の時収入額の目安 年収 450 万円以下年収 450 万円超 ~525 万円以下年収 525 万円超 ~600 万円以下年収 600 万円超 ~675 万円以下年収 675 万円超 ~775 万円以下 給付額 50 万円 40 万円 30 万円 20 万円 10 万円 収入額の目安は 扶養対象となる家族が 1 人 ( 専業主婦 16 歳以上の子供など ) の場合をモデルに試算した結果です Q 住まい給付金の対象となる住宅は A 前述したように 住宅ローンを利用せず 現金で購入した場合にも 一定の条件を満たせば給付が受けられるようになっており また 給付が受けられる条件としては 住宅ローンを利用するか現金で購入したか 新築住宅か中古住宅かによって 条件が異なります すなわち 給付対象は 自己の居住の用に供するために住宅を新築もしくは新築住宅を取得又は中古住宅を取得する者で 住宅の種類及び取得方法に応じ以下のとおりとします (1) 住宅を新築又は新築住宅を取得する者 1 住宅ローン利用者の要件 5
以下に該当する住宅 床面積 50 m2以上の住宅 工事中の検査により一定の品質が確認された住宅 2 現金購入者の追加要件上記 1に加え以下に該当する住宅とし 50 歳以上で 650 万円以下の収入額 ( 目安 ) の者が取得する場合に限ります 省エネルギー性に優れた住宅など一定の性能を満たす住宅 (2) 中古住宅を取得する者 1 住宅ローン者の要件以下に該当する住宅 床面積 50 m2以上の住宅 住宅売買時等に検査により品質が確認された住宅 2 現金購入の場合上記 1に加え 50 歳以上で 650 万円以下の収入額 ( 目安 ) の者が取得する場合に限ります 以上 6