<4D F736F F D A834A BA81458DE C817A8CA48B868F5789EF975C8D658F572E646F6378>

Similar documents
結果の概要 - 利用上の主な用語 - 行動者数 過去 1 年間に該当する種類の活動を行った人 (10 歳以上 ) の数 行動者率 10 歳以上人口に占める行動者数の割合 (%) 平均行動日数 行動者について平均した過去 1 年間の行動日数 - 利用上の注意 - 1 ポイント差, 構成比等の比率は,

統計トピックスNo.105 統計からみた文化・芸術活動-「文化の日」にちなんで-

平成29年版高齢社会白書(全体版)

資料 4 明石市の人口動向のポイント 平成 27 年中の人口の動きと近年の推移 参考資料 1: 人口の動き ( 平成 27 年中の人口動態 ) 参照 ⑴ 総人口 ( 参考資料 1:P.1 P.12~13) 明石市の総人口は平成 27 年 10 月 1 日現在で 293,509 人 POINT 総人口

高齢社会は危機かチャンスか

シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ

第 2 章高齢者を取り巻く現状 1 人口の推移 ( 文章は更新予定 ) 本市の総人口は 今後 ほぼ横ばいで推移する見込みです 高齢者数は 増加基調で推移し 2025 年には 41,621 人 高齢化率は 22.0% となる見込みです 特に 平成 27 年以降は 後期高齢者数が大幅に増加する見通しです

平成27年版高齢社会白書(全体版)

nenkin_2016

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万

1 現在最も盛んなスポーツ 男女共にウォーキング 軽い体操とボウリングをした人の割合が高い 歳以上の人について 過去 1 年間 ( 平成 22 年 月 日 ~23 年 月 19 日 ) に何らかの種類のスポーツを行った人の割合 ( 行動者率 ) をみると 男性が 67.9% 女性が 8.3% となっ

平成28年版高齢社会白書(概要版)

平成30年版高齢社会白書(全体版)

Ⅰ 調査の概要 1. 調査の目的 本調査は 今後の公的年金制度について議論を行うにあたって 自営業者 被用者 非就業者を通じた横断的な所得に関する実態を総合的に把握し その議論に資する基礎資料を得ることを目的とする なお 本調査は 平成 22 年公的年金加入状況等調査 の特別調査として 当該調査の調

<93FA967B926E907D835A E815B97705F8D8096DA88EA9797>

01 公的年金の受給状況

Microsoft Word - meti-report

<93FA967B926E907D835A E815B97705F8D8096DA88EA9797>

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

表紙

質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業

統計トピックスNo.96 登山・ハイキングの状況 -「山の日」にちなんで-

Microsoft Word - 概要.doc

次に 母親の年齢別 出生順位別の出生数をみていきましょう 図 2-1は母親の年齢別に第 1 子出生数をみるグラフです 第 1 子の出生数は20 年間で1,951 人 (34.6%) 減少しています 特に平成 18 年から平成 28 年にかけて減少率が大きく 年齢別に見ると 20~24 歳で44.8%

平成27年国勢調査世帯構造等基本集計結果の概要

b. 世帯主年齢階級別 負担率 図表 II- 6-4 墨田ブロックの世帯主年齢階級別 平均負担率 図表 II- 6-5 墨田ブロックの世帯主年齢階級別 負担率の分布 合計 5% 未満 % 以上 1% 未満

「健康寿命」の伸長には若い頃からの健康改善が重要~2012年「健康寿命」の公表について考える

Ⅲ 結果の概要 1. シングル マザー は 108 万人我が国の 2010 年における シングル マザー の総数は 108 万 2 千人となっており 100 万人を大きく超えている これを世帯の区分別にみると 母子世帯 の母が 75 万 6 千人 ( 率にして 69.9%) 及び 他の世帯員がいる世

第28回介護福祉士国家試験 試験問題「社会の理解」

スライド 1

人口動態から見た2025年問題

表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

「高齢者の日常生活に関する意識調査」結果(概要) 3

質問 1 何歳から 長生き だと思いますか? 男性 女性ともに 80 歳 がトップ ( 合計 :42.3% 男性 :43.2% 女性 41.3%) 平均すると 男性が 81.7 歳 女性が 83.0 歳 と女性の方がより高年齢を 長生き と思うという 傾向があり 女性の 5 人に 1 人 (20.8

2 ボランティア活動 1 年間に ボランティア活動 を行った人は 9 万 1 千人, 行動者率は 26.3% で 年前より.1 ポイント上昇 また,~ の広範な年齢階級で上昇 図 2-1 ボランティア活動 の年齢階級別行動者率 ( 平成 18 年,23 年 )

平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

政策課題分析シリーズ16(付注)

親と同居の未婚者の最近の状況(2016 年)

労働力調査(詳細集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の概要

レジャー白書2018

26公表用 栃木局版(グラフあり)(最終版)

Microsoft Word - 【確定版】H27都道府県別生命表作成方法

1-1_旅行年報2015.indd

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

高齢者のボランティアなどの社会活動 に関するアンケート報告 高齢者のボランティア活動など地域における社会活動について 県民の皆さんの関心やその意識傾向を把握するために 高齢者のボランティアなどの社会活動 についてのアンケートを実施しました アンケートにご協力いただきました e- モニターの皆さまにお

平成 22 年国勢調査産業等基本集計結果 ( 神奈川県の概要 ) 平成 22 年 10 月 1 日現在で実施された 平成 22 年国勢調査 ( 以下 22 年調査 という ) の産業等基本集計結果が平成 24 年 4 月 24 日に総務省統計局から公表されました 産業等基本集計は 人口の労働力状態

フレイルのみかた

人 ) 195 年 1955 年 196 年 1965 年 197 年 1975 年 198 年 1985 年 199 年 1995 年 2 年 25 年 21 年 215 年 22 年 225 年 23 年 235 年 24 年 第 1 人口の現状分析 過去から現在に至る人口の推移を把握し その背

Microsoft Word - 28概況(所得・貯蓄)(170929)(全体版・正)

2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

2014人口学会発表資料2

Taro-①概要.jtd

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

ブック 1.indb

平成30年版高齢社会白書(概要版)

講演

Microsoft Word 「100年人生を考えようLAB」アンケート調査 ニュースレター.docx

中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

<4D F736F F D20819A8E9197BF B8BE682CC8CBB8FF382C6906C8CFB90848C >

第 7 回大阪市人口移動要因調査報告書 平成 27 年 3 月 大阪市都市計画局

PowerPoint プレゼンテーション

70-4/表1~表4.pwd

親と同居の壮年未婚者 2014 年

3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

統計トピックスNo.92急増するネットショッピングの実態を探る

平成 年 2 月 日総務省統計局 労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 24 年 10~12 月期平均 ( 速報 ) 結果の概要 1 Ⅰ 雇用者 ( 役員を除く ) 1 1 雇用形態 2 非正規の職員 従業員の内訳 Ⅱ 完全失業者 3 1 仕事につけない理由 2 失業期間 3 主な求職方法 4 前職の


H23修正版

健康寿命

相対的貧困率の動向: 2006, 2009, 2012年

63-3.ren

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

調査結果の概要 1 人口 (1) 本県の人口 平成 30(2018) 年 10 月 1 日現在の本県の総人口は 1,952,926 人 ( 男 973,794 人 女 979,132 人 ) で 平成 29(2017) 年 10 月 1 日現在に比べ9,037 人の減少 ( 男 3,309 人減少

平成14年度社会保障給付費(概要)

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

長野県の少子化の現状と課題

平成25年 国民生活基礎調査【所得票】 結果表一覧(案)

平成20年度国家公務員共済組合事業統計年報

平成 25 年 3 月 27 日 国立社会保障 人口問題研究所 ( 厚生労働省所管 ) から 日本の地域別将来推計 人口 ( 平成 25 年 3 月推計 ) が公表されました これに基づく石川県関係分の概要は次のとおりです 目次 1 石川県の将来推計人口 1 2 県内市町 地域の将来推計人口 5 3

Microsoft PowerPoint - ICS修士論文発表会資料.ppt

【資料1-1】人口ビジョン編・表紙(案) 省略版

( 人口のピークは 225 年に ) 平成 27(215) 年国勢調査による東京の人口は 1,352 万人となり 前回の平成 22(21) 年国勢調査 (1,316 万人 ) と比べ 約 36 万人増加した 一方 全国の人口は1 億 2,79 万人となり 前回の1 億 2,86 万人から約 96 万

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

目次 P. 1 調査の概要 P 年を振り返って P 年の展望 P 備えが必要 ( 経済的に不安 ) と感じること P 今 一番買いたいもの P お金の支払いをする際の決済方法 P 資産運用について

人口 世帯に関する項目 (1) 人口増加率 0.07% 指標の説明 人口増加率 とは ある期間の始めの時点の人口総数に対する 期間中の人口増加数 ( 自然増減 + 社会増減 ) の割合で 人口の変化量を総合的に表す指標として用いられる 指標の算出根拠 基礎データの資料 人口増加率 = 期間中の人口増

< 住民基本台帳に基づく > 年齢別人口 町丁別人口 人口動態 等 西暦 町田市の人口の推移 ( 各年 1 月 1 日現在 ) 年少人口 0 歳 ~14 歳の人口です 生産年齢人口 15 歳 ~64 歳の人口です 老齢人

< B689BB81458C7C8F70816A2E786C73>

第3節 重点的な取り組み

1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( : )

はじめに 当財団では これまで 212 年と 15 年に 沖縄県の 5 年先までの将来推計人口を推計してきたが その後 5 年毎に公表される国勢調査および都道府県別生命表の 215 年の統計が公表されたことから同統計のほか 人口動態調査や住民基本台帳人口移動報告などの年次統計なども直近のデータに更新

2013年7月3日

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

平成 2 8 年 6 月 平成 27 年中における行方不明者の状況 警察庁生活安全局生活安全企画課

Microsoft PowerPoint 第2回創生会議用資料(送付用)[1]

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

PowerPoint プレゼンテーション

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

Microsoft PowerPoint

Transcription:

生活行動からみる高齢者の行動特性について - 社会生活基本調査の匿名データを用いて- 財団法人統計情報研究開発センター 中村華津子 / 坂部裕美子 1. はじめに平成 22 年国勢調査の抽出速報集計結果によると 65 歳以上の高齢者の人口は 2929 万 3 千人で 総人口に占める割合 ( 高齢化率 ) は 23.1% である 昭和 25 年以前は 5% 前後で推移していた高齢化率は 昭和 60 年に 10% 平成 17 年に 20% 現在は 4 人に 1 人が高齢者という状況に近づいており 本格的な高齢社会 に突入している ( 内閣府 平成 23 年版高齢社会白書 ) 高齢者 を何歳から指すのかという明確に定義した法律はないが 一般的には 65 歳以上の人々が 高齢者 として扱われることが多い これは 1956 年に国連が 全人口に対する 65 歳以上人口の比率を 高齢化率 と定義したことから一般化したと言われている 日本においても国連による 高齢化率 の定義が支持されており 老人福祉法 ( 昭和三十八年七月十一日法律第百三十三号 ) ではその対象を 65 歳以上と定め 老齢基礎年金の受給開始年齢が 65 歳以上とされているなど 65 歳 を境界と定めている法律がいくつか存在する 参考として 日本における平均寿命の推移を確認してみると ( 図 1) 国連が 高齢化率 を定義した時期と重なる 1955 年の平均寿命は男性 63.60 歳 女性 67.75 歳であり 65 歳を大きく超えて生きる人はまさに 長寿 と位置づけられ 65 歳 という境界は違和感がなかったと言える 図 1 平均寿命の推移 ( 年齢 ) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ( 年 ) 男 女 資料 : 厚生労働省 第 20 回完全生命表 より作成

しかし それから 50 年以上が経過した現在 生活水準は向上し 医療環境や衛生環境が整った分 社会情勢も大きく変わってきた 2005 年の平均寿命を見ると 男性 78.56 歳 女性 85.52 歳と飛躍的に伸びており その結果日本人は 高齢者 と言われる年齢に達した後も 20 年近くの人生を過ごす計算になっている つまり 高齢者 には幅広い年齢が含まれており 近年では 65 歳を超えて働き続ける人も多く 健康面や収入面のばらつきを考えると 65 歳以上を一括して 高齢者 と扱うことは現状に合わなくなってきている 多様化する高齢社会を考えるに当たっては 高齢者をひとまとめにして扱うのではなく 年齢による違いを踏まえて捉える必要があると考えている そこで 社会生活基本調査の調査結果を用いて 高齢者 のふだんの生活実態を詳細に確認することで 高齢者像を読み解いていく 2. 匿名データの利用 2001 年 ( 平成 13 年 ) の社会生活基本調査の年齢別集計結果を確認すると 公表された集計表で使用されている年齢区分は 69 歳までの 5 歳階級および 70 歳以上 を一括したものとなっている 2006 年 ( 平成 18 年 ) 調査では上限が 75 歳以上 であり 調査年によって公表結果の年齢区分は異なっているが 公表結果において 70 歳以上 や 75 歳以上 で区切る年齢区分は 集計用乗率の設定の際にも使用されているものであり 70 歳以上 や 75 歳以上 をひとまとめにすること自体が問題となるわけではないが ここで求める集計を行うには この区分では不十分であると考えている そこで 統計法に基づく 公的統計の二次的利用制度 を利用して 2001 年 ( 平成 13 年 ) の社会生活基本調査の匿名データを使用した なお 2001 年 ( 平成 13 年 ) 調査は 利用申請を行った 2010 年 10 月時点で 匿名データとして提供されていた最新年次である 匿名データを用いることで 85 歳以上 までの区分が使用できるため 高齢者を 65 歳 ~ 74 歳 75 歳 ~84 歳 85 歳以上 の 3 区分に細分化することができ より年齢実態に適した分析をすることが可能となった なお 本稿では 老年医学 1での定義に準じて 高齢者 3 区分を以下の用語で呼ぶこととする 前期高齢者後期高齢者超高齢者 65 歳 ~74 歳 75 歳 ~84 歳 85 歳以上 また 今回の分析では生活行動調査 ( 以下 生活行動編 ) のデータを用いて 高齢者が自由時間にどのような活動をしているのかということについて考察する 生活行動編は 1 老年医学では老年期を研究対象としており 老年期における多様な具体的諸問題への対処について 高齢者を年齢 3 区分 ( 前期 後期 超高齢者 ) に区別して 健康長寿につながる老化プロセスを探る研究が進んでいる

過去 1 年間を調査対象期間とするユージュアル方式で調査されており 生活時間調査 ( 以下 生活時間編 ) のように調査日当日の行動が季節的な繁閑に影響される心配がないというのがその理由である 3. 分析結果 (1)6 分野の行動者率社会生活基本調査の生活行動編は 自由時間における 3 次活動として 6 つの分野 ( インターネット利用 学習 研究 スポーツ活動 趣味 娯楽 旅行 行楽 ボランティア活動 ) の活動状況を調査した結果である まず この 6 分野について 匿名データの集計結果を示す 図 2は 55 歳以上について年齢 5 歳階級別に集計した結果である 分野により活動状況は異なるが いずれの分野においても 年齢の上昇とともに行動者率が低くなることが分かる 特に 趣味 娯楽や旅行 行楽 スポーツ活動といった 移動を伴う行動や 体を動かすような積極的で動的な行動において 年齢が上昇するにつれて行動者率が単調に低下していくことが分かる また 前期高齢者に当たる 65 歳 69 歳 70 歳 74 歳 後期高齢者に当たる 75 歳 84 歳 は それぞれ 2 つの階級が近づいているように見える さらに 超高齢者に当たる 85 歳以上 になると 1つ若い年齢階級の 80 歳 84 歳 と比べて 行動者率が大きく下がっており ここに1つの区切りがあるように見える 図 2 自由時間における 6 分野の行動者率

ここで 先に定義した前期高齢者 (65 歳 74 歳 ) 後期高齢者(75 歳 84 歳 ) 超高齢者 (85 歳以上 ) という 3 区分の年齢設定は 行動特性を把握する上では 妥当な区切りであると判断した 社会生活基本調査では 6 分野について それぞれ詳細な種目の活動状況について調査している 以降では どの年齢においても行動者率が高い 趣味 娯楽 に焦点を当てて 高齢者の趣味 娯楽の活動状況について見ていく (2) 趣味 娯楽の行動者率平成 13 年調査では 趣味 娯楽に関する 19 種目について 活動の有無 ( しなかった / した ) と活動頻度 ( この1 年間に何日ぐらいしたか ) を調査している 図 3は 高齢者 3 区分別に集計した趣味 娯楽の種目別行動者率である 図 3 趣味 娯楽の種目別行動者率 全体的に いずれの高齢者区分においても 庭いじり等 読書 の行動者率が高くなっているが 室内や居住敷地内ででき それほど費用もかからず 比較的手軽に行いやすい趣味活動であるためと思われる これに対して 楽器の演奏 華道 茶道 の行動者率は低い これらは技術と道具を要するためコストが掛かり また日本の伝統的文化であることから敷居が高く 趣味として活動する人が限定されていると考えられる 高齢者 3 区分別に行動者率を見ていくと 庭いじり等 演劇等の鑑賞 美術鑑賞 カラオケ 日曜大工 のように 移動を伴う外出行動や体を動かす行動において 前期高齢者と超高齢者との開きが大きいことが分かる いずれの行動も その目的のために現地へ趣く 体を動かし続けるといった積極的で動的な行動である

(3) 趣味 娯楽の活動規模 (2) の行動者率については 1 年間で1 日だけ行動した人も 50 日 100 日行動した人も全て同じ 行動者 としてカウントされてしまうが その活動規模は全く異なる そこで この活動規模を捉えるために 行動者の平均行動日数を集計した ( 図 4) 全体的にどの高齢者層においても 演劇等の鑑賞 のように移動を伴う行動の活動規模は小さいが 例えば 読書 庭いじり等 テレビゲーム 手芸 といった 比較的単調な動きで 動きの少ない静的な行動に関しては 年齢が上昇するとともに 行動に費やす日数は多くなる傾向が見えてきた 図 4 趣味 娯楽の種目別活動規模 老年医学では 加齢とともに身体的機能の変化が著しくなり 特に歩行が困難になってくると言われている 後期高齢者 超高齢者になるにつれ 体が思うように動かなくなってきても 室内で座って気軽に楽しめる趣味 娯楽活動が支持されているものと考えられる ここで 行動者率 ( 図 3) と活動規模 ( 図 4) の関係を見るため それぞれの集計結果を散布図に落としたものが図 5である X 軸は活動規模を表す平均行動日数で Y 軸は行動者率である 図 5について 趣味 娯楽の種目ごとに高齢者 3 区分を結んでみていくと 次のような傾向が確認できた いずれの行動も 年齢の上昇とともに行動者率は低下していく ( 下向きに移動 ) 前期高齢者は 演劇等の鑑賞 などの移動を伴う動的な行動の行動者率は相対的に高いが それ自体の活動規模は小さい ( 左下に集約 ) 後期高齢者 超高齢者になるにつれ 庭いじり等 読書 手芸 といった静的な行動の活動規模が大きくなる ( 右下へ移動 )

図 5 趣味 娯楽の種目別活動規模 (4) 行動種目数さらに 高齢者の活動に対するアプローチを確認するため 趣味 娯楽の 19 種目に関して 1 年間に何種類の行動をしているかカウントしたものが図 6である 図 6 趣味 娯楽の行動種目数 前期高齢者の若い世代では 4 種類 5 種類以上の活動が 4 割近くに上り 特に女性で顕著であった 複数種類の活動へのアプローチという状況から 前期高齢者は多趣味で 活動的といった状況が窺える 一方 超高齢者では 1 種類の活動が約半数を占めていた

4. 高齢者の行動特性と高齢者像ここまでで見えてきた高齢者の行動特性について 表 1に整理する 表 1 高齢者の趣味 娯楽に関する行動特性 高齢者区分行動特性高齢者像 前期高齢者 後期高齢者 超高齢者 動的な活動を行うが 活動規模は小さい 複数種類の活動を行っている 動的な活動を行う一定の層が存在 静的な活動規模が大きくなる 静的な行動の活動規模が大きい 行動種目は1 種類と少ない 活動的 多趣味活発な高齢者超高齢者への移行期活動範囲が 外から内へ 1つの事にじっくりと取り組む平静な生活 表 1のように 高齢者 3 区分に分けて集計することで 年齢による行動特性の違いが見られた すなわち 前期高齢者から後期高齢者 超高齢者へ年齢の上昇とともに 行動範囲は 外から内へ 行動の多寡は 多から少へ という行動特性をとるようになり 動から静へ という高齢者像を捉えることができた 先の老年医学では 加齢による身体的機能の低下 ( 筋力などの体力低下 骨 関節などの障害 視力 聴力の低下など ) に伴った行動をとると言われており 匿名データの集計結果からもその様相を概観することができたと言える ただし 自由時間における 3 次活動の 6 分野について いずれの活動もしていない人は前期高齢者で 1 割弱 後期高齢者で 2 割強 超高齢者では約 4 割が存在している 今回の分析対象とした趣味 娯楽の種目の中には 室内でのテレビ鑑賞が含まれていないため 生活行動編データからは 自由時間における活動として 一日中テレビを見ている人 を検出することができない この状況を捉えるためには 生活時間編のデータとのリンクにより 食事などの 1 次活動 仕事や家事などの 2 次活動との関係 介護状況なども含めて考察する必要があると感じている 今後は 生活時間という観点での分析結果と合わせて 高齢者像を読み解いていくことを試みる