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Transcription:

信号交差点部における歩行者の影響を考慮した自転車滞留特性の分析 坪井慶英 嶋田喜昭 舟渡悦夫 3 正会員大同大学工学部建築学科土木 環境専攻 ( 457-853 名古屋市南区白水町 40 番地 ) -mail:y-tsuboi@daido-it.ac.jp 正会員大同大学工学部建築学科土木 環境専攻 ( 457-853 名古屋市南区白水町 40 番地 ) -mail:shimada@daido-it.ac.jp 3 正会員大同大学工学部経営情報学科経営情報専攻 ( 457-853 名古屋市南区白水町 40 番地 ) -mail:funa@daido-it.ac.jp 本研究は, 自転車歩行者道交差点部及び自転車道交差点部を対象として, 自転車滞留特性の分析を行い, 今後の自転車滞留空間整備のための基礎資料に資することを目的としている. ここでは名古屋市内の 種類の信号交差点部におけるビデオカメラによる撮影データを用い, 特に歩行者交通流の影響を考慮した自転車の滞留特性を分析した. 結果として, 名古屋市中区矢場町の自転車歩行者道交差点部においては, 信号待ち等で自転車のみが滞留した場合に, 横断歩道や自転車横断帯の手前から順に滞留する傾向, 歩行者の滞留が混在した場合においても同様の傾向が把握された. 名古屋市中区桜通り呉服町の自転車道交差点部 ( 自転車道と自転車歩行者道の交差点 ) においては, 自転車 歩行者の共有部分となる横断箇所での自転車の滞留と錯綜が多いことが把握された. ey Words : bicycles and pedestrians path, bicycles path, signalized intersection, waiting space. はじめに 車滞留特性に関する研究はほとんどない. 以上の認識に基づき, 本研究では自転車歩行者道同士 近年, 環境問題や健康増進に対する意識の高まり等か が交差する信号交差点部 ( 以下, 自歩道交差点部 ) およ ら自転車交通が見直され, 自転車利用者が増加している. び自転車道から接続する自転車歩行者道と自転車歩行者 しかし, その一方で自転車関連の交通事故の割合が高くなっており, 特に単路部よりも交差点部で多くの自転車関連事故が発生している ). そうした状況の中 国土交通省と警察庁による自転車 道が交差する信号交差点部 ( 以下, 自転車道交差点部 ) を対象として, 歩行者交通流との関連から自転車滞留特性の分析を行い, 今後の自転車滞留空間整備のための基礎資料に資することを目的としている. 通行環境整備モデル地区をはじめとした自転車通行空間 の整備が進められており, 単路部では自転車道や自転車. 自歩道交差点部における自転車滞留特性分析 専用通行帯等の各種整備手法により, 自転車と歩行者の通行が区分されている. しかし, 交差点部においては一 () 調査概要 般に自転車と歩行者を混在させる整備手法が採られているため, 錯綜などの危険事象も発生している. 交差点部の安全 円滑性を高めていくためには, 自転車と歩行者の通行区分や滞留位置を明確にしていくべきであると考える ). 自歩道交差点部の事例として名古屋市中区矢場町の交差点を対象に交通実態調査を行った. 調査概要を表 -, 測定区域とした矢場町交差点の北西滞留部および北東滞留部の平面図を図 -, 例として北西滞留部の測定区域の観測画像を図 -に示す. ここで, 交差点部における自転車の通行 滞留特性に関する既往研究をみると, 自転車の走行特性について分 () 調査データ収集および分析方法 析したものは多いが, 自転車の滞留特性についての分析は少ない 3,4). とりわけ歩行者交通の影響を踏まえた自転 北西滞留部を例として, 調査データ収集について説明する. 既往研究 3) でのブロック分けを参考にして, 交通

実態調査のビデオ観測データを基に交差点滞留部を 4ブロックに分割する. ブロック分けの平面詳細図を図 -4に示す. 各ブロックは, 横断歩道前 (, ブロック ) とその後ろ (C, ブロック ), 自転車横断帯前 (B, ブロック ) とその後ろ (, ブロック ) およびその他 (,,,,M,N ブロック ) である.~ ブロックについては, 自転車 台あたりの長さ, その他のブロックについては交差点滞留部の区画を考慮した. 収集するデータとして, 若宮大通りを南向きに横断するために滞留する自転車と歩行者 ( 以下, 南向き ) と大津通りを東向きに横断するために滞留する自転車と歩行者 ( 以下, 東向き ) に分けて信号サイクルごとに自転車と歩行者の滞留順序および滞留位置 (~Nブロック ) を混在でカウントする. また, 滞留した自転車と歩行者の通行動線のデータについても信号サイクルごとに収集した. なお, 北東滞留部についても同様の方法でデータを収集した. 分析フローを図 -3に示す. 収集したデータ ( 自転車のみが滞留した, 歩行者と自転車が混在して滞留した, 歩行者のみが滞留した, 歩行者も自転車も滞留しなかった ) サイクルから自転車のみが滞留したサイクルと歩行者と自転車が混在して滞留したサイクルのみ抽出する. 自転車のみが滞留したサイクルにおいて滞留順序別の自転車の滞留位置 ( 分析 a), 両サイクルにおいて歩行者滞留数別の自転車の滞留位置 ( 分析 b), 歩行者と自転車が混在して滞留したサイクルにおいて最初の滞留者 ( 車 ) 別の自転車の滞留位置 ( 分析 c) の分析を行う. (3) 滞留交通量の集計結果自転車と歩行者の滞留交通量を表 -に示す. 平休日とも午後において特に歩行者の滞留数が多いことがわかる. また, 両滞留部とも南向きにおいて歩行者の滞留割合が高く, 北東滞留部の西向きにおいてやや自転車の滞留割合が高いことがわかる. 大津り ( 自転車歩行者道 ) 30.0 3.8 表 - 矢場町交差点部の調査概要 休日 平日 0 年 5 月 7 日 ( 土 ) 0 年 6 月 5 日 ( 水 ) 調査日時 午前 (7:30~9:30) 午前 (0:00~:00) (0:00~:00) 午後 (5:00~7:00) 午後 (5:00~7:30) 調査内容 滞留する自転車 歩行者交通量とその滞留位置 滞留する自転車と歩行者の通行動線 調査方法 矢場町交差点の矢場ブリッジ ( 図 - 参照 ) からビデオカメラによる観測 図 - 北西滞留部における測定区域の観測画像 自転車の滞留位置の分析 a. 滞留順序別の滞留位置 ( 自転車のみが滞留したサイクル ) b. 歩行者滞留数別の滞留位置 c. 最初の滞留者 ( 車 ) 別の滞留位置 ( 歩行者と自転車が混在して滞留したサイクル ) 調査データ ( 滞留する自転車と歩行者の交通量と滞留位置 ) ( 滞留する自転車と歩行者の通行動線 ) e. 錯綜現象の発生位置の分析 考察 d. 滞留した自転車と歩行者の通行動線の分析 図 -3 矢場町交差点部における分析フロー 北西滞留部 北東滞留部 表 - 矢場町交差点部の滞留交通量 平日休日 平日休日 南向き 東向き 自転車 歩行者 自転車 歩行者 午前 5 8 04 06 午後 8 333 87 8 午前 74 94 95 73 午後 96 59 64 309 合計 43 37 650 76 割合 5% 75% 48% 5% 南向き 西向き 自転車 歩行者 自転車 歩行者 午前 57 86 300 89 午後 59 63 66 9 午前 0 05 7 64 午後 5 7 38 7 合計 87 58 7 46 割合 4% 76% 6% 39% 3.80 若宮大通り ( 自転車歩行者道 ).00 4.80 点字ブロック 4.0 0.50 0.50. 3.90 4.30 4.80.00.00 図 -4 参照 3.75 0m m 4m M N.80.80.80 東向き 矢場ブリッジ 観測地点 C B 南向き 図 - 矢場町交差点の平面図 図 -4 北西滞留部のブロック分けの平面詳細図

歩行者滞留数 ( 人 ) (4) 分析結果ここでは, 北西滞留部東向きの結果について示す. 東向きに滞留した信号サイクル別の歩行者数の分布を図 -5 に示す. 歩行者の滞留数が 0 人のサイクル数が最も多く, 歩行者の滞留数が多くなるほどサイクル数が減少していることがわかる. 次に, 歩行者の平均滞留数に着目すると約 3 人で標準偏差も約 3 人とややバラつきがあるものの, 分析 bにおいて平均滞留数 3 人を一つの基準として, 歩行者の滞留数別に自転車の滞留位置の把握を行った. なお, 北西滞留部南向きおよび北東滞留部 ( 西向き, 南向き ) についても分析を行った結果 同様の傾向が把握された. a) 滞留順序別の自転車の滞留位置滞留順序別の自転車の滞留位置を図 -6に示す. 台目, 台目に滞留する自転車の約 5 割が横断報道前の ブロックと自転車横断帯前のブロックに滞留しており,3 台目以降になると, その後ろのブロックとブロックやその他のブロックに滞留する割合が高くなっている. b) 歩行者滞留数別の自転車の滞留位置歩行者滞留数別の自転車の滞留位置を図 -7に示す. 歩行者滞留数の変化による自転車の滞留位置は殆ど変わらないことがわかる. ここで, 自転車の滞留位置と歩行者滞留数の関連性について χ 検定した結果, 有意差は見られなかった. 自転車の滞留位置と歩行者滞留数には関連性がないと判断する. 自転車は歩行者の滞留数に係わらずほぼ同じ位置に滞留している. c) 最初の滞留者 ( 車 ) 別の自転車の滞留位置 最初に歩行者が滞留したサイクル と 最初に自転車が滞留したサイクル の自転車の滞留位置を図 -8に示す. 自転車の滞留位置の変化は殆どないことがわかる. ここで, 最初の滞留者 ( 車 ) と自転車の滞留位置の関連性についてχ 検定した結果, 有意差は見られなかった. 自転車は最初の滞留者 ( 車 ) の違いに係わらずほぼ同じ位置に滞留している. なお, 殆どの歩行者の滞留位置は横断歩道前のブロックとその後ろの ブロックや自転車横断帯前のブロック等である. d) 滞留した自転車と歩行者の通行動線滞留した自転車と歩行者の通行動線を信号サイクルごとに分析した. 自転車のみが滞留したサイクル自転車のの通行動線から, 自由に通行して滞留していること, 歩行者と自転車が混在して滞留したサイクルの自転車の通行動線から, 通行位置による滞留位置の変化は見受けられなかった. e) 錯綜現象の発生位置 自転車と自転車, 自転車と歩行者 による錯綜が交差点滞留部のどの位置で起きているのか分析した. なお, 本研究では 他方向の自転車と歩行者, 自転車と自転車が回避行動や立ち止まった行動 を行った場合を 錯綜 と定義した. 北西滞留部での錯綜の発生位置を図 -9に示 サイクル数 滞留率 ( % ) 90 80 70 60 50 40 30 0 0 0 00% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 0% 0% 0% 4 人以上 (N=0) 3 人 (N=56) ~ 人 (N=) 0 人 (N=8) 自転車が最初に滞留したサイクルの自転車の滞留位置 (N=70) 歩行者が最初に滞留したサイクルの自転車の滞留位置 (N=99) サイクル数 53 平均.54 標準偏差.985 最小値 0 最大値 4 中央値 0 3 4 5 6 7 8 9 0 3 4 図 -5 東向きに滞留した歩行者数の分布 M 台目 (N=78) 台目 (N=49) N 3 台目 (N=8) 4 台目 (N=3) 図 -6 滞留順序別の自転車の滞留位置 5 台目以降 (N=3) MN 0% 0% 40% 60% 80% 00% 図 -7 歩行者滞留数別の自転車の滞留位置 (46) 8 (50) 4 (6) 9 (7) 9 (5) 7 6 (37) (45) 40 (8) ( 人 ) N (9) (6) 0% 0% 40% 60% 80% 00% 図 -8 最初の滞留者 ( 車 ) 別の自転車の滞留位置 図 -9 北西滞留部での錯綜の発生位置 3

す. 自転車と歩行者による錯綜が多く57 件中 件, 自転車と自転車による錯綜は57 件中 36 件である. この錯綜件数は休日の 4 時間を分析した結果である. 次にブロック別の錯綜率を図 -0に示す. 錯綜率 を 単位時間及び単位面積当たりに発生する錯綜件数 と定義した. 横断歩道前の ブロックとその後ろのCブロックおよびブロックにおいて錯綜が多く, 交差点隅角のブロックでは錯綜が少ないことがわかる. 自転車と自転車による錯綜は, 横断歩道手前の ブロックやブロックとブロック等で多いことがわかる. 3. 自転車道交差点部における自転車滞留特性分析 () 調査概要自転車道交差点部の事例として, 国土交通省と警察庁による自転車通行環境整備モデル地区に指定された名古屋市中区桜通り呉服町の交差点を対象に交通実態調査を行った. 調査概要を表 -3, 測定区域とした桜通り呉服町交差点の自転車道整備後の南西滞留部および北西滞留部の平面図を図 -3, 例として南西滞留部の測定区域の観測画像を図 -に示す. なお, 自転車道整備の主な内容は, 車道を 車線削り自転車道が整備されたこと, 交差点部付近の自転車道に青色のカラー舗装が施されたこと, 東西 ( 桜通り ) の横断歩道及び自転車横断帯が拡幅されたことである. N M ブロ ッ ク C B 自転車と自転車 自転車と歩行者 0.0 0. 0. 0.3 0.4 0.5 件 /( m h) 調査日時 調査内容 調査方法 図 -0 北西滞留部での錯綜率 表 -3 桜通り呉服町交差点部の調査概要 0 年 9 月 7 日 ( 火 ) 7:30~0:00 滞留する自転車 歩行者交通量とその滞留位置 桜通り呉服町交差点の呉服町歩道橋 ( 図 -3 参照 ) からビデオカメラによる観測 () 調査データ収集および分析方法南西滞留部を例として調査データ収集について説明する. ビデオ観測データを基に交差点滞留部を 0ブロックに分割する. ブロック分けの平面詳細図を図 -4に示す. 各ブロックの分割方法は矢場町交差点部とほぼ同様であるものの自転車道内の横断箇所について, 横断歩道前 (ブロック ), 自転車横断帯前 (Bブロック) とその他 (C, ブロック ) とする. 収集するデータとして, 呉服町通りを東向きに横断するために滞留する自転車と歩行者 ( 東向き ) と桜通りを北向きに横断するために滞留する自転車と歩行者 ( 北向き ) に分けて信号サイクルごとに自転車と歩行者の滞留順序および滞留位置 (~ ブロック ) を混在でカウントする. なお, 北西滞留部についても同様の方法でデータを収集した. 分析フローを図 - に示す. 矢場町交差点部の分析と同様に収集したデータから自転車のみが滞留したサイクルと歩行者と自転車が混在して滞留したサイクルのみ抽出する. 自転車のみが滞留したサイクルにおいて滞留順序別の自転車の滞留位置 ( 分析 a), 両サイクルにおいて歩行者滞留数別の自転車の滞留位置 ( 分析 b) と方向別の自転車の滞留位置 ( 分析 c) の分析を行う. 図 - 南西滞留部における測定区域の観測画像 調査データ ( 滞留する自転車と歩行者の交通量と滞留位置 ) 自転車の滞留位置の分析 a. 滞留順序別の滞留位置 ( 自転車のみが滞留したサイクル ) b. 歩行者滞留数別の滞留位置 c. 方向別の滞留位置 ( 歩行者と自転車が混在して滞留したサイクル ) d. 錯綜現象の発生位置の分析 考察 図 - 桜通り呉服町交差点部における分析フロー 表 -4 桜通り呉服町交差点部の滞留交通量東向き北向き滞南自転車歩行者自転車歩行者留西滞留数 39 49 5 4 部割合 44% 56% 6% 74% 東向き南向き滞北自転車歩行者自転車歩行者留西滞留数 30 4 74 55 部割合 4% 58% 57% 43% 4

. 0 0 4 9. 9 7 呉服町通り ( 自転車歩行者道 ) 6. 0 0. 8 0 4 9. 9 3 呉服町歩道橋 歩行者滞留の有無 ( 人 ). 0 0 北向き 桜通り ( 自転車道 ) B C 東向き 3. 7 0. 9 0. 0 図 - 4 参照 呉服町歩道橋 観測地点 サイクル数 0 m m 4 m 図 -4 南西滞留部のブロック分けの平面詳細図 8 6 4 0 8 6 サイクル数 9 平均 0.7 標準偏差 0.996 最小値 0 最大値 3 中央値 0 図 -3 桜通り呉服町交差点の自転車道整備後の平面図 (3) 滞留交通量の集計結果自転車と歩行者の滞留交通量を表 -4に示す. 南西滞留部の北向きにおいて歩行者の滞留数が多く, 北西滞留部の南向きにおいて自転車の滞留割合がやや高いことがわかる. (4) 分析結果ここでは, 南西滞留部 ( 東向きと北向き ) の例として東向きの結果について示す. 東向きに滞留した信号サイクル別の歩行者数の分布を図 -5に示す. 歩行者の滞留数が0 人のサイクル数が最も多く, 歩行者の滞留数が多くなるほどサイクル数が減少していることがわかる. 次に, 歩行者の滞留数に着目すると約 人で標準偏差も約 人とバラつきは少ないものの, 歩行者の滞留数が殆ど無いため, 分析 bにおいて歩行者滞留の有無別に自転車の滞留位置の把握を行う. また, 北向きに滞留した歩行者の平均滞留数は約 3 人であるものの, 東向きの自転車滞留位置と比較するために, 歩行者滞留の有無別に自転車の滞留位置の把握を行った. なお, 北西滞留部 ( 東向き, 南向き ) についても分析を行った結果 同様の傾向が把握された. a) 滞留順序別の自転車の滞留位置自転車の滞留数が全体的に少ないものの, 滞留数が増加しても東向きに滞留した自転車については自転車道内の横断箇所の ブロックとCブロックに滞留する傾向, 北向きに滞留した自転車については横断歩道の ブロックと自転車横断帯前のブロック等に滞留する傾向にあることが把握された. b) 歩行者滞留数別の自転車の滞留位置東向きに滞留した歩行者の有無別の自転車の滞留位置 η (N=4) ζ (N=7) γ (N=) β (N=) α (N=5) 4 0 歩行者滞留有 (N=5) 歩行者滞留無 (N=4) 0 3 図 -5 東向きに滞留した歩行者数の分布 C 0% 0% 40% 60% 80% 00% 図 -6 東向きに滞留した歩行者の有無別の α 自転車道を東進 β 歩道を東進 自転車の滞留位置 η 横断歩道を南進 ζ 自転車横断帯を南進 γ 自歩道を北進 ( 人 ) ε 自転車横断帯を西進 δ 横断歩道を西進 図 -7 東向きに滞留した自転車の通行方向 () C (7) 7 0% 0% 40% 60% 80% 00% () (3) 図 -8 方向別の自転車の滞留位置 (3) 5

を図 -6 に示す. 歩行者滞留の有無による自転車の滞留位置の変化は殆どないことがわかる. ここで, 自転車の滞留位置と歩行者滞留の関連性についてχ 検定した結果, 有意差は見られなかった. 自転車の滞留位置と歩行者の滞留に関連性がないと判断する. 自転車は歩行者滞留の有無に係わらずほぼ同じ位置に滞留している. なお, 各ブロックの度数が少なかったため, 自転車道内 (,B,C,) とその他 (,,,,,,) にて,χ 検定を行った. また, 北向きにおいても同様に分析し,χ 検定を行ったが, 有意差は見られなかった. c) 方向別の自転車の滞留位置東向きに滞留した自転車の通行方向を図 -7 に示す. 全部で7 つの通行方向が確認された.α,γ,ε,ζ が, 本来自転車が通行すべき位置であり, その他は違反である. 方向別の自転車の滞留位置を図 -8 に示す. 滞留数が全体的に少ないものの, 通行方向による自転車の滞留位置に違いがあることがわかる. 参考として, 南西滞留部東向きにおいて, 信号が赤の場合に滞留せずに通過した自転車 歩行者の交通量と滞留交通量の割合を図 -9に示す. 約 4 割強の自転車 歩行者が滞留せずに通過していることがわかる. なお, 北向きにおいては桜通りを横断するため, 信号が赤の場合に滞留せずに通過した自転車 歩行者は見受けられなかった. d) 錯綜現象の発生位置矢場町の交差点滞留部と同様に 自転車と自転車, 自転車と歩行者 による錯綜が発生した位置を抽出した. 南西滞留部での錯綜の発生位置を図 -0 に示す. 自転車と歩行者による錯綜は5 件中 9 件, 自転車と自転車による錯綜は 5 件中 6 件である. この錯綜件数は調査時間の 時間 30 分を分析した結果である. 次にブロック別の錯綜率を図 - に示す. 自転車道内および横断箇所の ブロックとBブロックと ブロックにおいて錯綜が多く, 特に自転車と自転車による錯綜が多いことがわかる. 4. おわりに本研究では, 歩行者の影響を考慮した信号交差点部での自転車滞留特性の調査 分析を行った. 得られた成果 知見は以下の通りである. 自歩道交差点部の自転車滞留特性としては, 信号待ち等で自転車のみが交差点部に滞留した場合, 既往研究 3) での成果と同様に横断歩道や自転車横断帯手前から順に滞留する傾向が把握された. また, 歩行者の滞留が混在した場合においても同様の傾向が把握された. 錯綜現象の発生位置の分析結果より, 横断歩道や自転車横断帯前で特に錯綜が多いことが把握された. 自転車で滞留する場合に 自転車は, 原則車道側を通行 といったルールを守り, 車道側を通行すると歩行者との錯綜が起こり, 歩 歩行者 自転車 ブロック 道側を通行すると錯綜が起こりにくいといった矛盾点も 把握された. また, 自転車道交差点部においては, 横断 箇所では自転車と歩行者を混在させるより仕方がないが, 滞留位置が特に定められていないため, 自転車道を通行 する場合に自転車道内での錯綜が多いことが把握された. 今後の課題として, 自転車道交差点部において, デー タの信頼性を高め, より詳細な分析を行う必要がある. また, 他の交差点部においても同様の調査 分析を行い 比較 検討する必要がある. 参考文献 3 ) 警察庁 P, http://www.npa.go.jp/ ) 国交省道路局 警察庁交通局 : 自転車利用環境整備ガイド ブック, 平成 9 年 0 月 滞留しない 0% 0% 40% 60% 80% 00% 3) 蓑島治ほか : 交差点における自転車の危険事象発生状況と 滞留特性の把握, 第 39 回土木計画学研究発表会, 講演集,009 4) 本田肇ほか : 交差点隅角部における自転車滞留特性に関す る一考察, 第 43 回土木計画学研究発表会, 講演集,0 9 39 滞留する 図 -9 東向きに滞留した交通量と違反交通量の割合 B 図 -0 南西滞留部での錯綜の発生位置 自転車と自転車 自転車と歩行者 0.0 0. 0. 0.3 0.4 0.5 件 /( m h) 図 - 南西滞留部での錯綜率 (? ) 6