産業トピックス

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TOPICs 世界の原油需給 by OPEC Oil Market Rerort 214 年 3 月号より 世界の原油需要 世界の原油需要 28 年 29 年 21 年 211 年前年比 212 年前年比 213 年 OPEC Oil Market Report 214 年 3 月号 前年比 28

平成14年1月20日

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2013 年 8 月 19 日号

2012 年 10 月 15 日号

北米からの原油供給量は 2011 年は前年比日量 +21 万バレル増であったが 2012 年は前年比 +158 万バレル増となり 2013 年は +130 万バレル増 2014 年は +92 万バレル増と見込まれている 北米を含めた OECD 先進諸国からの供給は 2011 年は +1 万バレル増

原油価格の動向 2019 年 2 月 株式会社三井住友銀行 コーポレート アドバイザリー本部企業調査部 本資料は 情報提供を目的に作成されたものであり 何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません 本資料は 作成日時点で弊行が一般に信頼できると思われる資料に基づいて作成されたものですが

エコノミスト便り

経済情報:日銀短観(2011年6月)の結果について.doc

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2010年における原油価格の見通しについて

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

Invesco Premia Plus Fund

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

2011 年 1 月 17 日号

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

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2016 年 メキシコペソ もとの状況と今後の 通し <メキシコペソ / 円は下落 > < 政策 利とインフレ率の推移 > メキシコペソは もとまで軟調に推移してきました しかし 原油先物価格は2016 年 2 に安値をつけて下落が続いてきた理由として 1 統領選 2メ以降 持ち直す展開

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

平成14年1月20日

スライド 1

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オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

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平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

原油高で消費者物価と家計のエネルギー負担額はどうなる?

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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原稿メモ

生活衛生関係営業の景気動向等調査 平成17年7~9月期

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

資料1

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果の平均は 残留が 44% 離脱が 40% と僅差ながら残留が離脱を上回っている ( 第 1 表 ) ただしここで 調査方法毎の平均をみると インターネットを通じたオンライン調査の結果 は 残留が 40% 離脱が 41% と拮抗状態にあるのに対し 電話調査では残留が 47% 離脱 が 38% と残留

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平成10年7月8日

関西経済レポート (2019 年 9 月 ) 令和元年 (2019 年 )9 月 30 日 ~ 輸出減少が継続 インバウンド消費はプラスの伸びを維持 ~ 足元の経済情勢と当面の見通し 関西経済は輸出 生産が斑模様であるが 内需が下支えとなり底堅く推移している 企業部門では 輸出は中国経済の減速等によ

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

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IMM 通貨先物のポジション動向 (2014 年 11 月 11 日時点 ) 米ドル買いポジションは 3 週間ぶりに縮小 2014 年 11 月 17 日 米商品先物取引委員会 (CFTC) が発表した IMM 通貨先物 1 によると 投機筋 (Non Commercial 非商業部門 ) による主

米国リート市場と米国株式市場の推移 102 ( 2015 年 12 月末 ~2016 年 2 月 12 日 ) 米国リート 米国株式 /12/ /1/6 2016/1/ /1/ /1/ /1/3

コモディティレポート

2007年12月10日 初稿

週刊原油 xlsx

第 15 表 OPEC 総会の主要決議事項 (2) ~26 ウィーン 半年毎の通常総会の開催時期を今後 6 月 11 月から3 月 9 月に変更する 現行の260 万 BDの自主減産を1999 年 6 月末まで遵守する 次回通常総会において状況が改善されていなければ価格是

MONEXグローバル個人投資家サーベイ

2017年上半期の為替相場展望

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PowerPoint プレゼンテーション

2. シリアへの軍事介入が回避された後も高値圏にとどまる原油価格 (1) シリア エジプト プレミアムの剥落 6 月末にエジプトで大統領の辞任を要求するデモが発生し 次いで内戦の続くシリアへの軍事介入が取り沙汰されたことから 原油価格は夏場に高騰した しかし 9 月上旬をピークにシリア問題を巡る緊張

MONEX 個人投資家サーベイ 2016年1月調査

金の投資資金の動き ETF は戻り場面で売られる 金 ETF の現物保有高 大口投機家の取組 =CFTC NY 金単位 : 枚 トン ドバイアメリカ南アフリカロンドンオーストラリアドル建て金 ドル / オンス 3/3 4/3 5/3 6/3 7/3 8/3 9/3 1

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

2017年第3四半期 スマートフォンのグローバル販売動向 - GfK Japan

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律の制定の背景及び概要 ( 平成 22 年 11 月 ) 資源エネルギー庁総合政策課編

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

情勢分析_中東の石油・ガス産出国をめぐる最近の動向と今後の予測

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

(Microsoft Word \214\216\215\206_\203g\203s\203b\203N1\201i2010\224N\223x\214o\215\317\214\251\222\312\202\265\201j.doc)

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

2007年10月15日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

産業トピックス

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

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今月の経済金融情勢2018年11月30日号

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

Microsoft Word - 21年度資産運用概況.doc

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2014~2016年度 東海経済見通し

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

国際エネルギー機関(IEA) 月報 国際エネルギー機関 (IEA) は13 日公表した月報で 石油輸出国機構 (O PEC) と非加盟産油国が ( 協調減産を通じて ) 世界の原油在庫を望ましい水準に引き下げる役割を達成したようだと分析 さらに 供給抑制が続いた場合には 石油市場が逼迫する可能性を示

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

当ページは 各種の信頼できると考えられる情報源から取得した情報に基づき アクサ生命保険株式会社が作成し提供するものです 情報の内容に関しては万全を期しておりますが その正確性 完全性については これを保証するものではありません 日本株式市場 運用環境 [ 2015 年 4 月 ~2016 年 3 月

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

PowerPoint プレゼンテーション

Transcription:

平成 21 年 (09 年 )8 月 21 日 ~ 原油価格は世界景気回復に伴い 緩やかに上昇を続ける見込み ~ 1. 価格動向 7 月は調整色が強まり ドル割れその後上昇基調に転じるも 原油需要回復観測の後退から上値重い展開 原油価格 (WTI 期近物 ) は 7 月以降調整色を強め 足元では上昇基調に転じているものの 上値が重い展開が続いている ( 第 1 図 ) 7 月は 2 日発表の 6 月米雇用統計の悪化を受けて 世界景気回復期待が後退し 原油価格は 66 ドル台へ急落した その後も米原油在庫動向などを材料に下落基調をたどり 10 日には 59 ドル台と約 2 ヵ月振りに ドルを割り込んだ その後 主要国の経済指標や原油在庫統計を材料に上昇に転じ 8 月に入り 70~71 ドル台まで戻ったものの 14 日には米消費者信頼感指数の悪化を受けて原油需要回復観測が後退し 67 ドル台と約 2 週間振りの安値となるなど 一進一退のレンジ相場を続けている 第 1 図 : 原油価格 (WTI 期近物 終値 ) の推移 ( ドル / バレル ) 150 1 1 1 110 90 70 50 08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4 09/7 ( 資料 )Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 ( 年 / 月 ) 1

投機筋のポジションは 7 月に買い越し幅が縮小持ち高制限の具体策発表まで 警戒的な動きが続こう 原油先物市場の投機筋のポジションは 7 月に入り買い越し幅は大きく縮小したが 8 月に入ると世界景気回復期待の高まりを背景に 再び拡大している ( 第 2 図 ) 7 月に買い越し幅が縮小した背景には 世界景気回復期待がいったん後退したことのほか 7 月 7 日に米商品先物取引委員会 (CFTC) が 原油 ヒーティングオイル 天然ガス ガソリン その他エネルギー商品の先物取引について持ち高制限を検討すると発表したのを受けて 投機筋が原油先物市場の持ち高圧縮に動いたためとみられている CFTC は 持ち高制限の免除規定の見直しも含めて 7 8 月に消費者や市場関係者から意見聴取を行なう予定とのことである 米オバマ政権は金融規制強化に積極的なことから 持ち高制限が実施される可能性が高い 具体策が発表されるまで 投機筋の警戒的な動きが続くであろう 1 1 1 0 - - 第 2 図 : 原油先物の投機筋のポジション ( 先物ネット建玉 千枚 ) 0 1 買い越し ノン コマーシャルのネットポジション ( 左目盛 ) 売り越し 原油価格 (WTI 右目盛 ) ( ドル バレル ) 150-07/1 07/7 08/1 08/7 09/1 09/7 ( 年 / 月 ) ( 注 ) ノン コマーシャルとは 原油生産や精製に従事しない業者のこと 1 枚 =1,000バレル ( 資料 ) 米国商品先物取引委員会 ニューヨークマーカンタイル取引所 (NYMEX) 資料より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 1 1 1 110 90 70 50 2. 需給動向 4~6 月期の供給超過幅は拡大世界の原油需要の落ち込みは 1~3 月期がボトムの模様 IEA( 国際エネルギー機関 ) によれば 今年 4~6 月期の世界の原油需給バランスは供給超過となり その幅は前期から拡大した ( 第 3 図 ) 供給は前期からほぼ横這いだったものの 先進国の原油需要が大きく低迷したためである 需給バランスが緩んだにもかかわらず 同時期の原油価格が上昇したのは 投資家の世界景気回復を先取りした動きだったといえる 需要サイドについては 今年 4~6 月期の世界の原油需要は前年比 3.1% と 前期 ( 同 3.5%) からマイナス幅は縮小した IEA によれば 今年後半もマイナス幅の縮小が続くと見込まれており 世界の原油需要の落ち込みは 今年 1~3 月期がボトムとなる模様だ 金融危機の影響が深刻な先進国 (OECD 諸国 ) は同 6.7% と 前期 ( 同 5.0%) からさらに減少した 米国 ( 同 7.5%) が引き続き大幅に落ち 2

新興国の中でも回 復の姿は二極化 込んだが 欧州 ( 同 5.8%) は前期 ( 同 2.7%) からの悪化ペースがより大きかった 新興国 ( 非 OECD 諸国 ) は 同 +1.3% と前期 ( 同 1.5%) からプラスの伸びに転じた 注目される中国の原油需要が同 +7.5% と増加に転じたほか その他アジア諸国や中東 アフリカの原油需要が増加した これら新興国の原油需要は 今年後半も回復基調が見込まれる一方 東欧や旧ソ連諸国については低迷が続くとみられており 同じ新興国の中でも 金融危機の影響の大きさによって回復の姿が異なっている ( 第 4 図 ) 第 3 図 : 世界の原油需給バランス ( ト ル / ハ レル ) ( 百万 b/d) 1-4.0 1 需給バランス ( 右 逆目盛 ) 原油価格 ( 左目盛 ) -3.0-2.0 需要超過 0 供給超過 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 03 04 05 06 07 08 09 ( 年 ) ( 資料 )IEA,Oil Market Report より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 第 4 図 : 新興国 地域別の原油需要 ( 前年比 %) 中東新興欧州 16 14 新興アジア旧ソ連諸国 12 IEA 見通し 10 8 6 4 2 0-2 -4-6 -8-10 08Q1 Q2 Q3 Q4 09Q1 Q2 Q3 Q4 ( 年 / 四半期 ) ( 資料 )IEA, Oil Market Report より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 今年の世界原油需要は 先進国の大幅減を受けて 前年比減少の見込み 09 年は 日米欧の景気後退を受けて 先進国全体の原油需要は前年から一段と減少するとみられる 年後半以降 先進国景気は回復に向かうと見込まれるが 原油需要の回復ペースは緩やかなものとなろう 一方 新興国ついては 景気減速を余儀なくされるものの 原油需要は小幅ながらも前年比プラスを維持する見込みだ 世界の原油需要に占める先進国の割合は 5 割強であるため 世界全体でみれば 前年比減少は避けられない IEA によれば 世界の原油需要は前年比 2.7% と前年 ( 同 0.3%) から一段と減少する見込みである 10 年については 世界景気の回復に伴い 世界の原油需要も緩やかながら増加に転じよう OPEC の減産姿勢 は概ね維持 供給サイドについては これまでの減産決定の順守が加盟国に求められるなか OPEC( 石油輸出国機構 )11 ヵ国の生産量は減少が続いてきたが 5 月以降は一進一退となっており 7 月の減産順守率は 69% にとどまった 国別にみると アンゴラとイランの順守率が一桁台と最も低いものの 他の加盟国は 50% 以上を達成しており 概ね減産姿勢は維持されている 3

OPEC 生産余力は拡大 9 月 9 日総会では減産見送りの可能性高い また OPEC の生産余力 (= 生産能力 - 生産実績 ) をみると 昨年半ばには 0 万バレル台まで縮小したが その後は減産基調にあることから足元では 0 万バレル台に拡大しており 今後の世界景気回復時には増産の対応可能である ( 第 5 図 ) ただし 生産余力の約半分はサウジアラビアが占めており その他の加盟国の生産余力は小幅にとどまる 今後も OPEC の生産動向は サウジアラビアの影響が大きい展開となろう 次回 OPEC 総会は 9 月 9 日に予定されている OPEC 関係者達からは 現在の価格水準で推移する場合には追加減産の必要はない旨 コメントが相次いでいる 足元の原油需要は依然として低迷しているものの 一部の新興国では景気底打ちがみられることや 上記の関係者の発言を踏まえると 9 月 9 日の総会では追加減産が見送られる可能性が高い 第 5 図 :OPEC の生産実績と生産余力 ( 百万ハ レル / 日 ) 36 34 07/1 アンコ ラ加盟 07/12 エクアト ル加盟 32 28 26 24 生産余力 生産実績 09/1 よりイント ネシア脱退 22 02 03 04 05 06 07 08 09 ( 年 ) ( 注 )06 年まではOPEC11カ国 ( 資料 )IEA,Oil Market Report より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 3. 価格の見通し 世界景気回復に伴い 原油価格は緩やかな上昇基調をたどる見込み 10 年末にかけては 世界景気の回復を背景に 原油需要は緩やかな回復に向かうと見込まれ これに伴い原油価格は緩やかな上昇基調を辿ると予想される ただし 先進国の原油在庫は高水準にあることや 世界景気の回復ペースを踏まえると 09 年末 ~10 年初にかけて四半期平均でみれば 70 ドルとほぼ横這いとなろう また 当面は 世界景気動向と商品先物規制の行方を睨みながら 値動きが大きい展開が予想される 例年秋口にかけて多発するハリケーンの動向も 製油所への被害により供給不安を高めることから 短期的な価格上昇リスクとして注視する必要があろう 4

中期的に価格上昇 リスクが存在 さらに中期的には 新興国におけるモータリゼーションの進展や産油国の資源ナショナリズムなどによる価格上昇リスクが存在する モータリゼーションについては 新興国の自動車燃料需要は着実に増加しており ( 第 6 図 ) 今後も経済成長や所得水準向上を背景に 自動車普及率の上昇とそれに伴う自動車燃料需要の増加が続くとみられている OPEC によれば 10 年から 年にかけての原油需要増加分の約 % が モータリゼーションによる需要増と見込まれている また 資源ナショナリズムについては OPEC の生産量の約 85% を政府や国営企業が支配しているほか 特に近年ロシアやベネズエラは石油資源の国家管理を強めている こうしたいわゆる資源ナショナリズムの高まりは 開発投資上の最大の障壁であり 供給懸念をもたらすものである このように 需要と供給いずれの面においても 中長期的な価格上昇リスクが存在することに 留意する必要があろう 第 6 図 : 自動車燃料需要の推移 ( 百万ハ レル / 日 ) 25 OECD 諸国 非 OECD 諸国 15 10 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 ( 注 ) 自動車燃料は 自動車ガソリンと軽油 ( 資料 )IEA 資料より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 ( 年 ) ( 中村明 篠原令子 ) 5

原油価格の見通し WTI 先物 前年同期比 ( ドル / バレル ) (%) 08/1Q 97.8 67.9% 08/2Q 123.8 90.4% 08/3Q 118.2 57.3% 08/4Q 59.1 34.7% 09/1Q 43.3 55.7% 09/2Q 59.8 51.7% 09/3Q 68 42.5% 09/4Q 70 18.5% 10/1Q 70 61.6% 10/2Q 71 18.7% 10/3Q 73 7.4% 10/4Q 75 7.1% WTI 先物 前年比 ( ドル / バレル ) (%) 08 年 99.7 37.8% 09 年 39.6% 10 年 72 19.9% ( 注 ) 期中平均価格 見通し 照会先 : 経済調査室 ( 次長佐久間 ) TEL:03-32-34 E-mail: koji_sakuma@mufg.jp 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 金融商品の売買や投資など何らかの行動を勧誘するものではありません ご利用に関しては すべてお客様御自身でご判断下さいますよう 宜しくお願い申し上げます 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが 当室はその正確性を保証するものではありません 内容は予告なしに変更することがありますので 予めご了承下さい また 当資料は著作物であり 著作権法により保護されております 全文または一部を転載する場合は出所を明記してください また 当資料全文は 弊行ホームページ http://www.bk.mufg.jp でもご覧いただけます 6