したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

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どのくらいの人がピロリ菌に感染しているのですか? 日本人のピロリ菌感染者は約 3500 万人といわれています 日本では欧米に比べると感染率が高く 特に 50 歳以上の人で感染している割合が高いとされています しかし 衛生環境が整って来た事により若い世代の感染は減少傾向にあります ピロリ菌に感染すると

はじめに 胃の中に住みつくヘリコバクター ピロリ ( ピロリ菌 ) が発見されたのは 1982 年のことです 以後 今日までにさまざかいようまな研究が進められ ピロリ菌感染が胃炎や消化性潰瘍 ( 胃潰じゅうにしちょうかいよう瘍 十二指腸潰瘍 ) の重要な原因であることが明らかになりました 現在では

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

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消化性潰瘍(扉ページ)

3. 胃がんの診断について胃透視や上部消化管内視鏡検査により病変を検出するとともに病変の範囲や深さを詳細に観察し 内視鏡検査で採取します生検標本を病理組織学的に診断します 拡大内視鏡検査によりさらに詳細に観察したり 超音波内視鏡検査により病変の深さを観察します また 腹部超音波検査や CT 検査など

スライド 1

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もくじピロリ菌は胃 十二指腸以外にも悪影響を及ぼす 1 ピロリ菌と関係のある病気ピロリ菌感染率と感染経路 4 除菌治療を受けたほうがよい人 6 ピロリ菌を見つける検査 7 内視鏡を使わない検査法内視鏡を使う検査法 9 ピロリ菌を退治する除菌治療 10 薬の副作用 11 効果の確認と成功率除菌に失敗し

改訂の理由及び調査の結果直近 3 年度の国内副作用症例の集積状況 転帰死亡症例 アモキシシリン水和物及びクラブラン酸カリウム アモキシシリン水和物の国内症例が集積したことから 専門委員の意見も踏まえた調査の結果 改訂することが適切と判断した 血小板減少関連症例 1 アモキシシリン水和物 3 例 (

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ロミプレート 患者用冊子 特発性血小板減少性紫斑病の治療を受ける患者さんへ

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別紙

スイッチ OTC 医薬品の候補となる成分についての要望 に対する見解 1. 要望内容に関連する事項 組織名日本消化器病学会 要望番号 H28-11 H28-12 H28-16 成分名 ( 一般名 ) オメプラゾール ランソプラゾール ラベプラゾールオメプラゾール : 胸やけ ( 胃酸の逆流 ) 胃痛

仙台市立病院医誌 索引用語 Hericobacter ITP Pb lori除菌 特発性血小板減少性紫斑病 ITP に対する Hericobαcter 介 昭 木 藤 横 修 村 々 基 圭 高佐一 幸 義遠 及 川島萱 ノ 矢ム 敦 枝 エ ハ 初 志 弓 保 史道 志

Taro-01 胃がん内視鏡検診手引き


第三問 : 次の基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( 入してください ) 内に記 1( ) 胃液は胃酸 ( 塩酸 ) を含んでいるため 強い酸性を示す 2( ) ペプシンは胃粘膜を保護する働きがあるペプシンは攻撃因子の一つです 3( ) 十二指腸は胃の上にある長さ 25c

厚生連だより_No.482号.indd

ほかそれは 胃がんにかかる患者数が他のがんと比べて多いままであり 胃 がんの原因への対策が放置されているからです 胃がんは初期症状を見逃さなければ重篤化を防げますし 何よりもピロ リ菌の除去治療を行うことで 胃がんを発症するリスクを大幅に軽減で きます 感染症を原因とするがんと 生活習慣病を原因とす

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Drug Infomation

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医療連携ノートとは 手術などの治療を行った病院とかかりつけ医が協力して ( 医療連携 ) 専門的医療と総合的な診療を適切に提供するために使用する患者さん用のノートです 安全で質の高い医療を切れ目なく提供するため 専門医が協力して新潟県共通のものを作成しました 医療連携ノートの内容 1 患者さんの病状

ヘリコバクター・ピロリ感染症

タケキャブ錠 10 mg 他に係る医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 ( 別紙様式 ) 販売名 タケキャブ錠 10 mg 同 20 mg 有効成分 ボノプラザンフマル酸塩 製造販売業者 武田薬品工業株式会社 薬効分類 提出年月 2018 年 4 月 1.1. 安全性検討事項 重要

図 1 H. pylori と発生 0.4 の発見率となります 図 1 7 さらに H. pylori との発生に関して は組織学的 内視鏡的に詳細に検討されて 図 3 H. pylori と胃粘膜 未感染 表層性胃炎 C います以前は H. pylori が関与するのは分 萎縮性胃炎 軽度萎縮 中

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NUKUMORI No.32 2 胃の中に棲むピロリ菌(写真1)が胃潰瘍 十二指腸潰瘍 胃MALTリンパ腫 特発性血小板減少性紫斑病の原因とされ これらの疾患の方に対しピロリ菌の検査 除菌療法が認められていました 近年の研究で 胃癌の原因としてピロリ菌が関与している可能性が高いことが指摘されていまし

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

改訂後 ( 下線 : 追加記載 ) 改訂前 用法 用量 用法 用量 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 吻合部潰瘍 Zollinger 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 吻合部潰瘍 Zollinger Ellison 症候群 Ellison 症候群現行のとおり略 逆流性食道炎 逆流性食道炎現行のとおり略 非びらん性胃食道逆流

Microsoft Word - 01.doc

横須賀市医師会事務局小田切行 FAX 中学生に対するピロリ菌検診と除菌治療に関する調査研究 申込書 申込み生徒 フリガナ氏名 E 生年月日年月日 中学校 2 年組 保護者氏名 住所 連絡先 TEL この調査研究に参加を希望しますので 同意書を送付ください 申込書を FAX

医薬品の適正使用に欠かせない情報です

洗浄 消毒 スコープおよび周辺機器の洗浄 消毒は 消化器内視鏡ガイドライン ( 日本消化器内視鏡 学会 ) に準じて行うこと 5) 判定 部位 所見の部位を記載する 食道 ( 上部 中部 下部 食道胃粘膜接合部 ) 胃 ( 穹窿部 噴門部 体上部 体中部 体下部 胃角部 前庭部 ) ( 大弯 小弯

総合検査のご案内

厚生労働省告示024号/平成22年1月22日告示/平成22年1月22日施行


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ピロリ菌と胃癌と検診と 阪本康夫 * 近頃, テレビや新聞といったマスコミでもピロリ菌が胃癌発生の原因であることが話題とされるようになりました ピロリ菌の認知度も格段に上がってきたと感じられます テレビではピロリ菌抑制効果のあるヨーグルト LG21 のコマーシャルが盛んに流れており, 一役買っている

内視鏡検査のご案内

別紙様式第1

図1 消化器の構成 れます薬やアルコールの代謝も肝臓で行 物質は肝臓で無毒化され 尿や便に排泄さ などが合成されます身体にとって有害な 役割を演じています ンなどです膵臓は血糖値の調節に重要な げるインスリンや血糖値を上げるグルカゴ 糞便中に出ていくのは約 リットルです 腸に進み 大腸でそのほとんど

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

先発品とのの相違の一覧 エダラボン点滴静注 30mg 杏林 エダラボン点滴静注 30mg 杏林 脳梗塞急性期に伴う神経症候 日常生活動作障害 機能障害の改善 通常 成人に 1 回 1 管 ( エダラボンとして 30mg) を適当量の生理食塩液等で用時希釈し 30 分かけて 1 日朝夕 2 回の点滴静

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いることが推測されました そこで東京大学医科学研究所の氣駕恒太朗特任研究員 三室仁美 准教授と千葉大学真菌医学研究センターの笹川千尋特任教授らの研究グループは 胃がんの発 症に深く関与しているピロリ菌の感染現象に着目し その過程で重要な役割を果たす mirna を同定し その機能を解明しました スナ

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札臨カタログWeb

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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ITP ってどんな病気? とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう ITPとは 特発性血小板減少性紫斑病 のことです ITP(idiopathic thrombocytopenic purpura) とは 特発性血小板減少性 紫斑病 のことで はっきりとした原因がわからず ( 特発性とい

H26大腸がん

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

Microsoft Word - ランソプラゾール.doc


表紙

第 2 部 CTD の概要 一般名 : エソメプラゾールマグネシウム水和物 版番号 : 緒言 ネキシウム カプセル ネキシウム 懸濁用顆粒分包 本資料に記載された情報に係る権利はアストラゼネカ株式会社に帰属します 弊社の事前の承諾なく本資料の内容を他に開示することは禁じられています

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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**2016 年 10 月改訂 ( 第 25 版 ) *2016 年 4 月改訂 日本標準商品分類番号 プロトンポンプ インヒビター日本薬局方オメプラゾール腸溶錠 処方箋医薬品注 ) 貯法 : 室温保存 ( 開封後は湿気を避けて保存すること ) 使用期限 : 3 年 ( 外箱に表示 )

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病気のはなし46_1版7刷.indd

2017 年 10 月改訂 ( 第 3 版 ) 2017 年 4 月改訂プロトンポンプインヒビター 日本薬局方ランソプラゾール腸溶性口腔内崩壊錠 日本標準商品分類番号 Lansoprazole OD 規制区分 : 処方箋医薬品注意 - 医師等の処方箋によ

(4940 人を 48 ヵ月間追跡した試験 )Kaplan-Meier s 法による解析により 4 年での累積再発率は 7.8% となり 年率 1.9% と計算された 胃潰瘍では 9.3%(2.3%/ 年 ) 十二指腸潰瘍 6.2%(1.6%/ 年 ) 胃十二指腸潰瘍 6.4%(1.6%/ 年 )

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[ 症例概要 ]( 国内自発報告 ) [ 症例 (1)] 患者 性 年齢男 90 代 使用理由 ( 合併症 ) 胃食道逆流性疾患 ( 高血圧 良性前立腺肥大症 心筋虚血 緑内障 ) 1 日投与量投与期間 20mg 不明 副作用 経過及び処置 2~3ヶ月前 A 院にてオメプラゾールから本剤へ切り替えた

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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ピロリ菌のはなし ( 上 ) 大阪掖済会病院部長 消化器内科佐藤博之 1. はじめにピロリ菌という言葉を聞いたことがある方も多いと思います ピロリ菌はヒトの胃の中に住む細菌で 胃潰瘍や十二指腸潰瘍に深く関わっていることが明らかにされています 22 年前に発見されてから研究が精力的に進められ 以後 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療法が大きく様変わりすることになりました 我が国では 2000 年 11 月に胃潰瘍 十二指腸潰瘍の患者さんに対してピロリ菌の除菌療法を行うことが保険適用されました 2. ピロリ菌発見の歴史ヒトの胃の中に細菌が存在することが最初に報告されたのは約 100 年も前ですが 胃酸が存在する胃の中に細菌が生存できるはずがないと考えられ その後研究は進展しませんでした しかし 1983 年 オーストラリアの研究者が胃内ラセン菌の分離 培養に初めて成功し ここからピロリ菌の研究が大きく進歩することとなりました 生存できるはずがないと考えられていた胃の中で ピロリ菌は生きていたのです では どうしてピロリ菌は ヒトの胃の中で生きられるのでしょうか? 実は ピロリ菌には 胃酸の存在下でも生存できるいくつかの仕組みがあったのです その中でも最も巧妙な仕組みは 次の通りです ピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っていて 胃の中の尿素からアルカリ性であるアンモニアを産生し 自分の周囲の胃酸を中和して 自らを胃酸から保護していたのでした 3. ピロリ菌はどのようにして感染するのか現在 ピロリ菌はヒトの胃内でのみ繁殖することが明らかにされており ヒトからヒトに水や食物 手指を介して感染すると考えられています 特に小児期での飲料水による感染が重要視されています ピロリ菌の感染率が先進国では低く 発展途上国では高いことが明らかにされていますが 我が国では 50 歳以上では発展途上国のように感染率が高く ( 約 80%) それ以下では先進国のように低いことが特徴です これは 戦後上下水道などの環境が整備され 感染率が低下

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述べたようにピロリ菌がアルカリ性であるアンモニアを産生することを利用して 胃粘膜組織に尿素を加えてアルカリの反応を示すかを調べる方法 ( 迅速ウレアーゼテスト ) などがあります また 後者には 血液中のピロリ菌の抗体価を調べる方法や尿素呼気テストなどがあります 尿素呼気テストはそれに用いる薬剤が高価であることが欠点ですが 精度が優れているため ピロリ菌の除菌後のように菌量が少ない状況でも最も正確に判定できます ピロリ菌の検査は現在 胃潰瘍および十二指腸潰瘍と診断された患者さんにのみ 保険適用されています

ピロリ菌のはなし ( 下 ) 大阪掖済会病院部長 消化器内科佐藤博之 前回は ピロリ菌の検査法までお話いたしましたが 今回は ピロリ菌の関与する病気からお話したいと思います 5. ピロリ菌が関与する病気 1) 胃潰瘍 十二指腸潰瘍これらは消化性潰瘍と呼ばれています すなわち 胃酸により胃や十二指腸の粘膜が消化されることによって潰瘍が発生します このため 胃酸の分泌を抑制する治療が一般に行われていますが これらの潰瘍は一旦治っても再発を繰り返すことが多く ピロリ菌が発見されるまで 再発を繰り返す理由がわかりませんでした ピロリ菌を除菌することにより再発することがほとんどなくなり 現在では消化性潰瘍の根底にある原因は ピロリ菌であると考えられています つまり ピロリ菌がいると胃や十二指腸の粘膜が弱くなり 自らの胃酸によって消化されてしまうけれど ピロリ菌がいなくなると胃酸に抵抗できる強い粘膜に戻るという訳です 実際に除菌群と非除菌群で潰瘍の再発率を比べてみると 非除菌群では 3 年以内に約 80% が再発するのに対し 除菌群ではわずかに数 % しか再発がみられません では ピロリ菌に感染しているとすべての人が潰瘍になるのかというと そうではありません 我が国ではピロリ菌感染は 40-50 歳以上で約 80% 日本人全体では約 50% と高率ですが 潰瘍になる人はその内のわずか数 % にすぎないのです これは ピロリ菌に何種類かあり その種類の差によるのではないかと考えられています 2) 胃炎胃潰瘍や十二指腸潰瘍がピロリ菌感染者のわずか数 % にしか認められないのに対し 胃炎はほぼ全例に認められます 感染初期は粘膜の表層が発赤したりただれたりしますが 慢性期になると次第に胃粘膜は荒廃し 萎縮性胃炎の状態になります 萎縮性胃炎の状態にまでなった胃粘膜が ピロリ菌を除去することにより元の元気な粘膜にまで回復するかどうかについては 賛否両論があります ただし 我が国では胃炎におけるピロリ菌の除菌療法は保険適用されていません

3) MALT リンパ腫胃 MALT リンパ腫はピロリ菌による炎症に反応してリンパ球が増殖し 腫瘍を形成したものと考えられており ピロリ菌の除菌により縮小 消失することが報告されています しかし 除菌療法を行っても効果のない例もあり 今後の研究が期待されます 4) 過形成性ポリープ胃の過形成性ポリープもピロリ菌の除菌により縮小することが報告されています ポリペクトミー ( 内視鏡を使用したポリープ切除術 ) をせずにすむのなら一度は除菌療法を試みてみたいところですが 残念ながらこれも保険適用されていません 5) 胃癌ピロリ菌が消化性潰瘍と密接な関係があることが明らかになるにつれ 胃癌についても研究が進められるようになりました これまでのところ すべてとは言わないまでも両者の間には かなり深い関係があることがわかってきました 以前から萎縮性胃炎が胃癌の発生母地であると考えられてきましたが ピロリ菌によって萎縮性胃炎がもたらされることを考慮すれば当然とも考えられます 早期胃癌を内視鏡で切除した患者さんを その後ピロリ菌の除菌療法を行った群と行わなかった群に分けて追跡を行ってみたところ ピロリ菌を除菌することによって胃癌の発生が明らかに抑制されたとの報告が 日本の研究者によってなされており 大きな評価を得ています 6) 消化管以外の疾患胃や十二指腸などの消化管以外にも ピロリ菌が関与していることを推測させる疾患があります なかでも 特発性血小板減少性紫斑病はピロリ菌の除菌療法により約 60% に血小板の増加がみられ これまでステロイド剤や脾臓の摘出手術以外に有効な治療法がなかったこの疾患の新たな治療法として ピロリ菌の除菌療法が注目されています 6. ピロリ菌の除菌療法現在 ピロリ菌の除菌療法は 胃および十二指腸潰瘍においてピロリ菌感染が明らかにされている場合に限って 保険が適用されます その方法は 抗潰瘍剤であり強力に胃酸の分泌を抑制するランソプラゾールまたはオメプラゾールと 抗生物質であるアモキシシリンおよびクラリスロマイシンの 3 剤を 1 週間服用するというものです その効果は 80~90% と非常に有効性が高いと言えますが 逆に言えば 10

人に 1~2 人は残念ながら不成功に終わることになります 除菌療法が不成功であった場合 保険では同じ除菌療法をもう一度だけ行うことが認められていますが その場合の除菌成功率は高くありません 副作用としては 多くは下痢や軟便などの軽いものがほとんどです まれに ペニシリンであるアモキシシリンに対するアレルギー反応がみられることがあります 軽い場合は発疹ですみますが ごくまれにアナフィラキシー反応によりショック状態となり 致命的となることがあります その他 口の苦みを訴える方もおられます これは クラリスロマイシンによるものと考えられています 7. 最後に現在は ピロリ菌の検査も治療も胃潰瘍と十二指腸潰瘍の患者さんのみが対象となっています すでにピロリ菌の除菌療法を受けられた方は再発がみられなくなり その恩恵を受けられていることと思います 潰瘍以外にもピロリ菌の関与が示唆されており 前述のように ピロリ菌除去が胃癌の発生を予防し また 特発性血小板減少性紫斑病に対して有効性を示すなど興味ある研究結果が報告されています 今後ピロリ菌関連の研究 治療に大きな進展が期待されています