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今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

Microsoft Word

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26公表用 栃木局版(グラフあり)(最終版)

市報2016年3月号-10

①公表資料本文【ワード軽量化版】11月8日手直し版【1025部長レク⑤後】平成30年61本文(元データあり・数値1004版)

スライド 1

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

3. 継続雇用制度の対象者基準の経過措置 Q3-1: Q3-2: Q3-3: Q3-4: Q3-5: Q3-6: Q3-7: すべての事業主が経過措置により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることができますか 改正高年齢者雇用安定法が施行された時点で労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する

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取材時における留意事項 1 撮影は 参加者の個人が特定されることのないよう撮影願います ( 参加者の顔については撮影不可 声についても収録後消去もしくは編集すること ) 2 参加者のプライバシーに配慮願います 3 その他 (1) 撮影時のカメラ位置等については 職員の指示に従ってください (2) 参

みずほインサイト 政策 2013 年 2 月 20 日 希望者全員を 65 歳まで雇用義務化高齢者が活躍できる職場の創設と人材育成が課題 政策調査部上席主任研究員堀江奈保子 年 4 月 1 日に高年齢者雇用安

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資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

目次 問 1 労使合意による適用拡大とはどのようなものか 問 2 労使合意に必要となる働いている方々の 2 分の 1 以上の同意とは具体的にどのようなものか 問 3 事業主の合意は必要か 問 4 短時間労働者が 1 名でも社会保険の加入を希望した場合 合意に向けての労使の協議は必ず行う必要があるのか

Microsoft Word - コピー ~ (確定) 61発表資料(更新)_

第3節 重点的な取り組み

「高年齢者雇用安定法《のポイント

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

資料9

PowerPoint プレゼンテーション

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

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少子高齢化班後期総括

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

スライド 1

07体制届留意事項(就労継続支援A型)

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規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

- 調査結果の概要 - 1. 改正高年齢者雇用安定法への対応について a. 定年を迎えた人材の雇用確保措置として 再雇用制度 導入企業は9 割超 定年を迎えた人材の雇用確保措置としては 再雇用制度 と回答した企業が90.3% となっています それに対し 勤務延長制度 と回答した企業は2.0% となっ

事業活動の縮小に伴い雇用調整を行った事業主の方への給付金

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

Microsoft PowerPoint - 2の(別紙2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【佐賀局版】

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

Microsoft PowerPoint - 7.【資料3】国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額について

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原

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ⅰ. キーワードや法令を知る 01 処遇検討の背景 少子高齢化が急速に進展する中 労働力人口の減少に対応し 経済と社会を発展させるため 高年齢者をはじめ働くことができる全ての人が社会を支える全員参加型社会の実現が求められております また 現在の年金制度に基づき平成 25 年度から特別支給の老齢厚生年

改正労働基準法

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

いる 〇また 障害者の権利に関する条約 においては 障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとされている 〇一方 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度 ( いわゆる欠格条項 ) については いわゆるノーマライゼーションやソーシャルインクルージョン ( 社会的包摂 ) を基本理念とする成年

別添

1 ハローワークとは 1

Microsoft Word - 雇用継続制度

2. 様式の改正については平成 25 年 4 月 1 日付けで行う予定としているが 4 月以降も当面の間は改正前の様式を引き続きご利用できること 3. 改正後の新様式で届出を行う場合の記載方法等については別添 1 改正前の様式で届出を行う場合の記載方法については別添 2のとおりリーフレットを作成した

中央労働災害防止協会発表

23 歳までの育児のための短時間勤務制度の制度普及率について 2012 年度実績の 58.4% に対し 2013 年度は 57.7% と普及率は 0.7 ポイント低下し 目標の 65% を達成することができなかった 事業所規模別では 30 人以上規模では8 割を超える措置率となっているものの 5~2

Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

PowerPoint プレゼンテーション

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案)

問題の背景 高齢者を取り巻く状況の変化 少子高齢化の急速な進展 2015 年までの労働力人口の減少 厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げ 少なくとも 年金開始年齢までは働くことのできる 社会 制度づくり ( 企業への負担 ) 会社にとっての問題点 そしてベストな対策対策が必要に!! 2

平成 28 年度第 3 回弘前市ケアマネジャー研修会 1. ケアプランの軽微な変更の内容について ( ケアプランの作成 ) 最新情報 vol.155 p.3 参照 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について( 平成 11 年 7 月 29 日老企 22 号厚生省老人保健福祉局企画課長

高年齢者雇用就業対策の体系 1 年齢にかかわりなく意欲と能力に応じて働くことができる 生涯現役社会 の実現に向けた高年齢者の就労促進 年齢にかかわりなく働くことができる企業の普及に向けた支援を充実するとともに 高齢期にさしかかった段階で 高齢期の生き方を見つめ直すことを奨励するなど 生涯現役社会の実

第 Ⅰ 部本調査研究の背景と目的 第 1 節雇用確保措置の義務化と定着 1. 雇用確保措置の義務化 1990 年代後半になると 少子高齢化などを背景として 希望者全員が その意欲 能力に応じて65 歳まで働くことができる制度を普及することが 政策目標として掲げられた 高年齢者雇用安定法もこの動きを受

資料3


1. 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴う留意点 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い 厚生労働省より Q&A が公表されています 今回はこの Q&A に記載があるものについて 参考になると思われるものについてピックアップしてまとめています (1) 継続雇用制度の導入について i. 定年退職者を嘱託やパ

公的年金制度について 制度の持続可能性を高め 将来の世代の給付水準の確保等を図るため 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく社会経済情勢の変化に対応した保障機能の強化 より安全で効率的な年金積立金の管理及び運用のための年金積立金管理運用独立行政法人の組織等の見直し等の

★HP版調整事件解説集h28[042]

PowerPoint プレゼンテーション

資料4 270924【セット】高齢者現状

Microsoft Word ①概要(整備令)

第22回規制改革会議 資料3

平成30年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)

Microsoft Word - (溶け込み)【HP公表】マイナンバーQ&A (2)

一般社団法人送電線建設技術研究会関西支部社会保険等の加入促進計画 1. はじめに 平成 27 年 4 月 24 日制定 建設産業においては 健康保険 厚生年金保険及び雇用保険 ( 以下 社会保険等 という ) の 1 法定福利費を適正に負担しない企業が存在し 技能労働者の医療 年金など いざというと

I. 2 II III IV

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

9-1 退職のルール 職することは契約違反となります したがって 労働者は勝手に退職することはできません 就業規則に 契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には それに従って退職できることになりますが 特段の定めがない場合には なるべく合意解約ができるように 十分話し合うことが大切です ただ

Microsoft PowerPoint 榔本è−³äººè³⁄挎.pptx

女性が働きやすい制度等への見直しについて

①-1公表資料(本文 P1~9)

(3) 始業 終業時刻が労働者に委ねられることの明確化裁量労働制において 使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化する (4) 専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化専門業務型裁量労働制の導入に当たり 事前に 対象労働者に対して 1 専

第 50 号 2016 年 10 月 4 日 企業年金業務室 短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大及び厚生年金の標準報酬月額の下限拡大に伴う厚生年金基金への影響について 平成 28 年 9 月 30 日付で厚生労働省年金局から発出された通知 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能

お知らせ 柔道整復師の資格を取得される皆さま 関係の皆さまへ 平成 30 年 4 月から 柔道整復療養費の受領委任を取り扱う 施術管理者 になる場合は 実務経験と研修の受講が必要となる方向で 以下のとおり検討しています 柔道整復療養費の受領委任の取扱いを管理する 施術管理者 になるための要件について

提言集2013.indb

短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

働き方改革 魅力ある建設業の構築に向けて 特集 域によっても大きな差があり, 北陸地方や北海道 など一部の地方では平成 28 年 10 月調査の加入率が 80% を超えているのに対し, 大都市部のある関東 地方 (55%) や近畿地方 (60%) は低い加入率に 留まっている ( ) 建設マネジメン

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

時効特例給付制度の概要 制度の概要 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律 ( 平成 19 年 7 月 6 日施行 ) に基づき 年金記録の訂正がなされた上で年金が裁定された場合には 5 年で時効消滅する部分について 時効特例給付として給付を行うこととされた 法施行前

平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

Microsoft PowerPoint 記者発表資料別添(セット)

に該当する者に支給されるものに限る ) 移転費及び 3の求職活動支援費の支給対象とすることとされた ( 第 56 条の3 第 1 項第 2 号及び同条第 2 項関係 ) 3 高年齢被保険者 ( 教育訓練を開始した日が高年齢被保険者でなくなった日から1 年以内にある者を含む ) について 教育訓練給付

拉致被害者等への今後の支援のあり方

の業務について派遣先が九の 1 に抵触することとなる最初の日 六派遣先への通知 1 派遣元事業主は 労働者派遣をするときは 当該労働者派遣に係る派遣労働者が九の 1の ( 二 ) の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても派遣先に通知しなければならないものとすること ( 第三十五条第一項関係

被用者年金一元化法による追加費用削減について 昨年 8 月に社会保障 税一体改革関連法の一つとして被用者年金一元化法が成立 一元化法では 追加費用財源の恩給期間にかかる給付について 以下の配慮措置を設けた上で 負担に見合った水準まで一律に 27% 減額することとし 本年 8 月まで ( 公布から 1

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

1_【鑑】「生活困窮者自立支援法の施行に伴う多重債務者対策担当分野との連携について(通知)」の一部改正について

Transcription:

少子高齢化に伴う高年齢者の雇用に向けた国会論議 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正 厚生労働委員会調査室 やまぐち山口 だいすけ大輔 1. はじめに高年齢者雇用に関する最初の法律は 昭和 46 年に成立した 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法 であり 戦後の経済の高度成長に伴う労働力需給の著しい改善から取り残された中高年齢者の雇用対策を目的としたものである その後 昭和 51 年に同法が改正され 高年齢労働者 (55 歳以上 ) を常用労働者の6% 以上雇用することを努力義務化 昭和 61 年の改正で 現行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 ( 以下 高齢法 という ) に名称が変更されるとともに 定年を定める場合は 60 歳を下回らないようにする努力義務が新設され この改正によって 初めて定年制に関する法的規制が盛り込まれた その後 平成 2 年に 定年到達者の 65 歳までの再雇用の努力義務化 平成 6 年に 60 歳定年制が義務化された また 同年 厚生年金保険法の改正で 老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が引き上げられたことを踏まえ 平成 2 年の高齢法改正によって新設された再雇用努力義務が 継続雇用努力義務に改められた 平成 12 年の厚生年金保険法の改正により 老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が引き上げられたことを受けて 同年の高齢法改正では 定年の引上げ 継続雇用制度の導入又は改善の努力義務化 平成 16 年には 継続雇用制度の導入を義務化し 雇用確保措置を講じることとする等の改正が行われ 逐次内容の充実が図られてきた しかし 雇用確保措置の導入義務化には 労使協定で対象となる基準を定め 当該基準に基づく制度を導入したときは 雇用確保措置を講じたものとみなすといった例外措置があり 希望者全員が必ずしも 65 歳まで働けていない現実があった 老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢引上げが平成 25 年 4 月から開始されることに伴い 無年金 無収入の者が生じる可能性があるという現状を踏まえ 政府は 平成 24 年 3 月 9 日に 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案 を国会に提出した 本法律案は 衆議院厚生労働委員会における審査 修正を経て 8 月 2 日 衆議院本会議で修正議決 参議院に送付された 参議院においては 厚生労働委員会に付託され 28 日に委員会可決 29 日の本会議において多数をもって可決 成立した 本稿では 本法律案の提出の背景と経緯 法律案の概要を概観し さらに 衆議院における法案の修正の概要を示した上で 国会における主な議論を紹介する 32 ( 参議院事務局企画調整室編集 発行 )

2. 法律案提出の背景及び経緯 (1) 背景ア少子高齢化と高年齢者雇用の現状我が国の総人口は 平成 22 年の国勢調査によると 1 億 2,806 万人であり 生産年齢人口 (15~64 歳 ) は 8,173 万人 老年人口 (65 歳以上 ) は 2,948 万人である 平成 60 年 (2048 年 ) には 総人口は1 億人を下回り 9,913 万人 生産年齢人口は 5,138 万人 老年人口は 3,805 万人 平成 72 年 (2060 年 ) には総人口は 8,674 万人 生産年齢人口は 5,000 万人を下回り 4,418 万人 老年人口は 3,464 万人となり 老年人口割合を見ると 平成 22 年時点 23% から平成 72 年には約 40% に達すると見込まれている 1 また 平成 24 年の労働力需給の推計によると 2 平成 22 年の労働力人口は 6,632 万人で 今後 減少傾向が見込まれている 仮に経済成長と労働参加が適切に進まなければ平成 42 年 (2030 年 ) には 5,678 万人となり 平成 22 年に比して 954 万人の減少が見込まれている 今後の労働力人口の大幅減少を跳ね返し 経済及び社会を発展させるためには 若者 女性 高年齢者等の就業促進が不可欠であり 全員参加型社会の実現が望まれる 少なくとも働く意欲と能力を有する高年齢者が働き続けることができる環境の整備が重要である こうした中 現行法では 65 歳までの安定した雇用を確保するため 企業に 定年の定めの廃止 継続雇用制度の導入 定年の引上げ のいずれかの措置を講じるよう義務付けている 高年齢者確保措置の実施状況を見ると 高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は 95.7% に達しているが 希望者全員が 65 歳まで働ける企業の割合は 47.9% と半数に満たない状況である 3 継続雇用確保措置の内訳を見ると 定年の定めの廃止 の措置を導入した企業の割合は 2.8% 継続雇用制度 を導入した企業の割合は 82.6% 定年の引上げ の措置を講じた企業は 14.6% となっており 継続雇用制度を導入している企業が多い 4 また 過去 1 年間の定年到達者は 43 万 4,831 人で 継続雇用を希望したが基準に該当しない離職者は約 7,600 人で定年到達者全体の 1.8% である 5 イ年金支給開始年齢の引上げと雇用の接続の必要性老後の所得保障として老齢年金などの年金制度がある 近年 急速な少子高齢化の進行に対応し 年金財政を維持し 将来にわたり持続可能な制度とするため 将来世代の過重な負担を防ぐとともに 公的年金の役割を果たす給付を確保するという観点から 支給開始年齢の引上げ等の制度見直しが行われた 平成 6 年の改正では 老齢厚生年金の定額部分について男性の支給開始年齢を 平成 13 年度から平成 25 年度にかけて 60 歳から 65 歳に段階的に引き上げることとされ ( 女性は5 年遅れで実施 ) さらに 平成 12 年の改正では 老齢厚生年金の報酬比例 33

部分について男性の支給開始年齢を 平成 25 年度から平成 37 年度にかけて 60 歳から 65 歳に段階的に引き上げることとされた ( 女性は5 年遅れで実施 ) 現行の高齢法においては 65 歳までの雇用確保措置を義務付けてはいるが 前述したように継続雇用制度では対象となる高年齢者を労使協定に基づき基準を定めることができ この基準に該当した場合 定年後に雇用が継続されず 平成 25 年度からの報酬比例部分の引上げに伴い 無年金 無収入となる者が生じる可能性がある 高年齢者の生活の安定を図るためには 60 歳以降年金支給開始前までに空白期間が生じないよう雇用を確保することが重要である (2) 経緯少子高齢化の進展による労働力人口の減少の中 経済社会の活力を維持するためには全員参加型社会の実現が必要であり 働く意欲と能力を有する高年齢者の雇用を確保し また 平成 25 年度より支給開始年齢が引き上げられる年金への対応として 雇用と年金を確実に接続させるため 厚生労働省は 平成 22 年 11 月に 今後の高年齢者雇用に関する研究会 を設置 平成 23 年 6 月に同研究会報告が公表された 同報告に基づき 高齢法改正に関し 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会で平成 23 年 9 月から8 回に及ぶ検討がなされた 同部会では 継続雇用の場合の基準制度を廃止すべきかが焦点となった 主な内容は 1 現行の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を廃止すること 2 老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の段階的引上げを勘案し 雇用と年金を確実に接続した以降は 対象者基準を利用できる特例を認める経過措置を設けること 3 同一企業の中だけでなく子会社や関連会社まで継続雇用における雇用確保先の対象拡大が必要であること 4 雇用確保措置を実施していない企業に対し 指導の徹底を図り 指導に従わない企業に対する企業名の公表等を行うこと等である この部会報告を基に 平成 24 年 1 月 6 日 厚生労働大臣に対して 今後の高年齢者雇用対策について ( 労働政策審議会建議 ) ( 以下 建議 という ) が建議された 厚生労働省は 建議の内容を盛り込んだ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案要綱 を作成し 2 月 16 日に厚生労働大臣から労働政策審議会に諮問がなされ 2 月 23 日 労働政策審議会から厚生労働大臣に対して 厚生労働省案は おおむね妥当と認める 旨の答申がなされた この答申を受け 平成 24 年 3 月 9 日 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案 が閣議決定され 同日国会に提出された 34

3. 法案概要 (1) 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止平成 16 年の高齢法改正で 65 歳までの雇用確保のために企業に対し 定年の定めの廃止 継続雇用制度の導入 定年の引上げ の措置の実施を義務化したが 継続雇用制度については 同法第 9 条第 2 項において 労使協定により対象となる高年齢者の基準を定め 当該基準に基づく制度を導入したときは 継続雇用制度の導入の措置を講じたものとみなすとする例外措置が規定されていた このため 継続雇用を希望しても基準に該当した場合 雇用が継続されず 前述のような無年金 無収入者が生じる可能性があり 建議で 現行の継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は廃止することが適当であるとされたことを受け 今回の法改正で例外規定を削除することとしたものである (2) 継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲については 法文上明文化されておらず 行政解釈として示され 6 運用されてきた 行政解釈では 定年まで雇用されていた企業以外の企業であっても 両者一体として一つの企業であり 定年まで雇用されていた企業と継続雇用する企業との関係について 緊密性 明確性が必要とされていた しかし 継続雇用制度の基準を廃止した場合 就労を希望する高齢労働者が増加していくことを踏まえ 同一企業の中だけでの雇用の確保には限界があるため 企業の範囲を関連会社等のグループ企業まで拡大する仕組みを設けることを法文上明文化したものである (3) 義務違反に対する企業名の公表現行法第 10 条では 高年齢者雇用確保措置未実施企業に対して 必要な指導及び助言をすることができ 指導に従わない場合は勧告することができる しかし 平成 23 年 6 月時点においても 高年齢者雇用確保措置未実施企業の割合は 4.3% 存在する 7 雇用確保措置はほとんどの企業で実施されており 定着していると考えられるが この調査では 事業場規模 31 人以上が対象となっており 30 人以下の企業が調査対象となっておらず 全体としての実態は不透明である こうした高年齢者雇用確保措置未実施企業が存在するため 建議で 今後全ての企業で確実に措置が実施されるよう 指導の徹底を図り 勧告に従わない企業に対する企業名の公表を行うことが適当であるとされたことを受け 今回の法改正で高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業に対して企業名を公表する規定を設けるものである (4) 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の策定継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準廃止後について 建議で継続雇用制度 35

の円滑な運用に資するよう 企業現場の取扱いについて労使双方に分かりやすく示すことが適当であるとされたことを受け 事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の根拠を設けることとするものである (5) その他改正前の高齢法第 9 条第 2 項に基づく継続雇用制度の対象者を限定する基準を設けている事業主は 老齢厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢が平成 25 年度から平成 37 年度にかけて段階的に引き上げられることを勘案し 雇用と年金を確実に接続する見地から 現行の第 9 条第 2 項に基づく対象者基準を利用できる特例を認める 12 年間の経過措置を設けるとするものである 4. 衆議院における修正の概要衆議院厚生労働委員会において 平成 24 年 7 月 27 日 民主党 無所属クラブ 自由民主党 無所属の会及び公明党の三会派共同提案による修正案が提出された その主な内容は 厚生労働大臣は 心身の故障のため業務の遂行にたえない者等の継続雇用制度における取扱いを含めた事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針を定めるものとする旨の規定を追加するものである 後日の採決の結果 修正案及び修正部分を除く原案はいずれも多数で可決され 修正議決すべきものと決せられた その後 8 月 2 日の衆議院本会議で 本法律案は多数で修正議決された 5. 国会における主な議論 (1) 法案提出の趣旨少子高齢化 老齢厚生年金の支給開始年齢引上げを背景に提出された法案の趣旨について問われたところ 政府からは いわゆる 2013 年問題 と言われる 平成 25 年度以降 定年後雇用されず無年金 無収入の人が生じる可能性がある中 年金と雇用の確実な接続を図るため 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止し 定年後も希望者全員の雇用を確保し 年金と雇用の確実な接続を図っていく趣旨の改正案である旨の答弁がなされた 8 (2) 継続雇用未実施企業に対する対応について平成 16 年の改正後 8 年が経過しているが 現状でも 4.3% の事業主が継続雇用の確保措置を行っていない 今後 法改正が行われる中で 未実施企業への対応策について問われた 政府からは 未実施の企業に対してはハローワーク職員による訪問指導を実施し 指導に従わない場合は勧告書を発出し ハローワークでの求人の不受理 紹介の保留 また 助成金の不支給といった措置を講じており さらに 今回の法改正により新たに勧告に従わなかった企業名を公表できる規定を設けたことで 未実施企業の解消 36

を進めていく旨の答弁がなされた 9 (3) 再雇用後の処遇について高年齢者の雇用確保措置として 定年の定めの廃止 継続雇用制度の導入 定年の引上げ のいずれかの措置を講じるよう義務付けているが 多くの企業が継続雇用制度を採用している 高年齢者を継続雇用するに当たり 再雇用後の処遇については規定がされておらず 継続雇用制度を使うことで 逆に労働条件引下げ等 労働者に対する不利益が生じるとの懸念が指摘されている現状について 政府の認識が問われた 政府としては 現状を認識しつつも 継続雇用制度で労働者を定年後に再雇用する場合 新たな労働契約を締結することになり 労働条件については 労使の合意で決定されるとの見解を示し 高年齢者雇用確保措置を実施する上での留意事項は 高年齢者雇用安定法に基づく基本方針で示しており 今後 徹底した周知啓発を図り 各企業で十分な労使協議の下で適切かつ有効に実施されるよう指導していくとの答弁がなされた 10 (4) 企業負担の増大に対する支援策今回の改正により 65 歳までの雇用確保措置の例外規定を廃止することとなるが 企業に対し過重な負担を強いるのではないかとの議論がある 法改正による新たな継続雇用制度の対象者は1 万人から5 万人程度と見込まれ 高齢になればなるほど個人の能力 体力的な開きが出てくる中で 希望者全員の高齢者の雇用を義務付けることは 企業の競争力を低下させ かえって雇用の喪失につながるのではないかとの質問がなされた その質問に対して政府から 過重な負担が企業にいかないように 今回の改正法では 老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢に到達した以降の者を対象に基準を引き続き利用できる 12 年間の経過措置を設けていること 継続雇用制度の対象となる企業の範囲をグループ企業まで拡大する措置を講じている旨の説明があり また 経済支 援策として 平成 24 年度からグループ企業以外への労働移動を支援する助成金 11 の新 設 中小企業事業主が再就職支援を有料職業紹介事業者に委託した場合の費用の助成の拡充 12 といった措置を講じていき 企業の理解 協力を得ながら円滑な施行に努めたい旨の答弁があった 13 (5) 雇用確保先の拡充に対するグループ会社等の対象の範囲について定年後の高年齢者雇用確保の確保先については 前述のように法文上明文化されておらず 行政解釈として示されていた 今回の改正で 明文化し 第 9 条第 2 項において定年後に特殊関係事業主が引き続いて雇用することで雇用確保措置が実施できる雇用確保先の拡充が新設されたが 特殊関係事業主 いわゆるグループ会社の対象となる範囲の拡大については 定年前に雇用していた事業主が責任を果たせる範囲であるべきだという点について問われたところ 政府から 範囲の拡大については 定年後の安定し 37

た雇用確保のために事業主が責任を果たしたと言える範囲で定める必要があるとの認識を示した上で 他の法令を鑑みて 意思決定を支配し 重要な影響を与えられる関係にある範囲 建議でも示されている親会社 子会社 同一の親会社を持つ子会社間 関連会社などを想定している旨の答弁がなされた 14 また 中小企業においては 現状としてグループ企業を持たない場合が多く 中小企業が雇用確保措置を実施する上で 政府としての対応策を問われたところ 定年延長 継続雇用制度の導入に伴う負担軽減として定年引上げ等奨励金 15 の支給等援助を行っているが 今後 高年齢者の雇用環境の整備を含めた抜本的見直しを検討していく旨の答弁がなされた 16 (6) 若年者雇用に与える影響高年齢者の雇用確保によって 若年者の採用が縮小されるのではないかとの懸念もある 今後 労働力人口が減っていく中で日本の経済の活力を維持するためには 若者 女性 高齢者 障害者などの就労促進を全体的に図り 働くことができる人全てが社会を支えるという全員参加型社会を実現することが不可欠である しかし 経団連の平成 23 年 9 月 29 日の人事 労務に関するトップ マネジメント調査によると 希望者全員の 65 歳までの継続雇用が義務付けられた場合の対応として 約 4 割の企業が若年者の採用数の縮減を行うと答えている 若年者雇用への影響についての認識及び対応策について問うたところ 小宮山厚生労働大臣は マクロ的に見ると 今後 大量の団塊世代の退職 若年者の就労人口減少により直接的な若年者雇用への影響は低いが 企業活動といったミクロ的に見ると影響が出る可能性があり 高年齢者雇用の促進とあわせて若年者雇用についても就職支援強化の必要があるとの認識を示し 若年者雇用対策へ一層努力していく旨の答弁がなされた 17 政府からは 現状の対策としては 新卒者等に対 し 全国に新卒応援ハローワークを設置し 18 ジョブサポーターによる職業相談 19 職 業紹介を実施 フリーター等に対しては ハローワークでの就職支援のほか トライアル雇用奨励金 20 による正規雇用に向けた支援を実施している旨の説明があり 今後の対応として 学校とハローワークの連携の強化 若者と中小企業のマッチングの推進等 経済産業省 文部科学省とも連携を図り 国家戦略として若者雇用戦略 21 に盛り込まれている施策を着実に実行していく旨の答弁があった 22 (7) 衆議院修正について今回の改正で 第 9 条第 2 項に記載されていた労使協定による対象となる高年齢者の基準を定める制度についての文言が削除され 定年後も就労を希望すると雇用が確保されることとなった 一方で 経済界からは 働けない人々についてまで継続雇用を確保することについて懸念が指摘されていた そうした中 民主党 自民党 公明党から三党共同提案により 4で述べた修正案が提出され 高年齢者雇用確保措置の実施及び運 38

用に関する指針を定めるものとするという文言が盛り込まれた 修正案によって 今後は大臣が指針を定め 使用者側がその運用を判断することになり 使用者側の恣意的な判断になることが懸念されるが 大臣が定める指針では継続雇用の対象外とされる範囲は限定的なものであるのか そもそも原案で継続雇用制度は希望者全員が対象となっているにもかかわらず 対象外となる人を設けるような指針の策定は不要ではないかとの指摘がなされた 政府としては 継続雇用制度は希望者全員を対象とすることが基本である旨の見解を示した上で 建議で 就業規則における解雇事由又は退職事由に該当する者について継続雇用の対象外とすることができる とし ただし 客観的合理性 社会的相当性が求められる 旨の考えが示されており また 継続雇用制度の円滑な運用に資するよう 企業現場の取扱いについて労使双方に示すことが適当である 旨示されていることを踏まえ 高年齢者雇用確保措置の実施 運用に関して事業主が留意すべき事項については 建議の内容 国会での議論に基づき懸念が出ないよう指針を策定する旨の答弁がなされた 23 6. おわりに平成 24 年 8 月 29 日に 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 が成立し 平成 25 年 4 月 1 日より施行される 今回の改正は 平成 25 年度以降 年金の支給開始年齢が引き上げられることに伴って 無収入 無年金の者が生じる可能性を解消するため 年金と雇用の確実な接続を目指したものであり 定年後の雇用が確保されたことは評価できる 課題として 定年後の再雇用の際の労働条件の問題がある 雇用確保措置を講じている企業の多くが継続雇用制度を導入しており 法施行後も状況は変わらないであろう 継続雇用制度は 定年退職後に再雇用され 新たに労働契約を締結するものである場合が多いが 退職後は有期契約となり 賃金の低下など不利益な労働条件になる可能性が生じる 労働条件は労使の合意によって決まるが 事業主が提示した条件に労働者が納得するようなものまでは求められておらず 法の趣旨を考慮した合理的裁量の範囲内のものであることが必要である旨 国会の議論の中で政府から述べられている 24 しかし 労使の合意とはいえ 労働者と事業主は対等な関係ではなく 合理的裁量が恣意的判断にならないよう 労働局などによる法律趣旨の周知徹底及び適切に指導を行うことはもちろん 労働者が安心して働くことができるよう助成金等による企業への支援等制度面の拡充が必要であろう また 今後の急速な少子高齢化の人口変化に伴い かつて高年齢者 1 人に対して若者が9 人で支えていた 胴上げ型 と呼ばれる社会構造が 現在は若者 3 人で支える 騎馬戦型 社会 将来 少子高齢化の進展で 高年齢者 1 人に対して若者 1 人が支え手となる 肩車型 社会に変化していくことが見込まれている そのような中で 今後の高年齢者の就労の在り方 雇用対策は非常に重要な課題である 雇用を単に年金との接続と捉えるのではなく 高年齢者が引き続き社会の支え手となり 就労し社会参加してい 39

くことが求められる 幸いにも日本では 高年齢者の就労意欲は高い 25 年齢に関わりなく本人の希望に応じて働くことのできる生涯現役社会の実現に向け 今回の法改正では見送られた 法定定年年齢の引上げ は 今後も検討していく必要性があるだろう さらに 企業の意識改革 多様な就業のニーズに応えるための職業能力開発 シルバー人材センターなどを活用した多様な就業機会の確保 高年齢者を積極的に活用する企業への助成金などの支援拡充といったインセンティブのある高年齢者雇用対策 環境の整備が必要であろう 参考文献 佐藤哲夫 雇用と年金支給開始年齢の確実な接続のために- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案 - 立法と調査 (2012.4)No.327 岡村光男 高年齢者雇用安定法の改正経緯高年齢者雇用を巡る社会状況の変遷と関連法令の改正を交えて 第一東京弁護士会労働法制委員会 高年齢者雇用安定法と企業の対応 ( 労働調査会 2012)74 頁 ~108 頁 1 国立社会保障 人口問題研究所 日本の将来推計人口 ( 平成 24 年 1 月推計 ) による出生率中位 死亡率中位と仮定した場合の推計 2 独立行政法人労働政策研究 研修機構 平成 24 年労働力需給の推計 による 3 厚生労働省平成 23 年高年齢者雇用状況報告による 4 厚生労働省平成 23 年高年齢者雇用状況報告による 5 厚生労働省平成 23 年高年齢者雇用状況報告による 6 厚生労働省作成の改正高年齢者雇用安定法 Q&Aによる 7 厚生労働省平成 23 年高年齢者雇用状況報告による 8 第 180 回国会参議院厚生労働委員会会議録第 10 号 4 頁 ( 平 24.8.28) 9 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 8 頁 22 頁 ( 平 24.7.27) 第 180 回国会参議院厚生労働委員会会議録第 10 号 13 頁 ( 平 24.8.28) 10 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 9 頁 ( 平 24.7.27) 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 17 号 5 頁 ( 平 24.8.1) 11 他の企業への再就職を希望する定年予定者を 職業紹介事業者の紹介により 定年の1 年前の日から定年到達時までの間に 失業を経ることなく受け入れた場合に 高年齢者労働移動受入企業助成金 として対象者 1 人につき 70 万円が支給される 12 対象者が 55 歳以上の場合に 労働移動支援助成金 の助成率が2 分の1から3 分の2に引き上げられた 13 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 3 頁 25 頁 ( 平 24.7.27) 第 180 回国会参議院厚生労働委員会会議録第 10 号 5 頁 10 頁 ( 平 24.8.28) 40

14 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 10 頁 11 頁 ( 平 24.7.27) 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 17 号 3 頁 ( 平 24.8.1) 15 65 歳以上への定年引上げ 定年の定めの廃止 希望者全員を対象とする 70 歳以上までの継続雇用制度の導入又はこれらの措置とあわせて高年齢者の勤務時間の多様化に取り組む中小企業事業主に対して 事業主が実施した措置及び企業規模に応じて一定額が支給される 16 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 17 号 4 頁 ( 平 24.8.1) 17 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 4 頁 ( 平 24.7.27) 18 平成 22 年 9 月に新設 全国に 57 か所設置されており 大学等の在学中の者 既卒 3 年以内の卒業生 支援を希望する高校生及び既卒者を対象に就職支援を行っている 19 全国の新卒応援ハローワークやハローワークを拠点に 大学等や高校の在学中の者及び既卒 3 年以内の卒業生を対象にマンツーマンで就職活動に関する様々な支援を行っている 20 ハローワークの紹介により労働者を原則 3か月間雇用した事業主に対して 労働者 1 人につき 月額 4 万円 最大 3か月間支給される 3か月間中に事業主と労働者との間で業務遂行に当たっての適正や能力などを見極め その後 正規雇用への移行促進を図る 21 緊急雇用対策 ( 平成 21 年 10 月 23 日緊急雇用対策本部決定 ) に基づき 雇用戦略に関する重要事項について 内閣総理大臣の主導の下で雇用戦略対話を設置 8 回にも及ぶ議論を経て 平成 24 年 6 月 12 日に労働界 経済界 教育界 有識者及び政府は 若者を社会全体で支援するため 若者雇用戦略 について合意した 22 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 26 頁 ( 平 24.7.27) 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 17 号 15 頁 ( 平 24.8.1) 第 180 回国会参議院厚生労働委員会会議録第 10 号 15 頁 ( 平 24.8.28) 23 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 16 号 7 頁 ( 平 24.7.27) 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 17 号 21 頁 ( 平 24.8.1) 24 第 180 回国会衆議院厚生労働委員会議録第 17 号 5 頁 ( 平 24.8.1) 第 180 回国会参議院厚生労働委員会会議録第 10 号 5 頁 ( 平 24.8.28) 25 内閣府 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査 (2008)(60 歳以上の男女を対象 ) によると 9 割以上が 65 歳以上まで働きたいと答えている また 独立行政法人労働政策研究 研修機構 高年齢者の雇用 就業に関する調査 (2009)(55 歳から 69 歳の男女を対象 ) では 就業の引退時期について 65 歳以上まで働きたい人の割合が男性で6 割以上 女性で4 割以上を占めている さらに 男女ともに全ての年齢階級で 年齢に関わりなくいつまでも働きたい と答えている割合が高くなっている 41