国家公務員 Ⅱ 種の経済学 2007 年 7 月 26 日 経済学入門塾講師 : 石川秀樹 国家公務員 Ⅱ 種は 通称 国 Ⅱ: こくに と呼ばれますので ここでも国 Ⅱ ( こくに ) と呼ぶこととしましょう 1. 国 Ⅱ 試験の概要 受験資格 受験科目など試験概要は人事院のサイトをご覧ください http://www.jinji.go.jp/saiyo/shiken.htm 2.2007 年国 Ⅱ 本試験分析 (1) 国 Ⅱ 経済学出題分析表 ミクロ経済学 No31 需要の価格弾力性の計算 No32 労働供給量の計算 No33 損益分岐点と操業停止点の計算 N034 独占の課税後の価格の計算 No35 保険料の計算 ( 期待効用 ) マクロ経済学 No36 政府支出 投資 輸出乗数の計算 No37 貨幣乗数の計算 No38 IS-LM 分析による政策の効 果 ( 初期ケインジアンのケ ース ) No39 経済成長の要因分析 No40 投資理論 Ⅰ マクロ Ⅱ ミクロ Ⅲ 上級マクロ は近刊 出版予定は com をご覧ください Ⅳ 上級ミクロ Ⅴ 論文 Ⅵ 計算 Ⅶ 難関論点 その他 - 1 -
(2) 出題分析のポイントミクロは 5 問とも得点しやすい典型的なパターンの計算問題ミクロ経済学 5 問はすべて計算でした 5 問共にⅥ 計算マスター編に出ている典型的な問題であり 計算問題をある程度練習すれば全問正解も可能な出題でした 内容的には Ⅱミクロ編の範囲が 4 問 Ⅳ 上級ミクロ編の範囲が1 問でした マクロ経済学は 1 問は難しいが 4 問は得点しやすい典型問題マクロ経済学 5 問中 3 問が計算問題でしたが 内 2 問は Ⅰマクロ編にも出ている政府支出乗数や貨幣乗数など簡単な計算問題ですが 残り 1 問は経済成長の要因分析であり Ⅵ 計算マスターまでやっておく必要があります 文章問題は 2 問ですが IS-LM 分析による政策の効果 ( 初期ケインジアンのケース :No.38) は比較的得点しやすい問題ですが 投資理論の問題 (No.40) は ジョルゲンソンの投資論の問題点などは通常のテキストには出ていない論点であり Ⅲ 上級マクロ編をしっかりと読み込んでおく必要があります 3. 本試験問題例 ミクロ経済学 No.31 次の文章の A B に入るものの組み合わせとして正しいものはどれか 需要量をx 価格をpとし 需要曲線がx=100-40p である場合において p=2 としたとき 需要の価格弾力性 ( 絶対値 ) は A である また このと き 価格が 2% 上昇すると 需要量の変化率は B % になる A B 1. 2-4 2. 2-8 3. 4-8 4. 4-12 5. 6-12 N0.31 解答解説はP6へ - 2 -
マクロ経済学 No.38 IS-LM モデルにおける財政 金融政策の効果に関する A~D の記述のうち 妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか A. 投資が利子率に対して完全に非弾力的な場合 IS 曲線は垂直になる このとき 貨幣供給量を増加させても国民所得を増加させることはできない B. 貨幣需要が利子率に対して完全に非弾力的な場合には LM 曲線は垂直になる このとき 政府支出を増加させても クラウディングアウト効果は発生しない C. 貨幣需要が利子率に対して完全に非弾力的な場合には LM 曲線は水平になる このとき 国民所得を増加させるには 政府支出の増加が必要となる D. 貨幣需要が流動性のわなに陥っている場合 LM 曲線は垂直になる このとき 政府支出を増加させても 国民所得を増加させることはできない 1. A 2. A, B 3. B 4. B, D 5. C, D N0.38 解答解説はp6へ 4. 国 Ⅱ 経済学 < 傾向と対策 > (1) 国 Ⅱ 経済の傾向 2007 年はミクロ経済学 マクロ経済学ともに 典型的な問題が多く 計算間違いがなければ Ⅰマクロ Ⅱミクロ Ⅵ 計算を勉強すれば 8 割 さらに Ⅲ 上級マクロ Ⅳ 上級ミクロを勉強すれば 9 割 ~ 満点とれます もちろん 実際には計算ミスや勘違いがあるでしょうから その分は低い点数となります いづれにしても 今年に限れば 結果的には Ⅶ 難関論点マスターまでやる必要はありませんでした しかし 過去の出題を見ると 平成 16 年にはインフレ需要 供給分析が出題されており それ以前には パレート最適や新古典派の経済成長の問題も出題されており Ⅶ 難関論点マスターの範囲が出題される可能性もあります したがって 今年のように比較的解きやすい問題が来年も継続するかどうかはわからないと用心しておいた方がよいでしょう (2) 国 Ⅱ 経済の対策 - 3 -
経済学 7 割目標 ( できれば 8 割 最低でも 6 割 あわよくば満点 ) の人 Ⅰ マクロ Ⅱ ミクロ Ⅲ 上級マクロ Ⅳ 上級ミクロ Ⅵ 計算をしっかりマスタ ーし 過去問を解いて 本試験の難易度を実感しておきましょう 経済学 9 割目標 ( できれば満点 最低でも 8 割 ) の人さらに Ⅶ 難関論点マスターを勉強して インフレ需要 供給分析 パレート最適 新古典派の経済成長の出題に備えましょう これらは 2007 年のように出題されないこともありますが 出題されたときには出来ない人が多いので 差をつけることができます 5. 過去問集について過去問集には 国 Ⅱの全科目を収録した問題集と 国 Ⅱだけではなく 国 Ⅱ に出題傾向が類似する地方公務員上級や国税専門官などの試験も含めた 科目別問題集があります 長所 短所 国 Ⅱ 全科目問題集実際の試験時間で解く問題がわかる ミクロ マクロ各 15 問くらいしかなく 問題数が少ない 主な論点を網羅しきれない 他の試験含む科目別問題集 50 から 100 問近くの問題があり 主な論点を網羅している国 Ⅱの全ての問題が収録されているわけではない それぞれ一長一短あり 補い合う関係にあるので 両方やるのがベストです どちらか一方という場合には 科目別問題集を勉強すべきだと思います 国 Ⅱ 全科目問題集だけでは 問題集が少なく 不十分です ただし 時間が限られており 経済学は半分できればよい という人は 科目別問題集だけで本番に臨むという作戦もありうるでしょう 過去問集推薦図書 国 Ⅱ 全科目問題集 Wセミナー編 最新 3ヵ年過去問本試験問題集 2008 ( 早稲田経営出版 ) 推薦理由 本試験の問題用紙の体裁のまま再現しているので 本試験のリアルな感じが 伝わってきます 注意点 - 4 -
例年 11 月頃に今年 (2007 年 平成 19 年 ) の本試験が掲載された最新版が出 版されます 間違えて 古いものを購入しないように注意してください! 科目別過去問集資格試験研究会編 公務員試験新スーパー過去問ゼミ2 ミクロ経済学 ( 実務教育出版 ) 資格試験研究会編 公務員試験新スーパー過去問ゼミ2 マクロ経済学 ( 実務教育出版 ) 推薦理由 解説が丁寧で 入門塾と似た説明をしている部分があり 入門塾の読者には問題集の中ではわかりやすいと思います 問題量も十分です 注意点 ミクロ経済学の 需要関数の公式 は 余計かもしれません なぜなら 例年 多くの受験生が 覚えられない わけがわからない と訴えており しかも その公式を使わなくても簡単に計算できるからです 面倒であれば その部分は無視しても構いません - 5 -
(3. 本試験問題例の解答 解説 ) ミクロ経済学 No.31 正解 3 ( 解説 ) Ⅴ 計算マスター ( 旧版 )p25< 鉄則 6> より dx 需要の価格弾力性 = - x p = - p x dx x=~ を p で微分 この鉄則に従って計算します 問題文より P=2 なので x=100-40p=100-40 2=20 dx dx はx=100-40p をpで微分すれば求めることができるので =-40, これらの計算を < 鉄則 6> の式に代入すると p dx 2 需要の価格弾力性 = - = - (-40) = 4 Aの答え x 20 となります 需要の価格弾力性とは 価格が 1% 下落したときに需要量が何 % 増加す るか ということを意味するので その値が 4 とは 価格が 1% 下落したときに需要 量が 4% 増加する ということです したがって このとき 価格が 2% 下落したとき には 需要量は 4% 2=8% 増加し 逆に 問題文のように 価格が 2% 上昇する 場 合には 需要量は 8% 減少するので 需要量の変化率 は -8% となります Bの 答え マクロ経済学 No.38 正解 1 A. Ⅰマクロ編図表 5-41 のケースであり 正しい B. 前半の文章はⅠマクロ編だけでは正誤を判断しにくい しかし 後半の文章に関しては LM が垂直なときには IS 曲線を右シフトさせても国民所得は増加しないから クラウディングアウトが政策の効果をゼロにしてしまっているので 誤りとわかります Ⅳ 上級マクロまで勉強していれば 前半の文章は正しいが後半の文章は誤りとすぐにわかります C. LM 曲線が水平な場合とは 貨幣需要の利子弾力が無限大 ( 完全に弾力的 ) のケースなので 貨幣需要の利子弾力性が完全に非弾力的な場合 LM 曲線は水平 という部分は誤り D. 流動性の罠であれば LM 曲線は水平なので 流動性のわなに陥っている場合 LM 曲線は垂直 という部分が誤り また このとき 財政政策はきわめて効果が大きい (Ⅰマクロ編図表 5-36) ので 後半の文章も誤り - 6 -