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Transcription:

急性腰痛症にアセトアミノフェンは 有効か? 2014 年 9 月 16 日飯塚病院総合診療科宮崎岳大監修江本賢 JHOSPITALIST network

症例 65 歳男性 主訴 腰痛 現病歴 慢性腎不全 慢性心不全の既往がある 65 歳男性 庭の倉庫にある重い段ボールを持ち上げた際に 急激に 腰部に痛みが生じた 痛みが強く 動けないために当院 救急外来を受診した 既往歴 慢性心不全 慢性腎不全 十二指腸潰瘍 薬剤歴 バイアスピリン ACE 阻害薬 PPI ラシックス

身体所見 [Vital signs] 体温 :36.0, 脈拍 :100/min, 血圧 :110/84mmHg 呼吸数 :22/min,SpO2 98%(Room Air) [ 頭頸部 ] 眼結膜 ( 蒼白 -) [ 肺野 ]coarse crackle- [ 心臓 ]Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ-Ⅳ-, 心尖部に収縮期雑音 + [ 四肢 ] 浮腫 - [ 神経 ]SLRT CLRT 陰性, 感覚障害, 筋力低下なし 検査所見 [ 血液検査 ] < 血算 > WBC 6950/μl, Hgb 9.7 g/dl < 生化学 > BUN 22 mg/dl, CRE 2.6 mg/dl, CRP 0.01 mg/dl [ 画像検査 ] < 腰部レントゲン > 圧迫骨折などなし

明らかな骨折なし

症例のまとめ 慢性腎不全 慢性心不全の既往がある 65 歳男性 重い物を持ち上げた際に急激な腰痛が出現したために救急外来を受診した 腰痛が強く 体動困難なために入院となった

疑問 本症例の急性腰痛症は 動けないぐらい痛みが強く 疼痛緩和が重要と考えた 慢性心不全や慢性腎臓病があるため NSAIDs は使いづらいため アセトアミノフェンを処方した アセトアミノフェンの使用を開始したところ 患者さんから一言 Pt. この薬 まったく効いてない感じがするんですけど Dr. そんなことはないですよ これは効果がある痛み止めですよ Pt. でもほとんど効いてる感じがしないので もっと強いロキソニンを飲ませてくれ アセトアミノフェンが効果がないなんて っと思い 腰痛診療ガイドラインを調べてみた

ガイドラインを調べてみた 日本と USA のガイドラインでは 腰痛に対して薬物療法の第 1 選択は NSAIDs アセトアミノフェンともに推奨する (GradeA) ただし Cochrane ではアセトアミノフェンは推奨されていなかった

本当にアセトアミノフェンが急性腰痛症に有効なのか 調べてみることにした

EBM の実践 5 steps Step1 疑問の定式化 (PICO) Step2 論文の検索 Step3 論文の批判的吟味 Step4 症例への適用 Step5 Step1-4の見直し

Step1: 疑問の定式化 (PICO) P: 慢性腎不全の既往があり 急性腰痛で入院した75 歳男性 I: アセトアミノフェンを服用した場合 C: 薬剤を使用せず保存的加療をした場合 O: 腰痛が緩和するか また改善するまでの期間が短縮するか 治療の論文を検索する

Step2: 論文の検索 l Pub Med を使用 l acute low back pain, acetaminophen で検索 ぜんぜんヒットしない??

Step2: 論文の検索 l インターネットでアセトアミノフェンについて調べてみると Paracetamol が国際一般名だった! Wikipedia より

Step2: 論文の検索 l Pub Med を使用 l acute low back pain, paracetamol で検索 l 上から 5 番目に出てきた Lancet の RCT の文献を選んでみた

Step3 批判的吟味 JAMA evidence Users Guides to the Medical Literature を参考に批判的吟味を行った

論文の背景 ガイドラインで急性腰痛の薬物治療では アセトアミノフェンが第 1 選択となっている しかし システミックレビューで 急性腰痛に対するアセトアミノフェンの有効性は認めていない Eur Spine J. 2008 Nov;17(11):1423-30. これまで アセトアミノフェンとプラセボを直接比較した研究はない そこで 急性腰痛に対するアセトアミノフェンの有効性を検証するために アセトアミノフェンとプラセボを比較検討した

論文の PICO * P(Patient) 2009 年 11 月から 2013 年 5 月までにオーストラリアのシドニーで 235 の Primary center を受診した 急性腰痛の患者 1652 人を対象に 盲検化された 3 つの治療レジメンのいずれかにランダムに割り付けた * I(Intervention) 4 週間 アセトアミノフェン 3990mg を 1 日 3 回に分けて投与した群 (550 人 ) 必要に応じてアセトアミノフェンを投与した群 ( 最大容量は 4000mg)(546 人 ) * C(Comparison) プラセボ (547 人 ) * O(Outcome) 疼痛発症から改善するまでの期間

論文の PICO P(Patient) Inclusion criteria 急性腰痛が発症する 1 ヶ月前には腰痛はなく 6 週間以内に第 12 肋骨から臀部の間に生じた新規発症の急性腰痛の患者

論文の PICO exclusion criteria: 1 脊椎の癌 感染 骨折が疑われる患者 2 すでに定期的に推奨される鎮痛剤を服用している患者 3 腰痛が発症する 6 ヶ月前までに脊椎の手術をしている患者 4 今回の研究情報の信頼性を損なう精神疾患のある人で向精神薬を使用している患者 5 妊娠や妊娠を予定している患者

論文の PICO I(Intervention) 参加者は 最大 4 週間 2 種類の錠剤を服用するように求められた regular box から 1 回 2 錠 1 日 3 回内服痛みが強い場合に as-needed box から 1or2 錠を 1 日 8 錠を上限として 4 6 時間間隔をあけて必要時に内服した C(Conparison) プラセボ 定期投与群 (550 人 ) as-needed group (546 人 ) プラセボ群 (547 人 ) regular box 放出調節型アセトアミノフェン (1 錠 665mg) プラセボ プラセボ as-needed box プラセボ 即時放出型アセトアミノフェン 1 錠 500mg プラセボ

論文の PICO Primary outcome Secondary outcome O(Outcome) Primary outcome: 疼痛の発症から改善するまでの期間定義 :10 点満点の尺度で疼痛のスコアが 0~1 の状態が 7 日続く期間の開始時点 Secondary outcome: 痛みの強さ 障害度 機能 症状の変化 睡眠の質 QOL の全体的な評価

論文の PICO 倫理的配慮の記載もされている

1: 結果は妥当か ランダム割り付けされている

1: 結果は妥当か 介入群と対照群は同じ予後で開始したか ランダム割り付けされているランダム割り付けが隠蔽化されている

1: 結果は妥当か ベースラインは 2 群間で同等であった

1: 結果は妥当か 治療背景は 2 群間で 抗菌薬のレジメ内容や治療期間は同等であった

1: 結果は妥当か * ランダム化割り付けされているか? * コンピューター割り付けでランダム化されている * 隠蔽化もされている * 全ての患者の転帰が結果に反映されているか * 治療脱落者も解析に含まれており ITT 解析されている * 追跡率は 97.7% 脱落率は 0.5%

1: 結果は妥当か l 盲検化されているか? l 盲検化されている l サンプル数は計算されているか? l 1650 人のサンプルが必要と計算されている l 試験は早期中止されているか? l 中止されていない

2: 結果は何か Primary outcome 腰痛が改善する期間の中央値 1 regular group:17 (95% CI 14 19) 2 as-needed group:17 (95% CI 15 20) 3 placebo group:16 (95% CI 14 20) 各グループでの比較 regular vs placebo, HR 0 99(95% CI 0 87 1 14) as-needed vs placebo, HR 1 05(95% CI 0 92 1 19) regular vs as-needed, HR 1 05(95% CI 0 92 1 20) 12 週の時点で 各群の患者の約 85% が回復した

2: 結果は何か Secondary outcome 治療のアドヒアランスに関しては 各グループで差はなかった 他の治療の使用 疼痛強度 能力障害 睡眠の質 その他の副次的アウトカムについて群間に有意差は認められなかった

Step4 症例への適用 患者のベースラインと本論文のベースラインを比較 65 歳男性 急性腰痛で感染や骨折がない 今回初めてのエピソード 普段は 鎮痛薬は内服していない 本論文の要件を満たしている アセトアミノフェンを処方しても 痛みが改善するまでの期間は短縮できなさそう また痛みの強度も内服しても変わらない可能性がある

本症例の経過 急性腰痛のため 体動困難となり入院とした NSAIDs は 慢性腎不全や慢性心不全がありリスクが高く アセトアミノフェンで対応した 結果として 体動時に瞬間的に起きる激痛は改善しなかったが 安静時の痛みは軽快した 本症例では コルセットとリハビリの指導を行い 1 週間程度で疼痛は軽減し自宅退院となった

Step5 1-4 の見直し 本症例は 急性発症の腰痛であり アセトアミノフェンを内服し コルセット着用やリハビリを併用することで 腰痛は改善した 本論文をもとに考えると 鎮痛剤を使用しなくても 同様に速やかに腰痛が改善した可能性が高いと考えた この論文の内容を適応するに当たって 他に考慮すべきことは?

今回の論文を振り返ると 今回の研究では アセトアミノフェンとプラセボとの直接比較で 有意差を認めなかった しかし 鎮痛薬は根治治療ではないので 鎮痛薬で有痛期間が 短縮するというアウトカム設定が間違っている可能性がある また 疼痛の評価が Paracetamol を内服した直後 ではなく 1 週 2 週 4 週 12 週での評価なので 大雑把な評価しかできない 例えば 屯用のアセトアミノフェンで 飲んだ直後の数時間は腰痛が改善しているかもしれないが 評価が週単位なので 結果に反映されない可能性もある

今回の論文を振り返ると 実臨床では 定期内服 + 疼痛時の屯用 という治療をすることもある しかし 今回のRCTでは 定期内服 + 疼痛時屯用 vs プラセボ の比較がなく 実臨床との乖離があるように感じた

まとめ * 腰痛診療ガイドラインでは アセトアミノフェンが第 1 選択となっている * 今回の研究結果では アセトアミノフェンはプラセボと比較して 疼痛改善までの期間は変わらなかった * しかし アウトカムの設定に疑問が残る部分もある * アセトアミノフェンを試して 効果がなければ オピオイド合剤など 他の治療選択肢も考慮してもよいかもしれない