A MNU ip X //////////////////// ( 週齢 ) B X //////////////// 3 7 ////// : 基礎食あるいはキサントフィル含有食の摂餌 I I: 基礎食の摂餌 X : 解剖, 乳腺組織と発生した乳癌の摘出 図 1 A: 発癌のイニ

Similar documents
1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

PowerPoint プレゼンテーション

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

-119-

<4D F736F F D A F817A985F95B6838A838A815B B8905F94E6984A82C991CE82B782E9836D836A82CC896

テイカ製薬株式会社 社内資料

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

上原記念生命科学財団研究報告集, 31 (2017)

Untitled

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

新技術説明会 様式例

平成14年度研究報告

Folia Pharmacol. Jpn mg/14 ml mg/ ml Genentech, Inc. Genentech HER human epidermal growth factor receptor type HER - HER HER HER HER

PowerPoint プレゼンテーション

がん免疫療法モデルの概要 1. TGN1412 第 Ⅰ 相試験事件 2. がん免疫療法での動物モデルの有用性がんワクチン抗 CTLA-4 抗体抗 PD-1 抗体 2

酵素消化低分子化フコイダン抽出物の抗ガン作用増強法の開発

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

Untitled

別紙様式 (Ⅵ)-2 商品名 : エクササイズダイエット 届出食品に関する表示の内容 科学的根拠を有する機能性関与成分名及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性一日当たりの摂取目安量 本品には 3% グラブリジン含有甘草抽出物が含まれます 3% グラブリジン含有甘草抽出物は 肥満気味の方

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

資料 6 rash2 マウス ( 短期発がんモデル ) の特性と品質管理 財団法人実験動物中央研究所 浦野浩司 2018/3/7 1

ABSTRACT

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

博士の学位論文審査結果の要旨

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

糸球体で濾過されたブドウ糖の約 90% を再吸収するトランスポータである SGLT2 阻害薬は 尿糖排泄を促進し インスリン作用とは独立した血糖降下及び体重減少作用を有する これまでに ストレプトゾトシンによりインスリン分泌能を低下させた糖尿病モデルマウスで SGLT2 阻害薬の脂肪肝改善効果が報告

乳癌基礎研究 Vol マウス乳癌好発系 C57BL /6MT(+) の樹立 鈴木悠加 1) 平岩典子 2) 螺良愛郎 3) 坂倉照妤 4) 1) 三重大学大学院地域イノベーション学 2) 理研 BRC 験動物開発室 3) 関西医科大学病理学第二講座 4) 三重大学 はじめに マウス

PowerPoint プレゼンテーション

H27_大和証券_研究業績_C本文_p indd

センシンレンのエタノール抽出液による白血病細胞株での抗腫瘍効果の検討

Microsoft Word - 森先生HP原稿

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

研究成果報告書

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

Microsoft PowerPoint - 新技術説明会配付資料rev提出版(後藤)修正.pp

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

Untitled

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

要旨 グレープフルーツや夏みかんなどに含まれる柑橘類フラボノイドであるナリンゲニンは高脂血症を改善する効果があり 肝臓においてもコレステロールや中性脂肪の蓄積を抑制すると言われている 脂肪肝は肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まった状態で 動脈硬化を始めとするさまざまな生活習慣病の原因となる 脂肪肝

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

H26_大和証券_研究業績_C本文_p indd

2006 PKDFCJ

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

リーなどアブラナ科野菜の摂取と癌発症率は逆相関し さらに癌病巣の拡大をも抑制する という報告がみられる ブロッコリー発芽早期のスプラウトから抽出されたスルフォラフ ァン (sulforaphane, 1-isothiocyanato-4-methylsulfinylbutane) は強力な抗酸化作用

研究成果報告書

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

Microsoft Word _前立腺がん統計解析資料.docx

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

Microsoft Word _肺がん統計解析資料.docx

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

研究成果の概要ビタミンCを体内で合成できない遺伝子破壊マウス (SMP30/GNL 遺伝子破壊マウス ) に1 水素 (H2) ガスを飽和状態 (0.6 mm) まで溶かした水素水 ( 高濃度水素溶解精製水 ) を与えた群 2 充分なビタミンCを与えた群 3 水のみを与えた群の 3 群に分け 1 ヶ

学位論文の要約 Clinical Significance Of Platelet-Derived Growth Factor 5 Receptor-β Gene Expression In Stage II/III Gastric Cancer With S-1 Adjuvant Chemothe

1. はじめに C57BL/6J マウスは食餌性肥満 (Diet-Induced Obesity) モデルで最も一般的に使用される系統です このモデルは, 肥満に関する表現型の多くを発現し, ヒトに類似した代謝疾患, 高脂血症, 高インスリン血症, 高レプチン血症を発症します 本モデルは, 主に肥満

Microsoft Word - 手直し表紙

学位論文の要約

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

<4D F736F F F696E74202D2097D58FB08E8E8CB1838F815B834E F197D58FB E96D8816A66696E616C CF68A4A2E >

アントシアニン

<8CBA95C4985F95B62E786477>

研究成果報告書

VENTANA PD-L1 SP142 Rabbit Monoclonal Antibody OptiView PD-L1 SP142

日本脳炎不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した日本脳炎ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称日本脳炎ウイル

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

Powered by TCPDF ( Title 非アルコール性脂肪肝 (NAFLD) 発症に関わる免疫学的検討 Sub Title The role of immune system to non-alcoholic fatty liver disease Author

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

Untitled

作成要領・記載例

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

表1-4B.ai

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

研究成果報告書

Untitled

インプラント周囲炎を惹起してから 1 ヶ月毎に 4 ヶ月間 放射線学的周囲骨レベル probing depth clinical attachment level modified gingival index を測定した 実験 2: インプラント周囲炎の進行状況の評価結紮線によってインプラント周囲

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 山田淳 論文審査担当者 主査副査 大川淳野田政樹 上阪等 論文題目 Follistatin Alleviates Synovitis and Articular Cartilage Degeneration Induced by Carrageenan ( 論文

Transcription:

カンタキサンチン アスタキサンチン摂取による MNU 誘発ラット乳腺発癌予防効果の検証 圦貴司 義澤克彦 関西医科大学病理学第二講座 1. 緒言 海産資源に豊富に含まれるカンタキサンチ ン (canthaxanthin, Cx) やアスタキサンチン (astaxanthin, Ax) といった天然キサントフィ ルは ヒトの耐糖能障害や高脂血症を改善する 作用を有するが 各種の癌に対して抗腫瘍効 果を発揮することも報告されている 本稿では N -methyl-n -nitorosourea(mnu) 誘発ラット乳 癌モデルを用いて 発癌のイニシエーション期 / 早期プロモーション期における Cx や Ax の摂取 が乳癌の発生に影響を及ぼすか否かを実験病理 学的に評価するとともに その作用機序につい ても検証した 2. 材料と方法 実験に用いたキサントフィル (Cx Ax) は LKT laboratories ならびに Sequoia Research より購入 した 3 週齢雌 Sprague-Dawley ラット 90 匹を各 群 18 匹ずつ 基礎食群 (AIN-76A) 低 高用量 Cx Ax 食群の 5 群に分け 低用量食群には 0.04% 高用量食群には 0.4% の Cx あるいは Ax を混合し た AIN-76A 食を 3 週齢時から 5 週間摂取させた 試験食期間が終了した 8 週齢以降は すべての ラットに基礎食を摂取させた 全実験期間を通じ てラットは一定の環境のもとで飼育し 試験食摂 取期間中は 7 日おきにすべてのラットの体重を 測定するとともに 1 日あたりの試験食摂取量を 記録した 6 週齢時に各群 15 匹ずつのラットに対 して 60 mg / kg MNU を単回腹腔内投与すること 連絡先 : 関西医科大学病理学第二講座 573-1010 大阪府枚方市新町 2-5-1 Tel. 072-804-2373 により乳腺発癌を促した MNU 投与後は触診により乳腺腫瘍の発生を同定し 最大径が 1cm以上の乳腺腫瘍が発生するまでに要した期間を記録した なお 実験期間中に腫瘍死したラットは評価の対象から除外した MNU 投与 14 週後 (20 週齢時 ) に実験を終了し 生存しているラットを麻酔薬過吸入法により屠殺し すべての触知可能な大きさの乳腺腫瘍を摘出し 腫瘍湿重量を測定した後 組織診断ならびに抗アディポネクチン受容体抗体 -1, -2(ADIPO R-1 R-2 antibodies, いずれもSanta Cruz Biotechnology) の免疫組織学を行った ( 図 1 A ) MNUを投与しなかった各群 3 匹ずつのラットは試験食摂取中の7 週齢時に屠殺し 全身臓器の肉眼観察を行うことにより試験食摂取の毒性を評価するとともに 腹部乳腺組織を摘出し凍結保存した 摘出したラットの乳腺脂肪織からタンパクを抽出し タンパク量を測定した後 アディポネクチン (anti-adiponectin C-terminal antibody, ab181699, Abcam) の発現をSDS- PAGE Western-blotting 法により同定し キサントフィル摂取中の乳腺組織におけるアディポネクチンの発現強度を測定した ( 図 1B) 実験で得られた結果はt 検定 ( 対応なし ) あるいはMann-WhitneyのU 検定を用いて統計解析を行い p 値が 0.05 以下で有意差ありとした 3. 結果ラットの試験食摂取量と体重変化 1 日あたりの食餌摂取量は 基礎食群とCxあキーワード : カンタキサンチンアスタキサンチン乳癌アディポネクチン 27

A MNU ip X //////////////////// 3 6 8 20 ( 週齢 ) B X //////////////// 3 7 ////// : 基礎食あるいはキサントフィル含有食の摂餌 I I: 基礎食の摂餌 X : 解剖, 乳腺組織と発生した乳癌の摘出 図 1 A: 発癌のイニシエーション / 早期プロモーション期におけるキサントフィルの摂取が MNU 誘発ラット乳腺発癌に及ぼす影響 B: キサントフィル摂取中の全身状態の評価と乳腺脂肪織のサンプリング るいはAx 食群で差をみなかった 1 日あたりのキサントフィル摂取量は低用量 CxとAx 食群でそれぞれ3.9±0.3と4.2±0.5mgであったのに対して 高用量の CxとAx 食群では各の41.8±0.7と 45.5±0.6mgであり 高用量食群のラットは低用量食群のおよそ10 倍のキサントフィルを摂取していた 試験食終了時のラットの体重は各群で差を認めず 試験食摂取期間中 ( 7 週齢時 ) に行った解剖では キサントフィル摂取群のラットの諸臓器に明らかな変化はみなかった MNU 誘発ラット乳癌に及ぼすキサントフィルの効果試験食が終了した8 週齢以降も 各群のラットの体重増加に差をみなかった MNU 投与により発生した触知可能な大きさの乳腺腫瘍は いず れも乳頭状 篩状腺癌であり 線維腺腫などの他の組織型の腫瘍は発生しなかった MNU 投与から触知可能な大きさの乳癌が同定されるまでに用した日数 ( 潜伏期間 ) は 基礎食群が68±3 日であったのに対して 高用量 Ax 食群では 73± 5 日と多少延長傾向をみた 実験終了時 ( 20 週齢時 MNU 投与 14 週後 ) 触知可能な大きさの乳癌の発生率は基礎食群が92% であったのに対して 高用量 Cx 食群は77% と低下傾向を認めたが 高用量 Ax 食群では42% であり 基礎食群と比較して発生率の有意な低下をみた (p 値 =0.02 ) 発生した乳癌 1 個あたりの湿重量は 基礎食群が 3.9±0.6gであったのに対して 0.4%Ax 食群では2.8±0.8gと低下傾向にあったが 両群間の測定値に有意差はみなかった ( 表 1 ) 表 1 MNU 誘発ラット乳癌に対するカンタキサンチン アスタキサンチン摂取の抗腫瘍効果 試験食の種類 * 1 群あたりのラットの匹数 >1cm 乳癌の発生率 (%) >1cm 乳癌の潜伏期間 ( 日 ) >1cm 乳癌の多発率 ( 個 / 匹 ) 乳癌 1 個あたりの湿重量 (g) 基礎食 12 92 68±3 3.3±0.5 3.9±0.6 0.04% Cx 食 11 91 71±4 3.8±0.7 4.3±1.0 0.4% Cx 食 13 77 72±4 2.4±0.3 3.5±0.4 0.04% Ax 食 11 73 66±4 2.6±0.4 3.4±0.4 0.4% Ax 食 12 42 ** 73±5 1.8±0.3 2.8±0.8 *Cx: カンタキサンチン, Ax: アスタキサンチン **p 値 < 0.05 28

A 基礎食 Cx 食 Ax 食 0.04 0.4 0.04 0.4 (%) Adiponectin Actin B 発現レベル 図 2 A: 各キサントフィル摂取による乳腺脂肪織中のアディポネクチンの発現変動 B: MNU 投与により発生した乳癌におけるアディポネクチン受容体 -1, -2(Adipo R-1, -2 ) の 免疫組織学的発現強度の比較 アディポネクチンの産生変動と乳癌におけるアディポネクチン受容体の発現 7 週齢時 試験食摂取期間中に MNUを投与していないラットの乳腺組織からタンパクを抽出し Western-blotting 法でアディポネクチンの発現を同定したところ 基礎食群の発現 (loading controlとして用いたアクチンと比較した発現強度 : 0.32±0.02 ) に対して 高用量 Ax 食群では有意な発現の上昇をみた ( 0.51±0.01, p 値 =0.01)( 図 2A) また 発生した乳癌のアディポネクチン受容体 -1と-2の免疫組織化学では Jeong らが報告した免疫染色に対する評価法 1) を用いて染色強度を比較したところ 高用量 Ax 食群に発生した乳癌では基礎食群の乳癌と比較して アディポネクチン受容体 -1, -2ともに 強く発現する傾向がみられた ( 図 2B) したがって 高用量のAx 摂取はラットの乳腺脂肪織で産生 分泌されるアディポネクチンを増加させることにより アディポネクチン受容体陽性の乳癌の発生を抑制したと推察された 4. 考察今回行った乳腺発癌試験では キサントフィル摂取群のラットにはMNU 投与 3 週前から5 週間 0.04あるいは0.4% のキサントフィルを混合した試験食を摂取させ 試験食終了後は基礎食を摂取させた したがって 本実験モデルにおけるキサントフィルの摂取は MNUによる乳腺発癌のイニシエーション期から早期プロモーション期に影響を及ぼしたと推察される この発癌段階で雌ラットに高用量のAxを摂取させると その後のMNU 誘発乳癌の発生を有意に抑制したが マウスの線維肉腫細胞株を移植する 1から 3 週間前に Axを摂取させた報告においても Ax は同様に抗腫瘍効果を発揮することが示されている 2) 乳腺発癌のイニシエーション期 / 早期プロモーション期における高用量のAxの摂取は 基礎食群と比較して有意に乳癌の発生率を抑制し ラット 1 匹あたりの乳癌の発生個数 ( 多発率 ) も減少傾向をみたが Cxを摂取させた群では高用量を摂取させても有意な抑制効果をみなかった マウス乳癌細胞移植モデルを用いて 同じ期間 29

等量のCxあるいはAxをマウスに摂取させた報告では Cx 摂取群と比較してAx 摂取群でより強力に移植腫瘍細胞の増殖を抑制することが示されているが 3) MNU 誘発乳癌においても Cx と比較して Ax の摂取は より強力な抗腫瘍効果を発揮することが証明された Axをマウスに摂取させると 脂肪織中のグルタチオンペルオキシダーゼ-1といった抗酸化作用に関わる酵素を増加させることが報告されている 4) Axは臓器の酸化ストレスを軽減するはたらき以外にも 様々な機序で抗腫瘍効果をあらわすことが報告されている Ax の摂取は宿主の免疫反応を活性化させ 血清中の免疫グロブリンや Natural-killer 細胞を増加させることにより マウスに移植した乳癌細胞の増殖を抑制する 5) さらに Axを添加した培地でヒト肝臓癌や大腸癌の細胞株を培養すると 癌細胞に細胞死を誘導したり 細胞回転を抑制することも報告されており 6 ), 7 ) Axの腫瘍に及ぼす増殖抑制機序は実験モデルや対象とする腫瘍細胞の種類により異なる アディポネクチンは脂肪細胞で産生され 肥満 高脂血症や耐糖能障害といったメタボリックシンドロームの改善に寄与するホルモンであるが Axを経口摂取すると血中のアディポネクチンが増加することが臨床試験で証明されている 8) 今回の動物実験で示された Axによる乳腺発癌の抑制機序には 乳腺脂肪織からのアディポネクチンの分泌変動が関与していると仮定し 乳腺脂肪織中のアディポネクチンの発現を免疫泳動法で評価したところ 基礎食群の発現と比較し 乳癌の発生が抑制された高用量 Ax 食群では発現が有意に亢進していた アディポネクチンは G0/G1 期細胞周期回転因子である cyclin D1 の発現を抑制することにより ヒト乳癌細胞株の増殖を抑制することが報告されており 9) 乳腺脂肪細胞のアディポネクチンの分泌を亢進させることにより 発癌刺激を受けた乳管上皮の細胞回転を抑制することが Ax 摂取による乳癌抑制機序の 1 つとして推察された 5. 結語発癌のイニシエーション期 / 早期プロモーション期に 0.4% のAxを摂取すると MNU 誘発ラット乳癌の発生を抑制した しかし 0.04% の AxならびにCxには有意な抑制効果はみなかった 0.4% のAx 摂取による乳癌発生率の抑制機序として 乳腺脂肪細胞からのアディポネクチンの分泌亢進が関与していることが推察されたが 詳細なメカニズムを同定するためには 今後さらなる検討を必要とする 6. 謝辞など本論文は Yuri T et al., In Vivo(2016, in press) を要約したものであり JSPS 科研費 基盤 (C) (JP15K00859 ) の助成を受けて行ったものである 文献 1. Jeong, YJ. et al: Expression of leptin, leptin receptor, adiponectin, and adiponectin receptor in ductal carcinoma in situ and invasive breast cancer, J Breast Cancer 14: 96-103, 2011 2. Jyonouchi, H. et al : Antitumor activity of astaxanthin and its mode of action, Nutr Cancer 36: 59-65, 2000 3. Zhang, L. et al: Multiple mechanisms of anti-cancer effects exerted by astaxanthin, Mar Drugs 13: 4310-4330, 2015 4. Ohno, T. et al : Preventive effects of astaxanthin on diethylnitrosamine-induced liver tumorigenesis in C57/BL/Ksj-db/ db obese mice, Hepatol Res 46: E201-209, 2016 5. Nakao, R. et al: Effect of dietary astaxanthin at different stages of mammary tumor initiation in BALB/c mice, Anticancer Res 30: 2171-2176, 2010 6. Song, XD. et al: Astaxanthin induces mitochondria-mediated apoptosis in rat hepatocellular carcinoma CBRH-7919 cells, Biol Pharm Bull 34: 839-844, 2011 30

7. Palozza, P. et al: Growth-inhibitory effects of the astaxanthin-rich alga haematococcus pluvialis in human colon cancer cell, Cancer Lett 283: 108-117, 2009 8. Yoshida, H. et al : Administration of natural astaxanthin increases serum HDLcholesterol and adiponectin in subjects with mild hyperlipidemia, Atherosclerosis 209: 520-523, 2010 9. Wang, Y. et al : Adiponectin modulates the glycogen synthase kinase-3β/β -catenin signaling pathway and attenuates mammary tumorigenesis of MDA-MB-231 cells in nude mice, Cancer Res 66: 11462-11470, 2006 31

32