第 3 章 子どもと地域社会の人間関係の様子 子どもたちは, 地域社会の中でどのように過ごし, 実際にどのように行動しているか 困った場面に遭遇したときにどのように対処するのだろうか 子どもたちの地域社会における人間関係の様子を子ども, 保護者, 教師, 地域の方を対象に, 意識を調査した -34-
3-1 登下校中, 近所の人にあいさつをしていますか 子どもたちを対象に, 登下校中に近所の人に会ったときのあいさつについて5つの選択肢を挙げ, 自分の実態に最も近いものを選択させた また, 保護者を対象に子どもの実態を調査した 図 1 1 子ども : 登下校中, 近所の人にあいさつをしていますか 42.1 23.5 28.6 3.4 2.4 45.7 24.4 21.0 5.4 3.5 40.8 29.5 23.7 2.53.5 42.3 33.7 18.0 4.4 1.6 23.5 32.3 33.1 6.3 4.8 あまり話をしない人にも自分からあいさつするあいさつされたらあいさつを返すあいさつはしていない よく話をしている人には自分からあいさつするあいさつされたら頭だけを下げる 図 2 1 保護者 : お子さんは近所の人に挨拶をしていると思いますか 13.6 46.6 32.2 3.4 4.2 18.3 45.8 30.0 5.0 0.9 23.3 43.3 26.7 6.7 23.8 48.8 20.0 6.2 1.2 25.0 35.0 32.5 6.3 1.2 あまり話をしない人にも自分からあいさつするあいさつされたらあいさつを返すあいさつはしていない よく話をしている人には自分からあいさつするあいさつされたら頭だけを下げる - 35 -
教師や地域の方々を対象に, 登下校中に近所の人に会ったときのあいさつについて, 5つの選択肢を挙げ, 調査した さらに, 地域の方々には, 子どもたちにどのようにあいさつをしてほしいと考えているか,5つの選択肢を挙げ, 調査した 図 3 1 子どもたちは近所の人に挨拶をしていると思いますか 小学校教師 5.1 48.7 41.6 2.6 2.0 中学校教師 4.5 36.9 45.0 9.9 3.7 地域 16.4 24.0 47.5 7.7 4.4 地域の希望 40.8 15.6 39.1 4.5 あまり話をしない人にも自分からあいさつする よく話をしている人には自分からあいさつする あいさつされたらあいさつを返す あいさつされたら頭だけを下げる あいさつはしていない 話をしない相手であれ, する相手であれ, 自発的にあいさつをすると答えている子どもは では60% 台で, 学年が上がるにつれ割合が増し, では70% を超すようになる しかし, になると話をしない相手に対して自発的にあいさつをするという割合は激減している あいさつをしていないと答える子どもも増している 地域との関わりが希薄になり, 自分の身の回りの人間関係を中心に生活をしている子どもが増えていると思われる 保護者は, あまり話をしない人に対しての自発的なあいさつについて, あまりしていないと感じている とくに低学年ほどその傾向が見られる 親が思っている以上に子どもは自発的にあいさつをしているようである 逆に, は親が思っているほど自発的にあいさつをしなくなっているといえる 教師はさらに自発的なあいさつはしていないであろうと感じている 学校生活におけるあいさつの実態も関係していると思われる 中学校教師においては, 自発的なあいさつをしているであろうと答える割合は約 40% にとどまっている また, 地域の方々においても同様で, 自発的なあいさつは40% にとどまっている 子どもが自発的にあいさつをしているつもりであっても実際はそれほど受けとめられていないのが現状である 一方で, 地域の方々はあまり話をしない関係であってもあいさつは自発的にしてほしいと願っている あいさつはしなくてもよいと答えた人は皆無である - 36 -
3-2 土日はどのように過ごすことが多いですか 子どもたちを対象に, 休日をどのように過ごしているのか, 一番多い過ごし方につい て 8 つの選択肢を挙げ, 選択させた 近いものがない場合はその他を選択し, 自分の実 態を記述させた また, 保護者を対象に子どもの実態を調査した 2 子ども : 土日はどのように過ごすことが多いですか (2 つ選択 ) 図 4 22.3 12.3 8.1 21.2 15.3 2.9 14.7 3.2 18.4 8.9 8.0 28.3 15.1 1.8 15.5 4.0 25.8 8.2 3.8 23.4 15.7 0.4 17.3 5.4 39.2 5.4 5.4 12.3 15.2 1.0 18.6 2.9 33.2 11.2 6.3 7.8 20.9 1.1 17.0 2.5 スポーツ ( 運動などの部活を含む ) 学習以外の習い事 ( 運動以外の部活を含む ) 友達と遊んでいる家でのんびり過ごしている 学習などの習い事 買い物などに行って家の人とすごしている地域活動 ( 子ども会やボランティア活動などを含む ) に参加その他 図 5 2 保護者 : 土日にお子さんはどのように過ごすことがが多いですか (2 つ選択 ) 12.1 3.1 3.1 38.4 16.4 1.3 22.3 3.3 17.2 22.2 2.13.4 0.9 3.8 35.6 33.8 17.2 15.8 0.9 0.4 20.6 21.0 3.0 2.1 41.0 2.6 5.8 19.2 14.7 1.3 12.2 3.2 32.9 12.7 3.8 13.9 17.1 0.6 17.7 1.3 スポーツ ( 運動などの部活を含む ) 学習などの習い事 学習以外の習い事 ( 運動以外の部活を含む ) 買い物などに行って家の人とすごしている 友達と遊んでいる 地域活動 ( 子ども会やボランティア活動などを含む ) に参加 家でのんびり過ごしている その他 - 37 -
教師や地域の方々を対象に, 子どもたちがどのように休日を過ごしていることが多い ととらえているのか,8 つの選択肢を挙げ, 調査した 近いものがない場合はその他を 選択し, 子どもたちの実態を記述していただいた 図 6 2 教師 : 土日に子どもたちはどのように過ごしていると思いますか (2 つ選択 ) 小学校教師 32.4 5.9 4.3 25.8 22.1 1.1 8.2 0.2 中学校教師 38.0 12.0 5.3 7.7 28.8 1.0 7.2 スポーツ ( 運動などの部活を含む ) 学習などの習い事 学習以外の習い事 ( 運動以外の部活を含む ) 友達と遊んでいる 家でのんびり過ごしている 買い物などに行って家の人とすごしている 地域活動 ( 子ども会やボランティア活動などを含む ) に参加 その他 2 地域の方々 : 土日に子どもたちはどのように過ごしていると思いますか (2 つ選択 ) 図 7 地域 小学生 地域 中学生 22.3 15.2 59.4 27.5 11.6 4.8 25.6 16.9 1.4 5.2 0.1 5.0 5.8 2.8 スポーツ ( 運動などの部活を含む ) 買い物などに行って家の人と過ごしている地域活動 ( 子ども会やボランティア活動などを含む ) に参加その他 習い事友達と遊んでいる家でのんびり過ごしている 図 4 では, どの学年も スポーツ 買い物などに行って家の人と過ごしている で約半数を 占めている だが, 内容には差がある これは, 中学校入学を機に運動系の部活を始めたの で, 家の人と過ごす時間が減った子どもが増えているからだと思われる また, 買い物などに行って家の人と過ごしている 項目における小中学生の差は大きい 中学生は自己の自立過程にあり, 家の人と過ごすことが少なくなり, 友達と過ごすことを大切にしている傾向もあると思われる は, 学習の習い事 が増えている これは, 高校受験を控えているからだと思われる 図 4 と 図 5 とを比べてみると, やはり スポーツ と 買い物などに行って家の人と過ごしている で半数を占めているのだが, その 2 つの割合には差がある 特に小学生の保護者は, スポーツ が終わってから家族で過ごす時間を大切にしていると思われる 中学生と中学生の保護者の捉え方は, ほぼ一致している 図 7 のグラフでは, 極端に スポーツ が多い これは, 地域の方が土日に学校のジャージ姿で登校する中学生の姿をよく見かけるからだと思われる 図 6 と 図 7 は, 家でのんびり過ごしている 割合が 10% 未満だが, 図 4 と 図 5 とを比べると少ないので, 教師や地域の方が思っているよりも家でのんびり過ごしている子どももいることがわかる - 38 -
3-3 公園で自分より小さな子が泣いています けがをして動けないようです あなたはどうしますか 子どもたちを対象に, 公園でけがをして困っている子どもを見かけたとき, どのように対処する と思うか,5 つの選択肢を挙げ, 調査した また, 保護者を対象に, 子どもがどのように対処する かを調査した 3 子ども : 公園で自分より小さな子が泣いています けがをして動けないようです あなたはどうしますか 図 8 41.0 23.2 21.1 8.5 6.2 33.0 16.3 29.7 6.6 14.4 22.7 12.3 41.4 11.4 12.2 19.7 9.2 39.8 11.2 20.1 21.1 10.1 44.3 14.8 9.7 声をかけて, 近くの家に行って, 大人の人を呼ぶ 声をかけて, 自分の家に帰って, 家の人を呼ぶ 声をかけて, けがをしている子の家の人に知らせる 声をかけない その他 3 保護者 : お子さんが公園で自分より小さな子が泣いているのをみつけました お子さんはどのように行動すると思いますか 図 9 14.2 48.3 25.0 4.2 8.3 11.7 45.8 33.3 2.5 6.7 15.0 31.7 40.8 9.2 3.3 21.2 26.3 42.5 7.5 2.5 21.3 27.5 35.0 10.0 6.2 声をかけて, 近くの家に行って, 大人の人を呼ぶ声をかけて, けがをしている子の家の人に知らせるその他 声をかけて, 自分の家に帰って, 家の人を呼ぶ声をかけない - 39 -
教師や地域の方々を対象に, 子どもたちが, 公園でけがをして困っている子どもを見かけ たとき, どのように対処すると思うか, 子どもたちがとる行動に近いと思われるものについて 5 つ の選択肢を挙げ, 調査した 3 公園で小さな子が泣いています けがをして動けないようです 近くを通りかかった子どもはどのように行動すると思いますか 図 10 小学校教師 30.4 25.8 36.6 2.64.6 地域 小学生 32.9 26.1 29.4 9.4 2.2 中学校教師 39.6 11.3 39.6 3.8 5.7 地域 中学生 55.9 10.8 27.5 5.8 声をかけて, 近くの家に行って, 大人の人を呼ぶ声をかけて, けがをしている子の家の人に知らせるその他 声をかけて, 自分の家に帰って, 家の人を呼ぶ声をかけない 図 8 では, 下学年ほど, 近くの家に行って大人の人を呼ぶ 声をかけて自分の家に帰って家の人を呼ぶ と答えた子どもが多く, 学年が上がるにつれて けがをしている子の家の人に知らせる 声をかけない と答える子どもが多い また, その他を選択した子どもは, 水で洗って, 手当をしてあげる 家から消毒液を持ってきて処置をする 家に連れていってあげる 動けない場合は, 救急車を呼ぶ など, 子どもたちがけがをした子への処置をする内容のものが多かった 図 8 と 図 9 とを比べてみると, 保護者は家の人を呼ぶと答えている割合が圧倒的に多い また, 保護者が選択したその他の内容は, 親に電話をしてどうすればよいか聞く 友達と一緒なら声をかける など, 自分では決断せずに, 誰かに頼る傾向がある回答が多い 保護者が思っている以上に, 子どもたちは自分で他人に助けを求めることができると思っているようである 図 8 と 図 10 の小学生のグラフはほぼ一致している 地域の方や教師は1 人の子どもではなく, たくさんの小学生と接する機会が多いので, 一致したと思われる だが, 図 8 と 図 10 の中学生のグラフに大きな差がある 声をかけて, 近くの家に行って, 大人の人を呼ぶ 声をかけない の両極端の項目の割合が多い これは, 中学生だから小さな子に対して対処できるだろうという考えとともに, 一方では無関心を装うという地域の方の中学生へのイメージがあると思われる - 40 -
第 3 章のまとめ 第 3 章では, 子どもと地域社会の人間関係の様子について調査し, 次のようなことがわかった 自発的なあいさつについて, 子どもが認識しているほど大人は感じていない傾向にある 3-1の調査では, 自発的にあいさつをすると答えている子どもは学年が上がるにつれ, 割合が増加するが, になると激減している 思春期真っ只中で他人との関わりを煩わしく思ったり, 自分 ( 身内 ) は自分 ( 身内 ), 他人は他人と割りきって考えたりと地域との人間関係が希薄になっている年頃ともいえる 気になるのは子どものあいさつの認識と大人の感じている認識とのずれである とくに あまり話をしない人にも自発的にあいさつをしている という質問項目においては, 子どもが約 40% であるのに対し, 保護者は約 20%, 教師は10% 未満である 地域だけでなく家族間や学校生活においてもあまり積極的にあいさつをしていないという実態も考えられる また, 地域の方々も子どもたちが自発的にあいさつをしているとは感じていない さらに, 子どもは自発的にあいさつしているつもりであっても伝わっていないのである 形だけ ねばならない あいさつではなく, 相手に伝わるあいさつを身に付けさせたい ただ, 相互にあいさつをするという子どもを含めると約 90%, 会釈を含めるとほとんどがあいさつをしているといえる 地域の方々の願いとしては だれにでも自発的に である あいさつは人間関係を構築する最も基本的な行為の一つであり, 関係性を反映する行為でもある 地域ではもちろん, 家族間や学校生活の中でも大人が自ら自発的に相手に伝わるあいさつをするよう心掛けることも必要であるといえよう 土日は部活や習い事が忙しく, 地域活動には参加しない傾向にある 3-2の調査では, 総じて地域活動 ( 子ども会やボランティア活動 ) に参加する子どもが少ないといえる 小学生はスポーツや習い事が約 40% を占め, 次いで家族とともに過ごす時間が多い 家族での時間を大切にしているので, 家族で地域活動に参加したり話題にしたりすることで関係性を広げるきっかけをつくることができるであろう 中学生はスポーツや習い事が半数以上を占めている 休日といえども部活動もあり塾通いもあり, 平日以上に忙しい中学生は, 友達と遊んだり家でのんびり過ごしたりして残りの余暇を過ごしている 家族とともに過ごすことも減り, 特定の決まった狭い人間関係の中 ( あるいは家で一人 ) で過ごすことが多く, 地域社会への関心やつながりは薄れている傾向にあるといえる 困ったとき, 学年が低いほど地域に関係性を広げて行動することができる 3-3の調査では, けがをしている子どもへの対応の仕方に学年差がはっきりと現れている 学年が低いほど 近所の人を呼ぶ と答え, 学年が上がるにつれ, けがをしている子の家の人に知らせる と答える傾向にある また, 声をかけない と答えた子どもも学年が上がるほど増加している このことは学年が低いほど地域と密着しているため, 近所の人など地域に広げて行動を起こすことができると考えられる また, 学年が上がると, けがをしている子どもの話をよく聞いて家族の元へ連れて行くという対応ができるようになるともいえる 一方, 中学生に対する地域の方々のとらえ方は 近所の人を呼ぶ という答えが約 60%, 声をかけない という答えが約 30% を占める その場で対処できるであろうという思いと煩わしいことにあえて関わりをもとうとしないであろうという中学生に対するイメージがあるのであろう 3-1の調査とも関連しているが, 地域の方々は生徒が思っている以上に, 中学生は地域に関係性を求めていないと感じていると思われる まずはそのずれを解消するためにも地域社会に子どもたちを融合させる機会, 活動を促進していくことが望まれる -41-