平成29年7月九州北部豪雨の概要 7月5日から6日にかけて 停滞した梅雨前線に暖かく 湿った空気が流れ込んだ影響等により 線状降水帯 が形成 維持され 同じ場所に猛烈な雨を継続して 降らせたことから 九州北部地方で記録的な大雨と なった 朝倉では 降り始めから10数時間のうちに500ミリを 超える豪

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平成31年度予算概算決定額 森林整備事業 治山事業 林野公共事業 (平成30年度1次補正予算額5,199百万円 182, ,049 百万円 平成30年度第2次補正予算額 32,528百万円) 臨時 特別の措置 として31年度概算決定額44,128百万円を別途措置 対策のポイント 林業の成

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

22年5月 目次 .indd

表 を基本として 渓床勾配の区分に応じて 流木災害対策を中心とする配置計画の目安を示したものが図 である 治山事業においては 発生区域から堆積区域に至るまで 多様な渓流生態系の保全に留意しながら 森林整備と治山施設整備を可能な限り一体として実施していくよう留意する 図 6.1

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

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近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

土石流 流木対策の事例 ( 佐賀県楠地区 ) 保安林種 : 水源涵養保安林 土砂流出防備保安林 山地災害危険地区 : 山腹崩壊危険地区 2 箇所 崩壊土砂流出危険地区 6 箇所 保全対象 : 人家 83 戸 消防署 1 箇所 鉄道 500m 国県道 :700m 田畑 :10.4ha 一級河川厳木川

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2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8


スライド 1

平成 24 年度期中の評価実施地区一覧表 中部森林管理局 整理番号 都道府県 事業実施主体 事業名 事業実施地区名 総便益 B ( 千円 ) 総費用 C ( 千円 ) 分析結果 B/C 実施方針 1 富山富山森林管理署民有林直轄治山事業常願寺川じょうがんじがわ 41,617,999 11,895,0

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

土砂災害防止法よくある質問と回答 土砂災害防止法 ( 正式名称 : 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関 する法律 ) について よくいただく質問をまとめたものです Ⅰ. 土砂災害防止法について Q1. 土砂災害は年間どれくらい発生しているのですか? A. 全国では 年間約 1,00

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目 次 はじめに 第 1 平成 30 年 7 月豪雨による被災状況及び課題 被災状況

7/5 4:00 7/5 8:00 7/5 12:00 7/5 16:00 7/5 20:00 7/6 0:00 7/6 4:00 7/6 8:00 7/6 12:00 7/6 16:00 7/6 20:00 7/6 24:00 7/5 4:00 7/5 8:00 7/5 12:00 7/5 16:

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第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

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7 制御不能な二次災害を発生させない 7-1) 市街地での大規模火災の発生 7-2) 海上 臨海部の広域複合災害の発生 7-3) 沿線 沿道の建物倒壊による直接的な被害及び交通麻痺 7-4) ため池 ダム 防災施設 天然ダム等の損壊 機能不全による二次災害の発生 7-5) 有害物質の大規模拡散 流出

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熊本地震の緊急調査報告

国土技術政策総合研究所 研究資料

第 7 章砂防第 1 節砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ケ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県の地

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

目次 < 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 > 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 ( 気象 )1 1 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 ( 気象 )2 2 平成 29 年 7 月九州北部豪雨の概要 ( 被災状況 ) 3 < 水資源機構の支援の状況 > 被災地域へリエゾン 支援

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土砂災害 とは? 土砂の移動 が人命や資産 公共施設など 人間社会 に 被害 を及ぼす事象 土石流 山腹や渓床を構成する土砂石礫の一部が長雨や集中豪雨などによって水と一体となり 一気に下流へ押し流される現象 20~40km/h という速度で一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまう 地すべり 斜面の

平成16年6月26日11時00分

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項目別目次 森林被害編 1 森林において土砂崩れが発生してお困りの方 1 2 所有林の立木が被災されている方へ 2 3 保安林内の木が倒れてお困りの方へ 3 林道 作業道被害編 4 林道が崩壊等により通行ができない方へ 4 5 所有林の作業道が被災されている方へ 5 施設被害編 6 木材加工流通施設

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浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

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2017年北部九州豪雨災害調査

7 月 5 日から 6 日にかけて 対馬海峡付近に停滞した梅雨前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んだ影響等により 線状降水帯が形成 維持され 同じ場所に猛烈な雨を継続して降らせたことから 九州北部地方で記録的な大雨となった 九州北部地方では 7 月 5 日から 6 日までの総降水量が多いと

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資料 4 安全 安心の確保 ~ 道路の防災 震災対策 ~ Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

(案)

Transcription:

資料 2-1 平成 29 年 7 月九州北部豪雨から 1 年 ~ これまでの林野庁の取組について ~ 平成 30 年 7 月

平成29年7月九州北部豪雨の概要 7月5日から6日にかけて 停滞した梅雨前線に暖かく 湿った空気が流れ込んだ影響等により 線状降水帯 が形成 維持され 同じ場所に猛烈な雨を継続して 降らせたことから 九州北部地方で記録的な大雨と なった 朝倉では 降り始めから10数時間のうちに500ミリを 超える豪雨が 集中的に降った 日最大雨量の比較 7月5日の日雨量 600 朝倉 平成29年7月九州北部豪雨 日田 500 400 7月5日の日雨量 平成24年九州 北部豪雨 梅雨前線 梅雨前線 336 台風第4号 約3 9倍 300 約2 6倍 200 100 0 H28 H25 H22 H19 H16 H13 H10 H7 H4 H1 S61 期間降水量分布図 7月5日0時 6日24時 S58 S55 降雨状況 516 平均雨量 127 平均雨量 133 日田 朝倉 平均値算出期間は 1980 2016 降り始めからの累積雨量の比較 朝倉 降り始めから13時間後に 500ミリを超える 600 朝倉 500 朝倉 日田 降り始めから8時間後 400 に300ミリを超える 300 日田 1時間当たり106 1時間当たり74.5 200 参考 H24九州北部豪雨 日田 100 参考 H24九州北部豪雨 朝倉 0 10 時 10時間後 間 後 1時 間 1時間後 気象庁HPより 20 時 20時間後 間 後 日田 17.5 18.5 62.5 109 146 220 290 318 321 322 329 330 335 344 344 347 352 358 360 361 361 363 363 365 368 朝倉 1.5 2 林野庁作成 6 23.5 112 159 226 332 355 377 421 480 513 514 516 516 520 523 526 528 531 536 541 542 1

平成 29 年 7 月九州北部豪雨による主な被害状況 被害の状況 ( 平成 30 年 1 月 17 日時点 ) 内閣府防災 HP 及び消防庁 HP より 人的被害 : 死者 40 名 行方不明者 2 名 負傷者 22 名 建物被害 : 住宅被害 ( 全壊 323 棟 半壊 一部破損 1,148 棟 ) 道路その他の被害 : 橋脚等の倒壊 道路崩壊 通行止め 鉄道 ( 在来線 ) の運転休止等の発生 山地災害等の発生状況 ( 確定 ) 福岡県 林地被害 1,016 か所 278 億円 治山施設 2 か所 3 百万円 林道施設等 88 路線 41 億円 大分県 林地被害 61 か所 21 億円 治山施設 6 か所 3 億円 林道施設等 108 路線 10 億円 このほか 長崎県 熊本県などでも被害が発生 たるみず たるみず 福岡県 かのや 3 福岡県朝倉市 1 福岡県朝倉市 ( 寺内ダム ) 朝倉市 1 23 うきは市 4 東峰村 5 4 福岡県東峰村 久留米市 日田市 大分県 2 福岡県朝倉市 5 大分県日田市 2

平成 29 年 7 月九州北部豪雨発生後の対応経過 (1) 時系列 対応状況 平成 29 年 7 月 7 日 ~28 日 発災直後から 福岡県 大分県に林野庁担当官 ( リエゾン ) を派遣 7 月 8 日 10 日九州森林管理局において 福岡県 大分県及び森林総合研究所と合同でヘリコプター等による被害状況調査を実施 12 7 月 11 日山本農林水産大臣 ( 当時 ) が福岡県において現地調査を実施 7 月 12 日林野庁内に 流木災害等に対する治山対策検討チーム ( 以下 検討チーム という ) を設置 7 月 14 日礒崎農林水産副大臣が福岡県及び大分県において現地調査を実施 7 月 19 日 ~21 日検討チームによる現地調査を森林総合研究所 福岡県及び大分県と合同で実施 3 7 月 24 日 ~9 月 1 日 林野庁及び全国の各森林管理局技術者による 山地災害対策緊急展開チーム を福岡県に派遣 ( 延べ 274 人 ) し 現地調査や技術的支援を実施 45 8 月 25 日福岡県朝倉市の直轄治山災害関連緊急事業の実施を発表 8 月 29 日 ~31 日山地災害の発生メカニズム等を分析するため 学識経験者による現地調査を実施 6 1 ヘリコプターによる上空からの調査 2 マルチコプターによる映像を用いて地元住民に説明 3 検討チーム等による現地調査 3

平成 29 年 7 月九州北部豪雨発生後の対応経過 (2) 時系列 平成 29 年 9 月 26 日 対応状況 全国の中小河川の緊急点検を実施する国土交通省と連携して 全国の山地災害危険地区等の緊急点検を開始 11 月 2 日今後の事前防災 減災に向けた効果的な治山対策の在り方について検討結果を取りまとめた検討チームの 中間取りまとめ を公表 12 月 1 日緊急点検により抽出した緊急的 集中的に流木対策が必要な約 1,200 地区を公表 ( 流木災害防止緊急治山対策プロジェクト ) 平成 30 年 2 月 1 日 平成 29 年度補正予算が成立治山事業では 緊急点検により流木対策が必要と判明した流域の森林において 流木捕捉式治山ダムの設置など総合的な流木対策を実施 3 月 20 日山地災害の防止 軽減を図るため 土石流 流木対策に必要な技術に係る事項を取りまとめた 土石流 流木対策指針 を制定 4 月 1 日福岡県朝倉市における民有林直轄治山事業を着手 4 緊急展開チームによる現地調査 5 緊急展開チームによる技術的支援 6 学識経験者による現地調査 4

流木災害等に対する治山対策検討チーム 中間取りまとめの概要 (1) (1) 現地で確認された状況と山地災害の発生メカニズム 1 時間降水量 50ミリを上回るような強雨が長時間連続するなど 記録的な豪雨が発生 多量の雨水が周辺森林から0 次谷 等の凹地形へ集中し 土壌の深い部分まで浸透 立木の根系が及ぶ範囲より深い部分で表層崩壊が発生 ( 施業の有無よりも地形条件等の違いによる影響が大きいと考えられる ) 崩壊地に生育していた立木と崩壊土砂が 著しく増加した流水により 渓流周辺の立木や土砂を巻き込みながら下流域に流下 既設の治山ダムは 一部損壊が認められたものの 上流から流下した崩壊土砂や流木を捕捉 明瞭な流路を持たない谷頭の集水地形 多量の雨水が周辺森林から 0 次谷等の凹地形へ集中し 山腹崩壊が発生 崩壊地側部の立木 ( スギ 50 年生程度 ) は 深さ 2m 程度まで根が発達 立木の根系が及ぶ範囲より深い部分で表層崩壊が発生 既設の治山ダムが 上流から流下した崩壊土砂や流木を捕捉 山地災害の発生メカニズムのイメージ 5

流木災害等に対する治山対策検討チーム 中間取りまとめの概要(2) (2) 流木災害を踏まえた具体的な対策 森林の山地災害防止機能の向上を図ることを基本とした上で 大規模な山腹崩壊が発生する場合も想定し 下流域での 流木による被害を防止 軽減するため 森林域できめ細かな対策を実施 具体的には 流木災害の発生メカニズム等を踏まえつつ 0次谷等を 発生区域 その下流部を 流下区域 及び 堆積 区域 に区分し 崩壊土砂や流木の形態に応じた対策を実施 山腹崩壊の 発生を防止 保安林の適正な配備 間伐等による根系等の発達促進 土留工等による表面侵食の防止 等 流木化する可能性の高い立木 発生区域で生じた山腹崩壊 による被害拡大を抑制 流木化する可能性の高い立木の伐採に よる下流域の被害拡大の抑制 流木捕捉式治山ダムの設置等による効 果的な流木の捕捉 等 流木捕捉式治山ダム 森林を緩衝林として機能させることによ る堆砂の促進や流木の捕捉 治山ダムの設置等による渓床の安定や 流木の流出拡大防止 等 緩衝林として機能した森林 6

平成 29 年 7 月九州北部豪雨による被災地の復旧状況 ( 平成 30 年 6 月 30 日現在 ) 災害復旧等事業が採択された 336 地区のうち 193 地区において復旧工事に着手 ( 福岡県 138 地区 大分県 55 地区 ) 関係機関と連携を密にしつつ 早期の復旧整備を目指しています 崩壊斜面の復旧 荒廃渓流の復旧 応急対策として土のうの設置 添田町 たるみず たるみず 3 福岡県東峰村 ( 宝珠山国有林 ) かのや 福岡県朝倉市 ( 地区 ) 福岡県 朝倉市 3 4 4 福岡県添田町落合 1 福岡県朝倉市 ( 奈良ヶ谷川 ) 応急対策として土のうの設置 応荒廃渓流急対策として土のうを設置 1 2 うきは市 東峰村 5 日田市 崩壊斜面の復旧 大分県 2 福岡県朝倉市 ( 北川 ) 5 大分県日田市鶴河内 7

直轄治山災害関連緊急事業及び民有林直轄治山事業の実施 ( 福岡県朝倉市 ) 平成 29 年 7 月九州北部豪雨による大規模な林地崩壊について 福岡県知事からの要望等を踏まえ 朝倉市内の民有林において 国の直轄事業である直轄治山災害関連緊急事業を実施 さらに 国が集中的に復旧整備を行うため 平成 30 年度から民有林直轄治山事業に着手することとしている 位置図 主な対策 主な対策 < 流木捕捉式治山ダム > 渓床不安定土砂および流木を捕捉する 主な対策 航空実播工 民有林直轄治山事業の計画概要 事業計画期間 平成 30 年度 ~ 平成 39 年度 (10 年間 ) 予算措置状況 全体計画額 7,435 百万円 H30 当初予算 :470 百万円 (H30 末進捗見込 :6.3%) 主要工事計画 山腹工 87.8 ha H30 施工予定 18ha 渓間工 153 基 H30 施工予定 6 基 < 山腹工 > 表面侵食を抑制し 植生の回復を図る < 航空実播工 > 航空機により資材を散布し 緑化を図る 主な保全対象 人家 753 戸 公共施設 4 国県道 15km 市道その他道 44km 農地 89ha 8

流木災害防止緊急治山対策プロジェクト 点検内容 全国の中小河川の緊急点検を実施する国土交通省と連携して 崩壊土砂流出危険地区及び山腹崩壊危険地区 ( 約 18 万地区 ) 等について 緊急点検を実施 点検の内容 森林の状況 山腹崩壊等の発生履歴 地形 地質 等 点検結果 緊急的 集中的に流木対策が必要な地区 1,203 地区 抽出のポイント 渓流沿いに土石流等で流木化するおそれのある立木等が多数存在している 0 次谷等の凹地形及び渓床 渓流が荒廃している 上記箇所と同一の地質が流域内に広く分布している等 緊急対策の内容 約 3 年間対策費 : 約 600 億円 ( 事業費ベース ) 緊急点検により抽出した地区において 検討チームの中間取りまとめを踏まえた 以下の対策を実施なお 国土交通省と連携し 上下流一体となった対策にも取り組む 流木捕捉式治山ダムの設置 間伐等による根系等の発達促進 流木化する可能性の高い流路部の立木の伐採 等 間伐等による根系等の発達促進 流木捕捉式治山ダムの設置 流木化する可能性の高い立木の伐採 9

流木災害防止緊急治山対策プロジェクトの実施状況 ( 平成 30 年 6 月 30 日現在 ) 平成 29 年度補正予算及び平成 30 年度予算により 全国 1,203 地区のうち 783 地区で着手見込 (65%) 今後とも 流木対策の着実な実施に努めます 流木捕捉式治山ダムの設置 治山ダムの通水部にくし形等の鋼材を設置 渓床の安定 山脚の固定等を図りつつ 流木を捕捉 小型の流木捕捉工の設置 コンクリート基礎等の上に 小型の鋼製構造物を設置 主に渓床幅の狭い渓流に設置し 流木を捕捉 流木捕捉式治山ダム ( 滋賀県大津市 ) 小型の流木捕捉工 ( 山梨県甲州市 ) 渓流に堆積した危険木の除去 流木化する可能性の高い立木の伐採 渓流において 放置した場合流木となる可能性の高い堆積木 倒伏木等を重機等により安全な場所へ除去 流路部に生育している立木は 流木となる可能性が高いことから 渓流生態系の保全にも配慮しつつ伐採 危険木の除去作業 ( 新潟県上越市 ) 立木の伐採作業 ( 群馬県渋川市 ) 10