42 を対象とした食育活動は展開されていて, 昨年の調査では, 朝食欠食率は全国目標値より低く, 比較的食習慣は整っていることが確認できている しかしながら大学生の食生活はどうであろうか 生活リズムの乱れ, 不規則な食事, 朝食の欠食, 暴飲暴食など食行動が整わない状態が日常の様子から伺えないだろう

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41 茨城県立医療大学紀要第 21 巻 A S V P I Volume 21 原著論文 茨城大学農学部と茨城県立医療大学の学生協働による 地域貢献活動アンケートより 海山宏之 1), 綾部明江, 鶴見三代子, 西出弘美 3), 本村美和, 長澤ゆかり, 4) 5) 6) 7) 8) 山川百合子, 岩本浩二, 中村勇, 佐藤斉, 宮口右二, 沼口知恵子, 山口忍 1) 茨城県立医療大学保健医療学部人間科学センター 茨城県立医療大学保健医療学部看護学科 3) 茨城県立医療大学助産学専攻科 4) 茨城県立医療大学保健医療学部医科学センター 5) 茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科 6) 茨城県立医療大学保健医療学部作業療法学科 7) 茨城県立医療大学保健医療学部放射線技術科学科 8) 茨城大学農学部生物生産科学科 要旨本研究は学部生 860 人に対して行われたアンケート調査をもとに, 独り暮らし学生とそれ以外の対比を中心に大学生の食生活行動を調べ, その問題点の発見を目的としたものである 協力学生のほぼ 3 分の 2 が独り暮らしであり, 彼らの 45.6% が食生活について悩みや不安を抱えていて,30.4% が現在の食生活に必ずしも満足していない また彼らは朝食において欠食率が高いのみならず, 朝食以外の食事での欠食も多く, 外食の頻度も高かった また栄養バランスへの意識も低く, 食生活への満足度も低かった これらに関し, 独り暮らしでない学生との間に統的に有意差があることがわかった とりわけ問題なのは独り暮らしの男子学生であり, 一日一食以上欠食する者 22.4%, 朝食を全く食べない者 19.3%, 毎日 2 回以上外食する者 7.3% で, 食事の際栄養バランスを意識しない者 9.5% と複数の調査項目で独り暮らしの女子学生や同居学生に比べ, ワーストの結果を出している まず彼らに対する食育が大学における今後の課題となろう キーワード : 食育, 大学生の食生活行動, 独り暮らし大学生, 朝食の欠食率 序文食育基本法が平成 17 年に施行されて以来, 各自治体を中心として食育画が推進されている 1) 適切な生活習慣を身につけることが生活習慣病を予防 するという観点から, 主に義務教育の現場において工夫して取り組んでいるところが多々見られる -5) 少子高齢社会の我が国においては生活習慣病の予防は喫緊の課題であり, 幼少期からの食育教育は重要である 本学が位置する自治体においても小中学生 連絡先 : 海山宏之 茨城県立医療大学保健医療学部人間科学センター 300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見 4669-2 電 話 :029-840-2216 FAX:029-840-2316 E-mail:umiyama@ipu.ac.jp

42 を対象とした食育活動は展開されていて, 昨年の調査では, 朝食欠食率は全国目標値より低く, 比較的食習慣は整っていることが確認できている しかしながら大学生の食生活はどうであろうか 生活リズムの乱れ, 不規則な食事, 朝食の欠食, 暴飲暴食など食行動が整わない状態が日常の様子から伺えないだろうか 子育て時期の食事は母親にとっても優先順位が高い項目であるが 6), 大学生では保護者の庇護から離れていることも多く, ライフスキルとしての食生活行動をどの程度身につけているかは定かではない 平成 27 年度から始まる健やか親子 21( 第二次 ) 7) においても, 学童期から成人期に向けて継続した保健対策を基盤課題としており, 切れ目のない支援が重要視されている 本学が位置する自治体には隣接する二つの大学があり, 両大学は地域貢献活動の一環として協働で食育活動を実践している 本研究の目的の一つは, 大学生の食行動の状況を把握してまず自らを省み, 今後の地域ぐるみでの食育活動につなげていくことである また大学生の食行動の特徴が把握され, その問題点や特に力を入れるべき対象集団が特定されるならば, 本学の学生支援の取り組みとしての食育にもまっすぐつながって行く 生涯にわたるよりよい食生活と健康のために, 学生のため支援できることはないか そのための問題点の発見というところに, 本研究の二つ目の目的と意義がある 回収は, 各大学に回収ポストを準備し, 回答後各学生の自由意思によりポストに投函することで調査協力に同意したとみなした なお, 本研究の元となるアンケート調査は, 茨城県立医療大学倫理委員会の審査の下に実施した ( 承認番号 No.596) 4) 質問項目原アンケートでの質問項目は, 回答者プロファイルに関する質問 ( 性別 所属大学 学科 学年 サークル活動参加の有無 同参加頻度 同居の有無 )7 項目, および食生活 食育 健康状態 生活習慣 ボランティア活動 農業や医療への興味関心 地域貢献活動への興味関心を問う 48 項目の質問から構成されていた そのうち本研究で扱う回答データは, 回答者プロファイルに関する質問の他, 食事摂取に関する 7 項目, 自炊行動に関する 2 項目, 食生活の満足度に関する 3 項目, そして生活リズムに関わる 2 項目である 5) データ分析集したデータは IBM SPSS STATISTICS21 を用いて解析した 単純集, クロス集の他, 属性や設問間でカイ二乗検定を行った 結果 方法 1) 調査対象茨城県立医療大学保健医療学部学生 1 年生から 4 年生 690 名, 茨城大学農学部学生 1 年生から 4 年生 508 名に調査票を配布した 本研究で用いるデータは 茨城大学農学部と茨城県立医療大学の学生協働による地域貢献活動アンケート で回収された調査結果である 調査期間平成 26 年 10 月から平成 27 年 1 月末 3) 調査方法自記式質問票を, 各大学の教員が口頭と文書で学年のクラス代表に趣旨を説明し, 手渡しした その後クラス代表から, 各学生に口頭で説明後配布した 1) 回収率全体では 1,198 名に配布し,860 名から回答があった 回収率は 71.7% うち茨城県立医療大学から 575 名の回答が得られ ( 回収率 83.3%), 茨城大学農学部からは 284 名の回答が得られた ( 回収率 55.9%) 回答者の属性回答者の属性を表 1 に示す 医療大男子学生の独り暮らし率は 73.4% と最も高く, 茨城大男子学生 67.4%, 医療大女子学生 62.9%, 茨城大女子学生 60.6% の順であった 大学別では, 医療大の独り暮らし率が 66.3%, 茨城大が 63.7% である

43 表 1 回答者の属性 1 年生 2 年生 3 年生 4 年生 n n n n n 139 130 167 139 575 独り暮らし率 (%) 64.7% 66.2% 67.7% 66.2% 66.3% 女性 93 100 111 87 391 ( うち独り暮らし ) 60 64 71 51 246 女性の独り暮らし率 (%) 64.5% 64.0% 64.0% 58.6% 62.9% 男性 46 30 56 52 184 ( うち独り暮らし ) 30 22 42 41 135 男性の独り暮らし率 (%) 65.2% 73.3% 75.0% 78.8% 73.4% 96 104 69 15 284 独り暮らし率 (%) 58.3% 64.4% 63.8% 93.3% 63.7% 女性 51 58 35 11 155 ( うち独り暮らし ) 27 34 23 10 94 女性の独り暮らし率 (%) 52.9% 58.6% 65.7% 90.9% 60.6% 男性 45 46 34 4 129 ( うち独り暮らし ) 29 33 21 4 87 男性の独り暮らし率 (%) 64.4% 71.7% 61.8% 100.0% 67.4% 3) 食生活に抱く感想 日頃の食生活について悩みや不安はあるか という質問項目の結果を表 2 に示す 悩みや不安を持つ比率は独り暮らしの学生が高い 表 2 食生活について悩みや不安がある 食生活について悩みや不安がない 日頃の食生活に関する悩みや不安の有無 独り暮らしの学生 n (%) n (%) 95 (31.4) 253 (45.6) 208 (68.6) 302 (54.4) 303 555 また, 具体的な悩みや不安の内容を選択肢設問で答えてもらった結果を表 3 に示す 表 3 食生活への悩みや不安の内容 ( 複数回答 ) 独り暮らしの学生 n (%) n (%) 自分の食生活上の問題 168 (52.0) 75 (52.8) 自分の健康 76 (23.5) 33 (23. 家族の健康 10 (3.1) 3 (2.1) 家族の食生活上の問題 8 (2.5) 3 (2.1) 家や食費 53 (16.4) 26 (18.3) 食品の安全性 7 (2. 1 (0.7) その他 1 (0.3) 1 (0.7) 323 142 現在の食生活への満足度は表 4-1 の通りである 満足の度合いは独り暮らしでない学生が高く, やや不満 という項目では独り暮らし学生が独り暮らしでない学生の二倍以上の比率をみせている ( これ以降の表における 学生全体 は医療大学生と茨城大学生のデータの合算とする ) また食生活の満足度と独り暮らしか否かに関して, カイ二乗検定を行った ( 表 4- 食生活の満足度と独り暮らしか否かの間に統的に有意な関連がみられた (p<0.01) 表 4-1 現在の食生活への満足度 どちらとも満足まあ満足いえないやや不満不満 n (%) 学生全体 134 (15.0) 485 (54.4) 18 (2.0) 178 (20.0) 77 (8.6) 892 女性 80 (14.8) 312 (57.6) 10 (1.8) 117 (21.6) 23 (4. 542 男性 54 (15.4) 173 (49.4) 8 (2.3) 61 (17.4) 54 (15.4) 350 独り暮らし学生 51 (9.1) 325 (58. 12 (2. 143 (25.6) 27 (4.8) 558 女性 21 (6. 204 (60.4) 7 (2.1) 90 (26.6) 16 (4.7) 338 男性 30 (13.6) 121 (55.0) 5 (2.3) 53 (24.1) 11 (5.0) 220 83 (28.1) 160 (54. 6 (2.0) 35 (11.9) 11 (3.7) 295 女性 59 (28.9) 108 (52.9) 3 (1.5) 27 (13. 7 (3.4) 204 男性 24 (26.4) 52 (57.1) 3 (3.3) 8 (8.8) 4 (4.4) 91 表 4-2 食生活の満足度 と 独り暮らしか否か との関連 満足 まあ満足 どちらともいえない やや不満不満 独り暮らし学生 51 325 12 143 27 558 83 160 6 35 11 295 134 485 18 178 38 853 (p<0.01)

44 4) 朝食の摂取状況平日の朝食の摂取状況は表 5-1 の通りである 表 5-1 平日 ( 授業のある日 ) の朝食摂食状況 毎日食べる週 4~6 回食べる週 1~3 回食べる全く食べない 学生全体 447 (52.1) 187 (21.8) 140 (16.3) 84 (9.8) 858 女性 312 (57. 122 (22.4) 77 (14.1) 34 (6. 545 男性 135 (43.1) 65 (20.8) 63 (20.1) 50 (16.0) 313 独り暮らし学生 239 (42.5) 134 (23.8) 117 (20.8) 72 (12.8) 562 女性 163 (48.1) 82 (24. 65 (19. 29 (8.6) 339 男性 76 (34.1) 52 (23.3) 52 (23.3) 43 (19.3) 223 208 (70.3) 53 (17.9) 23 (7.8) 12 (4.1) 296 女性 149 (72.3) 40 (19.4) 12 (5.8) 5 (2.4) 206 男性 59 (65.6) 13 (14.4) 11 (12. 7 (7.8) 90 さらに平日の朝食摂取頻度と独り暮らしか否かに関して, カイ二乗検定を行った ( 表 5- 平日の朝食の頻度と独り暮らしか否かの間に統的に有意な関連があるという結果が得られた (p<0.05) 表 5-2 平日に朝食を摂るか と 独り暮らしか否か の関連 毎日食べる週 4~6 回食べる週 1~3 回食べる全く食べない 独り暮らし学生 239 134 117 72 562 208 53 23 12 296 447 187 140 84 858 (p<0.05) 文部科学省によって平成 21 年に行われた 大学生の食に関する実態や意識についてのインターネット調査 8) でも, 大学生の朝食の欠食率が調べられている それを上記結果と重ねたのが図 1 である ( 図 1 の 文科省調査 ( 自宅外学生 ) の項目は, 文科省のインターネット調査における 下宿 アパート その他 に分類される学生のデータである ) 48.6 25.4 8.9 17.1 42.5 23.8 20.8 12.8 61.1 19.5 6.1 13.3 52.1 21.8 16.3 9.8 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 4 6 1 3 図 1 文部科学省調査 ( 平成 21 年 ) との朝食摂食状況の比較 本稿では 毎日食べる 以外の選択肢を選んだもの, もしくは週二回以上欠食するものを 欠食 と考え, それにより欠食率を考察するが, 学生全体の率からも, 独り暮らしの学生の率からも, 本稿で調査対象とした学生は文科省調査における学生よりも欠食率は高く出ている またここで朝食摂取頻度と独り暮らしの男女の性別関連で, カイ二乗検定を行った ( 表 5-3) 独り暮らしの学生において, 性別と朝食の頻度の間に統的に有意な関連がみられた (p<0.01) 男子学生のほうが明らかに朝食を摂取する頻度が低い 表 5-3 平日に朝食を摂るか と ( 独り暮らしの ) 性別 の関連 毎日食べる週 4~6 回食べる週 1~3 回食べる全く食べない 独り暮らし女子学生 163 82 65 29 339 独り暮らし男子学生 76 52 52 43 223 239 134 117 72 562 (p<0.01) 平日に朝食を摂らない理由について選択肢設問で答えてもらった結果を表 6 に示す

45 表 6 朝食を摂らない理由 ( 複数回答 ) 学生全体 独り暮らし学生 女性 男性 女性 男性 女性 男性 n (%) n (%) 食欲がない 25 (13.4) 21 (14.1) 19 (13.0) 11 (9. 6 (14.6) 10 (34.5) 食事が用意されていない 10 (5.3) 19 (12.8) 9 (6. 15 (12.5) 1 (2.4) 4 (13.8) つくるのが面倒 39 (20.9) 39 (26. 31 (21. 35 (29. 8 (19.5) 4 (13.8) 食べないことが習慣に 16 (8.6) 13 (8.7) 14 (9.6) 11 (9. 2 (4.9) 2 (6.9) 太りたくない 49 (26. 24 (16.1) 35 (24.0) 20 (16.7) 14 (34.1) 4 (13.8) 食べる時間が無い 47 (25.1) 32 (21.5) 37 (25.3) 28 (23.3) 10 (24.4) 4 (13.8) その他 1 (0.5) 1 (0.7) 1 (0.7) 0 0 1 (3.4) 187 149 146 120 41 29 かどうかと独り暮らしか否かの間に, 統的にも有意な関連があるという結果がでている (p<0.01) 表 8-2 自炊するか否か と 独り暮らしか否か の関連 自分で料理する自分で料理しない 独り暮らし学生 457 101 558 110 193 303 567 294 861 (p<0.01) 次に, 休日の朝食の摂取状況を表 7-1 に挙げる ここでも独り暮らしの学生の欠食率は高い 表 7-1 休日 ( 授業のない日 ) の朝食摂食状況 いつも食べる食べないときがあるいつも食べない n (%) n (%) n (%) 学生全体 291 (34.0) 448 (52.3) 117 (13.7) 856 女性 191 (35.0) 289 (53.0) 65 (11.9) 545 男性 100 (32. 159 (51.1) 52 (16.7) 311 独り暮らし学生 155 (27.6) 310 (55.3) 96 (17.1) 561 女性 88 (26.0) 201 (59.3) 50 (14.7) 339 男性 67 (30. 109 (49.1) 46 (20.7) 222 136 (46.1) 138 (46.8) 21(7.1) 295 女性 103 (50.0) 88 (42.7) 15 (7.3) 206 男性 33 (37.1) 50 (56. 6 (6.7) 89 休日の朝食摂取頻度と独り暮らしか否かに関わって, カイ二乗検定を行った ( 表 7- 休日の朝食の頻度と独り暮らしか否かの間に統的に有意な関連がみられた (p<0.05) 表 7-2 休日に朝食を摂るか と 独り暮らしか否か の関連 いつも食べる食べないときがあるいつも食べない 独り暮らし学生 155 310 96 561 136 138 21 295 291 448 117 856 (p<0.05) 5) 自炊行動食事に関して, 自分で料理するかどうかを問うた設問の結果は表 8-1 の通りである 表 8-1 学生の自炊状況 また, 自分で料理する頻度を選択肢設問で答えてもらった結果を表 8-3 に示す 表 8-3 大学生の自炊の頻度 ほぼ毎日 週 4~5 日程度 週 2~3 日程度 週 1 日程度 それ未満 n (%) 学生全体 152 (24.6) 170 (27.6) 145 (23.5) 91 (14.7) 59 (9.6) 617 女性 106 (26.7) 111 (28.0) 84 (21. 57 (14.4) 39 (9.8) 397 男性 46 (20.9) 59 (26.8) 61 (27.7) 34 (15.5) 20 (9.1) 220 独り暮らし学生 140 (28.4) 160 (32.5) 119 (24.1) 51 (10.3) 23 (4.7) 493 女性 98 (31. 105 (33.4) 69 (22.0) 27 (8.6) 15 (4.8) 314 男性 42 (23.5) 55 (30.7) 50 (27.9) 24 (13.4) 8 (4.5) 179 6) 外食の頻度外食の頻度を問うた設問の結果は表 9 の通りである ( ここでの 外食 には, 学生食堂での食事や家庭やそれ以外の場所での出前, 市販のお弁当を食べることも含むとアンケートには明記してある ) 表 9 毎日 2 回以上外食をする 大学生の外食の頻度 毎日 1 回以上 2 回未満外食をする 週 2 回以上 7 回未満外食をする 外食しない または週 2 回未満外食をする 学生全体 42 (4.9) 179 (21.0) 383 (45.0) 248 (29.1) 852 女性 20 (3.7) 91 (16.8) 250 (46. 180 (33.3) 541 男性 22 (7.1) 88 (28.3) 133 (42.8) 68 (21.9) 311 独り暮らし学生 30 (5.4) 123 (22.1) 258 (46.4) 145 (26.1) 556 女性 14 (4. 60 (17.9) 166 (49.4) 96 (28.6) 336 男性 16 (7.3) 63 (28.6) 92 (41.8) 49 (22.3) 220 外食の頻度と独り暮らしか否かという点についての有意差は出ていない 7) 欠食の状況朝食のみならず, 朝昼晩三食の摂取における欠食の頻度を問うたものを表 10-1 に示す 自分で料理する 料理しない n (%) n (%) 表 10-1 朝昼晩の食事の欠食状況 学生全体 561 (65.8) 291 (34. 852 女性 364 (67. 178 (32.8) 542 男性 197 (63.5) 113 (36.5) 310 独り暮らし学生 455 (81.8) 101 (18. 556 女性 291 (86.4) 46 (13.6) 337 男性 164 (74.9) 55 (25.1) 219 自分で料理するか否かと独り暮らしか否かに関連して, カイ二乗検定を行った ( 表 8- 自炊する 毎日 1 食以上欠食をする 週 4 食以上 7 食未満欠食をする 週 2 食以上 4 食未満欠食をする 欠食しない または週 2 食未満欠食する 学生全体 104 (12. 112 (13.1) 183 (21.5) 453 (53. 852 女性 46 (8.5) 73 (13.5) 119 (22.0) 304 (56.1) 542 男性 58 (18.7) 39 (12.6) 64 (20.6) 149 (48.1) 310 独り暮らし学生 82 (14.7) 93 (16.7) 135 (24.3) 246 (44. 556 女性 33 (9.8) 63 (18.7) 86 (25.5) 155 (46.0) 337 男性 49 (22.4) 30 (13.7) 49 (22.4) 91 (41.6) 219 22 (7.4) 19 (6.4) 48 (16. 207 (69.9) 296 女性 13 (6.3) 10 (4.9) 33 (16.1) 149 (72.7) 205 男性 9 (9.9) 9 (9.9) 15 (16.5) 58 (63.7) 91

46 三食の欠食頻度と独り暮らしか否かに関連して, カイ二乗検定を行った ( 表 10- 欠食の頻度と独り暮らしか否かの間に統的に有意な関連がみられた (p<0.05) 表 10-2 三食の欠食の頻度 と 独り暮らしか否か の関連 毎日 1 食以上欠食をする 週 4 食以上 7 食未満欠食をする 週 2 食以上 4 食未満欠食をする 欠食しない または週 2 食未満欠食する 独り暮らし学生 82 93 135 246 556 22 19 48 207 296 104 112 183 453 852 (p<0.05) 8) 栄養バランス意識食事の摂取の際の栄養バランス意識については表 11-1 の通りである 独り暮らし学生にとりわけ顕著な意識の差異はみられない 表 12 12. 表 12 間食の頻度 間食の頻度 ほぼ毎日のように週 2 回以上は週 2 回未満間食しない間食をする間食をする間食をする 学生全体 192 (22.4) 326 (38.0) 238 (27.7) 102 (11.9) 858 女性 125 (22.9) 218 (40.0) 151 (27.7) 51 (9.4) 545 男性 67 (21.4) 108 (34.5) 87 (27.8) 51 (16.3) 313 独り暮らし学生 117 (20.8) 209 (37.1) 166 (29.5) 71 (12.6) 563 女性 73 (21.5) 130 (38. 106 (31. 31 (9.1) 340 男性 44 (19.7) 79 (35.4) 60 (26.9) 40 (17.9) 223 10) 生活リズム起床時間について問うた結果が図 2 であり, 就寝時間について問うた結果が図 3 である 独り暮らし学生のほうが, 若干遅くまで起きていて, 起床時間も遅い傾向がみられる 表 11-1 食事摂取時における栄養バランスの意識 意識している時々意識しているあまり意識していない意識していない 学生全体 175 (20.5) 430 (50.4) 181 (21. 67 (7.9) 791 女性 113 (20.8) 279 (51.5) 113 (20.8) 37 (6.8) 491 男性 62 (19.9) 151 (48.6) 68 (21.9) 30 (9.6) 424 独り暮らし学生 115 (20.6) 276 (49.6) 124 (22.3) 42 (7.5) 557 女性 72 (21.4) 170 (50.4) 74 (22.0) 21 (6. 337 男性 43 (19.5) 106 (48. 50 (22.7) 21 (9.5) 220 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 6 6 6 6 7 7 7 7 8 8 図 2 大学生の起床時間 栄養バランス意識と平日の朝食の摂取頻度に関連してカイ二乗検定を行った ( 表 11- その結果, ここでは平日の朝食の摂取頻度と栄養バランス意識の軽重の間に統的に有意な関連がみられることがわかった (p<0.01) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 20 21 21 22 22 23 23 24 24 図 3 大学生の就寝時間考察 平日の朝食は毎日食べる 平日の朝食は週 4~6 回食べる 平日の朝食は週 1~3 回食べる 平日の朝食は全く食べない 表 11-2 平日に朝食を摂るか と 栄養バランス意識 の関連 意識している時々意識しているあまり意識していない意識していない 120 221 79 24 444 28 105 39 15 187 16 74 38 13 141 11 31 26 14 82 175 431 182 66 854 (p<0.01) 9) 間食の頻度間食の頻度についての設問の結果が表 12 である 間食の比率は, 独り暮らし学生の方が若干低めである 1. の問題茨城県立医療大学と茨城大学の学部生をサンプルとして得られた本研究のデータ (n=860) は, 食生活行動における独り暮らし学生のやや貧弱な内実を表している 両大学ともに, 回答者学生のほぼ 3 分の 2 が独り暮らしであるが ( 医療大 66.3%, 茨城大 63.7%), この独り暮らし学生の 45.6% が食生活について悩みや不安を抱えていて, それが統的に有意に独り暮らしであるという点に関連していた (p<0.01) そしてその悩みや不安は, 独り暮らし学生においては専ら 自分の食生活上の問題, 自分の健康, 家や食費 に関わるものであった また, 現在の食生活の満足度も独り暮らしか否かに関連し, 独り暮らし学生において食生活への満足傾向が低かった

47 2. 独り暮らし大学生の朝食摂取状況平日の朝食の摂取頻度においても, 独り暮らし学生とそれ以外において有意に独り暮らし学生の欠食率が高い 平成 21 年の文部科学省による 大学生の食に関する実体や意識についてのインターネット調査 と本研究のデータを比べたのが図 1 である いわゆる朝食の欠食率 ( 朝食を全く食べないとするもの ) に関しては, 文科省調査の 大学生全体 (13.3%) に対し本研究の 学生全体 (9.8%), 文科省調査の 自宅外学生 (17.1%) に対し本研究の 独り暮らし学生 (12.8%) と, ともに低率に抑えられているようにもみえる しかしながらこれに 週 1 ~ 3 回食べる という選択肢を加えた欠食傾向の選択の合として見ると, 大学生全体 (19.4%) に対し本研究の 学生全体 (26.1%), 自宅外学生 (26.0%) に対し 独り暮らし学生 (33.6%) と, 数値は逆転する さらに朝食を毎日食べるというポジティブな傾向の選択肢においては, 大学生全体 (61.1%) に対し 学生全体 (52.1%), 自宅外学生 (48.6%) に対し 独り暮らし学生 (42.5%) と明らかに下回っていて, 今回の調査対象の学生の朝食摂取傾向は全国レベルでみて決して良いとは言えない また, とりわけ欠食が多いのは独り暮らしの男子学生であり, 全く食べない と 週 1 ~ 3 回食べる の選択の合が 42.6% に達している 朝食摂取の頻度と性別の関連においても, 男子学生の欠食傾向が有意に高いという結果も出ている 平日に朝食を摂らない理由としては, 学生全体および独り暮らし学生を通じて 食べる時間がない というものが多く, とりわけ女子学生においては 太りたくない が目立つ 独り暮らし学生に限れば, 食べる時間がない に加えて つくるのが面倒 という理由がかなり多い 休日の朝食の摂取頻度でも, 独り暮らし学生とそれ以外において有意に独り暮らし学生の欠食率が高い だが休日に朝食を摂らない比率は, 独り暮らし学生において女性 ( いつも食べる 以外の合が 74%) が男性 ( 同じく合が 69.8%) を逆転して高い欠食率となっている 3. の特徴独り暮らし学生は自炊 ( 自分で料理する ) 率が高く 81.8% であるのに対し, 学生全体では 65.8%( 独 り暮らし以外の学生に限れば 36.3%) となっている 独り暮らし学生とそれ以外において, 自炊率も有意に独り暮らし学生の方が高い (p<0.01) また特に独り暮らしの女子学生においては, 自炊率が 86.4% に至っている 外食の頻度では, 学生全体に対して一様に独り暮らし学生の方が外食する比率は高いが微差であり, 決して大きくはない 週 2 回以上 7 回未満の外食と回答した者がほぼ半数弱であり, 外食しないまたは週 2 回未満外食すると答えた者が 3 割弱という傾向は一致している 朝食だけでなく, 朝昼晩の三食における欠食に関しては, 独り暮らし学生とそれ以外において有意に独り暮らし学生の欠食頻度が高い (p<0.05) また, 女性に比べて男性の方が欠食頻度がやや多い傾向がある そして独り暮らし以外の学生において 欠食しない, または週 2 食未満欠食をする が 69.9% になるのに対して, 独り暮らしの男子学生では 毎日 1 食以上欠食する が 22.4% にもなっている これは独り暮らし女子学生 (9.8%) に比べても,2 倍以上の高率である 食事の際に栄養バランスを意識している人ほど, 朝食の摂取頻度が高いという結果も出ている だがこの栄養バランス意識に関して, 独り暮らしとそれ以外に有意な差はみられていない 間食の頻度においては, 男性より女性の比率が若干高く出ている また独り暮らし学生の方が間食する頻度がやや低くなっているのが特徴である 就寝時間に関して独り暮らしの学生は, より夜遅くまで起きている傾向にあり, 起床時間に関してもかなり遅い傾向がみられる そしてこれが朝食を摂らない理由の一つに挙げられている 食べる時間がない に関わってくるものと考えられる 食習慣の問題は睡眠問題の一つの表現形でもあり, 独り暮らし学生の朝食頻度が有意に低いことにこの生活リズムが関与し, 生活習慣の連鎖が形成されているとも考えられるのである 10) 厚生労働省による 平成 25 年国民健康 栄養調査結果の概要 9) によれば, 朝食の欠食率は男性 14.4%, 女性 9.8% と男性が高く, 性 年齢階級別にみると男女ともに 20 歳代で最も高く, 男性で 30.0%, 女性で 25.4% となっている 茨城県立医療大学と茨城大学農学部の学生の協力

48 によって行われた今回の調査結果では, 平日の朝食の欠食率 ( 男性 16.0%, 女性 6.2%), 休日の朝食の欠食率 ( 男性 16.7%, 女性 11.9%) ともに全国平均の 20 歳代のデータを下回る だが先述のように, 今回の調査学生は文部科学省によって行われた 大学生の食に関する実態や意識についてのインターネット調査 の結果よりも欠食傾向は高い 調査結果から伺える独り暮らし学生像は, 外食の頻度が高くて栄養バランスへの意識も低い, 食生活に満足できずに不安や悩みを抱える学生である そしてなにより独り暮らし学生の男子において, 一日一食以上欠食する者 22.4%, うち朝食を全く食べない者 19.3%, 毎日 2 回以上外食する者 7.3% で, 食事の際栄養バランスを意識しない者 9.5% と複数の調査項目においてワーストの結果を出している点が非常に危惧される また独り暮らしの女子学生においても食生活行動の現状への不満は男子学生に劣らず高く, 休日の朝食欠食率ではむしろ男子学生を上回る 今後の課題として, 独り暮らし大学生の食事の摂取内容の把握, 具体的な栄養バランスについての意識内容などに調査を進める必要があると思われる 程度の差こそあれ, 今回の調査でのは, 自宅を中心としたいずれかの人との同居をしている大学生のそれに比べ問題点をはらんでいるという結果が現れている これは専ら独り暮らしを始めたということ, 言い換えれば 自分で自分の食を作り, 生活を作る 事態への適応の遅れから来るものだと考えられる 食への意識を高め, 大学生の食生活の改善を図るには, 特にこれら独り暮らし学生に対する食育の充実が課題であると言えるだろう と食育 : 地域における食育推進の事例科から. 学校保健研究.2012;Vol.53,500-504 4) 中西明美, 武見ゆかり. メディアリテラシーの視点を取り入れた児童の食育プログラムの開発 - 東京都 S 区内 S 小学校 6 年生での試み-. 学校保健研究.2011 5) 東京都教育委員会. 平成 26 年度文部科学省事業委託 スーパー食育スクール 報告書 6) 堤ちはる他. 幼稚園 保育所の幼児と保護者の食生活に関する実態調査平成 22 年度こども未来財団研究事業.2011 7) 健やか親子 21( 第二次 ) 厚生の指標国民衛生の動向.2014/2015;Vol.61,No9,114 8) 文部科学省 HP 大学生の食育について考えるために~ 大学生の食に関する実態や意識についてのインターネット調査 結果の概要 ~. http://www8.cao.go.jp/syokuiku/data/ whitepaper/2010/book/html/column01_02_01. html.[2015.9.05] 9) 厚生労働省 HP 平成 25 年国民健康 栄養調査結果の概要. http://www.mhlw.go.jp/file/04- Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku- Gantaisakukenkouzoushinka/0000068070.pdf. [2015.9.05] 10) 根ヶ山光一, 外山紀子, 河原紀子. 子どもと食 - 食育を超える-. 東京大学出版会,2013, 201-202. 文献 1) 内閣府, 食育基本画 http://www8.cao.go.jp/syokuiku/about/plan/ index.html[2015.9.05] 春木敏. 児童を対象とするライフスキル形成に基礎を置く食生活教育プログラムの開発と評価に関する研究, 栄養学雑誌.2009;Vol.67, No4,178-185 3) 武見ゆかり, 久保彰子. ヘルスプロモーション

49 The Eating Habits of Undergraduate Students Who Live Alone - Questionnaire Survey of Undergraduate Students of Ibaraki Prefectural University and Ibaraki University - Hiroyuki Umiyama 1),Akie Ayabe,Miyoko Tsurumi,Hiromi Nishide 3), Miwa Motomura,Yukari Nagasawa,Yuriko Yamakawa 4),Kouji Iwamoto 5), Isamu Nakamura 6),Hitoshi Sato 7),Yuji Miyaguti 8),Chieko Numaguchi, Shinobu Yamaguchi 1) Center for Humanities and Sciences, School of Health Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences Department of Nursing, School of Health Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 3) Graduate Program in Midwifery, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 4) Center for Medical Sciences, School of Health Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 5) Department of Physical Therapy, School of Health Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 6) Department of Occupational Therapy, School of Health Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 7) Department of Radiological Sciences, School of Health Sciences, Ibaraki Prefectural University of Health Sciences 8) Department of Animal Husbandry, Faculty of Agriculture, Ibaraki University Abstract The aim of this study was to identify problems in the dietary behavior of university students. Using a questionnaire survey of 860 undergraduates, students living alone were compared with those living in other conditions. Results show that nearly two in three students surveyed lived alone, and 45.6% of them felt some concern or anxiety regarding their diet, with 30.4% answering that they were not completely satisfied with their current diet. These students frequently skipped breakfast and other meals and ate out often. They had poor awareness of nutritional balance and expressed low dietary satisfaction. Significant differences were noted for the above items when students who lived alone were compared with those who did not live alone. Male students living alone exhibited the greatest problems, producing the worst results in many survey items: 22.4 % skipped more than one meal a day, 19.3% did not eat breakfast at all, 7.3% ate out at least twice a day, and 9.5% were not aware of the nutritional balance of their meals. Results suggested that the first challenge for the future will be to introduce dietary education for such students at universities. Key words:dietary education, eating habits of undergraduate students, undergraduate students who live alone, skipping rate of breakfast