北朝鮮による核 弾道ミサイル開発について 平成 30 年 10 月 防衛省
北朝鮮による核実験 弾道ミサイル発射事案 2016 年来 3 回の核実験の他 40 発もの弾道ミサイルの発射を強行〇 2017 年後半は特に 新型を含む長射程の弾道ミサイルを繰り返し発射 24 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 近年の北朝鮮による弾道ミサイル発射数 2 0 11 2 23 17 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2 月 12 日第 3 回核実験 1 月 6 日第 4 回核実験 9 月 9 日第 5 回核実験 9 月 3 日第 6 回核実験 先軍政治 軍事をすべての事業に優先させる 並進路線 経済建設と核武力建設を並進させる 北朝鮮の弾道ミサイル発射数 核実験回数 指導者 金日成主席 金正日国防委員長 金正恩国務委員長 年 弾道ミサイル発射数 核実験 1993 年不明 1994 年 ~ 2011 年 2012 年 ~ 現在 16 発 (1998 年 2006 年 2009 年に発射 ) 2 回 55 発 4 回 1
30 (m) (JANE S STRATEGIC WEAPON SYSTEMS 等を基に作成 ) 北朝鮮が保有 開発する弾道ミサイル 注 青字は北朝鮮の呼称 火星 15 20 火星 12 火星 14 08 14 ER 改良型 10 B C 改良型 北極星 北極星 2 射程 トクサ 約 120km スカッドB C ER 改良型 約 300km/ 約 500km/ 約 1,000km/ 分析中 ノドン 改良型 約 1,300km/ 1,500km ムスダン 約 2,500~ 4,000km SLBM 1,000km 以上 SLBM の地上発射改良型 1,000km 以上 IRBM 級 約 5,000km ICBM 級 5,500km 以上 ICBM 級の新型 10,000km 以上 テポドン 2 派生型 10,000km 以上 KN-08/KN-14 5,500km 以上 (ICBM との指摘 ) 燃料固体液体液体液体固体固体液体液体液体液体液体 運用 TEL TEL TEL TEL 潜水艦 TEL TEL TEL TEL 発射場 TEL 弾頭の重量等による 2
我が国を射程に収め得る弾道ミサイル 実戦配備済のスカッド ノドンの訓練発射 運用能力の向上 SLBM や固体燃料推進方式の弾道ミサイル 秘匿性 即時性向上 ( 発射の兆候把握が困難 ) IRBM 級や ICBM 級弾道ミサイル 発射角度 ( ロフテッド軌道 ) によっては我が国にも飛来 スカッド ER (2017 年 3 月 ) スカッド及びノドン (2016 年 7 月 ) SLBM 北極星 1 (2016 年 4 月 ) 固体燃料推進方式 北極星 2 (2017 年 2 月 ) 注 : は北朝鮮の呼称 3
米国を射程に収め得る弾道ミサイル IRBM 級弾道ミサイル ( 火星 12 型 ) は 射程約 5,000 km ( グアムを射程に収める ) ICBM 級弾道ミサイル ( 火星 14 型 ) は 射程 5,500 km以上 新型の ICBM 級弾道ミサイル ( 火星 15 型 ) は 射程 1 万 km 以上 ICBM 級 火星 14 型 (2017 年 7 月 ) イメージ図 注 : は北朝鮮の呼称 弾頭の重量等による 新型の ICBM 級 火星 15 型 (2017 年 11 月 ) IRBM 級 火星 12 型 (2017 年 5 月 8 月 9 月 ) 8 月 29 日の発射イメージ 9 月 15 日の発射イメージ 発射イメージ 注 : は北朝鮮の呼称 4
北朝鮮の弾道ミサイル開発の動向 1 長射程化 テポドン 2 派生型 (2016 年 2 月 ) ICBM 級弾道ミサイル (2017 年 7 月 ) 新型とみられる ICBM 級弾道ミサイル (2017 年 11 月 ) 2 飽和攻撃のために必要な正確性及び運用能力の向上 スカッド ER 3 発を同時発射 (2016 年 9 月 ) スカッド ER 4 発を同時発射 (2017 年 3 月 ) 攻撃の正確性の向上を企図しているとみられるスカッド改良型 (2017 年 5 月 ) 3 奇襲的な攻撃能力の向上 発射台付き車両 (TEL) からの発射 潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM) の発射 固体燃料推進方式の弾道ミサイルの発射 発射の兆候把握を困難にするための秘匿性や即時性の向上 4 発射形態の多様化 ロフテッド軌道 による発射 一般論として 迎撃がより困難 テポドン 2 派生型 スカッド改良型 ( 平成 29 年 5 月 ) IRBM 級弾道ミサイル ( 平成 29 年 9 月 ) (TEL から発射 ) ムスダン (2016 年 6 月 ) IRBM 級弾道ミサイル (2017 年 5 月 ) ICBM 級弾道ミサイル (2017 年 7 月 ) 新型 ICBM 級弾道ミサイル (2017 年 11 月 ) 5
北朝鮮による核開発の現状について 観測された地震の規模及び推定出力 過去 5 回の核実験と比較すれば 最大の出力 豊渓里 ( プンゲリ ) 地震の規模 (CTBTO 発表の値 ) 2006 年 10 月 2009 年 5 月 2013 年 2 月 2016 年 1 月 2016 年 9 月 2017 年 9 月 M4.1 M4.52 M4.9 M4.85 M5.1 M6.1 いずれも震源地は北朝鮮北東部 豊渓里周辺 推定される出力 ( TNT 換算 ) 約 0.5-1kT 約 2-3kT 約 6-7kT 約 6-7kT 約 11-12kT 約 160kT 水爆の保有に関する評価 17 年 9 月の核実験について 北朝鮮は 水爆実験を成功裏に断行したと主張 推定出力から考えれば 水爆実験であった可能性も否定できないものと認識 小型化 弾頭化に関する評価 5 回目の核実験について 新たに研究 製作した核弾頭の威力判定のための核爆発実験が成功裏に行われた 6 回目の核実験について ICBM 装着用水爆実験を成 功裏に断行 と発表技術的な成熟が予見されることなどを踏まえれば 北朝鮮が核兵器の小型化 弾頭化の実現に至っている可能性が考えられる ICBM に搭載する水爆と主張する物体を視察する金正恩党委員長 6
北朝鮮による生物 化学兵器開発の現状 〇化学兵器 化学剤を生産できる複数の施設を維持 既に相当量の化学剤などを保有 生物兵器 一定の生産基盤を有している 北朝鮮が弾頭に生物兵器や化学兵器を搭載し得る可能性も否定できない 北朝鮮の保有する化学兵器についての主な指摘 化学兵器の種類 サリン VX ガス マスタードガス等 兵器としての運用 野砲や弾道ミサイル等に搭載可能と考えられる 保有量 約 2,500~5,000 トン 北朝鮮の保有する生物兵器についての主な指摘 生物剤の種類 炭疽菌 天然痘 ペスト等 兵器としての運用 生物兵器の使用をオプションとして考えている可能性 2016 年版韓国国防白書 米国防省 朝鮮民主主義人民共和国の軍事及び安全保障の進展に関する報告 2015 等 7
北朝鮮の核 ミサイルに関する認識 H30.4.2 時点 北朝鮮は 16( 平成 28) 年以来 3 回の核実験を強行し 40 発もの弾道ミサイルの発射を繰り返した 特に 17( 平成 29) 年には 推定出力が広島型原爆の約 10 倍に及ぶ規模の核実験を強行するとともに 新型の ICBM 級弾道ミサイルを日本の EEZ へ発射し さらに 2 回にわたってわが国を飛び越える弾道ミサイルの発射を繰り返した 北朝鮮のこうした軍事的な動きは わが国の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威であり 地域及び国際社会の平和と安全を著しく損なうもの 金正恩国務委員長は 18( 平成 30) 年 1 月 1 日の 新年の辞 において南北対話に積極的な姿勢を見せた 以後 同年 4 月には南北首脳会談が開催され 金正恩委員長は非核化への意思を示した また 同年 6 月に行われた米朝首脳会談では 北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組むことにコミットすることなどを表明した上で 引き続き米朝間で交渉を行っていくことを確認 金正恩委員長が 朝鮮半島の完全な非核化に向けた意思を 改めて文書の形で 明確に約束した意義は大きい 今後 北朝鮮が核 ミサイルの廃棄に向けて具体的にどのような行動をとるのかをしっかり見極めていく必要 米朝首脳会談における共同声明 ( 平成 30 年 6 月 12 日 ) 抜粋 トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えることにコミットし 金正恩委員長は 朝鮮半島の完全な非核化に向けた彼の固く そして揺らぐことのないコミットメントを再確認 2018 年 4 月 27 日の 板門店宣言文 を再確認し 朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組むことにコミットする トランプ大統領と金正恩委員長は 共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することにコミットする その上で 北朝鮮が 我が国のほぼ全域を射程に収めるノドン ミサイルを数百発保有し それらを実戦配備しているとみられること これまでの累次の核実験及び弾道ミサイル発射を通じ 核 ミサイル開発を進展させ 運用能力を向上させていることなどを踏まえれば 米朝首脳会談後の現在においても 北朝鮮の核 ミサイルの脅威についての基本的な認識に変化はない 米朝首脳会談 ノドン ミサイル 8
2016 年に行われた北朝鮮による核実験 弾道ミサイル発射事案 日付挑発の概要場所 弾種 核実験 弾道ミサイル発射 飛翔距離 16.01.06 4 回目の核実験を実施豊渓里 ( プンゲリ ) 16.02.07 人工衛星 と称する弾道ミサイルを発射東倉里 ( トンチャンリ ) テポドン 2 派生型 ( 推定 ) 約 2,500km(2 段目落下地点 ) 16.03.10 弾道ミサイル 2 発を発射西岸 南浦 ( ナンポ ) 付近スカッド ( 推定 ) 約 500km 16.03.18 弾道ミサイル 1 発を発射西岸 粛川 ( スクチョン ) 付近ノドン ( 推定 ) 約 800km 16.04.15 弾道ミサイル1 発を発射 東岸地域 ムスダン ( 指摘 ) 不明 失敗と推定 16.04.23 弾道ミサイル1 発を発射 新浦 ( シンポ ) 沖 SLBM( 推定 ) 約 30km( 韓国合参 ) 16.04.28 弾道ミサイル2 発を発射 元山 ( ウォンサン ) ムスダン ( 推定 ) 不明 失敗と推定 16.05.31 弾道ミサイル1 発を発射 元山 ( ウォンサン ) ムスダン ( 可能性 ) 不明 失敗と推定 16.06.22 弾道ミサイル 2 発を発射元山 ( ウォンサン ) ムスダン ( 推定 ) 1 発目 : 約 100km( 最大 ) 2 発目 : 約 400km 16.07.09 弾道ミサイル 1 発を発射新浦 ( シンポ ) 沖 SLBM( 推定 ) 数 km( 韓国報道 ) 16.07.19 弾道ミサイル 3 発を発射西岸 黄州 ( ファンジュ ) 付近スカッド及びノドン ( 推定 ) 16.08.03 弾道ミサイル 2 発を発射西岸 殷栗 ( ウンニュル ) 付近ノドン ( 推定 ) 1 発目 : 約 400km 3 発目 : 約 500km 約 1,000km (1 発は発射直後に爆発 ) 16.08.24 弾道ミサイル 1 発を発射新浦 ( シンポ ) 付近 SLBM( 推定 ) 約 500km 16.09.05 弾道ミサイル 3 発を発射西岸 黄州 ( ファンジュ ) 付近スカッド ER( 推定 ) 約 1,000km 16.09.09 5 回目の核実験を実施豊渓里 ( プンゲリ ) 16.10.15 弾道ミサイル 1 発を発射西岸 亀城 ( クソン ) 付近ムスダン ( 推定 ) 不明 失敗と推定 16.10.20 弾道ミサイル 1 発を発射西岸 亀城 ( クソン ) 付近ムスダン ( 推定 ) 不明 失敗と推定 9
2017 年に行われた北朝鮮による核実験 弾道ミサイル発射事案 核実験 弾道ミサイル発射 日付挑発の概要場所弾種飛翔距離 17.02.12 弾道ミサイル 1 発を発射西岸 亀城 ( クソン ) 付近 固体燃料を使用した新型の地上発射型弾道ミサイル ( 推定 ) 約 500km 17.03.06 弾道ミサイル 4 発を発射西岸 東倉里 ( トンチャンリ ) 付近スカッド ER( 推定 ) 約 1,000km 17.03.22 弾道ミサイル 1 発を発射元山 ( ウォンサン ) 付近分析中 発射後数秒以内に爆発 失敗と推定 17.04.05 弾道ミサイル 1 発を発射新浦 ( シンポ ) 付近分析中約 60km 17.04.16 弾道ミサイル 1 発を発射新浦 ( シンポ ) 付近分析中発射直後に爆発 失敗と推定 17.04.29 弾道ミサイル 1 発を発射北倉 ( プクチャン ) 付近分析中 17.05.14 弾道ミサイル 1 発を発射西岸 亀城 ( クソン ) 付近 IRBM 級の新型弾道ミサイル ( 推定 ) 約 50km 離れた内陸部に落下 失敗と推定 約 800km 17.05.21 弾道ミサイル 1 発を発射北倉 ( プクチャン ) 付近 新型弾道ミサイル (17.02.12 と同型 ) ( 推定 ) 約 500km 17.05.29 弾道ミサイル 1 発を発射元山 ( ウォンサン ) 付近 スカッドを改良した新型弾道ミサイル ( 推定 ) 約 400km 17.07.04 弾道ミサイル 1 発を発射西岸 亀城 ( クソン ) 付近 ICBM 級の新型弾道ミサイル ( 推定 ) 約 900km 17.07.28 弾道ミサイル 1 発を発射舞坪里 ( ムピョンニ ) 付近 ICBM 級の新型弾道ミサイル (17.07.04 と同型 )( 推定 ) 約 1,000km 17.08.29 弾道ミサイル 1 発を発射順安 ( スナン ) 付近 IRBM 級の新型弾道ミサイル (17.05.14 と同型 )( 推定 ) 約 2,700km 17.09.03 6 回目の核実験を実施豊渓里 ( プンゲリ ) 17.09.15 弾道ミサイル 1 発を発射順安 ( スナン ) 付近 IRBM 級の新型弾道ミサイル (17.05.14 及び 08.29 と同型 )( 推定 ) 約 3,700km 17.11.29 弾道ミサイル 1 発を発射平城 ( ピョンソン ) 付近 ICBM 級の新型弾道ミサイル (17.07.04 及び 07.28 とは異なる型 ) ( 推定 ) 約 1,000km 10
北朝鮮の弾道ミサイルの射程 テポドン 2 派生型新型 ICBM 級 火星 15 ( 射程 10,000km 以上 ) 10,000km ニューヨーク ワシントン D.C. シカゴ 弾頭の重量等による ロンドン パリ モスクワ 5,500km 5,000km 4,000km 1,500km 1,300km デンバーアンカレッジサンフランシスコロサンゼルス 北京 平壌 沖縄 東京 1,000km ハワイ グアム ムスダン ( 射程約 2,500-4,000 km ) ノドン ( 射程約 1,300 km /1500km) スカッド ER ( 射程約 1,000 km ) IRBM 級 火星 12 ( 射程約 5,000 km ) ICBM 級 火星 14 ( 射程 5,500 km以上 ) ( 注 1) 上記の図は 便宜上平壌を中心に 各ミサイルの到達可能距離を概略のイメージとして示したもの ( 注 2) は北朝鮮の呼称 11