第 128 回北海道整形外科外傷研究会 抄 録 平成 25 年 9 月 7 日 ( 土 ) 11:30~ 於 : 札幌医科大学基礎棟 5 階大会議室 会長 : 湘南鎌倉総合病院土田芳彦主催 : 北海道整形外科外傷研究会
第 128 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 1 11:30~12:00 座長土田芳彦先生 ( 湘南鎌倉病院 ) (1) 近位骨片が関節内に嵌頓した小児肘頭骨折の一例 函館五稜郭病院村橋靖崇先生 (2) 鎖骨近位端骨折に対する骨接合にてロッキングプレートを用いた 1 例札幌東徳洲会病院畑中渉先生 (3) 鎖骨骨折を伴う肩甲骨関節窩骨折の 1 例西能病院新井学先生 一般演題 2 13:10~13:50 座長入船秀仁先生 ( 札幌医科大学 ) (1) 同側大腿骨頚部骨折を伴った骨幹部骨折の検討市立函館病院中島菊雄先生 (2) 膝蓋骨多骨片骨折に対するハリネズミ法上都賀総合病院高畑智嗣先生 (3) 中足骨骨頭関節内骨折の 2 例 (4)TKA 後の大腿骨顆部 顆上骨折 函館五稜郭病院千葉充将先生 ~プレートで内側傍膝蓋アプローチによる1 例豊岡中央病院浜口英寿先生 主題 1 14:20~15:00 座長辻英樹先生 ( 札幌徳洲会病院 ) (1)TKA 周囲骨折に対する逆行性髄内釘に必要な事前計測順天堂大学静岡病院最上敦彦先生 (2)TKA 術後患者の脛骨骨幹部骨折偽関節手術後に創壊死を呈した1 例帝京大学医学部付属病院乾貴博先生 (3) 治療に難渋したTKA 周囲骨折の一例札幌医科大学高度救命救急センター平山傑先生 (4)Ender 釘を用いた大腿骨ステム周周囲骨折の内固定上都賀総合病院高畑智嗣先生 主題 2 16:30~17:00 座長津村敬先生 ( 協立病院 ) (1) 下肢関節近傍骨折偽関節 ( 遷延癒合 ) の原因についての検討札幌徳洲会病院辻英樹先生 (2) 患死温存しえなかった下肢銃創の2 例札幌医科大学高度救命救急センター入船秀仁先生 (3) 大腿骨転子下骨折の術後に髄内釘折損を生じた1 例札幌医科大学整形外科高橋信行先生
ランチョンセミナー 12:00~13:00 座長高田直也先生 ( 海南病院 ) ひまわり法における術中軸射像の有用性製鐵記念広畑病院圓尾明弘先生 特別講演 1 15:00~16:00 座長土田芳彦先生 ( 湘南鎌倉病院 ) 人工関節周囲骨折の治療 順天堂大学整形外科馬場智規先生 特別講演 2 17:00~18:00 座長土田芳彦先生 ( 湘南鎌倉病院 ) 失敗例に学ぶ骨接合術 ~ 他人 ( ひと ) のふり見て我がふり直せ 帝京大学整形外科小林誠先生
一般演題 1(1) 近位骨片が関節内に嵌頓した小児肘頭骨の 1 例 函館五稜郭病院整形外科 村橋靖崇小堺豊小川考了北村公一奴賀賢佐藤攻永澤雷太千葉充将札幌医科大学医学部整形外科 山下敏彦 はじめに 小児の肘頭骨折は肘周囲の骨折の約 5% と稀な骨折である 肘頭の二次骨化中心は 8 歳頃からみられるようになり それまでは肘頭の大部分が骨端軟骨で構成されるため 幼小期では診断に難渋することも少なくない 今回 我々は肘頭骨折において近位骨片が関節内に嵌頓した稀な骨折形態を経験したので報告する 症例 4 歳 男児 屋外で遊んでいた際に転倒し 右肘を受傷 ( 受傷肢位は不明 ) 同日 近医より右上腕骨内側顆骨折の診断で当科紹介された 受診時の単純 X 線写真 CT 画像で右肘頭骨折と診断した 骨幹端部の横骨折であり 近位骨片は関節内に迷入していたが 他部位の損傷は明らかではなかった 同日 観血的手術を行った 近位骨片は関節軟骨と一塊に関節内に嵌頓していたが 骨片を引き出すことで 解剖学的な整復位が得られた C-wire にて cross pinning 固定した 固定後の関節不安定性は認めず 6 週間のギプス固定を行い 術後 6 週目に抜釘した 術後 3 ヵ月の現在 疼痛 可動域制限なく良好な経過である 考察 小児の肘頭骨折は受傷機転により様々な骨折形態がある 本症例では 近位骨片が関節内に嵌頓しており 極めて稀な骨折型であった
一般演題 1(2) 鎖骨近位端骨折に対する骨接合にてロッキングプレートを用いた 1 例 札幌東徳洲会病院整形外科 畑中渉 橋本功二 目的 比較的まれな鎖骨近位端骨折に対し 尺骨遠位端骨折用のロッキング プレート (Acu-Loc VDU plate) を用いて治療を行った 1 例を経験したの で報告する 症例 67 歳 女性 横断歩道を歩行中に右折車と接触し転倒して受傷した 近医に搬送後 右多発肋骨骨折の診断にて バストバンド固定施行され たが 鎖骨近位端骨折の診断はついていなかった 受傷 2 日後に右鎖骨 部痛 右胸部痛を主訴に当院初診 右鎖骨近位端部の腫大を認め 単純 X 線像上 AO 分類 15A3 Robinson 分類 type1b2 の右鎖骨近位 端骨折の診断にて 手術目的に入院となった 骨接合材料の選択に関し て 近位骨片の多方向スクリュー刺入を考慮し 尺骨遠位端骨折用の ロッキングプレート (Acu-Loc VDU plate) を用いた骨接合を行った 結果 術後 9 日間三角巾固定を併用した 疼痛の改善とともに 肩関節自動 運動は徐々に改善し 多発肋骨骨折を含め骨癒合が得られた 考察 転位が大きい鎖骨近位端骨折に対しては 手術治療が検討され Kirschner 鋼線 Tension band wiring plate など さまざまな内固定方法が報告されてきた ロッキングプレートは強固な固定が得られるが 鎖骨近位端用のプレートは無く 今回は形状が鎖骨近位端に応用可能と 考え 尺骨遠位端骨折用のロッキングプレートを使用した 鎖骨近位端骨折に対する骨接合において Acu-Loc VDU plate は有効な固定材料に なり得ると思われた
一般演題 1(3) 鎖骨骨折を伴う肩甲骨関節窩骨折の 1 例 西能病院整形外科 新井学 鎖骨骨折を伴うまれな肩甲骨関節窩骨折の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する 症例は27 歳男性 バイクのツーリング中に転倒し右肩を強打した 近医に救急搬送され 鎖骨骨折 肩甲骨骨折の診断で三角巾固定された 手術目的に翌日当院に紹介受診 手指のしびれや運動障害は認めなかった 四肢に多数の擦過傷を認めた 単純 X 線像では右鎖骨骨折と肩甲骨関節窩から体部にいたる骨折を認めた 単純 CTでは右鎖骨遠位部骨折と肩甲骨頚部骨折 肩甲棘骨折を伴う関節窩骨折を認めた 受傷から10 日目に後方アプローチによる観血的骨接合術を施行した 現在術後 2ヶ月 外来通院しながらリハビリ加療中である
一般演題 2(1) 同側大腿骨頚部骨折を伴った骨幹部骨折の検討 市立函館病院整形外科中島菊雄佐藤隆弘菊池明工藤整奈良岡琢哉 はじめに われわれは大腿骨骨幹部骨折に同側頚部骨折を生じた症例について retrospective に調査したので報告する 対象 2003 年 4 月から 2013 年 3 月までの 10 年間に当院で治療した大腿骨骨幹部骨折は 67 人 のべ 73 肢 ( 両側同時例 3 例 左右別時期受傷 1 例 再骨折 2 例 ) であった 男性は 33 例 女性は 34 例であり 年齢は平均 55 歳 (4~96 歳 ) で 受傷原因は交通事故 32 例 高所からの転落 ( 飛び降りを含む )10 例 転倒 ( 椅子やベットからの転落を含む )22 例 軽微な外傷 不明 6 例と半数以上が高エネルギー外傷であった 全骨幹部骨折のうちで 頚部骨折を伴ったものは 3 例であった 1 例は初診時には頚部骨折に気づかず 骨幹部を髄内釘にて固定した 術後早期の X-P でも骨折には気づかなかった リハビリ中に疼痛 転位を生じて頚部骨折が発見された 受傷時の股関節 CT は数スライスしか撮られておらず 画質も良好とは言えないため 受傷時の骨折の見逃しか 手術時の医原性骨折か区別がつけられない 1 例は受傷時の X-P では頚部骨折はわからないが CT にて転位のない頚部骨折が認められた しかし reconstruction nail の screw を至適位置に入れることができず 後に骨頭壊死となり 人工股関節置換を要した 1 例は受傷時の X-P で骨折が認められ 本手術までの待機の目的で pinning を行ったが 大動脈損傷のため早期に死亡した まとめ 比較的稀な同側大腿骨頚部 骨幹部骨折の症例を報告した High energy 外傷では ルーチンの検査で胸腹部 骨盤の CT を撮る事が多いと思われるが 大腿骨頚部骨折を見逃さないよう注意を要する
一般演題 2(2) 膝蓋骨多骨片骨折に対するハリネズミ法 上都賀総合病院整形外科高畑智嗣 多骨片に粉砕した膝蓋骨の治療では関節面の回復が重要である 演者は 粉砕骨片をひとつずつ整復内固定して近位骨片群と遠位骨片群を復元し, 最終的に tension band wiring で両者を接続している 症例により circulage wire を追加する この際用いるのが全長にネジを切った ネ ジ付きキルシュナーワイヤー ( ジンマー社 ) である ネジ付きのため 閉創前の抜去を前提とした仮固定ではなく 留置したまま閉創してもワ イヤーが移動するトラブルが生じない また関節面に向かって刺入する ことが可能で膝蓋骨の厚みが減少した粉砕骨折において 整復した膝蓋骨 の厚みの保持に有用である 骨片 1 個に 2 本刺入を原則とするので多骨片の場合は術後 X ー P は鋼線だらけとなり 同僚から ハリネズミのようだ と評されたのが名称の由来である 本法の利点は (1) 関節面の回復が容易で安定する (2) 骨片が小さ くても内固定出来る (3) 骨外へのインプラントの突出が小さい そし て (4) きわめて安価である 以上より演者は膝蓋骨用の特殊なインプラ ントの必要性を感じない ハリネズミ法の手術方法を提示する
一般演題 2(3) 中足骨骨頭関節内骨折の 2 例 函館五稜郭病院整形外科千葉充将奴賀賢村橋靖崇永澤雷太佐藤攻小堺豊北村公一小川考了 はじめに 中足骨骨頭関節内単独骨折はまれである 我々は二例の中足骨骨頭関節内骨折を経験し いずれも観血的整復固定術を施行し良好な成績が得られたので報告する 症例 1 27 歳男性 バスケットボール中ジャンプして左足で着地した際に 左前足部痛が出現し受診した レントゲン上第四中足骨骨頭関節内骨折を認めた 背側切開で展開し 背側に転位した骨頭を認め 転位した骨頭には靱帯 関節包の付着はなかった 整復後 ミニスクリューで固定した 術後 荷重制限はなく歩行を開始 現在術後 1 ヵ月で歩行障害なく経過している 症例 2 15 歳男性 バスケットボール中ジャンプして右足で着地した際に 右前足部痛が出現し受傷し 右第四中足骨骨頭関節内骨折の診断で当院へ紹介された 背側切開で展開し 背側に転位した骨頭を整復しミニスクリューで固定した 術後荷重制限は行わず 歩行障害の残存はなかった 考察 本症例はいずれもジャンプの着地の際に MTP 関節が背屈強制され受傷した 2 例共観血的に整復が得られ 骨頭壊死などの合併症もなく予後は良好であった 本骨折は関節包や靱帯が付着していない関節内骨折であり 転位した骨折の正確な整復とその保持が必要であると考えられた
一般演題 2(4) TKA 後の大腿骨顆部 顆上骨折 ~ 内側アプローチによる 1 例 豊岡中央病院整形外科 浜口英寿 人工膝関節全置換術 (TKA) の重大な合併症として インプラント周囲の顆部 顆上骨折があげられる 本骨折の問題点は [1] 遠位骨片の骨量が少ない [2] 金属が介在する [3] 整復 仮固定が思ったより難しい [4] コンポーネントと重なりスクリューの方向がわかりづらい などがあげられる 今回 TKAと全く同じ皮切を用いて内側傍膝蓋アプローチ (MPP) にて外側ロッキングプレート固定を行った一例を報告する 症例は74 歳女性 左 TKA 術後半年で転倒し 同側大腿骨顆部 顆上骨折を受傷 顆上部内側から外側顆遠位への骨折線で外側顆は圧潰していた 外側からの展開ではコンポーネントと粉砕した外側壁しか見えず整復に難渋すると考え 前方からMPPにてアプローチした 前方からの眺めは大変良く 整復自体は10 秒もかからなかった 圧潰した外側顆の内部に十分なallograftを行い まず前内側に1/3 円プレートをmonocortical buttress plateとして整復位を保持し 次いで外側谷部の滑膜を中枢に切開 剥離してプレートの筋層下トンネルを作成した 外側に小皮切を設けてスリーブを挿入しドリリング スクリュー挿入を行った 常時前方から直視下にドリリングの方向やスクリュー先端の位置を目と指先で確認でき顆間窩へのスクリュー突出も防止でき 安全確実に手術を終了できた また今回使用したプレートはSynthes 社 Tomo Fix Lateral Dital Femur で LCP-DFの前方を削ったTKAにフィットしやすい形状なっている 現在 5 穴のみであるが 多くのTKA 後骨折に応用可能と思われる
主題 1(2) TKA 術後患者の脛骨骨幹部骨折偽関節手術後に創壊死を呈した 1 例 帝京大学医学部付属病院整形外科乾貴博松下隆札幌徳洲会病院整形外科外傷センター辻英樹倉田佳明二村謙太郎湘南鎌倉総合病院外傷センター土田芳彦 はじめに 人工膝関節置換術 (TKA) 後の脛骨骨折は約 1% の発生率とされる 中でも TKA 後の脛骨骨幹部骨折は稀であり 明確な治療方針はない 今 回 TKA 術後患者の脛骨骨幹部骨折偽関節術後に創壊死を呈した 1 例を経 験したので報告する 症例 68 歳女性 自宅で右足を捻って転倒し受傷 当院へ救急搬送され 右下腿骨骨幹部骨折 (AO42-A1.3) と診断された 慢性関節リウ マチに伴う右変形性膝関節症で TKA を受けていた 受傷 4 日後に脛骨を φ4.0mm Ender 釘 3 本 腓骨を外側プレートで固定した 術後 PTB キャストによる外固定を行った 術後 1 ヶ月で PTB 装具下に荷重歩行を 開始した 術後 6 ヶ月の時点で骨癒合認めず 低出力超音波パルス療法を 開始した 術後 9 ヶ月の時点でも骨癒合認めず Ender 釘を抜去し 脛骨 前内側面に Minimally Invasive Plate Osteosynthesis(MIPO) での プレート固定および偽関節部への腸骨移植術を施行した 術後 2 週時に脛 骨内側遠位部の創壊死を認めプレートが露出した 逆行性腓腹皮弁 ( 通称 VAF flap) 施行し被覆したが辺縁壊死をきたし再度プレートが露出した 足背動脈脂肪筋膜弁及び分層植皮術で被覆し創治癒を得た 2 回目手術よ り 6 ヶ月経過し骨癒合は得られつつ有り 杖使用下に独歩可能である 考察 脛骨前内側面に対する MIPO テクニックは一般に創合併症が少ないと 報告されており有用な方法である しかし 脛骨前内側面には筋体が存在 しないため皮膚の脆弱な患者では 本症例のように創部の破綻が起こる可 能性がある 創壊死によりプレートが露出した場合 筋弁や皮弁といった 再建術が必要となるが 合併症の多い高齢者では軟部再建術の成功率が低 くなる 本症例では軟部組織の多い前外側面へのプレート固定を選択すれ ば良かった可能性がある
主題 1(3) 治療に難渋した TKA 周囲骨折の 1 例 札幌医科大学高度救命救急センター平山傑入船秀仁 はじめに 高齢化に伴い インプラント周囲骨折が増加してきている 今回治療に難渋した TKA 周囲骨折を経験したので報告する 症例 84 歳女性 ショートステイ先施設の 2 階窓から屋外へ墜落して受傷 着地点は柔らかい雪で 高エネルギー外傷として当院搬送された 既往症は認知症 高血圧 右 TKA を 5 年前に施行されていた 外傷性くも膜下出血 第 1 腰椎破裂骨折 右大腿骨顆上骨折 (TKA 周囲骨折 ) と診断され 同日入院 介達牽引し 第 3 病日手術施行となった 骨折部を展開し wiring した後 近位から順行性にネイルを挿入 (Synthes 社 AFNJ) し 遠位に 3 本の横止め screw を挿入した 術後経過良好で 第 20 病日リハビリ目的に転院となった 前医杖歩行にて退院後 外来にて経過観察 仮骨形成も良好であったが 受傷 4 ヶ月に転倒 ネイルが折損し 前回の骨折部より遠位で再骨折した 同日入院し 第 8 病日抜釘と観血的骨接合術 (Synthes 社 LCP-DF+PLT による double plating) を施行した 術後経過良好で 現在他院にてリハビリ中である 考察 インプラント周囲骨折は 骨粗鬆症を背景に低エネルギーによる外傷により受傷する TKA 周囲骨折はインプラント近傍の顆上部骨折が多く 順行性のネイル挿入による固定は困難なことが多い 今回初回の骨折は 高エネルギーによる受傷により顆上部に十分な長さが残存した遠位骨幹部骨折であったため 近位からの固定が可能であった 2 回目の骨折は 骨接合の固定性は良好であったが 転倒により粗鬆骨とインプラントに負荷がかかり折損と 再骨折をきたしたと考えられた
主題 1(4) Ender 釘を用いた大腿骨ステム周周囲骨折の内固定 上都賀総合病院整形外科高畑智嗣 人工骨頭 /THA 後の大腿骨ステム周囲骨折に対し 顆部より挿入した Ender 釘を近位骨片のステムと骨皮質の間に挿入して内固定した 症例は 3 例 症例 1 86 歳女性 大腿骨ステム先端から約 5cm 遠位での単純らせん骨折であった 骨折部は展開せずに内外顆より Ender 釘を挿入した 手術時間 72 分 術中出血少量 骨癒合が得られた 症例 2 96 歳女性 ステム部分に第三骨片のある骨折でステムに弛みは無かった 骨折部をポリエステルテープが締結した上で内外顆より Ender 釘を挿入した 手術時間 123 分 術中出血 145g 術後 3 週で仮骨が出現し 4 週で全荷重許可を許可した 骨癒合が得られ 平行棒歩行が可能となった 症例 3 70 歳女性 ステム先端から約 3cm 遠位でのらせん骨折であった プレートと金属製のバンド (CCG バンド ) による内固定術が施行されたが固定性を失った やり直しの手術で内顆から Ender 釘を挿入したが Ender 釘はステム先端から約 8cm 近位で骨外へ逸脱した 手術時間 110 分 術中出血は 200g 術後は装具を装着し セーフス フォルテオ を用いたが骨癒合は遷延した 現在術後 17 ヵ月で破綻は無く 骨癒合しつつある Ender 釘による内固定は小侵襲であり 弾性固定で短縮するため骨癒合に有利である 釘挿入で近位骨片を粉砕するリスクがあるので手術手技は難しいが今後改良の余地があると考える
主題 2(1) 下肢関節近傍骨折偽関節 ( 遷延癒合 ) の原因についての検討 札幌徳洲会病院整形外科外傷センター 辻英樹倉田佳明斎藤丈太安藤卓上田泰久二村謙太郎松井裕帝佐藤和生士反唯衣鈴木智亮 はじめに 近年普及しているloking plateにより 関節近傍骨折においても良好な整復位保持が得られるようになった しかしこのlocking plate 特有の骨折遷延癒合 偽関節が発症することがある 症例 症例 1:64 歳女性 左脛骨近位部骨折 (AO41-C3.3) 現病歴 ) 交通事故で受傷 後部座席乗車中 荷物と車の間に約数十分はさまれていた 同日当科紹介搬送 経過 ) 腫張が強く創外固定で待機後 受傷 7 日目脛骨内側 locking plate 固定 + 人工骨移植術 受傷 15 日目脛骨前外側 locking plate 固定を施行 術後 8W 免荷 12Wで全荷重とし歩行訓練を継続していたが 術後 4M 時内側 locking screwの折損と骨癒合不全を認め 偽関節手術 骨移植術施行 症例 2:47 歳男性 左脛骨遠位部骨折 (AO43-C3.2) 現病歴 ) 仕事中約 500kgの鉄材が左足に落下し受傷 翌日当院紹介入院 経過 ) 創外固定で待機後 受傷 14 日目脛骨遠位部 後外側 前外側 locking plate 前内側 1/3 円 plateによる骨接合術施行 術後 8W 免荷 12Wで全荷重とし歩行訓練を継続していたが 受傷後 9ヵ月時数分の歩行で脛骨遠位内側部の痛みが出現 単純 X 線で前内側 plateのscrewの折損 骨癒合不全を認め 偽関節手術 骨移植術施行 考察 今回の2 症例では脛骨関節近傍骨折に対し 複数枚のlocking plate 固定がなされ 角状安定性と rafting 効果により関節面の保持がなされていたが 生じた骨欠損も保持される状態となっており これが骨癒合遷延の原因となっていた 整復位の保持が良好になされる一方で これまでもlocking plateの比較的高い骨癒合遷延率が報告されており 骨欠損を生じさせない事 骨癒合遷延に対する早い対処が必要である
主題 2(2) 患肢温存しえなかった下肢銃創の 2 例 札幌医科大学高度救命救急センター入船秀仁平山傑 はじめに 本邦において 銃創に遭遇する機会はきわめて少なく また その威力は 我々の想像を遙かに越えたものである 我々は過去に銃創による下肢開放骨折を 2 例経験しているが いずれも患 肢温存できなかった 今回 この 2 症例を提示し 患肢温存できなった要因 について考察する 症例 1 57 歳 女性 散弾銃の暴発事故にて受傷し 当院ヘリ搬送された 右足 部の広範囲骨軟部組織欠損を伴う開放骨折で即日 洗浄 デブリ pinning 人工真皮による一次被覆を行った 連日創洗浄を行い 受傷後 14 日目に遊 離腓骨移植による再建を行うも 皮弁壊死となったため 受傷後 21 日目に 壊死皮弁の切除と遊離腹壁皮弁による軟部再建を行ったが 術後 3 日目に創 部感染による皮弁壊死となり 加えて残趾の壊死も進行したため Chopart 関節離断を行った 症例 2 34 歳 男性 渓流釣り中に猟銃 ( ライフル ) で誤射され受傷 当初 ヘ リによる搬送予定であったが 天候不良のためヘリ搬送を断念し ドクター ピックアップでの陸送で当院搬送となった 搬送中からショック状態で 左 大腿部からの出血著明であったが 初期治療室搬入後ただちに創外固定 開 放創部から大腿動静脈をクランプして出血コントロールし 大量輸血を行い 多少ショックから離脱したようにみられたので 患肢温存目的に手術室へ移 動して手術開始するも再度ショック状態となり さらにアシドーシス 凝固 能破綻を来したため やむを得ず 救命のため緊急大腿切断を行った 考察 銃社会であるアメリカでは銃創は良く見受けられる外傷であるが 本邦で はきわめて稀である その威力は我々の想像を遙かに超えており 普段目に する開放骨折の比ではない 患肢温存のためには 迅速な搬送と止血による 外傷蘇生に加え 通常よりも radical なデブリードマンと早期の創閉鎖が必要 と考えられた
主題 2(3) 大腿骨転子下骨折の術後に髄内釘折損を生じた 1 例 札幌医科大学医学部整形外科高橋信行 はじめに 大腿骨転子下骨折は 殿筋 腸腰筋により近位骨片が屈曲 外転 外旋位 内転筋により遠位骨片が内転位を呈し 牽引手術台での closed reduction のみでは十分な整復が得られないことがある 今回我々は アライメント不良のまま髄内釘固定され 術後に nail の折損を生じ 治療に難渋した 1 例を経験したので報告する 症例 58 歳女性 関節リウマチ Sjogren 症候群の既往ありステロイド長期内服 屋内にて転倒受傷し 右大腿骨転子下骨折と診断された 受傷 3 日で手術となり 牽引手術台での整復が行われたが 十分な整復が得られないまま骨接合が施行され short nail により固定された 術後 X-P では近位骨片の屈曲 外転 外旋変形が残存し 骨癒合が遷延 リハビリにて歩行可能となったが 術後 8 ヶ月 トイレから立ち上がろうとした際に右大腿部痛を自覚 nail が折損しており 再手術を施行となった long nail への入れ替えが行われたが 近位骨片のアライメント不良は残存したままであった 再び歩行可能となったが骨癒合は進まず 再手術より 2 年で再び nail が折損したため当科紹介となった chipping technique と LCP の固定による偽関節手術を施行し 術後 2 年現在 骨癒合は得られており歩行可能である 考察 本症例は 初回手術において アライメント不良の残存 short nail 使用による固定力不足が生じ nail に過度の負荷がかかって折損したものと考えられ る nail 挿入前にあらかじめ十分な整復が得られていなければ nail の挿入中での整復操作は困難であり アライメント不良のまま固定される結果となる closed reduction により整復が得がたい場合は 躊躇なく open reducion に切り替えるべきである また 転子下骨折は転子部骨折より遠位に骨折があるため short nail による固定では十分な固定性が得られない long nail の使用が推奨される
ランチョンセミナー ひまわり法における術中軸射像の有用性 製鐵記念広畑病院整形外科部長圓尾明弘 特別講演 1 人工関節周囲骨折の治療 順天堂大学整形外科 助教馬場智規 特別講演 2 失敗例に学ぶ骨接合術 ~ 他人 ( ひと ) のふり見て我がふり直せ 帝京大学整形外科 准教授小林誠