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Transcription:

( 公財 ) 航空機国際共同開発促進基金 解説概要 242 この解説概要に対するアンケートにご協力ください 航空機用アルミリチウム合金および航空機産業の最近の動向 1. はじめに電気分解法として 1886 年にホールエルー法が確立され さらに 1887 年に湿式アルカリ法によるアルミナ製造方法としてバイヤー法が確立されて ようやく工業的に製造可能となってから約 125 年経過したアルミニウム材料は 2011 年の世界での新地金生産量が 44,624 千トン / 年になった 地球環境問題の深刻化が顕著になっている現在 自動車だけでなく 航空機 鉄道車両や船舶など輸送機材の軽量化に対して アルミニウム材料の適用は今後ますます高まるものと期待される 1917 年に採用されて以来 その軽量性を生かして航空機の主要構造部材に採用されてきたアルミニウム材料であるが 強度 破壊靭性 疲労特性 耐応力腐食割れ性など各種特性向上の要求に応じ さらに金属学的には偶然の発見として良く知られている時効析出現象の解明が進むにつれて 2024 合金や 7075 合金等の高強度アルミニウム合金が開発されてきた 1) 図 1に高強度アルミニウム合金の開発の流れを模式的に示す 図 1 高強度アルミニウム合金の開発フロー模式図 一方 より軽量化を目指したアルミニウム材料として開発されてきたアルミニウム合金がアルミリチウム合金である Li という金属中最軽量 ( 比重 0.53g/cm 3 ) の元素を1wt% 添加することで剛性は 6% 上昇し かつ密度は 3% 低下するという優れた特長をもつアルミリチウム合金ではあるが 電気化学的には卑な金属であることから耐食性の低下が懸念されるとともに 機械的特性の異方性や 低い破壊靭性 また高い製造コスト等の課題があった この合金の開 1)~4) 発経緯や技術課題については すでに文献に詳細に解説されているので 参照願いたい ボーイング社の 747 767 や 777 では 70~80% であったアルミニウム材料の使用比率が 最新の 787 では 20% に低下し 複合材料 (CFRP) の使用比率が 50% にまで高まっている 2)3)

5) エアバス社でも複合材料の使用比率は増加しており A320 で 15% A380 では 22% の複合材料を使用し 平成 25 年度就航予定の A350XWB では 52% に増加する予定である 5) 複合材料を使用する最大のメリットは軽量化であり 課題は高い製造コストである これら複合材料に関する動向や課題の詳細については 航空機国際共同開発促進基金 (IADF) の解説記事 複合材の航空機適用への課題と国際競争力強化 6) を参照願いたい 近年の航空機燃料費の高騰は航空機の軽量化を大きく促進し 特に長距離路線用航空機では軽量化のメリットが大きいために 複合材料の使用量が増加するとともに アルミリチウム合金の使用量も増加すると期待される 2)3) しかしながら 非常に活性が高く かつ水と反応しやすい Li を添加するがゆえに 通常の高強度アルミ合金に比べて アルミリチウム合金の製造コストは 2~4 倍と高価であり また疲労特性や破壊靱性などの改善など アルミリチウム合金の開発は今後も欧米を中心に続くと思われる 4) アルミリチウム合金の金属組織や機械的特性 さらに技術的課題については松澤が また 2) 航空機用材料については中村が 航空機の省エネルギー化への技術課題と展望については石 7) 川が それぞれ 2012 年に詳細に報告しているので参考にしていただき ここでは 最近 10 年ほどの特許および文献から航空機用アルミリチウム合金の開発動向を眺めるとともに 最近の航空機産業の動向を俯瞰してみる 2. 日本出願特許からみた最近のアルミリチウム合金の開発動向 2002 年 ~2012 年 9 月までに日本国内で公開された 航空機用アルミリチウム合金に関する特許について調査した結果を表 1に示す 出願件数は 33 件 ( ただし共同出願があるため 出願人数は 37 件 ) であり このうちアルミリチウム合金における成分に関する特許は表 2に示すように 10 件であった 表 2において の記号は未記載の元素であることを意味している また ( ) 記載の元素は それらの元素から少なくとも 1 種以上の元素を含むことを意味しており ( ) の無い元素は必須元素であることを示している アルミリチウム合金の開発当初は軽量化優先でいたために Li 量が 2~3% の合金が多かったが その後 軽量化に加えて機械的特性や耐食性とのバランスをとるようになった結果として Li 量が 1.5% 程度になり 2)3) 表 2に示すように最近では Li 量が 1% 以下の合金が開発されてきている AlMgLi 系合金については 2000 年に複数出願されているものの 最近の出願は見当たらない 最近のアルミリチウム合金に関する特許としては アルコア社から AlCuLi 系あるいは AlCuMgLi 系合金に関する特許が出願されている Li 量を低減する代わりに 他の添加元素あるいは結晶組織制御による破壊靱性向上を目的とした特許が最近の傾向である 2010537054 は AA2098 合金と比較して Mn と Zn を所定量添加し かつ Si Fe 量を減少させた合金の特許であり AA2098 合金の改良合金と推測される 2006533995 2001177711 は Li を 1% 以下として Mg を多くした AlCuMgLi 系合金である

表 1 最近の航空機用アルミリチウム合金に関する日本国内特許出願状況 出願年 主要内容 No. 出願人名 出願件数 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 1 アルコアインコーポレイテッド 6 1 1 1 2 1 合金 複合材 構造体 2 スリーエムイノベイティブプロパティズカンパニー 2 2 フラックス 3 ジェイムズ ケアンズ プライス 2 2 鋳物 4 ストーク フォッカー エーイーエスピー ビー ブイ 2 1 1 複合材 構造体 5 ザ ボーイング カンパニー 2 2 複合材 構造体 6 マリー トーマス ジルズ ラッフル 2 2 鋳物 7 アルカンレナリュ 2 1 1 加工条件 複合材 8 アレリス アルミナム コブレンツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 9 キネテイツク リミテツド 10 エアバス ドイチュラント ゲーエムベーハー 1 1 構造体 11 エアバス ユ ケ リミテッド 1 1 構造体 12 13 エーアーデーエス ドイッチェランド ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツングオールルシアンインスティチュートオブアヴィエーションマテリアルズブイアイエーエム 14 エアバスオペラシオン 1 1 構造体 15 アストリウム エス エー エス 1 1 構造体 16 17 コラス アルミニウム バルツプロドウクテ ゲーエムベーハー独立行政法人産業技術総合研究所 1 1 複合材 18 ジャンナコプロスパブロス 1 1 構造体 19 20 21 22 23 24 スタンデックス インターナショナル コーポレイション ダイムラークライスラー アクチェンゲゼルシャフトダイムラークライスラーエアロスペースエアバスゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツングブイアイエーエム ( オールルシアンインスティチュートオブアヴィエーションマテリアルズ ) ユナイテッドテクノロジーズコーポレイション ケステックイノベーションズエルエルシー 1 1 熱処理 1 1 構造体 25 三菱重工業株式会社 1 1 構造体 26 株式会社豊田自動織機 1 1 熱処理 計 37 2 3 2 5 0 3 9 0 3 3 4 2 1 出願数 33 1 3 2 4 0 3 7 0 3 3 4 2 1

表 2 アルミリチウム合金における成分に関する最近の日本国内特許出願状況 出願番号 登録番号 出願人合金系 Si Fe Li Cu Mg Zn Mn Ag Zr Cr Ti Sc その他 2010 537054 アルコアインコーポレイテッド AlCu LiZn MgAg MnZr <0.06 <0.08 0.9 1.4 3.4 4.2 0.1 0.6 0.2 0.8 0.1 0.6 0.3 0.7 0.01 0.6 2008 526421 2006 533995 アレリス アルミナム コブレンツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング アルコアインコーポレイテッド AlMg MnTi AlCu MgLi <0.5 <0.5 <0.5 <0.15 0.010.9 35 3.5 6.0 0.5 2 <1.7 0.4 1.2 <0.4 <0.5 <0.3 0.03 0.2 <0.5 Er,Y,Hf,V 2004 511563 2002 516382 特許第 5031971 号 2001 177711 ケステックイノベーションズエルエルシー エーアーデーエス ドイッチェランド ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング, オールルシアンインスティチュートオブアヴィエーションマテリアルズブイアイエーエム アルコアインコーポレイテッド AlCu ZnLi MnCr TiSc Fe AlCu LiZr Sc AlCu MgMn ZrLi 0.02 0.15 212 0.02 0.2 212a t% 1.5 1.8 212 3.0 3.5 (<5 ) (0.1 0.6) 212 (0.02 1.0) 212 (0.05 0.5) 0.05 0.12 212 212 (0.005 0.05) (<1) 15 <6 <1 <0.5 212 0.06 0.12 Ni Co Y V Er Tm Yb Lu Be0.0001 0.02, (Ge,Y,Ce) 2000 388095 ユナイテッドテクノロジーズコーポレイション L12 構造を有する 10~70vol% の Al3X 相 (X は Sc Er Lu Yb Tm U およびこれらの混合物から選択される ) と 約 5vol% 以上の非 L12 構造相を形成させるのに不充分な量の Ti Nb V Zr および Cr と Mg Ag Zn Li Cu およびこれらの混合物から選択される少なくとも 1 つの元素とを含むアルミニウム固溶体マトリックスからなるアルミニウム材料 2000 589749 特許第 4954369 号 2000 569030 特許第 3903412 号 2000 512995 特許第 4185247 号 コラス アルミニウム バルツプロドウクテ ゲーエムベーハー キネテイツク リミテツド ダイムラークライスラー アクチェンゲゼルシャフト, ブイアイエーエム ( オール ルシアンインスティチュートオブアヴィエーションマテリアルズ ) AlMg Li AlMg Li AlMg LiZn MnZr <0.3 <0.3 0.4 3.0 1.2 1.6 1.5 1.9 <0.3 3.0 6.0 4.0 6.0 4.1 6.0 <2.0 <1.0 <0.5 (0.020 0.25) (0.020 0.25) (0.010 0.30) (0.010 0.40) (<0.2) (<0.2) (<0.2) 0.1 1.5 0.010.8 0.05 0.3 (0.01 0.3) (Hf V Nd Y Be) C: 0.150.7 O: <1.0 (V,Nb,Ni,Hf, Ce) H: 0.9 10 5 ~ 4.5 10 5 (Be:0.001 0.2, Y:0.010.5) 3. 文献からみた最近の開発動向科学技術振興機構 (JST) のデータベース JDreamⅡを用い 文献発行日 2000 年 01 月 01 日 ~2012 年 09 月 30 日における文献から抽出した 航空機用アルミリチウム合金に関する文献リストを表 3に示す

17 件の文献のうち Alcan が 2098 合金の紹介 Alcoa が 2099 合金の紹介および応用事例を報告している アルミリチウム合金の疲労特性 破壊靱性や亀裂伝播速度に関する報告が 5 件を占めており 接合 1 件 加工性 1 件となっている 疲労特性や破壊靭性等の向上 また成 1)~4) 形性の向上や低コスト化等の本合金における課題に対する研究が進められている アルミリチウム合金と繊維をラミネートした複合材シートの開発も行われている データベースへの登録に半年程度のタイムラグがあること また登録されていない文献もある エアバス社との連携を深めている Constellium 社 ( 旧 Alcan Engineered Product 社 ) は 耐食性の向上および強度増加を目的として AlLi 合金に Ag および / もしくは Cu を添加した合金を 2010 年に開発し AlLiX 合金ラインナップとして Airware IGAUGE Airware IFORM Airware ICORE を紹介している 8) また OFELIA と称するアルミリチウム合金のリサイクルシステムについても触れている 8) 表 3 文献リスト JST 整理番号 12A 0876564 12A 0509859 11A 1535505 09A 1106610 和文標題英文標題資料名抄録分類 低密度 AlLi 合金をベースにした新繊維金属ラミネート (FML) ファミィリー AlLi 合金における低エネルギー粒界破壊 摩擦撹拌溶接 2198T8 AlLi 合金接合部の残留応力効果および疲れ挙動 ICAF2009 における最新の航空機疲労に関する研究開発動向 Investigation of a new fibre metal laminate (FML) family on the base of AlLiAlloy with lower density Lowenergy intergranular fracture in AlLi alloys Residual Stress Effects and Fatigue Behavior of FrictionStirWel ded 2198T8 AlLi Alloy Joints Materialwiss Werkstofftech Eng Fail Anal J Aircr 日本航空宇宙学会誌 先進的な FML 開発の一つとして, ロシア製 AlLi シート 1441 合金は, 高弾性率 (E=80GPa) と低密度 (d=2.60g/cm 3 ) の特性を有し, その極薄シートの利用がある 重量の軽減に加え FML 構造の剛性を 57% 増加させる 1441FML について,Airbus 社とロシア, ドイツの団体が協力して詳細な調査を行った 試験片はじめ, 部品や接合技術, パネル状での調査を実施し, その結果を報告した クラック発生までの寿命は, 標準 GLARE に比して,1441FML は若干長いが, 疲労クラックの伝播速度は低レベルの応力では類似したが, 高レベルの応力では後者が早かった A380 のパネルを 14441FML に置き換えた場合の重量軽減効果は,165kg と試算した ヘリコプタの ( 重量軽減の為に ) 構造の重要な部分に使用される時効硬化 AlLiCuMgZr 合金 (AA8090) は, 事故時に低エネルギー粒界破壊を生じ, 過大な損傷をもたらす この経験から,AlLi 合金における脆性粒界破壊に対する各種仮説をレビューし, 可能な改善差を概観した 脆性粒界破壊抵抗における合金成分, 時効時間と温度, 結晶学的組織及び試験温度の様な変数の影響を論述した そして, 粒界に対するリチウム偏析が, 脆性粒界破壊に対する基本的要因であることを結論した リチウム偏析は, 主に初期の時効処理時に発生している : また, 温度が 5080 に達する稼動時の二次時効は, リチウム偏析を増加させ, さらに脆性粒界破壊に対する感受性を増す また, 粒界における転位集積をもたらす AlLi 合金における平面滑りモードの広がりは, 脆性粒界破壊の要因ではないことを, 広くはびこっている意見に反して, 証拠は示唆している Copyright 2012 Elsevier B.V., Amsterdam. All rights reserved. Translated from English into Japanese by JST. ICAF( 国際航空疲労委員会 ) は, 航空機構造の疲労 損傷許容性評価および構造信頼性 健全性などについて討議される, 隔年開催の国際的会議である ICAF2009 は,5 月 2529 日に, オランダ ロッテルダムにおいて開催された 1) ドイツ :A380800 の全機疲労試験が 2 ライフ分, および A320 寿命延長のための 60,000 サイクルまでの試験が終了した 2) フランス :AlLi 合金の疲労試験において析出物により亀裂進展を遅らせることができること, メカニカルアロイによる FeAl 合金の高温域での損傷許容性評価試験の結果などが報告された 3) 日本 : 日本における CX,XP1,MRJ90 などの国内の動向,2008 年に拡大改組された国土交通省事故調査委員会の業務が 6 項目 ( 疲労寿命評価解析 金属の疲労 複合材の疲労 CX と XP1 の全機試験 構造ヘルスモニタリング 航空事故調査 ) に分けて紹介された アルミ複合材 AlLi 合金破壊靱性 FSW 接合疲労特性 AlLi 合金疲労特性

09A 0912457 先進的アルミニウム リチウム合金の剥離亀裂 実験と計算機による研究 Delamination cracking in advanced aluminumlithium alloys Experimental and computational studies Eng Fract Mech 先進的アルミニウム リチウム (AlLi) 合金の剥離亀裂は破壊プロセスにおいて支配的な役割を演じる 宇宙構造物の要素へのこれらの材料の導入に伴って, 信頼できる設計と欠陥評価の先駆者として剥離亀裂と巨視的破壊の間の相互作用の定量的理解の確立が要求されている 剥離亀裂は結晶粒サイズのオーダーでの初期横方向亀裂の形成を伴う複雑な破壊機構を表す 本報では,C(T) 試験片の断続破壊靭性試験とそれに続く研磨によって剥離亀裂の位置, 寸法および形状, ならびに主マクロ亀裂の拡大を明らかにした これらの観察は剥離亀裂サイズが J/σ0 によって表された主亀裂前面の荷重に対応することを示唆した モード 1 荷重の 3D, 小規模降伏フレームワークを用いて, 有限要素研究キャンペーンは巨視的 ( 主 ) 亀裂に沿った, 剥離亀裂前方の局所荷重に及ぼす前記の剥離亀裂の影響を定量化した 異方性降伏面を持つ等方性硬化モデルは, 本研究で調べた 2099T87AlLi 合金板の構成挙動を表した 計算結果は塑性域サイズ, マクロ亀裂前面先方の局所 J の変動, およびマクロ亀裂と剥離亀裂の成長促進に役立つ応力状態を特性化した 計算研究は主亀裂前面を分割する剥離亀裂によって引き起こされた, 破壊実験中に観察された靭性の観察された増加に新しい定量的な見解を提供した Copyright 2009 Elsevier B.V., Amsterdam. All rights reserved. Translated from English into Japanese by JST. AlLi 合金剥離亀裂 Thirty years on 09A 0206312 08A 1270896 論文 スキン材料候補におけるガストスペクトル疲労亀裂伝播,Fatigue of Engineering Materials and Structures, Vol.1, pp. 519 から 30 年 アルミニウム リチウム製の軽量かつ壊れ易いカラーの開発 from the paper 'Gust Spectrum Fatigue Crack Propagation in Candidate Skin Materials', Fatigue of Engineering Materials and Structures, Vol. 1, pp. 519 AluminumLithiu m Light Weight Frangible Collar Development Fatigue Fract Eng Mater Struct SAE Tech Pap Ser (Soc Automot Eng) 30 年前に発表された標題の論文について, アルミニウム合金の損傷許容性の重要性とその後の動きと現状の問題を概説した 材料に関しては,AA2000 に代わる AA7000, 第二 三世代の AlLi 合金の開発, 炭素繊維複合材料およびガラス強化アルミニウムラミネートの開発と実用化, さらにはフライトシミュレーション疲労亀裂伝播に関して取り上げるべき因子に触れ, 当面の問題として戦闘機と輸送機に分けた損傷許容性原理の使用, 全寿命の全体的アプローチ, 定量フラクトグラフィーによる取り組みを簡単に述べた Alcoa 社により開発された次世代合金の AlLi 合金である 2099 合金を用いて軽量の航空機機体用の締結カラーを製造したのでその概要を紹介した このカラーはトルク制御を有するネジ付きの自己ロック型カラーであり熱処理ピンと共に締結具組立構造に使用される このカラーの機械的特性を測定すると共に 7025 及び 2024 合金のような現行合金製の製品と比較した 試験結果によると 2099 カラーは 16% 程度軽量化されているが同等の機械的特性を保有している 更に 2099 カラー製品は改善された耐食性を有しておりそれは腐食モロホロジが CFRP 材料と結合した場合に 7075 カラーのそれよりも許容性が高いことによることを示した AlLi 合金疲労亀裂伝播特性損傷許容性 2099 合金の応用事例 08A 0250335 航空宇宙用アルミニウムの進歩 ADVANCES IN AEROSPACE ALUMINUM Adv Mater Process ASM AeroMat 2007 会議での Alcan 職員によってなされた発表をまとめた すなわち, 機体のための押出合金, アルミニウム リチウム合金, 統合製品チーム及び有効性質評価の形成について記述した 利用者との相乗的相互協力関係では部品の接合, 部分利用やその他のプロセスで重要な進歩をもたらすことを指摘した AlLi 合金接合強度 07A 1052771 航空宇宙用アルミニウム合金に関するスプリットスリーブ冷間孔拡大工程の最適化 Optimization of Split Sleeve Cold Expansion Process for Aerospace Aluminum Alloys Spec Publ Soc Automot Eng 航空機生産工程で, 幾つかの航空宇宙用アルミニウム合金に対するスプリットスリーブ冷間孔拡大工程の適用について研究した 材料と工程の最適化に関する推奨事項を得るため, 幾つかのアルミニウム リチウム合金を調べた その結果, 一般的にこれらの材料が厳しいけれども現実的な条件で亀裂を生じることなくこの工程に使用できることが判った さらに, 最も困難なケースにこの工程を適用するため,7085T7651 アルミニウム合金板について新しいスリーブ設計の性能を調べた この設計は最適化したものではないものの, 実験の結果, スリ ブのスプリット近くの亀裂をかなり減らせることが判った AlLi 合金加工性 07A 0873277 Alcan 2098,2x98 O/T82P( アルミニウム リチウム合金機体板 ) ALCAN 2098, 2x98 O/T82P (AluminumLithiu m Alloy Fuselage Sheets) Alloy Dig Alcan 2098 合金の典型的な化学組成は 0.12maxSi0.15maxFe3.23.8Cu0.35maxMn0.250.8Mg0.250.6Ag 0.81.3Li0.040.18ZrbalAl:wt% であり, 航空機機体に用いる O/T82P 焼戻しは 2024 合金を上回る改良をもたらす その物理的性質, 機械的性質, 熱処理, 耐食性, 関連規格, 一般的性質, 提供製品形状, 用途, について示した Alcan 社の提供製品 Alcan2098 合金の紹介

07A 0796109 06A 0054471 06A 0019800 05A 1054934 05A 0722417 03A 0652254 01A 0305069 アルミニウム合金の開発 Airbus A380 用 Part 2 2099 T83,T8E67( 高強度低密度アルミニウム合金押出材 ) 輸送機器向け展伸用アルミニウム合金の開発の歩み エアバス航空機でのアルミニウム合金の新たな開発 A98090 アルミニウム リチウム合金のミクロ組織キャラクタリゼーションについての超音波研究 航空宇宙材料 将来技術に対する宇宙航空用材料 ( 原標題は英語 ) ALUMINUM ALLOY DEVELOPMENT FOR THE AIRBUS A380PART 2 2099 T83, T8E67 (HighStrength LowDensity Aluminum Alloy Extrusion) History of wrought aluminum alloys for transportations New developments of aluminium alloys on Airbus aircraft Ultrasonic Studies for Microstructural Characterization of A98090 AluminumLithiu m Alloy Advances in Aerospace Materials. Adv Mater Process Alloy Dig 住友軽金属技報 Alum Int Today Mater Eval Adv Mater Process 軽金属 Airbus 社と Alcan 社は, 世界最大の大型旅客機 A380 用の機体材料用に新しいアルミニウム合金の共同開発を行っているが, 本報告はその活動内容を紹介する第 2 報である 機体の大型化に伴い,1) 従来規格材のゲージ厚みや寸法の拡大を図ること,2) 従来材の機械的特性では不十分なため新合金の開発, が必要になった 1) のケースでは翼リブ材, 上部外側翼材として 7449,7349 などの寸法拡大を図った,2) のケースでは翼および機体の各部位に従来材を超える機械的特性を持つ新合金を開発した また初期段階では,AlLi 合金の適用も考慮されたため,Alcan 社は AA2196 AlLi 合金の開発も行った 標記 Al 合金の化学組成は 2.43.0Cu1.62.0Li0.41.0Zn0.100.50Mg0.100.50Mn0.050.12Zr 0.10maxTi0.07maxFe0.05maxSi0.0001maxBe0.05max その他各元素 0.15max その他元素総計 balal:wt% であり, 航空機用等に開発した AlLi 合金である その物理的性質, 機械的性質 ( 引張特性, 靭性, 疲れ特性 ), 耐食性, 一般的性質, 関連規格, 提供製品形状, 用途, について示した AEAPALCOA Engineered Aerospace Products 社の提供製品 日本の展伸用合金の開発は戦前の航空機材料の超超ジュラルミン ESDに始まり, 戦闘機に応用された 戦後は 7075 に代表される航空機材料が発展したが,AlLi 合金や高力 6000 系合金も開発の対象となった 鉄道車両向けには 7N01,6N01 の中強度, 耐食合金の進歩があり車両の軽量化と経済性に寄与した 最近の材料進歩における注目は自動車用パネル材の開発で,5000 および 6000 系新合金と FSWをはじめとする製造技術が融合して市場の拡大に貢献している エアバス航空機の構造材料は現在でもアルミニウム合金が主体を占めており,A380 を例にとればアルミニウム合金は 61%, 複合材料は 22% で, ついでチタン, 鋼,Glare( 繊維金属ラミネート ) となっている ここでは, アルミニウム合金の新たな技術開発の動きとして注目される AlLi 合金の採用による機体重量軽減の効果について詳述した 破壊強度や熱安定性が改善された新しい AlLi 合金を使用することにより A380F で 350kg, 旅客機用で 200kg の重量軽減が得られた 主として胴体の床サポート用の押出形材として採用した さらに AlLi 合金と共に導入した新技術は, レーザビーム溶接と摩擦撹はん溶接である A350 の胴体部では AlLi 合金の使用で,600kg の重量軽減が図れると試算されている 高強度, 優れた耐疲れ特性や高い比剛性率で再び機体材料として着目されてきた A98090AlLi 合金について超音波によるミクロ組織のキャラクタリゼーションを試みた 試験に用いた超音波速度測定用計算機システムと縦波速度からの弾性率の算式を示した 時効処理材について超音波縦波,S 波の減衰と縦波の速度測定を 303500K で実施し, またミクロ組織観察, 硬さ試験と密度測定を行った 超音波の速度, 減衰の温度依存性や Al3Li 析出, 成長や分解に伴うこれらの変化を明らかにした また, 弾性率変化と析出現象との関連性に言及した AeroMat2003 で発表されたいくつかの論文のを紹介する Boeing 社の 7E7 の翼, 胴体への黒鉛エポキシ樹脂複合材料の採用 衛星部品の重量を低減する Al40%Be 合金 Alcoa 社の高強度鍛造用合金 7085 AlLi 合金に関する最新情報 ( 剥離現象, 疲労挙動, 熱曝露の影響, 低温タンク用の熱処理, 破壊靭性 ) 宇宙ステーションへの Boeing 軌道宇宙航空機の運行計画 最新のアルミニウム航空機構造 これらについて概要を述べた 将来可能となる三つのタイプの航空機用の材料について展望した 超大型亜音速旅客機は機体重量が規制されている 軽量合金としての AlLi 合金とその改良型合金の性質や問題点を述べた アラミド繊維やガラス繊維で強化した積層 Al 複合板, 高比剛性をもつ AlBe 合金, 着陸用ギア材料, 機体材料用ポリマー基複合材料について述べた 高速旅客機は騒音が制限され, 排気規制を満たすことが要求される Ni 基超合金,Ti 金属間化合物,Tiセラミック基複合材料などの用途と特徴を述べた 超音速機用材料として, 金属基複合材料,C/C 複合材料などについて予測した 既存 Al 合金 Alcoa2099 合金の紹介 開発経緯の紹介 エアバス社の応用事例紹介 AlLi 合金の特性 各種材料の紹介 各種材料の紹介 4. 航空機産業の今後の動向 日本航空機開発協会の平成 23 年度報告書における 2031 年までの航空機産業の予測として 図 2に示すように 今後も航空機の利用は増加し続け 特にアジア / 太平洋地域での増加が大きいと予測されている 航空機の寿命は 20~30 年とされており これら航空旅客者の増加に対しては航空機の新規需要で対応することになる 図 3に示すように 2031 年には旅客機数

が 2011 年の約 2 倍に増加すると予測され 新規需要の中でも 120~169 席の旅客機が ついで 230~309 席 170~229 席の旅客機の需要が大きいという予測になっている 路線距離からみて リージョナル (1000km 以下 ) 短距離 (1001~2000km) 中距離 (2001 ~4500km) 長距離 (4501km 以上 ) に分類し 座席区分との関係を予測した結果を図 4に示す 120~169 席の旅客機 (A320 737 等 ) はリージョナル 短距離および中距離路線で 230~ 309 席の旅客機 (A330 767 等 ) は長距離路線で 170~229 席の旅客機 (A321 757) は中距離路線での要求が高い なお長距離路線では 310~399 席の旅客機 (A340 777) に対する需要が大きい なお リージョナル及び短距離路線では 40~59 席機 (CRJ200 ERJ145 等 ) も主力になっている しかしながら 図 5に示すような航空機燃料価格の急騰は必然的に航空機会社の経営を圧迫することになり 結果として燃費の良い航空機の開発は今後も続き エンジンの改良や空力特性の改善とともに航空機機体の軽量化の動きは今後も続くと予想される 図 2 世界の航空旅客予測

図 3 サイズ別ジェット機の運航機数と需要予測 図 4 航空機の座席区分と路線距離区分の予測

図 5 原油価格と燃料価格の変遷 5. 今後の航空機用アルミニウム合金への期待前述したように 今後も航空機の軽量化の動きは加速されると予測されるが 787 あるいは A350 といった長距離路線用の旅客機のみが増加するとは考えにくい 軽量化のメリットが大きい長距離路線用の旅客機では 高価な複合材料やアルミリチウム合金を大量に使用してもコスト的に見合う可能性が高いといえるが 複合材料やアルミリチウム合金も万能の特性を有しているわけではなく 製造コスト以外の課題も多い 1)~4) 6) 例えば 複合材料では CFRP 構造の設計 評価技術の確立や 耐雷性 鳥衝突 ( 耐衝撃性 ) の改善が望まれる アルミリチウム合金でも 疲労特性や破壊靱性などの十分かつ信頼性のある設計データの作成や向上 回収スクラップのリサイクル性等が望まれる 2000 系や 7000 系といった従来の高強度アルミニウム合金は 複合材料やアルミリチウム合金に比較してコスト的に有利であり 2)3) また すでに 100 年近い航空機への採用実績の中で確立されてきた 航空機特有の損傷許容設計法に対する信頼性を無視することはできない 2) と考えられる このため 特にリージョナルから中距離路線用の旅客機においては 機体の軽量化とコスト低減とのバランスから材料の取捨選択が今後行われていくと思われる 残念ながら 日本国内ではアルミリチウム合金の開発は行われていないものの 1 超塑性材料 2 摩擦撹拌接合 (FSW:Friction Stirring Welding) やレーザー溶接 (LBW: Laser Beam 1)3) Welding) による押出型材の適用 3アルミベースの複合材 ( 例えばアルミクラッド材や GLARE のような繊維積層アルミ ) 4 AlBe 合金 5 低コストアルミニウム合金 ( 例えば AA2013 合金 ) 1) 6ナノテクノロジーの応用 ( 例えば超微細結晶粒化 ) 2) など 低コスト化を意識した航空機用アルミニウム合金やプロセス開発についてはまだ検討の余地があると期待している

この解説概要に対するアンケートにご協力ください 参考文献 1) 吉田 : 住友軽金属技報 Vol.46 No.1(2005) 99116 2) 中村 : 軽金属 Vol.62 No.6(2012) 249256 3) 航空機国際共同開発促進基金 (IADF): 解説概要 1757 航空機に於けるアルミリチウム合金の開発動向 4) 松澤 : 軽金属 Vol.62 No.4(2012) 185197 5) 日本航空宇宙工業会 : 日本の航空宇宙工業 平成 24 年版 6) 航空機国際共同開発促進基金 (IADF): 解説概要 232 複合材の航空機適用への課題と国際競争力強化 7) 石川 : 自動車技術 Vol.66 No.10(2012) 410 8) T.Smith:Aluminium International Today, Vol.24,No.5 Sep/Oct(2012),8384 日本航空機開発協会 : 平成 23 年度民間航空機に関する調査研究 平成 24 年 3 月