このため 法人税法の取扱いでは 収益の計上時期について各法人の任意の取扱いに委ねるのではなく 課税の公平の観点からこれを統一的に取扱うこととしている すなわち 法人が商品等を販売した場合には それによる収益は商品等の 引渡しがあった日 に収益に計上することとしている つまり 商品等の買主への引渡しと

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企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

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日本基準基礎講座 収益

平成 26 年 5 月に 顧客との契約から生じる収益 (IASB においては IFRS 第 15 号 ( 平成 30 年 1 月 1 日 以後開始事業年度から適用 ) FASB においては Topic606( 平成 29 年 12 月 15 日後開始事業年度から適 用 )) を公表しました これらの

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【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

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目 次 問 1 法人税法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 1 問 2 租税特別措置法における当初申告要件及び適用額の制限に関する改正の概要 3 問 3 法人税法における当初申告要件 ( 所得税額控除の例 ) 5 問 4 法人税法における適用額の制限 ( 所得税額控除の例 ) 6

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平成30年公認会計士試験

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

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収益事業開始届出 ( 法人税法第 150 条第 1 項 第 2 項 第 3 項 ) 1 収益事業の概要を記載した書類 2 収益事業開始の日又は国内源泉所得のうち収益事業から生ずるものを有することとなった時における収益事業についての貸借対照表 3 定款 寄附行為 規則若しくは規約又はこれらに準ずるもの

Z-64-A 簿記論〔第一問〕-解 答-

法人による完全支配関係下の寄附金 1.100% グループ内の法人間の寄附 ( 法法 372) 現行税制上では 寄附金は支出法人では損金計上限度額を超える部分が損金不算入 受領法人では益金算入です 平成 22 年度税制改正により 100% グループ内での支出法人では寄附金全額を損金不算入とし 受領法人

 

改正消費税法の実施に先立ち施行日をまたぐ取引の適用税率と経過措置の再確認(その1)

1 繰越控除適用事業年度の申告書提出の時点で判定して 連続して 提出していることが要件である その時点で提出されていない事業年度があれば事後的に提出しても要件は満たさない 2 確定申告書を提出 とは白色申告でも可 4. 欠損金の繰越控除期間に誤りはないか青色欠損金の繰越期間は 最近でも図表 1 のよ

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に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

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平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

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スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

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別表六 ( 一 ) 所得税額の控除に関する明細書 1 この明細書の用途この明細書は 法人が当期中に支払を受ける利子及び配当等並びに懸賞金等及び償還差益について課された所得税の額について 法第 68 条第 1 項 (( 所得税額の控除 ))( 復興財源確保法第 33 条第 2 項 (( 復興特別所得税

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

損金経理と積立金経理の違い ( 圧縮超過額がない場合の基本構造 ) 例 A 社は 50の国庫補助金を得て 100で機械を取得した なお A 社の経常利益は 100 である * 仕訳の違い ( 単位 : 百万円 ) 損金経理積立金経理 補助金受贈と機械取得時の仕訳 ( 両者とも同じ ) 現金預金 50

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会社税務のてびき目次 平成 28 年度 法人税関係税制改正のポイント 1 1 法人税は何にかかるか? 3 2 収益は どの時点で計上するか? 8 3 配当金を受け取ったときは? 15 4 売上原価を求める方法 19 5 売却した有価証券の損益を求める 24 コラム 1 社長が会社にお金を貸していたら

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第150回日商簿記2級 第1問 仕訳問題類題 解答・解説

第28期貸借対照表

ことも認められています 施行日前 ( 平成 26 年 3 月 31 日以前 ) にリース契約を締結し リース資産の引渡しを行ったリース取引についてこの特例により賃貸借処理を行っている場合には 旧税率の 5% が適用されます 3. 資産の貸付け に関する経過措置指定日の前日 ( 平成 25 年 9 月

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

財剎諸表 (1).xlsx

( 注 3) その他の少額上場株式等の非課税口座制度の詳細については 証券会社等の金融商品取引業者等にお問い合わせ下さ い b. 利益を超える金銭の分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 平成 27 年 4 月 1 日以後開始事業年度に係る利益を超える金銭の分配につ

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投資主が受け取る配当等の額については 原則どおり配当等の額を受け取る際に20%( 所得税 )( 平成 25 年 1 月 1 日から平成 49 年 12 月 31 日までは復興特別所得税とあわせて20.42%) の税率により源泉徴収された後 総合課税の対象となります ( ロ ) 出資等減少分配に係る税

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49 年 12 月 31 日までの間 源泉徴収される配当等の額に係るの額に対して 2.1% の税率により復興 特別が源泉徴収されます b. 出資等減少分配に係る税務個人投資主が本投資法人から受取る利益を超える金銭の分配 ( 分割型分割及び株式分配並びに組織変更による場合を除く 以下本 1において同じ

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貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745


改正 ( 事業年度の中途において中小企業者等に該当しなくなった場合等の適用 ) 42 の 6-1 法人が各事業年度の中途において措置法第 42 条の6 第 1 項に規定する中小企業者等 ( 以下 中小企業者等 という ) に該当しないこととなった場合においても その該当しないこととなった日前に取得又

e. 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度 ( ジュニア NISA) 未成年者に係る少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した未成年者口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 28 年 4 月 1 日から平成 35 年 12

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

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( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

を受けたものを除きます ) の合計額に対応する譲渡所得 ( 又は山林所得 ) がないものと仮定して次の算式により計算した税額 X 又はYと 確定申告書に記載される所得税額との差額に相当する金額とされています ( 所法 1324 所令 266 措令 平 25.5 改正前の措令 25の814

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試験研究費 9,, 7,, Check7 14,, 14,, Check8 7,, 2,, 14,, 6,, 6,, 税務弘報

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営業報告書

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

10 第 1 章 1 株式会社の設立 会社法 445 条 1 項 [ 株式会社の資本金の額 ] 株式会社の資本金の額は この法律 [ 会社法 ] に別段の定めがある場合を除き ( memo. ) 設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする 株式会社

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

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第 5 章国税の還付及び還付加算金 第 5 章国税の還付及び還付加算金 第 1 節国税の還付 学習のポイント 1 国税の還付金等とはどのようなものか 2 充当とはどのようなものか 1 還付金等の種類国税の還付には 還付金の還付と過誤納金の還付の二種類があり 還付金と過誤納金を併せて還付金等という (

JV 工事における取下金の分配についての消費税取扱いは JV 工事における出資金の請求での消費税取扱いは 立替金の請求は税込みでスポンサー会社に請求するが 消費税の対象外と して税抜きで請求する場合とは 各構成員が消費税を申告する際に 仕入税額控除を個別対応方式で計算する 場合に必要な計算要素は J

計算書類等

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198 第 3 章 減価償却資産の取得価額 キーワード ソフトウエアに係る取得価額購入したソフトウエアの取得価額は 1 当該資産の購入の代価と 2 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用との合計額とされています 引取運賃 荷役費 運送保険料 購入手数料 関税 その他の当該資産の購入のために要

平成18年度注記事項

 

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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き県が負担する負担金の額 ( 当該負担金の額が他の法令の規定により軽減される場合にあつては, その軽減されることとなる額を控除した額 以下 県負担額 という ) から当該事業に要する費用の額 ( 加算額がある場合にあつては, 加算額を控除して得た額 ) に100 分の25 以内で規則で定める割合を乗

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

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03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

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⑵ 過誤納金還付金が各税法の定めに基づいて発生するのに対して 過誤納金は 法律上 国税として納付すべき原因がないのに納付された金額で 国の一種の不当利得に係る返還金である なお この過誤納金は 次の二つに分かれる イ過納金過納金は 納付時には納付すべき確定した国税があったが 減額更正や不服審査の裁決

貸借対照表 ( 平成 25 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目金額科目金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 14,146,891 流動負債 10,030,277 現金及び預金 2,491,769 買 掛 金 7,290,606 売 掛 金 9,256,869 リ

iii. 源泉徴収選択口座への受入れ源泉徴収ありを選択した特定口座 ( 以下 源泉徴収選択口座 といいます ) が開設されている金融商品取引業者等 ( 証券会社等 ) に対して 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書 を提出することにより 上場株式等の配当等を源泉徴収選択口座に受け入れることができま

d. 少額上場株式等の非課税口座制度 ( 通称 NISA) 少額上場株式等の非課税口座制度に基づき 証券会社等の金融商品取引業者等に開設した非課税口座において設定した非課税管理勘定に管理されている上場株式等 ( 平成 26 年から平成 35 年までの 10 年間 新規投資額で毎年 100 万円を上限

Transcription:

入金)第 3 章益金の額の計算 ( その 1) 第 3 章益金の額の計算 ( その 1) 法人税法第 22 条第 2 項は 各事業年度の所得の金額の計算上 その事業年度の益金の額に算入すべ き金額は 別段の定めのあるものを除き 資本等取引以外のものに係る収益の額とすると規定してい る この章では 収益の額とは何かについて学習する 第 1 節資産の販売等の収益の額 収益とは 各事業年度の所得の金額の計算上プラスの要素となるものをいい 前章第 1 節の2 益金の額に算入すべき金額とは何か で学んだ商品 製品等の資産の販売による収益等 法人税法上の益金の額を構成する取引により収受する対価の額をいう この節では 商品 製品等を販売した場合に その収益の額をどの事業年度に計上すべきか ( これを 収益の計上時期 という ) については 法人の取引態様 ( 事業の種類 ) 等によって異なるので これらの収益の計上時期に関する法人税法上の取扱いを学習する 学習のポイント 1 商品や製品等の販売による収益はいつ計上するのか 2 請負による収益はいつ計上するのか 3 収益の計上基準についての特例はあるのか 1 商品や製品等の販売による収益はいつ計上するのか 商品や製品等を販売した場合 通常次のような流れが考えられる 1 契約の成立 2 3 4 5 6 7 出発販入検代売先金(荷送へ荷収を受領の到着 請求 8代金をこのような流れにより商品や製品等を販売した場合に それによる収益をどの事業年度に計上するかによって 当該事業年度の収益の額 は変動し ひいては課税所得にも大きな影響を及ぼすこととなる 例えば ある商品を販売した場合に その代金が入金した時に売上に計上する ( 会計学上の現金主義 ) か それとも代金の入金の有無に関わりなく販売が行われた時に売上に計上する ( 会計学上の発生主義や実現主義 ) か 更に 販売が行われた時といっても契約成立の時か 出荷した時か あるいは販売先に到着した時か といった種々の時点が考えられ いずれの時点を基準として収益を認識するかによって当該事業年度の収益の額は異なることとなる -29-

このため 法人税法の取扱いでは 収益の計上時期について各法人の任意の取扱いに委ねるのではなく 課税の公平の観点からこれを統一的に取扱うこととしている すなわち 法人が商品等を販売した場合には それによる収益は商品等の 引渡しがあった日 に収益に計上することとしている つまり 商品等の買主への引渡しという事実に基づいて収益が実現したものとする ( これを 販売基準 という ) ものである したがって 販売収益の計上時期は その販売の目的物の引渡しの時期ということができる この引渡しがあった日がいつであるかということについては 種々の基準が考えられる 小売業者のように店頭で商品を販売している場合には 商品を現実に相手方に手渡した時に引渡しがあったものと容易に判断できるが 卸売業者等が遠隔地の相手方に販売している場合には 現実問題としてどのような日をもって引渡しとみるかについては 必ずしも明らかではない この判断の基準としては通常 次のように 出荷基準 検収基準 等に区分されているが 法人がその商品の種類や販売形態等に応じていずれかの合理的な基準を収益実現の認識基準として選び 毎期継続して適用すれば税法上もその計算が認められる 商品等の 引渡し があった日 上記の計上基準は 一般的な商品や製品等の販売形態の下における収益の計上基準であるが 例えば 委託販売 試用販売 予約販売等のような特殊な販売形態の場合には その内容に応じてそれぞれ適切な収益の計上基準によらなければならない 参考法令 通達番号 基通 2-1-1~2-1-4 甲 ( 株 ) は乙 ( 株 ) との売買契約に基づき 機械 100 台を 10,000 千円 で販売したが 収益に計上する日として いつの日が考えられるか -30-

答 167については 収益の計上日とはならない なぜなら 1の契約日にはいまだ商品の引渡しがなく 6の代金の請求日及び7の入金日は 商品の引渡しが既に完了した後の代金決済のための手続と決済手段にすぎないからである したがって 収益の計上する日としては 出荷基準による2の3 月 20 日の出庫日 3の3 月 21 日の発送日若しくは4の3 月 22 日の入庫日か 又は検収基準による5の4 月 10 日の検収日かのいずれかの日とするのが適当である いずれの日にするかは 甲 が合理的な経理の基準を定め 毎期継続して適用すればよい 2 請負による収益はいつ計上するのか請負には 建設請負のように物の引渡しを必要とするものと 運送や技術指導のように物の引渡しを必要としないで 役務の提供だけで完了するものがある これらの収益は 原則として 前者についてはその物の全部を引渡した日 後者については役務提供の全部を完了した日に収益に計上する ただし 一つの建設工事等であっても 工事等の一部が完成し その完成した部分を引渡した都度 その引渡割合等に応じて工事代金を収入する旨の特約等がある場合など 一定の事実がある場合には その完成した部分 ( 引渡量又は引渡割合 ) に対応する収益を計上するいわゆる部分完成基準により収益を計上しなければならない 請負契約による目的物の 引渡し等 のあった日 請負契約 物の引渡しを要するもの 物の引渡しを要しないもの 原則 完成引渡基準部分完成基準 目的物を全部引き渡した日完成部分を引き渡した日 原則 役務完了基準 役務の全部を完了した日 部分完了基準 部分的に収益金額が確定した日 参考法令 通達番号 基通 2-1-5~2-1-13 3 収益の計上基準についての特例はあるのか ⑴ 長期割賦販売等 ( 収益の計上時期を繰り延べるもの ) 一定の契約により資産の販売等の代価を比較的長期にわたり月賦 年賦等の分割払の方法で決済する販売等の形態 ( 長期大規模工事の請負に該当するものを除く ) を法人税法上 長期割賦販売等 という ( 法 63) 長期割賦販売があった場合で 目的物の引渡しのあったときに収益に計上するといういわゆる 販売基準 に代えて 支払期日の到来した賦払金の合計金額に応じて経理するいわゆる 延払基準 の方法により経理した場合には 収益等の一部を繰り延べることが認められている 長期割賦販売等に係る延払基準の方法による各事業年度の収益及び原価の額は 次の算式により計算する ( 令 124) -31-

当期の収益の額 ( 費用の額 )= 対価の額 ( 原価の額 ) 賦払金割合 賦払金割合 = 分母のうち当期中に支払期日が到来する賦払金の合計額長期割賦販売等の対価の額 長期割賦販売等 に該当するためには 次の三つの要件を満たす必要がある( 法 636 令 127) イ月賦 年賦その他の賦払の方法により3 回以上分割して対価の支払を受けることロその資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日の翌日から最後の賦払金の支払の期日までの期間が2 年以上であることハその契約において定められているその資産の販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその資産の販売等の対価の額の3 分の2 以下となっていること ⑵ 工事進行基準 ( 収益の計上時期を繰り上げるもの ) 収益の計上時期の特例としては この他に工事進行基準があり長期大規模工事 ( ソフトウェアの開発を含む ) については 工事進行基準 が強制適用される ( 法 641) また 長期大規模工事に該当しない工事についても 個別の工事ごとに工事進行基準を選択適用できるが 一旦適用したものについては継続性が要求される ( 法 642) 長期大規模工事 とは 次の三つの要件を満たす工事をいう( 法 641) イ工事の着手の日からその工事に係る契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が1 年以上であることロその工事の請負の対価の額が 10 億円以上の工事であること ( 令 1291) ハ工事の契約において その請負の対価の額の2 分の1 以上がその工事の目的物の引渡しの期日から1 年を経過する日後に支払われることが定められていないものであること ( 令 1292) 工事進行基準の方法は 次の算式により計算された収益の額及び費用の額をその事業年度の益 金の額及び損金の額に算入する方法とされている ( 令 1293) 工事中の事業年度 = 請負の対価の額 進行割合 - べき収益の額 既に収益の額として計上した金額 = べき費用の額 引渡事業年度 期末の現況により見積既に費用の額として 進行割合 - もられる工事原価の額計上した金額 = 請負の対価の額 - べき収益の額 既に収益の額として計上した金額 = 工事原価の額 - べき費用の額 既に費用の額として計上した金額 また 進行割合とは 次に掲げる算式による割合その他の工事の進行の度合を示すものとして 合理的と認められるものに基づいて計算した割合をいう ( 令 1293) -32-

進行割合 = 既に要した原材料費 労務費その他の経費の額の合計額期末の現況により見積もられる工事原価の額 なお 次のいずれかに該当するときは 長期大規模工事の請負の収益の額及び費用の額はない ものとすることができる ( 令 1296) ( イ ) その事業年度終了の時において その着手の日から 6 月を経過していないもの ( ロ ) 進行割合が20% に満たないもの 4 営業外収益はいつ計上するのか ⑴ 固定資産の譲渡 固定資産の譲渡による収益の計上時期は 原則として 商品や製品等の販売と同様に引渡しの 日とされている ⑵ 利子 受取配当 預金 貯金から生ずる利子の額は 原則として その利子の計算期間の経過に応じて計上する とされている また 法人が他の法人から受ける剰余金の配当等 ( 剰余金の配当 利益の配当 剰余金の分配 など ) については 原則として その剰余金の配当等の金額が確定したときに計上するとされて いる 参考法令 通達番号 基通 2-1-14 基通 2-1-24 基通 2-1-27 第 2 節資産の無償譲渡による収益の額 法人が資産を無償で譲渡した場合であっても その資産の時価相当額が収益の額に含まれる この節では 資産の無償譲渡についての法人税法上の取扱いを学習する 学習のポイント資産を無償で譲渡した場合は 時価で収益に計上するのか 資産を無償で譲渡した場合は 時価で収益に計上するのか法人が無償で資産を譲渡した場合には 企業会計では現実には金銭等の授受がないので これを収益とはしない しかし 法人税法では 法人が他の者と取引を行う場合には 全ての資産は 時価によって取引されたものとみなして課税所得を計算するのが原則的な取扱いとなっている したがって 法人の所有資産を第三者に無償又は低廉な価額で譲渡しても その譲渡によって収入すべき金額は その法人の収益として益金の額に算入すると同時に その金額を相手方に対して贈与したものとされ それによって生じた損失は原則として寄附金となる この場合 その相手方が法人の役員又は使用人の場合はその者に対する給与となる ( 法 3778 34 36) -33-

参考法令 通達番号 基通 9-2-9 10 設例 資産の無償譲渡等による収益の額 A 法人が所有している土地 ( 帳簿価額 500 万円 時価 5,000 万円 ) を 例えば1 無償でB 法人に譲渡した場合 2 低廉な価額 (2,000 万円 ) で譲渡した場合 税務上の仕訳はどのようになるか なお A 法人とB 法人との間に完全支配関係 ( ) はない (A 法人 ) 土地時価 5,000 万円 ( 簿価 500 万円 ) 1 無償譲渡 (0 円 ) 2 低廉譲渡 (2,000 万円 ) (B 法人 ) 益金の額に加算する収益の額は時価の 5,000 万円 益金の額に加算する収益の額は時価との差額の 3,000 万円 答 1 税務上の仕訳 ( 無償譲渡 ) [ 譲渡法人 ](A 法人 ) ( 土地譲渡原価 ) 500 万円 ( 土地 ) 500 万円 ( 寄附金 ) 5,000 万円 ( 土地譲渡収益 ) 5,000 万円 [ 譲受法人 ](B 法人 ) ( 土地 ) 5,000 万円 ( 受贈益 ) 5,000 万円 2 税務上の仕訳 ( 低廉譲渡 ) [ 譲渡法人 ](A 法人 ) ( 土地譲渡原価 ) 500 万円 ( 土地 ) 500 万円 ( 現金 ) 2,000 万円 ( 土地譲渡収益 ) 5,000 万円 ( 寄附金 ) 3,000 万円 [ 譲受法人 ](B 法人 ) ( 土地 ) 5,000 万円 ( 現金 ) 2,000 万円 ( 受贈益 ) 3,000 万円 完全支配関係とは 第 1 章第 8 節 2(3) 欠損金の繰戻しによる還付 ( 注 2) を参照のこと また 完全支配関係がある場合の処理については 第 11 章第 2 節を参照のこと -34-

第 3 節資産の無償譲受けによる収益の額 法人が他の者から資産等の贈与を受けた場合であっても その資産の時価相当額が収益の額に含ま れる この節では 資産の無償譲受けについての法人税法上の取扱いについて学習する 学習のポイント資産を無償で譲り受けた場合は 時価で収益に計上するのか 資産を無償で譲り受けた場合は 時価で収益に計上するのか法人が他の者から資産を無償で譲り受けたり 債務の支払を免除されたりした場合には 法人の純資産がそれだけ増加するのであるから その資産を譲り受けた時の時価に相当する金額や免除された債務の金額に相当する経済的利益の額を益金に算入する ( 法 222) 設例 資産の贈与 ( 無償譲受け等 ) による収益の額 B 法人が A 法人から土地 ( 時価 7,000 万円 ) を 例えば無償又は低廉な価額で 譲り受けた場合の仕訳はどのようになるか なお A 法人とB 法人との間に完全支配関係はない (A 法人 ) 土地 時価 7,000 万円 1 無償譲渡 (0 円 ) 2 低廉譲渡 (3,000 万円 ) (B 法人 ) 収益の額は時価である 7,000 万円 収益の額は時価との差額 4,000 万円 答 1 譲受法人 (B 法人 ) の税務上の仕訳 ( 無償譲受け ) ( 土地 ) 7,000 万円 ( 受贈益 ) 7,000 万円 2 譲受法人 (B 法人 ) の税務上の仕訳 ( 低廉譲受け ) ( 土地 ) 7,000 万円 ( 現金 ) 3,000 万円 ( 受贈益 ) 4,000 万円 -35-