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Transcription:

日本人における膝前外側靭帯について 勝木 員子 野田 哲由 藤枝 弘樹 佐々木 宏 了德寺大学 健康科学部理学療法学科 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 東京女子医科大学 医学部解剖学教室 了德寺大学 健康科学部医学教育センター 要旨 P S が膝関節の前外側に真珠のような光沢を持つ線維束が存在することを 年に報告した そ れ 以 来 こ の 線 維 束 は m m m m m などと様々な名称でよばれ この線維束がはたして恒常的な構造であるかどうかについて 長い間議論されてきた 年に S らのグループは 体の遺体を解剖した結果 %の高い頻度で存 在することを報告し この線維束を前外側靱帯 m ALLと命名したそこで 我々 は日本人にこの靱帯が常在するものかどうかを 体の解剖体を調べた結果 S らの結果とは対照的に %と低頻度で存在することを見出した最後に この線維束の形態学的ならびに臨床的意義を論じた キーワ ド 膝関節 前外側靭帯 腸脛靭帯 外側側副靭帯 P TA L m J K J K z kk k,t N,H kfj,h S k D m P T,F H S,R kj U D m J S M,F H S,R kj U D m A m,s M,T k W m M U C M E,F H S,R kj U A T w m m. m k j m m P S.I,S ALL.W m w m % m m (., x m, J.I S w ALL w w ( ~ %.W m ALL.,, m,p K w k j, m

Ⅰはじめに が膝関節を強く内旋したときに 近位脛骨の前外側部に剥離骨折が常在すること 年 P S またこの部位に真珠のような光沢を持つ線維束が付着していることを報告したそれ以来 この線維束は m m m m と様々な名称でよばれてきた しかしながら この線維束が恒常的な構造であるかどうかについて長い間議論されてきた 年に 体の遺体を解剖した結果 %の高い頻度で存在することを報告し この線維束 S らのグループは を前外側靱帯 m ALLと命名したそこで 日本人にこの靱帯が存在するものかど うかを調べることが本研究の目的である Ⅱ対象 東京女子医科大学医学部解剖学教室所蔵の解剖実習用遺体 体 男性 体 女性 体 死亡時平均年齢 ± 歳の膝関節両側を用いた Ⅲ方法 靭帯の剖出はS らの方法 で行った 膝関節から近位に約 m 遠位に約 mの範囲で全面の皮切を行った 腸脛靭帯の広がりを確認したさらに大腿骨外側上顆 G 結節 腓骨頭の位置を確認した 大腿骨外側上顆から m上方で腸脛靱帯を横切し 靭帯を下方に向かって慎重に剥離した 腸脛靱帯がG 結節についている部分から慎重に剥離したまた外側筋間中隔と外側膝蓋支帯につ いているところでも腸脛靱帯を切断した 膝関節包の最表層が露出してくるので 外側側副靱帯の位置を確認したこの靱帯を覆っている薄層 を靱帯の後方でかつ平行に切離し 関節包を丁寧に剥離しながら 当該の靭帯を検索したなお 当 該の靭帯の計測にはノギス ABSデジマチックキャリパCDAX/ APX ミツトヨ社製 最小表示量 mmを用いた Ⅳ結果 体 側の膝関節を剖出したなかで 側でALLを見出すことができず わずか 側でALLを見出すことが できた 表 まず ALLが見出されなかった 例の中から代表例を記載する 表1ALLの剖出結果 ALLを見出したものを 見出せなかったものを で示した

皮 切 を 行 う と 外 側 広 筋 腸 脛 靭 帯 および大腿二頭筋が観察さ れた 図 腸脛靭帯と の境 界線にメスを入れながら 腸脛靭帯を下方に 向かって翻しながら G 結節についてい るところを切離し 腸脛靭帯を背側に向かっ て反転したこの段階で G 結節 腓骨頭 これに付く大腿二頭筋の長頭と短頭 外側筋 間中隔 外側側副靭帯を確認でき 膝蓋骨外 図1右膝関節において皮切を行って腸脛靱帯を露出させた ところ①膝蓋骨 ② ③膝蓋靱帯 ④G 結節 ⑤腓骨頭 ⑥大腿二頭筋長頭 ⑦腸脛靭帯 側縁から線維束が外側筋間中隔 腸脛靭帯 外側半月 G 結節に向かって延びている のが観察された 図 これらの線維束を丁 寧に除いていくと 外側半月の外側面を被う 関節包が露出するようになったが 大腿骨外 側上顆からG 結節に向かう線維束 ALL を見出すことはできなかった 図 ALLが見出された例を記載する図 の段 階において 膝蓋骨から周囲に伸びる線維束 を除いていくと 大腿骨外側上顆からG 結節に向かう薄く華奢な線維束が確認された 図 この線維束を近位側から慎重に剥離 していくと 下にある関節包に硬く密着して 図2右膝関節において腸脛靱帯を背側 膝後方に剥離した ところ膝蓋骨外側縁から多数の線維束が拡がっている ピン A 外側側副靭帯 ピン B 外側半月板の位置 いたノギスを使用して線維束を 箇所で計 測した結果を表 に示した 表2ALLの計測結果 図3右膝関節において図で見られた線維束を丁寧に除いた ところ既に 関節半月 ①や開かれた関節腔 ②が見られ るピン A 外側側副靭帯

図4左膝関節において図の段階から線維束を除いていき 当該の線維束が現れた例を示す画面左側に大腿骨外側上顆 右側に脛骨G 結節が位置している当該の線維束を明瞭にするために輪郭を黒点で示している矢印のカ所は線維束の 計測部位を示している①起始部 ②関節ライン ③停止部 図5図で示された当該の線維束を起始部で切除し ピンセットで翻した状態を示している 外側半月と関節腔が露出し 当該の線維束が硬く関節包に付着している様子が分かる

Ⅴ考察 解剖学的考察 ± mm 幅は起始部で ± mm 関節ライ S らの報告では ALLの長さは膝伸展位で平均 ンで ± mm 停止部で ± mm 厚さは関節ラインで ± mmであったという線維束の長さ や幅から見ると 我々が見出した線維束はこの測定範囲に入る厚さは我々の例では mmであっ たが S らが記載した平均値よりもかなり薄いしかしながら S らの報告にもこの程度の薄さ の靭帯があることが示されているしたがって 我々は 線維束の走行位置ならびに計測結果からみて この線維束がALLに該当すると判断した 本研究の結果 解剖体 体の両側において 例中わずか 例で ALLが見出された見つかった靭帯はき わめて薄く 華奢な線維束であった我々が見出した線維束は S らが図 に提示した靭帯とは明らか に対照的であり 靭帯というよりもむしろ関節包に外から密着している線維束といった印象であったし たがって 今回我々がALLを見出した頻度は僅か %弱であったけれども 他の例で見逃していた可能性 は否定できないこの点に関しては 今後再検討する予定であるS らが提示した靭帯はサイズから みて外側側副靭帯に匹敵するものであり 当然既存の解剖学成書に記載されてしかるべきものと思われる が 記載されている成書は見当たらないカパンジー機能解剖学の改訂版にも記載されていないS らが図 に提示した靭帯はむしろ例外的なものといえるのではないだろうか 臨床的考察 S らによるとALLは 膝窩筋腱停止部より近位後方の大腿骨外側顆より起始し 脛骨近位部に停止 するまた 膝関節 屈曲位において下腿の内旋を制限する作用を持つと述べられているこの作用 は前十字靭帯損傷のメカニズムとされる 膝関節軽度屈曲位での下腿の回旋 を制動するものと考えられる そのためこの靭帯が外側側副靭帯に匹敵する強度をもつ構造であると仮定すると その起始 停止から前 十字靱帯を損傷する力が加わった場合 ALLも同時に損傷している可能性が示唆されるこのことは 前 十字靭帯損傷におけるリハビリテーションにおいて 靭帯再建術後もP S を経験することや 膝関節 前外側部痛が残存することの一要因になりうると考えられるそのため ALLが恒常的に存在する構造物 であるならば その運動学的作用を考慮しながら評価方法を検討していく必要があると考えられる Ⅵ結語 日本人において ALLは恒常的なものではなく 存在しても強靭な靭帯といえず 華奢な線維束である 可能性が高いと思われる 本研究は了徳寺大学生命倫理審査委員会の承認 承認番号 を得た上で実施した 文献 x é m é m P S R P è Mé JB j I GB D J J F DB S B

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