脊髄損傷を呈した症例 ~必要なことは何か~

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2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

Clinical Indicator 2016 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

PowerPoint プレゼンテーション

リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

運動療法と電気療法の併用 ~シングルケース~

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背屈遊動 / 部分遊動 装具の良好な適合性 底屈制動 重心移動を容易にするには継手を用いる ただし痙性による可動域に抵抗が無い場合 装具の適合性は筋緊張の抑制に効果がある 出来るだけ正常歩行に近付けるため 痙性が軽度な場合に用いる 重度の痙性では内反を矯正しきれないので不安定感 ( 外 ) や足部外

和光市高齢福祉センター 介護予防トレーニング

復習問題

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

神経叢 ) と ( 鎖骨下動脈 ) が通過する 4 鎖骨下動脈 subclavian artery は 右は( 腕頭動脈 ) から起こり 左は ( 大動脈弓 ) から起こる 5 甲状頸動脈の枝として 不適切なものを選べ 肩甲背動脈 肩甲上動脈 下甲状腺動脈 上行頸動脈 頸横動脈 6 鎖骨下動脈の枝を

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老年看護学実習

Clinical Indicator 2017 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

姿勢

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スライド 1

別紙 1-2 移乗介助 ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器 移乗開始から終了まで 介助者が一人で使用することができる ベッドと車いすの間の移乗に用いることができる ( ベッドと車いすの間の移乗における使い勝手は ステージゲート審査での評価対象となる点に留


対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

紀要 Vol 6.indb

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PowerPoint プレゼンテーション

80 武凪沙, 他 態で腰椎のわずかな右側屈により 骨盤を右挙上させ下肢を後方へと振り出す これに対し本症例は 立位姿勢から上位胸椎部屈曲位 胸腰椎移行部屈曲 左非麻痺側 ( 以下 左 ) 側屈位を呈し体幹直立位保持が困難となっていた また右股関節 膝関節が左側と比べてより屈曲していることで骨盤右下

クリニカルインディケーター 2017 の刊行にあたって 当院は開院以来 重症者にも対応できる医療 リハケア体制の整備 スタッフの量的および質的充実に向けた教育 研修体制の構築 チームアプローチの徹底や情報共有の強化 急性期病院および地域医療 介護との連携推進 生活 期リハの充実等 様々な取り組みを組

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

行為システムとしての 歩行を治療する 認知神経リハビリテーションの観点

図表 リハビリテーション評価 患 者 年 齢 性 別 病 名 A 9 消化管出血 B C 9 脳梗塞 D D' E 外傷性くも幕下出血 E' 外傷性くも幕下出血 F 左中大脳動脈基始部閉塞 排尿 昼夜 コミュニ ケーション 会話困難 自立 自立 理解困難 理解困難 階段昇降 廊下歩行 トイレ歩行 病

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平成 30 年度北播磨 丹波支部新人発表プログラム 平成 31 年 1 月 27 日 ( 日 ) 西脇市民会館 ( 中ホール ) 8 時 45 分 ~9 時 15 分受付 会員証にて 新人はスライドデータをPCへ移行 9 時 15 分 ~ あいさつ 諸注意等 発表 5 分質疑 2 分 9 時 30

CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

事業案内 障害のある方や高齢者の自立生活や社会参加を支援します 自分らしい生活を送るために必要な福祉用具や住宅改修などの相談 支援を行います 具体的な技術支援を必要とされる方には リハビリテーションセンターの専門職が医療 保健 福祉関係機関と連携して相談 支援に対応します 相談内容 身体状況の確認日

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

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各論第 3 章介護保険 保健福祉サービスの充実

氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

脊椎損傷の急性期治療

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

【股関節の機能解剖】

通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

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摂食嚥下訓練 排泄訓練等を開始します SCU で行うリハビリテーションの様子 ROM 訓練 ( 左 ) と端坐位訓練 ( 右 ) 急性期リハビリテーションプログラムの実際病棟訓練では 病棟において坐位 起立訓練を行い 坐位耐久性が30 分以上となればリハ訓練室へ移行します 訓練室訓練では訓練室におい

保発第 号

訪問介護事業所の役割 1 訪問介護計画や手順書への記載居宅サービス計画に通院介助及び院内介助の必要性が位置付けられている場合に限り 訪問介護サービスとして 介助が必要な利用者が 自宅から病院 受診手続きから診察 薬の受け取り 帰宅までの一連の行為を円滑に行うために訪問介護員が行うべき援助内容を訪問介

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事業内容

人工膝関節置換術後にデュシャンヌ歩行を呈した患者に OKC で 筋力増強訓練を実施した症例 右大腿骨人工骨頭置換術後 股関節痛に対して骨盤 体幹に 介入し疼痛軽減を認めた症例 北川拓弥 三好卓弘 社会医療法人医真会八尾総合病院 金起徹 永井勝 宅間幸祐 八尾はぁとふる病院 Key word: 人工膝

スライド タイトルなし

位 1/3 左脛骨遠位 1/3 左右外果 左右第二中足骨頭 左右踵骨の計 33 箇所だった. マーカー座標は,200Hz で収集した. (2) 筋電計筋活動の計測のために, 表面筋電計 ( マルチテレメータ. 日本光電社製 ) を用いた. 計測はすべて支持脚側とし, 脊柱起立筋 大殿筋 中殿筋 大腿

膝関節運動制限による下肢の関節運動と筋活動への影響

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

関節リウマチ関節症関節炎 ( 肘機能スコア参考 参照 ) カルテNo. I. 疼痛 (3 ) 患者名 : 男女 歳 疾患名 ( 右左 ) 3 25 合併症 : 軽度 2 術 名 : 中等度 高度 手術年月日 年 月 日 利き手 : 右左 II. 機能 (2 ) [A]+[B] 日常作に

平成18年度

S&C2007_vol14_no07Aug-Sep


GM アフ タ クター & アタ クター どの年代でも目的に合わせたトレーニングができる機器です 油圧式で負荷を安全に調節できます 中殿筋と内転筋を正確に鍛えることで 骨盤が安定し 立位や歩行時のバランス筋力を向上させます 強化される動き 骨盤 膝の安定性 トリフ ル エクステンサー ニー エクステ

簡易型 ADL 評価スケール S-スコア入力支援ソフト Version.1 は宮城県気仙沼保健福祉事務所 ( 気仙沼圏域地域リハビリテーション広域支援センター ) のホームページからダウンロードして御利用ください

1 訪問リハ導入で, 家族の介護負担の軽減, 自身の活動の広がりが図れた事例 脳梗塞 ( 中程度の右片麻痺 )(60 代女性 ) 経過 脳梗塞と診断され A 病院に入院 1 ヶ月後リハ目的で B 病院に転院し,6 ヶ月後自宅に退院しました 退院後はすぐに訪問リハを導入しています 疾患 : 脳血管疾患

当院の股関節疾患歩容評価法を用いた歩容の検討 - 第 2 報 - 近藤秀哉 1) 中宿伸哉 1) 三田村信吾 1) 宮ノ脇翔 1) 坪井真幸 2) THA のアプローチの違いにおける術後筋力回復の比較について Supine Anterolateral approach と Posterolatera

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

第3回 筋系

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札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

体幹トレーニング

症例報告 関西理学 12: 87 93, 2012 右膝関節の疼痛により防御性収縮が強く歩行の実用性を低下させていた右人工膝関節全置換術後の一症例 吉田拓真 1) 山下貴之 1) 石濱崇史 2) Physical Therapy for a Patient who Had Difficulty Wa

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居宅介護支援事業者向け説明会

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医療機能分化連携推進事業 1 対象事業者 病床を有する医療機関 2 支援対象 既存病床を回復期病床に転換する際に必要となる施設 設備整備費 設備整備 H27~ 継続対象リハビリを行うための治療機器や訓練機器等の導入経費 物理療法を実施するための 超音波治療器や温浴療法用装置の導入事業例 運動療法を実

外傷性肩関節前方脱臼に対する理学療法の一例 外旋位固定による保存療法 松平兼一 1) 風間裕孝 1) 1) 富永草野クリニックリハビリテーション科 キーワード : 外傷性肩関節前方脱臼 外旋位固定 肩関節後上方組織 はじめに 外傷性肩関節脱臼では前方脱臼が 95% を占めており 受傷時に前下関節上腕

統合失調症患者の状態と退院可能性 (2) 自傷他害奇妙な姿勢 0% 20% 40% 60% 80% 100% ないない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 尐ない 中程度 高い 時々 毎日 症状なし 幻覚 0% 20% 40% 60% 80% 100% 症状

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平成28年9月 日

もくじ 目的 目標 支援体制図 4 運用規準 ) 運用地域 ) 運用開始時期 ) 実施方法 4) 実施手順 5) 個人情報の取扱い 6) 運用に関する留意事項 5 資料 精神障害者の治療中断 4 精神障害者の治療中断の アセスメント項目 適用例 考え方 6

書類点検等における通所介護事業所への主な指摘事項について

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Microsoft Word - Q&A(訪問リハ).doc

2. 方法生物学的製剤投与を受ける RA 患者 3 名に下肢のリウマチ体操を実施前評価時に指導した. また次回来院する 4 週間後まで 1 日 1 回疼痛の生じない範囲で行うよう注意を行った. リウマチ体操実施前と実施 1 か月後の両時点において圧痛関節数, 腫脹関節数,CRP, 疼痛 Visual

学術教養特集2 間橋 淑宏

国際エクササイズサイエンス学会誌 1:20 25,2018 症例研究 足趾踵荷重位での立位姿勢保持運動が足部形態に 与える影響 扁平足症例に対しての予備的研究 嶋田裕司 1)4), 昇寛 2)3), 佐野徳雄 2), 小俣彩香 1), 丸山仁司 4) 要旨 :[ 目的 ] 足趾踵荷重位での立位姿勢保

ている さらに, 施設内通貨等を用い利用者自 身が目標に向けて能動的に取り組めるように促 す工夫も行っている 次に, 実際の事例を通して通所介護計画の立 案, 支援の内容, 結果等を紹介する 例 歩いて自宅に帰る ことを目標とした事例 Fさん,60 代, 男性 現病歴 : 脳出血 ( 右片麻痺, 失


はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

短期集中リハビリ入所ご案内 介護老人保健施設ウエルハウス西宮

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吉備国際大学研究紀要 ( 保健科学部 ) 第 20 号,13~18,2010 閉運動連鎖最大下出力時における下肢筋収縮様式の解析 * 河村顕治加納良男 ** 酒井孝文 ** 山下智徳 ** 松尾高行 ** 梅居洋史 *** 井上茂樹 Analysis of muscle recruitment pa

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豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

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要旨 [ 目的 ] 歩行中の足部の機能は 正常歩行において重要な役割を担っている プラスチック短下肢装具 (AFO) 装着により足関節の運動が制限されてしまう 本研究は AFO 装着により歩行立脚期における下肢関節運動への衝撃吸収作用や前方への推進作用に対しどのような影響を及ぼすかを検討した [ 対

運動学習不良な患者に対し エロンゲーショントレーニングを取り入れた一症例守谷慶友病院リハビリテーション科理学療法士加藤磨美キーワードエロンゲーショントレーニング筋力増強運動学習不良 はじめに 左足関節骨折による両松葉杖歩行時に転倒し 左股関節頚部骨折 人工骨頭置換術を施行した症例を担当した 症例は運

足部について

Transcription:

頚椎症性脊髄症を既往に持つ左大腿骨頚部骨折を呈した症例 佐藤病院リハビリテーション科 理学療法士高麗夏実 はじめに 今回 頚椎症性脊髄症を既往に持つ左大腿骨頚部骨折を呈した症例を担当させていただいた 初めて脊髄疾患の患者さんに介入させていただく機会を 得た 筋力単体ではなく運動学習を中心に介入した 退院後検診 居宅サービス計画書により退院後の生活を 知ることができた 評価 介入方法 サービスの考え方など ご指導 ご鞭撻の程 宜しくお願い致します 症例紹介 A 氏 性別 : 男性 年齢 :70 代後半 既往歴 : 頚椎症性脊髄症 ope 後 ( 場所 術式は不明 ) 家族構成 : 妻 次男 ( 長男は同居していない ) キーパーソン : 妻 家屋構造 :2 階建ての持ち家 ( 住宅改修済みで玄関 廊下 階段 トイレに手すりあり ) 症例紹介 ( 投薬状況 ) グリメピリド OD 錠 0.5 mg タムスロシン塩酸塩 OD 錠 0.2 mg ジャヌビア錠 アムロジピン OD 錠 5 mg ベンケア OD 錠 5 mg オルメサルタン OD 錠 15 mg セレコックス錠 100 mg トリプタノール錠 10 mg ビコスルファートナトリウム内用液 0.75% レバミピド錠 100 mg アローゼン 0.5 mg 現病歴 平成 30 年 8 月 1 日自宅にて転倒平成 30 年 8 月 9 日当院を受診し 左大腿骨頚部骨折と診断平成 30 年 8 月 15 日左人工骨頭置換術 (BHA) を施行平成 30 年 8 月 21 日当院回復期病棟へ転棟平成 30 年 10 月 6 日ご自宅へ退院 入院前の生活 家の中は伝い歩きで移動していた 家事等はしない 通院は介護タクシーにて 1 人でしていた それ以外はほとんど外出しない 家の中でパソコンゲームをしていることがほとんどである 寝室は 2 階 ADL 自立 1

介入 1 日目に考えたこと 歩行に対するご本人 必要なこと: 屋内 ADL 自立リハビリに積極的不安 望みが強い 必要な機能: トイレ動作 歩行入院前 歩行が必要な場面家事等無く : 寝室からトイレ 居間 玄関の移動自宅改修済みで生活外出もほとんど無し元々 ADL 自立 それぞれの距離:5m 程度目標右下垂足があり :1 歩行修正自立 ( 伝い歩きで機能上肢支持があれば 10m) 両側クリアランスが 2 屋外歩行修正自立平行棒内歩行可能低下目標期間 :1か月 画像 血液データ 検査項目 検査値 備考 WBC 9600/µl H 血液検査 RBC 8.5 10⁴/µl L HCT 26.1% L MCHC 27.2% L Plt 51.1 10⁴/µl H 検査項目 検査値 備考 生化学検査 UA 2.2 mg /dl L CRP 9.00 mg /dl H 関節可動域 関節 運動方向 右 左 備考 股関節屈曲 110 85 左は脱臼防止で屈曲制限してい たため SLR で計測 伸展 5 5 外転 30 35 内転 15 15 外旋 40 40 内旋 35 25 膝関節伸展 -5-5 足関節背屈 5 5 底屈 40 40 足部 外がえし 10 5 内がえし 5 5 MMT( 上肢 ) MMT( 手指 ) 筋名 右左 上腕二頭筋 4 4 上腕三頭筋 4 4 円回内筋 4 4 方形回内筋 4 4 回外筋 4 4 橈側手根屈筋 5 5 長掌筋 5 5 尺側手根屈筋 5 5 長橈側手根伸筋 5 5 短橈側手根伸筋 5 5 尺側手根伸筋 5 5 長母指外転筋 5 5 母指内転筋 3 5 短母指外転筋 5 5 母指対立筋 3 5 長母指屈筋 5 5 短母指屈筋 5 5 長母指伸筋 5 5 短母指伸筋 5 5 2

MMT( 体幹 ) MMT( 下肢 ) 腹直筋 5 5 外腹斜筋 4 4 内腹斜筋 4 4 腸腰筋 4 3 大殿筋 4 3 中殿筋 4 3 大腿筋膜張筋 4 4 内転筋群 4 4 大腿四頭筋 4 4 前脛骨筋 4 4 腓腹筋 4 4 長腓骨筋 4 4 後脛骨筋 4 4 長母指屈筋 4 4 長趾屈筋 4 4 反射 深部腱反射 感覚検査 触覚: 左右ともに正常 温痛覚: 左右共に正常 運動覚: 左右拇趾軽度鈍麻 (10 点中 8 点 ) 関節位置覚: 左右共に正常 病的反射 ホフマン反射 : 左右陰性 バビンスキー反射 : 左右陰性 失調検査 ロンベルグ徴候: 陰性 鼻指鼻試験: 左右陰性 回外回内試験 踵膝試験: 左右陰性 立位 前額面 矢状面 3

トイレ動作 ( 初期 ) 病棟内ポータブルトイレを使用 ( 頻尿のため ) 病棟内トイレでは中等度介助レベル 1 立位保持 : 疼痛憎悪 両手すりがあれば可能 2 下位更衣 : 片手を離せないため介助が必要 3 尿意 便意 : あり 4 清拭 : 自立レベル立位保持能力獲得が必要耐久性が必要立位バランスの獲得が必要 歩行 ( 初期 1) 歩行 ( 初期 2) 歩行 2 平行棒 2 往復可能 立脚期に疼痛憎悪 左 MSw~TSw にて股関節内転が著明 左 LR~TSt にて股関節内転位 右 PSw~MSw にて足部のクリアランス低下立脚期の安定性向上が必要 右遊脚期のクリアランス向上が必要 耐久性の向上が必要立位バランスの獲得が必要 共通の課題 立位が安定し立位保持時間を延長すること 耐久性を向上すること 立位バランスを獲得すること バランス つま先立ち: 困難 踵立ち: 上肢支持があれば可能 左右重心移動: 体幹側屈を伴い 口頭指示後も変化なし左右とも股関節内転位 外乱: 肩甲帯に外乱 左右とも上肢支持が増加骨盤に外乱 左右とも上肢支持が増加 片脚立位: 右立脚時 股関節内転位左立脚時 困難 立位保持: 上肢支持で20 秒程度可能 ( 疼痛 疲労増加のため ) 4

頚椎症性脊髄症の評価 ASIA:D( 不全 ) 神経学的レベルより下位に運動機能は残存し 主要筋群の少なくとも半分以上は筋力 3 異常 フランケルの分類:D(Motor useless) 損傷高位以下の筋力の実用性がある 補助具の要否に関わらず 歩行可能 服部の分類:Ⅰ( 脊髄中心障害で上肢障害が主体 ) 頸椎 JOA スコア 運動機能 0: 箸またはスプーンのいずれを用いても 自力では食事をすることができない 1: スプーンを用いて自力で食事ができるが箸はできない 2: 不自由であるが箸を用いて食事ができる 3: 箸を用いて日常食事をしているがぎこちない 4: 正常 0: 歩行できない 1: 平地でも杖または支持を必要とする 2: 平地では杖または支持を必要としないが階段ではこれらを必要とする 3: 平地 階段ともに杖または支持を必要としないがぎこちない 4: 正常 知覚上肢下肢体幹 0: 明白な知覚障害 1: 軽度の知覚障害または痺れ 2 正常 膀胱 0: 尿閉 1: 高度の排尿障害 ( 残尿感等 ) 2: 軽度の排尿障害 ( 頻尿 開始遅延 ) 3: 正常 合計 10 点 /17 点 頚椎症性脊髄症の評価 2 10 秒テスト : 右 9 回 左 22 回 スパーリングテスト: 陰性 握力: 右 11kg 左 13.5kg 評価の結果 立位バランスが不安定 なぜ立位バランスが不安定か 筋力: 大きな低下認められない 筋出力のタイミング: 立位荷重検査より左右とも腸脛靭帯筋力自体はそれほど低下していないによりかかるため 遅延している筋の使い方に着目 感覚: 大きな低下は認められない筋出力のタイミングや複数の筋を同時に使う協調性 反射: 大きな問題点なし 協調性: 上肢に異常あり 初期の左右重心移動について 左右とも移動範囲が少ない 移動可能な支持基底面が狭い 5

運動学習について 運動学習 運動学習を用いたリハビリの効果 直接路 : 大脳皮質を抑制しすぎない FRT BS 全般に改善が有意にみられ BS 一部に効果の持続性が認められた ¹ 被験者は前試行で被験者自身が記した位置を記憶することにより自分自身のパフォーマンス基準を 10 回の志向中に形成していき 試行を重ねるたびに誤差は小さくなり最終的には高い学習効果を示した ² 間接路: 大脳皮質を抑制する 平行線維サブループ顆状細胞苔状線維メインループ苔状線維橋核大脳皮質 プルキンエ細胞 小脳核 視床 抑制 登上線維 運動 誤差 下オリーブ核 治療 お尻上げ運動 (CKC で協調して筋を収縮するため ) スクワット ( 立位で協調して筋を収縮するため ) 口頭指示やタッピングによるフィードバックをしながら左右荷重練習 ( 実践的な肢位で協調して筋を収縮するため ) 歩行練習 上肢支持をしながらの片脚立位 ( 歩行の立脚支持期の練習 ) 段差昇降 階段昇降練習 屋外歩行 荷重検査結果 段差昇降後に実施 初期 3 日後 最終評価 関節可動域 関節 運動方向 右 左 股関節屈曲 120 110 伸展 10 10 筋力検査 筋名 右左 腸腰筋 4 4 大殿筋 4 4 最終評価 2 握力: 右 13kg 左 15kg 10 秒テスト : 右 13 回 左 23 回 つま先立ち: 上肢支持があれば可能 左右重心移動: 体幹側屈 股関節内転減少 外乱: 骨盤に外乱 股関節内転位となるが瞬時に正中位に直る 片脚立位: 右立脚時 股関節内転位左立脚時 上肢支持があれば可能 立位保持: 上肢支持の有無関係なく1 分以上可能 6

頸椎 JOA スコア ( 最終 ) 運動機能 0: 箸またはスプーンのいずれを用いても 自力では食事をすることができない 1: スプーンを用いて自力で食事ができるが箸はできない 2: 不自由であるが箸を用いて食事ができる 3: 箸を用いて日常食事をしているがぎこちない 4: 正常 0: 歩行できない 1: 平地でも杖または支持を必要とする 2: 平地では杖または支持を必要としないが階段ではこれらを必要とする 3: 平地 階段ともに杖または支持を必要としないがぎこちない 4: 正常 知覚上肢下肢体幹 0: 明白な知覚障害 1: 軽度の知覚障害または痺れ 2 正常 膀胱 0: 尿閉 1: 高度の排尿障害 ( 残尿感等 ) 2: 軽度の排尿障害 ( 頻尿 開始遅延 ) 3: 正常 合計 12 点 /17 点 歩行 ( 最終 ) 歩行 2( 最終 ) 平行棒を継続して5 周以上可能 立脚期に疼痛なし 左 MSw~TSwでの股関節内転が減少 左 LR~TStにて股関節内転位が減少 右 PSw~MSwにて足部のクリアランス低下は残存 トイレ動作 便意 尿意から排泄まで短時間であるためポータブルトイレを引き続き使用し リハビリ時に病棟トイレへ誘導 1 立位保持 : 疼痛なし 両手を離して立位保持可能 2 下位更衣 : 自立 3 尿意 便意 : あり 4 清拭 : 自立レベル 退院準備 介入途中より下垂足のためのオルトップ装具を製作 家屋調査: 住宅改修や福祉用具レンタル等なし サービス:1 自宅内の移動はT 字杖で行うことを提案 2 寝室を1 階へ変更することとなった 3 浴槽が深く 跨ぎ動作困難なため 入浴のみデイサービスを提案 4 自宅内の動きに自信を付けることを目的に訪問リハビリを提案 5 通院は介護タクシーを利用することとなった サービスの実際 訪問介護( 通院の移動支援 ) 車椅子レンタル( 通院のため ) 訪問看護( 定期観察 ) 訪問看護( 訪問リハビリ ) 通所介護( 入浴 機能訓練 ) 7

その後の生活 車椅子にて妻と来院 自宅内での移動はT 字杖で自立し トイレ動作も自立しているとのことであった 外出は恐怖心があり できていないとのことであった まとめ 筋の使い方に着目してアプローチをした 左右荷重が可能となり立位保持が可能となり 歩容も変化した 退院してから自宅内での ADL が自立することができていた 退院してから外出はできていなかった 課題 協調性検査や立位バランスなど 評価の精査 屋外歩行能力を向上するための治療プログラム 患者さんの生活をより知り 今後を想像するための情報収集力を向上すること 介護保険やサービスに対する知識を増やすこと 参考文献 1. バランス練習が要介護高齢者の Functional Reach Test と重心動揺に及ぼす影響 高井逸史 日本老年医学雑誌 45 巻 5 号 P.505-510 2008 2. 理学療法における運動学習に関する一考察 有馬慶美ら 第 30 回日本理学療法士学会誌 22 巻 P.59 1995 3. 脊髄外科研究に用いられるスコアリングシステムおよびその特徴頸椎疾患の評価システム 安田宗義 Spinal Surgery 28 巻 P.246 251 2014 4. 病気が見える Vol.7 脳 神経第 1 版 岡庭豊ら P.43 2015 ご清聴有難うございました 8