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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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会場からの質問 会場への質問 会場からの質問 診療所 A: インフルエンザ疑いの患者さんは 他の患者さんの待合室とは別の部屋で診察待ちとしている インフルエンザ陽性が判明した場合 換気時間を現在は 20 分で設定しているが それでよいのか 國島 : 呼吸器感染症の病原体にはインフルエンザのほか 結核や水ぼうそう マイコプラズマなどいろいろあります どのくらいでほかの患者さんを入れて安全かということどのくらいで空気が入れ替わるのかということにもなり 換気が重要です 必要な時間は部屋の容積と空調によって異なります 一般的な ( 中央空調のある ) ビルであれば室内の空気は 1 時間に 6 ~ 8 回転するように設計されています 単純に言えば 10 分で空気が入れ替わるということなので 換気時間は 20~30 分で十分かと思います 一般的な家屋で空調がない場合は 窓が 1 つある場合 ( 空気の通りが一方向 ) は 1 時間に 6 回転 窓が 2 か所ある場合 1 時間に 12 回転以上するとの目安もあります したがって 窓が 2 か所あれば 10 分後に次の患者さんを入れても安全ということになるし 窓が 1 つしかなければ 20~30 分 窓がなければ 少なくとも空調を設置した方が良いかと思います

会場からの質問 診療所 B: 見た目に汚れていないとき 何を用いて どのくらいの頻度で環境整備をするべきか 國島 : 現在のところ こうすると感染症が減る というエビデンスはないのが現状です あくまで参考として 診療所も病院の外来も同じ取り扱いと考えてよいだろう 厚生病院の外来の清掃はどのようなタイミングで行っていますか 厚生病院看護師長 : 通常はぬれタオル ( アルコールを含まない ) を使用し 1 日 1 回清拭している 感染症の患者さんが触れた環境表面についてはアルコールで清拭する 國島 : 何を用いて環境整備を行うかについては 次亜塩素酸や 消毒剤の噴霧などの対応は必ずしも必要ではないが それぞれのリスクに応じた対応が必要となる 例えば歯科や 外科診療所など血液の曝露リスクの高いところはアルコールを使用したほうが良いかもしれない 内科の診療所であれば 次亜塩素酸やアルコールでの消毒は必ずしも必要ではないと考えます このような診療所では血液媒介感染症やノロウイルス MRSA などが伝播する事は考えにくく 日ごろからの清掃として 1 日 1 回を 1 日 3 回にして伝播率が減少するという効果などは期待できないと思います 行っては行けないということではないが 費用や労力 期待される効果の面からも優先順位は低くなるだろう 環境清掃のツールとしては消毒薬の種類よりも まず物理的に拭き取ることに重きを置くのがいいだろう

会場への質問 國島 : 入所者 ( 入所希望者 ) に対する MRSA の検査は実施していますか また MRSA が検出された場合は どのような対応をしていますか 特別養護老人ホーム C: 入所時に診断書を提出してもらうことになっている この中に MRSA についての記載欄があるが 鼻腔などの保菌者であれば 入所のお断りもしないし 入所後も特に対策はしない 褥瘡からの検出などでは処置時に手袋などで対応する 國島 : 以前 厚生病院で全入院患者にスクリーニング検査を実施したところ MRSA 陽性率は約 2% であった 臨床症状のない保菌者に対策をとることはなかなか難しい また 必ずしも全員が検査をしているわけではなく 陽性が判明したものは氷山の一角に過ぎない 感染症保有が判明している入所者についてのみ対策をするのではなく すべての入所者 患者が感染症を持っているかもしれないという立場での処置毎の手袋 エプロンの交換がやはり重要になるのではないか MRSA 等については 入所時に改めて検査するのではなく もし 検出歴があれば教えてください くらいでよいのかもしれない

國島 : 汚物処理時 特に糞便の処理についてはディスポの手袋および感染症の有無に関わらず 使用毎の交換を推奨したい また できうる限りエプロンもディスポが望ましい 厚生病院でもディスポでない布製エプロンを使っていたようだが 最近廃止した理由は? 厚生病院師長 : 布製の予防衣は撥水性も無く 交換頻度も低いため廃止とした 使用者へのアンケートから はずすタイミングとしては自分がご飯を食べるときに汚いからはずす とのことだった 國島 : 感染症は わからないままに保菌していることも多く 感染症の有無で判断をするのではなく すべからく手袋 エプロンの交換が望ましい

セミナー終了後の 会場からの質問 Q 疥癬のマニュアルを作成するにあたり角化型疥癬と通常疥癬を分けて作成したが それでよいか疑問である A 一般的には角化型疥癬は感染力が強く個室隔離や手袋 長袖ガウン キャップなどの個人防護具の使用が必要です 一方 通常の疥癬はヒゼンダニの寄生数が少なく 患者を隔離する必要はなく標準予防策で対応が可能ですので マニュアルは角化型疥癬と通常疥癬を分けて 状況にあった感染対策を実施することが望ましいと考えます 加えて 実際には必ずしも皮膚科専門医による受診や対応が直ちに行えないこともあり また 高齢者施設ではリクリエーション等で入所者同士が触れ合ったり 入浴や更衣時に介助が必要な場合がありますので 例えば初発時には通常疥癬の場合も状況に応じて角化型疥癬に準じた対策を行い 経過で対策を緩和して行くなど検討してもよいかもしれません 参考文献 : 疥癬診療ガイドライン ( 第 2 版 ): 日皮会誌.2007

Q 疥癬で隔離して 1 か月対応しているが 他の方に症状が出なければ感染していないと考えてよいのか A 疥癬は無症状の潜伏期間は通常 1~2 か月とされていますので 1 ヶ月程度で二次発生がなければ概ね良いと思います ただし 認知症などから自覚症状に乏しいことや 高齢者では元々掻痒性の発疹を有することも多く また数か月間無症状の時期が続くこともあります 通常疥癬は鏡検陰性のこともあり皮膚科専門医でも診断が難しいとされています したがって 可能であれば職員による観察や自覚症状で判断するのではなく 集団発生 ( 同一病棟 ユニット内で 2 か月以内に二人以上の疥癬患者が発生した場合 ) や角化型疥癬が確認された場合には全入所者 職員の皮膚科検診をお勧めします また 隔離されている疥癬の方は角化型疥癬でしょうか 疥癬を発症した場合の隔離は 角化型疥癬の場合でも適切な治療後に感染性が減じたと皮膚科医が判断した時点 ( 約 1~2 週間 ) で隔離は解除可能です ただ イベルメクチンは虫卵の状態では効果はないため 何れにしても皮膚科医の判断が必要です 参考文献 : 疥癬診療ガイドライン ( 第 2 版 ): 日皮会誌.2007

Q 加湿することは感染予防に効果はありますか A 現在のところ 施設内において加湿器ならびに空気清浄機の設置によりインフルエンザを含めた感染症が増減したとする報告はありません 加湿器を使用する際は吹き出し口および貯水タンクが緑膿菌やアシネトバクターなどの病原微生物による汚染を防止するために定期的に清掃することをお勧めします Q 病院内のトイレは酸性の洗剤で清掃すべきですか また 処置室内の血液は清掃スタッフではなく看護師に知らせていただき看護師が処理していますが トイレの生理時の血液がついているような場合はどのように対処すべきですか A 病院内のトイレに用いる洗剤について 特に酸性の洗剤を用いなければならないことはなく 一般的に日常的な清掃において トイレを特別な消毒する必要はありません 感染性胃腸炎やクロストリディウム ディフィシルなど 感染性の下痢症に対応する場合は 次亜塩素酸ナトリウム ( アルカリ性 ) が主成分の洗剤で清掃することが多いものの ph よりは 清掃の実際などのプロセス管理も重要と考えます 勿論 実際には診断や対策が直ちに行えないこともあり 感染胃腸炎の流行時にプラス α の対策として 通常時から良く手が触れる部位を主に消毒することもリスク低下には役立つかもしれません トイレに血液がついている場合も 標準予防策に準じて 感染の可能性のある対象 として処置室内の血液と同様の対応をお願いします

Q ノロウイルス RS ウイルス インフルエンザ マイコプラズマなどの感染症の処置はベッドサイドの方がいいですか ( 処置台で行っていることが多い ) ステートは部屋ごとがいいですか A 外来部門や小児病棟等の理由からベッドサイドでの処置が困難な場合は処置室へ移動して処置をすることがあるかもしれません その際は インフルエンザ マイコプラズマは飛沫予防策 ノロウイルス RS ウイルスは接触予防策を行い 処置台は使用毎に清掃することをお勧めします Q 嘔吐物の処理をした後どのぐらいまで消毒すればいいのか聞きたい A 床等に飛び散った患者の嘔吐物を処理するときは 使い捨てのガウン ( エプロン ) マスクと手袋を着用し汚物が飛び散らないように 外側から内側に向けてペーパータオルや 凝固処理剤等で静かに拭き取ります 拭き取った後は 次亜塩素酸ナトリウム ( 塩素濃度約 200ppm) で浸すように床を拭き取り その後水拭きをします 拭き取りに使用したペーパータオル等は ビニール袋に密閉して廃棄します ( この際 ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム ( 塩素濃度約 1,000ppm) を入れることが望ましい ) また ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い これが口に入って感染することがあるので 吐ぶつやふん便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し 処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です 1) 厚生労働省, ノロウイルスに関する Q&A, 平成 24 年 4 月 18 日最終改訂, http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

Q 汚物処理時 手袋交換が望ましいとのことだが アルコール消毒 ( 手袋をつけたまま ) ではダメなのか A 汚物処理時に着用した手袋には 尿や便などの感染の可能性がある湿性生体物質が付着している可能性があり 汚物はアルコールで除去できないことと これらが付着した手袋の上からアルコール消毒を行ったとしても 全ての病原微生物の消毒はできません そのため 手袋の交換が望ましいと考えます また 実際には手袋を取る際に 手に汚物や病原微生物が付き 検出されることが多いため 手袋を外した後も 流水による手指衛生が必要です