Microsoft Word - FHA_13FD0159_Y.doc

Similar documents
関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

博士の学位論文審査結果の要旨

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

上原記念生命科学財団研究報告集, 31 (2017)

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

主論文 Role of zoledronic acid in oncolytic virotherapy : Promotion of antitumor effect and prevention of bone destruction ( 腫瘍融解アデノウイルス療法におけるゾレドロン酸の役割 :

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

センシンレンのエタノール抽出液による白血病細胞株での抗腫瘍効果の検討

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

PowerPoint プレゼンテーション

-119-

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

脂肪滴周囲蛋白Perilipin 1の機能解析 [全文の要約]

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

研究成果報告書

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

う報告26)がみられるが Barrett 食道癌における FAK する必要がある 本研究における我々の目的は 1 の発 現 とそ の機能 に ついて の 報 告は み ら れ な い FAK の Barrett 食道癌における役割を検討すること Barrett 食道は胃食道逆流症により正常扁平上皮が

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]

学位論文内容の要旨 Abstract Background This study was aimed to evaluate the expression of T-LAK cell originated protein kinase (TOPK) in the cultured glioma ce

ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

スライド 1

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

Untitled

テイカ製薬株式会社 社内資料

がん免疫療法モデルの概要 1. TGN1412 第 Ⅰ 相試験事件 2. がん免疫療法での動物モデルの有用性がんワクチン抗 CTLA-4 抗体抗 PD-1 抗体 2

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

平成 28 年 2 月 1 日 膠芽腫に対する新たな治療法の開発 ポドプラニンに対するキメラ遺伝子改変 T 細胞受容体 T 細胞療法 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 脳神経外科学の夏目敦至 ( なつめあつし ) 准教授 及び東北大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 下瀬川徹

Microsoft Word - 3.No._別紙.docx

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

酵素消化低分子化フコイダン抽出物の抗ガン作用増強法の開発

1)表紙14年v0

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

<4D F736F F D F4390B388C4817A C A838A815B8358>

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

cover

PowerPoint プレゼンテーション

学位論文の要約 免疫抑制機構の観点からの ペプチドワクチン療法の効果増強を目指した研究 Programmed death-1 blockade enhances the antitumor effects of peptide vaccine-induced peptide-specific cyt

PowerPoint プレゼンテーション

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

Microsoft PowerPoint - 新技術説明会配付資料rev提出版(後藤)修正.pp

第6号-2/8)最前線(大矢)

- 2 -

Microsoft PowerPoint - 2_(廣瀬宗孝).ppt

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

Untitled

Untitled

の基軸となるのは 4 種の eif2αキナーゼ (HRI, PKR, または ) の活性化, eif2αのリン酸化及び転写因子 の発現誘導である ( 図 1). によってアミノ酸代謝やタンパク質の折りたたみ, レドックス代謝等に関わるストレス関連遺伝子の転写が促進され, それらの働きによって細胞はス

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と

Untitled

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 23 年 6 月 16 日現在 機関番号 :32612 研究種目 : 基盤研究 (C) 研究期間 :2008~2010 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 膀胱癌に対する新規 NF ー kappab 活性阻害剤を併用した抗癌治

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

Untitled

ABSTRACT

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

考えられている 一部の痒疹反応は, 長時間持続する蕁麻疹様の反応から始まり, 持続性の丘疹や結節を形成するに至る マウスでは IgE 存在下に抗原を投与すると, 即時型アレルギー反応, 遅発型アレルギー反応に引き続いて, 好塩基球依存性の第 3 相反応 (IgE-CAI: IgE-dependent

博士学位論文 内容の要旨及び論文審査結果の要旨 第 11 号 2015 年 3 月 武蔵野大学大学院

表1-4B.ai

ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

<4D F736F F D F4390B38CE3816A90528DB88C8B89CA2E646F63>

平成14年度研究報告

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

東邦大学学術リポジトリ タイトル別タイトル作成者 ( 著者 ) 公開者 Epstein Barr virus infection and var 1 in synovial tissues of rheumatoid 関節リウマチ滑膜組織における Epstein Barr ウイルス感染症と Epst

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

<4D F736F F D EA95948F4390B3817A938C91E F838A838A815B835895B68F F08BD682A082E8816A5F8C6F8CFB939C F

学位論文の要約 Clinical Significance Of Platelet-Derived Growth Factor 5 Receptor-β Gene Expression In Stage II/III Gastric Cancer With S-1 Adjuvant Chemothe

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

研究成果報告書

リーなどアブラナ科野菜の摂取と癌発症率は逆相関し さらに癌病巣の拡大をも抑制する という報告がみられる ブロッコリー発芽早期のスプラウトから抽出されたスルフォラフ ァン (sulforaphane, 1-isothiocyanato-4-methylsulfinylbutane) は強力な抗酸化作用

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 神谷綾子 論文審査担当者 主査北川昌伸副査田中真二 石川俊平 論文題目 Prognostic value of tropomyosin-related kinases A, B, and C in gastric cancer ( 論文内容の要旨 ) < 要旨

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

平成24年7月x日

学位論文の要約

Transcription:

1 要約 Pin1 inhibitor PiB prevents tumor progression by inactivating NF-κB in a HCC xenograft mouse model (HCC 皮下移植マウスモデルにおいて Pin1 インヒビターである PiB は NF-κB 活性を低下させることにより腫瘍進展を抑制する ) 千葉大学大学院医学薬学府先端医学薬学専攻 ( 主任 : 大塚将之教授 ) 千田貴志

2 緒言 肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma: 以下 HCC) は主要な癌死の原因の1つであるが, その予後は不良である これは有効な化学療法がない事が一因であり, 新規治療薬の開発が強く望まれる Nuclear factor κb ( 以下 NF-κB) は炎症性カスケードにおいて重要な働きを示す転写因子であり,HCC の進展を促進することが知られている しかし NF-κB は細胞増殖や免疫反応においても重要な役割を担っている事が知られており,NF-κB の構成蛋白の1つである p-65 サブユニットのノックダウンを行ったマウスでは, 胎生期に致死的な障害が発生する事が報告されている したがって NF-κB を直接阻害する事は生体に強い副作用を及ぼす危険性があると考えられる そこで我々はこの NF-κB 活性に関わる因子として Pin-1 という酵素に着目した 我々は当科における HCC 切除症例において,Pin-1 が NF-κB 活性の亢進を介して細胞周期の進展および抗アポトーシス作用を誘導し,HCC の進展を促進する事, また vitro において Pin-1 阻害剤として知られる juglone の投与によってヒト肝癌細胞の増殖が抑制される事をそれぞれ報告した ヒト癌細胞株をマウスに移植した異種移植マウスモデルにおいて juglone およびその構造異性体が腫瘍増殖を抑制する事が報告されているが, ヒト HCC 細胞株を移植した異種移植モデルに juglone を投与した報告は未だなく, 加えて juglone は Pin- 1 以外にもいくつかの酵素の働きを阻害する事が報告されており, 腫瘍細胞における Pin-1 特異的な作用は以前不明瞭なままである 近年 Pin-1 特異的な合成阻害剤として開発された PiB が報告されたが, 異種移植マウスモデルに PiB を投与した報告は未だ存在しない そこで本研究ではヒト HCC 異種移植マウスモデルに PiB を投与し, その治療効果およびメカニズムを検討する事, また PiB の生体に対する安全性を検討する事を目的とした

3 方法 ヒト HCC 細胞株である HepG2 を 1.0 10 5 /10ml/well の濃度で 6cm dish に散布し,24 時間後に PiB を 0, 25, 50, 100μmol/L の濃度で投与し,72 時間培養した その後培養後の細胞を用いて BrdU incorporation assay にて細胞増殖能を,Electrophoretic mobility shift assay( 以下 EMSA) にて NF-κB 活性を,Annexin V assay kit を用いたフローサイトメトリーによりアポトーシスをそれぞれ評価した 次に HepG2 および HuH-7 5 10 6 個を 200μL の Matriegel に懸濁し,SCID マウスの皮下に移植した異種移植マウスモデルを作成した 腫瘍の体積は長径 短径 2 1/2 で計算し, 体積が 200mm 3 を越えた時点で PiB 投与群と非投与群に振り分けた 投与群では 3%DMSO に溶解した PiB 2.5mg/kg を腹腔内に隔日投与し, 腫瘍の体積を投与開始日から 2, 4, 7, 14, 21, 28 日目にそれぞれ評価した また PiB による副作用を評価するために野生型 BALB/c マウスを PiB 投与群, 非投与群に振り分け, 投与群には PiB 10mg/kg を腹腔内に隔日投与し体重の推移を観察した 各マウスは 28 日後に安楽死させ, 血液, 皮下腫瘍, 肝, 肺, 腎をそれぞれ採取した 血液からは血中 ALT 値およびクレアチニン値を測定した 各摘出サンプルは 10% ホルマリン液にて固定し, ヘマトキシリン エオジン染色にて評価した 摘出腫瘍からは腫瘍細胞の全組織溶解液と核抽出液を Deryckere and Gannon 法にて抽出した その後 Ki-67 および p-nf-κb-p65(ser276) の免疫染色および TUNEL 染色を, ウエスタンブロット法にて cyclin D1, p27(kip1), pro-caspase-3, cleaved caspase-3, survivin の評価を,EMSA 法により NF-κB 活性をそれぞれ評価した 結果 vitro において HepG2 の増殖能および DNA の BedU 取り込み能は PiB の濃度依存性に抑制される事が示された (Figure 1A,1B) また PiB 50μM 投与により HepG2 の NF-κB 活性は有意に抑制され (Figure 1C), アポトーシスは有意に増加した (Figure 1D) 異種移植マウスモデルにおいて PiB 投与群の腫瘍径は非投与群と比較

4 し投与開始 14 日目以降有意に増大が抑制された (Figure 2A,2B) Figure 2C は代表的な HepG2 移植モデルの PiB 投与開始から 28 日目の PiB 投与群 ( 左 ), および非投与群 ( 右 ) の 1 例を示している 腫瘍内の NF-κB 活性は PiB 投与群において有意に抑制されており (Figure 3A,3B),Pin-1 による NF-κB 活性化の指標と言われている p-nfκb-p65(ser276) 発現も有意に抑制されていた (Figure 3C,3D) また Ki-67 による免疫染色を行ったところ, PiB 投与群において細胞増殖は有意に抑制されていた (Figure 4A,4B) 我々は以前に Pin-1 が p27(kip1) 発現の抑制および cyclin D1 発現の増強を誘導することで HCC 腫瘍細胞の増殖を促すことを報告しており, 本実験においても PiB 投与群では腫瘍内 cyclin D1 発現の抑制および p27(kip1) 発現の増強が認められた (Figure 4C) さらに TUNEL 染色の結果では PiB 投与群において腫瘍細胞のアポトーシスは有意に増加していた (Figure 5A and 5B) NF-κB の不活性化による腫瘍細胞のアポトーシスは cleaved caspase-3 発現の増強および survivin 発現の低下により誘導される事が報告されており, 本実験においても PiB 投与群における腫瘍内 cleaved caspase-3 発現の増強および survivin 発現の低下が確認された (Figure 5C) 野生型 BALB/c マウスを用いた PiB 投与の安全性の検討においては,PiB 投与群において明らかな体重減少や肝, 肺, 腎に対する明らかな傷害は認められなかった (Figure 6A,6B) また血中の ALT およびクレアチニンレベルも,PiB 投与群と非投与群の間で明らかな差を認めなかった (Figure 6C,6D) 考察 Pin-1 は HCC を含む様々な悪性腫瘍の増殖を促進する事が vitro において示されており, そのメカニズムとして Pin-1 は NF-κB, や AP-1, cyclin D1, p53, survivin などの因子の活性化を誘導する事で, 腫瘍細胞周期の促進, 抗アポトーシス作用, 血管新生, 上皮間葉細胞転移の促進, 浸潤能の増強などを示す事が報告されている 我々も以前に

5 HCC 患者において Pin-1 高発現が NF-κB 活性の亢進を介して, 腫瘍増殖の促進および予後不良と強い相関を示す事を報告した 本研究において我々は,PiB が NF-κB 活性低下を介して腫瘍細胞の cell cycle を抑制し, またアポトーシスを促進することにより腫瘍進展を抑制することを vitro にて明らかにした またヒト HCC 異種移植マウスモデルにおいても PiB が腫瘍細胞増殖を抑制する事を示し, 生体内において PiB 投与が抗腫瘍効果を示す事をはじめて報告した また我々は PiB 2.5mg/kg の隔日投与が腫瘍増殖を有意に抑制する事, その腫瘍内におけるリン酸化 NF-κB-p65(Ser276) および NF-κB 活性の抑制とそれに伴う p27(kip1) 発現の維持および cyclin D1 発現の低下から腫瘍細胞の増殖能が抑制される事, さらに survivin の抑制と cleaved caspase-3 発現の亢進から腫瘍細胞のアポトーシスが促進される事をそれぞれ示す事ができた Pin-1 阻害剤の生体に対する副作用はいまだ明らかではないが, 本研究において我々は異種移植マウスモデルにおいて治療効果を示した 4 倍量の PiB を投与したマウスにおいて, 明らかな体重減少や, 肝, 肺, 腎の主要臓器に傷害を示さない事を明らかにした これらの結果から, 本実験デザインにおいて PiB は明らかな副作用を示す事無く腫瘍増殖を抑制する事が示され, 人体における PiB の影響についてさらなる研究が必要ではあるものの,PiB が HCC 患者に対する有効な治療薬になりうる事が示された 結論 ヒト HCC 異種移植マウスモデルにおいて PiB 投与は NF-κB 活性低下を介して腫瘍細胞増殖シグナルを抑制し, アポトーシスを促進することにより腫瘍進展を抑制した またその際に明らかな副作用は認めなかった よって,PiB は HCC に対する安全で有用な新規治療薬として期待される