Ⅰ. 調査実施要領 2012 年人事 労務に関するトップ マネジメント調査結果 の概要 2012 年 10 月 25 日 ( 一社 ) 日本経済団体連合会 調査目的 : 春季労使交渉 協議の結果や 人事 労務に関するトップ マネジメントの意見を取 りまとめ 今後の政策立案の際の貴重な資料として活用することを目的とし 1969 年 から毎年実施している 調査対象 : 経団連会員企業および東京経営者協会会員企業 ( 計 1,889 社 ) の労務担当役員以上 回答状況 : 調査対象企業 1,889 社のうち 有効回答社数は 578 社 ( 回答率 30.6%) 産業別 : 製造業 269 社 (46.5%) 非製造業 285 社 (49.3%) 無回答 24 社 (4.2%) 規模別 : 従業員 500 人以上 439 社 (76.0%) 500 人未満 128 社 (22.1%) 無回答 11 社 (1.9%) 調査時期 :2012 年 6 月 29 日 ~8 月 31 日 Ⅱ. 調査結果 ~ 調査結果のポイント~ 1. 定期昇給制度があると回答した企業 ( 全体の 76.9%) のうち 個々人が創出する付加価値と賃金水準との整合性を図るための対応として 年功的な昇給割合を減らし 貢献や能力を評価する査定昇給の割合を増やす必要がある とした企業は 58.0% 企業は厳しい経営環境のなか 個々人の貢献度や能力評価の結果を より一層重視しようとしている 2. 近年特に重視している中核人材について 新たな課題にチャレンジできる人材 と回答した企業が 61.3% 中核人材育成のために 優秀な従業員を早期に選抜し 次世代経営層として育成している (49.2%) だけではなく グローバルな視点を身に付けさせるために 海外の駐在やトレイニー等として海外派遣を経験させている (46.2%) と回答した企業が多く グローバルに活躍できる中核人材を求めている 3. 海外における事業拡大に向けた人材面での競争力強化のため 人材育成を目的とした 従業員の海外拠点への積極派遣 を実施していると回答した企業は 57.8% 今後実施を予定 検討している取り組みについては グローバルな戦略人材の早期選抜 育成施策の実施 (45.2%) と回答した企業が最も多く グローバル人材の早期育成に取り組もうとしている姿勢が目立つ 4. 高齢法の改正にともない必要となる対応について 高齢従業員の貢献度を定期的に評価し 処遇へ反映する と回答した企業は 44.2% 高齢従業員の業務内容や貢献度に応じて 処遇を決定しようとしている企業が多い 高年齢者雇用安定法の改正にともない 企業には 2013 年 4 月より希望者全員の 65 歳までの雇用確保措置が求められる - 1 -
1. 労使交渉 協議等について 図表 1. 労使交渉 協議における賃金改善要求の有無 要求はなかった 56.9% 要求があった 43.1% 図表 2. 賃金改善要求の項目 ( 複数回答 ) 図表 1 で 賃金改善要求があった と回答した企業が対象 基本給の定期昇給 ( 賃金体系の維持を含む ) 82.8 基本給のベースアップ 36.2 家族手当 ( 次世代支援手当 扶養手当など ) の増額 10.3 資格手当 ( 技能手当 技術手当など ) の増額 8.6 業績 成果手当の増額 7.8 住宅手当 ( 持家手当 家賃補助 ) の増額 6.0 単身赴任手当 ( 別居手当 単身赴任旅費など ) の増額 6.0 営業手当 ( 外勤手当など ) の増額 5.6 地域手当 ( 都市手当 寒冷地手当など ) の増額 3.9 食事手当 ( 食事補助など ) の増額 2.6 年齢 勤続手当の増額 2.2 0 20 40 60 80 100-2 -
図表 3. 労使交渉 協議の結果 賃金 賞与 一時金以外の項目について 議論あるいは実施を決めた項目 ( 複数回答 ) ワーク ライフ バランスに関連する施策の拡充 37.8 37.3 総実労働時間の短縮 19.0 32.0 高齢者の継続雇用の見直し ( 勤務日数 賃金などの労働条件や選定基準の範囲 ) 14.3 29.4 議論した項目 諸手当の見直し 23.8 28.0 人材育成施策 ( 自己啓発支援 研修費用の助成など ) の見直し 21.0 19.4 実施を決めた項目 法定外福利厚生 ( 総費用額 福利厚生施設など ) の見直し 13.3 11.9 退職一時金 年金制度の見直し ( またはその方向での継続協議 ) 9.5 13.3 時間外労働割増率の見直し 4.0 8.9 裁量労働制またはフレックスタイム制の導入 1.2 12 4.6 勤務間インターバル規制の導入 0.4 1.4 の主な回答 議論したこと メンタルヘルス施策の拡充 年次休暇の取得促進 実施を決めたこと 単身赴任手当条件の緩和 見直し ボランティア休暇の創設 21.8 25.6 0 10 20 30 40-3 -
図表 4. 今次春季労使交渉における 雇用の維持 安定に関する議論の有無 60 雇用の維持 安定について労使で議論した 企業の推移 56.2 論議しなかった 74.3% 論議した 25.7% 50 40 30 20 10 39.1 18.8 36.0 24.5 20.0 18.0 17.8 13.3 45.3 31.7 25.7 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 ( 年 ) 図表 5. 労使交渉の有無にかかわらず過去 1 年間で 雇用の維持 安定に向けて実施した取り組み ( 複数回答 ) 時間外労働の削減 抑制 70.1 配置転換 出向 転籍 38.0 管理職賃金 賞与の減額 24.3 役員報酬の減額 24.1 新卒 中途採用の削減 中止 19.5 一般社員の賃金 賞与の減額 17.8 雇用調整助成金の申請 10.5 一時休業の実施 7.1 7.5 0 10 20 30 40 50 60 70 80-4 -
図表 6. 定期昇給制度の有無 この調査で 定期昇給とは 査定による個人差があったとしても 毎年 誰もが自動的に昇給する仕組みの総称を指すものとする 具体的には 年齢 勤続によって自動的に昇給する場合や 職務遂行能力の向上 習熟で昇給する賃金 ( 職能給 ) のうち 年功運用によって毎年 概ね誰もが昇給する場合も定期昇給に含む ない 23.1% ある 76.9% 図表 7. 従業員が創出する付加価値と賃金水準との整合性を図るために必要と考える対応 ( 複数回答 ) 図表 6 で 定期昇給制度がある と回答した企業が対象 年功的な昇給割合を減らし 貢献や能力を評価する査定昇給の割合を増やす 58.0 若年層などの一定の年齢層や 一定の職位 職階の従業員を除き 年功的な昇給を廃止し 査定昇給とする 28.5 現行制度は維持するが 業績が著しくない場合には 昇給の延期 凍結について組合と柔軟に協議し対応していく 27.1 利益の変動や競争力の変化に応じて 昇給原資を変動させる 22.6 全従業員を対象に年功的な昇給を廃止し 査定昇給とする 14.7 特段の対応はしない ( 既に必要な対応を講じている場合を含む ) 12.9 労働協約等に基づき自動的に昇給する仕組みから 毎年の労使交渉 協議を踏まえて昇給額を決定する仕組みに見直す 3.8 3.2 0 10 20 30 40 50 60-5 -
図表 8. 法定福利費の増加 ( 厚生年金保険料や健康保険料などの引上げ ) の負担感 あまり重くない 全く重くない 0.3% 8.2% 非常に重い 30.9% やや重い 60.6% 図表 9. 法定福利費の増加による人件費の調整 図表 8 で法定福利費の負担感が 非常に重い やや重い と回答した企業が対象 法定外福利費を含めた福利厚生内での調整を検討する 7.5% 9.6% 12.1% 賃金制度の見直しなど 抜本的な対応を検討する 特段の対応はしない 45.9% 24.9% 定期昇給を維持しつつ 制度見直しをともなわない運用による人件費抑制策 ( 時間外労働の削減や昇給ペースの調整など ) を検討する - 6 -
図表 10. 団体交渉とは別の 労使による課題解決型の話し合いの場の設置状況 設けていない 31.4% 設けている 68.6% 図表 11. 労使間で課題解決型の話し合いの場がある場合 会社の競争力強化に向けて話し合いを実施している項目 ( 複数回答 ) 図表 10 で 話し合いの場を設けている と回答した企業が対象 今後の事業戦略 44.6 従業員の教育訓練計画 32.3 人員計画 採用計画 23.9 の主な回答 人事制度の見直し 福利厚生制度の拡充 見直し ワーク ライフ バランス施策の推進 時間外労働の削減 0 10 20 30 40 50 47.8-7 -
2. 経営強化に向けた人材の活用促進について 図表 12. 経営環境の変化等を踏まえ 近年 特に重視している中核人材 ( 複数回答 ) 新たな課題にチャレンジできる 61.3 部下や後継者を育成できる 39.8 海外拠点において適切にマネジメントできる事業戦略を大局的に策定できる革新性 先進性 独自性の高い製品 サービスを創り出す心身ともに強く 職場環境等の変化への適応力が高い 32.0 28.3 26.8 25.2 専門的知識や技術を有する顧客ニーズを正確に把握できる情報収集力を有する外国人とコミュニケーションする語学力や異文化理解力を有する国内組織において適切にマネジメントできる 19.7 18.0 15.0 13.4 さまざまな部署で幅広い業務を経験した 6.5 チーム内のメンバーの調和を図れる 3.3 1.6 0 10 20 30 40 50 60 70 図表 13. 中核人材を育成するために 近年 特に重点的に実施している事項 ( 複数回答 ) 優秀な従業員を早期に選抜し 次世代経営層として育成している 49.2 グローバルな視点を身につけさせるために 海外の駐在やトレイニー等として海外派遣を経験させている 46.2 視野を広げるために グループ内外の企業等への出向を積極的に行っている 30.3 地域や現場への理解を深めるために 支社や支店への配置を重点的に行っている 25.1 企画力 調整力を高めるために 本社組織への配置を重点的に行っている 19.3 11.0 0 10 20 30 40 50-8 -
図表 14. 中核人材を対象とした OJT として 近年 特に重点的に実施している事項 ( 複数回答 ) 意図的に困難な課題を与え チャレンジする姿勢を身に付けさせている 45.4 組織管理や意思決定をする機会を与えている 45.2 部下の指導機会を増やしている 37.4 経営全体を俯瞰する機会を与えている 34.0 未経験の業務分野を中心的に割り当て 業務を幅広く経験させている 27.8 2.9 0 10 20 30 40 50 図表 15. 中核人材を対象とした社内 社外研修として 近年 特に重点的に実施している事項 ( 複数回答 ) 現在 自社が直面している重要な課題に関する解決策を考える機会を用意している 59.6 将来の経営課題を想定させ その解決策を考える機会を用意している 48.0 研修の効果がより高まるよう 研修前の事前準備と研修後のフォローを充実している 41.4 研修中に自らの働き方を振り返るプロセスを重視している 32.7 過去に実際に発生した事例について考えさせる機会を用意している 14.9 競争やゲームの要素を盛り込み 研修に対する興味を湧かせる等 積極的な受講を促進している 8.8 5.0 0 10 20 30 40 50 60-9 -
図表 16. 従業員全体のモチベーションを向上させる工夫として 近年 特に重視している事項 ( 複数回答 ) 経営トップ層による従業員に向けたメッセージの発信および傾聴の場の設置 56.2 評価結果や処遇に関する丁寧な説明の実施 51.5 面談等を通じた従業員の価値観やキャリアプランに関するヒアリング 50.1 従業員のキャリアアップを後押しする教育訓練の実施 45.6 従業員の成果や貢献などを称える表彰制度の導入 運用 39.1 企業理念の浸透を通じた求心力の強化 33.4 従業員調査を通じた仕事に対する満足度 不満足度の適切な把握 29.6 職場の一体感の醸成を目的とした社内交流イベントの実施 25.0 従業員の希望を勘案した人事異動の実施 21.4 評価結果や処遇に関する疑問に対応する問い合わせ窓口の設置 7.5 福利厚生施策の充実 7.5 1.7 0 10 20 30 40 50 60-10 -
図表 17. 海外における事業展開に向けた人材面での競争力強化への取り組み ( 複数回答 ) 人材育成を目的とした 従業員の海外拠点への積極派遣 38.5 57.8 外国人および海外留学経験者の積極的採用グローバルな戦略人材 ( 海外派遣要員 ) の早期選抜 育成施策の実施海外拠点現地従業員の積極的登用 活用 28.7 26.7 44.2 現在実施している取り組み 43.3 45.2 今後実施を予定 検討している取り組み 35.3 国内拠点 海外拠点間での人材交流 24.9 30.3 企業理念等の多言語での明文化 配布昇格要件等への語学資格 (TOEIC TOEFL など ) の追加 14.4 16.5 24.4 22.0 海外業務を展開していない または縮小中のため いずれの項目にも該当しない 10.0 6.7 駐在員としてのあるべき行動基準 ( コンピテンシー ) を策定 6.7 10.6 全世界共通フォーマットによる職務記述書 (Job Description) の策定 英語の社内公用語化 1.8 1.6 3.9 5.1 5.7 8.5 0 10 20 30 40 50 60-11 -
3. ワーク ライフ バランス施策等について 図表 18. ワーク ライフ バランスを 経営戦略の一環 として推進しているか 推進していない 23.6% 推進している 76.4% 図表 19. ワーク ライフ バランスを実現するための施策 ( 複数回答 ) 育児介護休業制度の充実所定外労働時間の削減 メンタルヘルスケアの充実介護のための短時間勤務制度 所定外労働時間の免除社員の自己啓発 ( 能力開発 ) 支援策の実施仕事の進め方の見直し 効率化の推進労働時間等の課題について労働組合との話し合う機会の設定計画的年次有給休暇制度フレックスタイム制度変形労働時間制度社員の家庭の事情等を考慮した配置転換の運用等始業 終業時刻の繰り上げ 繰り下げ復帰支援 能力開発支援の充実裁量労働制年次有給休暇の完全消化の奨励保育等の子育てサービスの提供短時間正社員制度の設置テレワーク 75.6 11.1 75.0 9.8 72.8 24.8 71.4 5.4 65.7 17.5 55.8 26.7 51.4 7.3 49.4 11.1 49.2 7.9 37.1 6.3 35.4 7.9 33.8 3.8 実施している施策 30.5 25.1 21.3 新たに導入を検討 予定している施策 13.3 20.9 8.9 20.7 7.0 15.6 4.8 10.6 21.6 4.2 1.0 0 10 20 30 40 50 60 70 80-12 -
図表 20. ワーク ライフ バランス施策を進めるうえで 現在抱えている問題 ( 複数回答 ) 休業者等のいる職場の上司 同僚の負担が大きい 48.9 休職取得者の代替要員の確保が困難である 40.3 ワーク ライフ バランス施策に対する職場の理解が不足している 36.7 管理職が多忙であるため ワーク ライフ バランス施策に配慮する余裕がない 33.0 公的保育所などワーク ライフ バランス推進に向けた環境の整備が遅れている 30.9 賃金 評価をはじめとする処遇の公正性の確保が難しくなっている 15.5 私生活の充実が先行し 本来必要な生産性の更なる向上が十分ではない 13.1 各種休職者から復帰後にモチベーションが低くなる キャリアアップをあきらめる社員がいる 11.8 コストアップに繋がっている ( 費用対効果を感じられない ) 10.5 3.6 0 10 20 30 40 50-13 -
4. 高齢従業員の雇用確保について 図表 21. 高年齢者雇用安定法の改正にともない必要となる対応 ( 複数回答 ) 高齢従業員の貢献度を定期的に評価し 処遇へ反映する 44.2 スキル 経験を活用できる業務には限りがあるため 提供可能な社内業務に従事させる 43.6 半日勤務や週 2~3 日勤務などによる高齢従業員のワークシェアリングを実施する 41.0 高齢従業員の処遇 ( 賃金など ) を引き下げる 30.0 若手とペアを組んで仕事をさせ 後進の育成 技能伝承の機会を設ける 25.8 60 歳到達前 到達時に社外への再就職を支援する 24.1 60 歳到達前 到達時のグループ企業への出向 転籍機会を増やす 22.7 新規採用数を抑制する 16.9 60 歳到達前の従業員の処遇を引き下げる 13.3 社内には高齢従業員に提示する業務がないため 従来アウトソーシシンク していた業務を内製化したうえで従事させる 11.7 特段の対応はしない 9.4 高齢従業員の勤務地エリアを拡大する 8.9 7.2 0 10 20 30 40 50-14 -
5. 女性従業員の活躍促進 支援について 図表 22. 女性従業員 ( 主に正社員 ) の活躍支援のために取り組んでいる事項 ( 複数回答 ) 柔軟な労働時間の設定 仕事と家庭とのバランスを保つことができる環境の整備女性従業員の管理職登用の拡大幅広い仕事上の経験を与えるなどの職域の拡大 55.8 54.0 50.5 女性従業員の採用の拡大 45.8 各種研修など 女性従業員の教育機会の拡大 38.4 メンター制度の導入 19.6 社内 SNS など 女性従業員間で気軽に情報交換できる場の提供 9.8 5.6 0 10 20 30 40 50 60 図表 23. 女性従業員の活躍状況 女性従業員の活躍機会があまりない 4.2% 1.4% 性別を意識することなく 優秀な人材が活躍する状況が実現している 36.2% 58.2% 性別を意識することなく 優秀な人材が活躍する状況には至っていないものの 女性従業員の活躍機会は着実に増えている 図表 24. 女性従業員の活躍支援を進めるにあたり 特に強化すべきこと ( 複数回答 ) 図表 23 で 女性従業員の活躍の機会が実現している 着実に増えている と回答した企業が対象 女性従業員自身が キャリアアップに向けて一層の取り組みを行う 58.9 これまで女性従業員に経験させたことの少ない ( またはない ) 業務 部署に積極的に配置する 53.8 経営者や上司等から女性従業員に対し 期待する役割 成果を効果的に伝える 45.6 女性従業員の活躍支援に向けた取り組みについて 男性従業員の理解を深める 26.8 4.8 0 10 20 30 40 50 60-15 -