岐阜市の BRT の導入推進に向けた取り組みについて岐阜市企画部交通総合政策課課長青木保親 1. はじめに戦後のモータリゼーションの進展により 地方都市においても 道路網の整備が進み 車での移動を前提として公共交通が無い郊外部まで市街地が拡散し 大学 官庁及び病院などの公共公益施設や大規模商業施設も

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目次

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市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

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道州制基本法案(骨子)

内部統制ガイドラインについて 資料


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国土技術政策総合研究所 プロジェクト研究報告

Transcription:

岐阜市の BRT の導入推進に向けた取り組みについて岐阜市企画部交通総合政策課課長青木保親 1. はじめに戦後のモータリゼーションの進展により 地方都市においても 道路網の整備が進み 車での移動を前提として公共交通が無い郊外部まで市街地が拡散し 大学 官庁及び病院などの公共公益施設や大規模商業施設も広大な敷地を求め郊外部に流出した こうした変化により 鉄道やバスなどの公共交通の沿線の人口密度が低下するなど 公共交通網と都市構造との間に乖離が生じてきた 更に 急激な少子高齢化の進展や本格的な人口減少及び団塊世代が高齢化したことにより 公共交通の利用者は急激に減少している 特にこうした変化は 公共交通の利便性が低い地方都市で顕著になっており 公共交通を取り巻く環境の悪化により 全国では鉄道やバス路線の廃止が相次ぎ 交通事業者が経営的に行き詰まる事例も増えるなど 将来にわたり公共交通を維持確保していくことが困難となっている 今後 公共交通を維持していくための官民の連携はもとより 地域住民が主体となって地域の公共交通を確保していく取り組みが求められている 本論文では 岐阜市の取り組み事例をもとに 官民の連携と施策効果分析を踏まえ公共交通の維持確保や公共交通活性化の施策について検討するとともに今後の課題について考察する 2. 岐阜市の公共交通政策の取り組み岐阜市では 先に述べた路面電車などの廃止を契機に 平成 17 年度に 岐阜市市民交会議 を設置し 市民の様々な議論を踏まえ 自動車中心の交通体系から転換し 公共交通を都市の装置と位置づけ 徒歩や自転車を重視したバランスの取れた交通体系への転換を基本理念に掲げ 自動車に頼らなくとも 自由に移動できる交通環境社会 の実現を目指した総合交通のマスタープランとなる 岐阜市総合交通政策 を策定している この中で バスを公共交通の中心とし 42 万市民の移動をバスで支えることを基本とした 幹線 支線バスとコミュニティバスが有機的に連携したバスネットワークの構築 を目指すこととしている 特に バスの複雑で分かりにくいといった欠点を克服し 需要に見合った利便性の高いサービスを提供する幹線バスと地域に合ったサービスを提供する支線バスに再編することにより 階層構造の効率的なバスネットワークを構築することを目指している またこれに加え 通院や買い物といった高齢者を中心とした小学校区単位での地域内の移動の確保に向け コミュニティバスをネットワーク化させることにより 全ての市民の移動をバス交通により支えることを目的としている 3. バス路線再編に向けた幹線軸の強化策としての BRT 導入の取り組み岐阜市では 平成 16 年度末までに路面電車の廃止や市営バスの民営化など公共交通を取り巻く環境が大きく変化したことから 市の財政力に見合った持続可能な交通体系の確立を目指し 公共交通の中心にバス交通を位置づけ 42 万人市民の移動をバス交通で支えるという強い意志の下 幹線 支線バスとコミュニティバスが有機的に連携したバスネットワークの構築 を目指している この中で 中心的な役割を果たすのが幹線 支線へのバス路線の再編を推進するための幹線軸への BRT の導入と市民との適切な役割分担により運行されるコミュニティバスシステムである 特に BRT は 集約型都市構造の実現に向け 公共交通の中心的な役割を果たすものと位置づけ バスレーン PTPS などの走行環境や乗継環境の拠点整備 ハイグレードバス停などの利用環境整備 バスロケーションシステムなどの ICT 技術の活用に加え バス車両を高度化させた連節バスの導入を一体的に導入することを目指している BRT は走行環境 利用環境 車両の高度化の全てが整わなくとも段階的な導入が可能な柔軟なシステムであることから 岐阜市の場合 都市の実情に応じできるところから段階的に整備を行うことにより 早期の導入とその効果の早期発現を実現している

また 連節バスの導入にあたっては 車両制限令を超える車両であることから 道路交通への影響を懸念する関係機関との協議を丹念に行うとともに 導入の効果影響の検証を戦略的に行うことにより BRT の導入を拡大している 4. 岐阜市の BRT 導入戦略 BRT の導入にあたっては 関係機関や市民の理解及び官民の連携と適切な役割分担の下で交通政策を推進することが求められることから 関係機関や市民のとの合意形成 効果の検証を前提として戦略的かつ計画的に導入を推進している (1)BRT 導入に向けた上限分離方式に準じた官民の適切な役割分担 BRT の導入にあたり 市は走行利用環境など主にハード部分の整備を担い バスレーンや PTPS の導入に向けた関係機関との協議及び整備と併せハイグレードバス停など利用環境整備も行っており 交通事業者は 安全で効率的な運行に徹する上下分離に準じた役割分担の下で導入を推進している この際 バス車両の購入を支援するため 国とともに市が協調して補助している 一方 交通事業者は連節バス専用の車両点検整備施設の整備を自社で負担している (2) 戦略的な BRT の導入 BRT の導入については バスレーンや PTPS の導入など走行環境の整備に向け 関係機関との協議調整が必要となるが 特に連節バスの導入については 長さ 幅 重さの点においても 車両制限令の規定を超える車両であることから 道路構造物に与える影響をはじめ 交差点で安全かつ円滑に走行できるか 一般自動車交通への安全性及び渋滞を助長させる影響がないことなどの検証が求められた また バス運行事業者が事業として運行することから 導入路線での事業性が求められ こうした運行面での導入効果についても検証が必要となった そこで 岐阜市では 岐阜市 BRT 導入推進計画 を策定し 岐阜駅を中心とする放射方向の 8 幹線を中心とし 路線別に環境整備や導入効果の観点から短中長期に分けた整備スケジュールを策定し 計画に沿った戦略的な導入を推進している 図 1 BRT 導入拡大概略図 1 大量輸送効果の早期発現が期待できる路線から導入する BRT の戦略的な拡大岐阜市では BRT 導入を段階的に進めていくためには 導入環境が整っていることに加え導入効果の早期発現と効果の確認 検証を行い 次の拡大に繋げている (a) 第 1 段階の大量輸送効果を発揮しやすい路線への導入戦略的に導入を推進していくため目的及び効果に応じた 3 段階の導入を進めている 第 1 段階としては BRT の大量輸送機能を発揮しやすいピーク時に大きな需要がある岐阜駅から岐阜大学 大学附属病院への路線に導入している 当該路線は 岐阜駅から岐阜大学 附属病院を起終点とする路線で 通勤通学需要がピーク時に集中し 鉄道からバスへの乗継の際にバス待ちの長い滞留が生じ その滞留が駅前広場の混雑を助長し 待ち時間の長さがバス離れの要因とされたほか 臨時便などの増発がバスの団子運行を助長し 定時性や速達性を損なうなどの課題があった そこで 平成 23 年 3 月に BRT の第一歩として 当該路線に連節バスを 2 両導入し 駅前でのバス待ち滞留の緩和やバス利用促進に大きな効果を発揮した (b) 社会実験を踏まえた途中バス停停車の実現

当該路線の連節バスの導入が全国 4 番目の導入で 特に関東以外の地方都市で初となる導入であることから 当初からは関係機関の途中バス停での停車に対する理解が得られなかった このとから 運行を開始して以降に 3 か月間の社会実験を実施し バス停停車時の交通への渋滞や安全面での影響がないことを確認した上で途中バス停での停車が実現した 関係機関に対しては こうした社会実験により交通への影響を実証することも導入の推進手法としては有効となっている 2 連節バスのシンボル性を活かした公共交通の新たな可能性の実証連節バスの第 2 段階のルート拡大として 高度化された車両である連節バスの魅力を活かし 市内の主だった観光及び商業拠点の活性化への期待を込め 市内の循環ルートへの導入の社会実験を行った 実験は 市内で開催された国体の時期に合せ実験を開始し 国体の開催期間中の会場までの輸送の一部を担うとともに 観光目的で訪れる人の移動手段としても利用され 好評価を得た また 連節バスに乗車した観光客の連節バスのリピート意向も高く 連節バスそのものが観光資源と認知されるなど 魅力のある車両による観光振興等の効果が確認できた また 市の人口集積度ではバスの環状需要は多くないため 連節バスで運ぶほどの大量の需要は無いものの 実験期間中は 平日の利用者数より土日の利用者数が多いとの結果が得られ 実験終了後も土日祝日に本格運行をしている なお 運行車両については 先の岐阜大学 附属病院の路線の土日祝日の需要が少なくなることにより余裕ができた車両の有効活用を図る観点から 2 両の内 1 両をループ線に充てて運行している 3 都市軸を形成する路線への導入 BRT の第 3 段階として 平成 25 年度に岐阜市内で最もバスの運行本数が多い幹線の道路への導入を進めている 当該路線の運行本数は 最も多い区間では 1 日約 2,300 本ものバスが運行し 区間の中間地点でも約 850 本ものバスが運行している また 本幹線は 嘗て路面電車が走り 沿線 500m の範囲内に約 6 万人の人口が集積し 高齢化率も 30% を超えるなど幹線を軸とした集約型の都市構造となっており 強い公共交通軸を構築していくことにより 公共交通を軸としたまちづくりを可能とする高いポテンシャルを持ち BRT とまちづくりの連携の効果を検証できる路線である 更に 当該幹線では 過度なバスの運行により団子運行が頻繁に発生し バスの定時性や速達性を自ら低下させるなどの課題があるとともに 途中バス停での積み残しが発生するなど 輸送力の強化も求められている路線でもある BRT 導入効果の検証は これまでバスを利用していない沿線住民が意識を変え 日常生活の中にバスを前提とする移動に転換するまでに時間を要すると考えられることから 一定の期間が必要となると考え第 3 段階目の導入としている 5.BRT の導入効果の検証 BRT の導入効果の検証については 国内で導入事例が少ないこともあり 十分なデータ が不足している 一方で BRT 導入にあたっては その効果を関係機関や市民に説明し合意形成を図ることが重要となっている 岐阜市では 上記の段階的な導入毎に BRT の導入効果の検証を行っている (1) 大量輸送機能の検証 BRT の導入により 岐阜駅から岐阜大学 附属病院間の路線で岐阜駅前でのバス待ち滞留が約 13 分も短縮される効果が得られている これは 名古屋駅から岐阜駅間の所要時間が約 20 分で 岐阜駅から岐阜大学 附属病院間が 27 分であることから 13 分の待ち時間の短縮は 通勤 通学時間を大きく短縮させていることになる

( 人 ) 連節バス 連節バス 7 時 38 分から 累計 300 人を輸送した時刻を比較 13 分短縮 図 2 滞留時間短縮効果 (2) 利用促進効果検証連節バスの利用者数は 12 往復で 1 日平日平均約 800 人と便当たりの平均乗車人員は 33 人となっている 更に 当該路線全体では バス運行本数を約 12% 効率化したにも関わらず 平日で約 30% 毎日平均でも 25% も利用者数が増加しており 便当たりの乗車人員も 23.2 人から 34.1 人と 10.9 人向上している これは BRT の導入によりピーク時の通勤通学時間の短縮効果や運行の効率化による団子運行の軽減等による定時性 速達性の向上 更に連節バスは揺れが少なく 乗り心地に優れているなど公共交通としての魅力を高めていることが路線全体の利用促進に繋がっていると考えられる 利用者数 ( 人 / 日 ) ( 本 / 日 ) 30% 増加 日利用者数はアユカデータによる 日運行本数は毎年 6 月時点での運行本数 ( 資料 ) 岐阜乗合自動車 図 3 利用者数及び運行車両数の推移 (3) 走行環境整備の効果検証岐阜市では バスレーンを計画的に導入しているが 平成 15 年度にバスレーン 3.9km 並びに PTPS4.5km を導入した長良橋通りでは ピーク時のバスの平均速度が 12.2km/h から 18.4km/h へと 6.2km/h 向上している また 連節バスを導入して忠節橋通りでは 上り下りで 1.8km の間にバス優先レーンと視認性を高めるためバスレーンのカラー化を実施した この間では 朝ピーク時で上り方向で 20 秒 下り方向で 31 秒走行時間を短縮しており 時間の変動についても上り方向で 8% 上昇している また 夕方のピーク時でも上り方向で 44 秒 下り方向で 28 秒の時間短縮を実現している 一方で時間の変動については 上り方向で 4% 向上したものの 下り方向では 10% 変動が拡大している これは当該区間に PTPS が導入されておらず 信号等による変動要因が働いているのも 1 つの原因ではないかと考えられる 当該区間については PTPS の導入計画があることから 更に PTPS 導入後その効果を検証していく

表 1 バスレーン導入効果表 ( 忠節橋通り約 1.8km 間 ) 朝 (7 時 -9 時 ) 夕 (17 時 19 時 ) 短縮時間 変動係数 短縮時間 変動係数 上り ( 岐阜駅着方向 ) 20 秒短縮 5% 増加 44 秒短縮 10% 増加 下り ( 岐阜駅発方向 ) 31 秒短縮 8% 減少 28 秒短縮 4% 減少 (4) シンボリックな車両がもたらす利用促進以外の効果 連節バスは 車両が長く 非常にシンボリックであることや 乗り心地や静粛性にも優れるなど 非常に魅力のある車両であることからバス交通の魅力を高める効果を有している 岐阜市では ル ープ線へ導入した際に 連節バスの (BRT) についてアンケート調査を実施している このアンケ ートから連節バスに乗車することが目的の 1 つに観光があったことや 沿線の観光施設等に来往す る際には再び連節バスに乗りたいとするリピート意向が高いという結果も出ている こうしたこと から 観光振興へ公共交通が寄与できる新たな可能性を見出している 連節バスについて 連節バス利用者の乗車目的 平日 休日 休日 ( 国体期間中 連節バス利用者 乗車目的 連節バス利用者 乗車目的連節バス利用者 乗車目的計 15% 13% 19% 39% 14% N=231 0% 0% 20% 20% 40% 40% 60% 60% 80% 80% 100% 100% 8 月 26 日 ( 日 ) 9% 20% 35% 27% 9% N=75 計 15% 計 13% 15% 19% 13% 19% 39% 39% 14% N=231 14% 9 月 5 日 ( 水 ) 38% 15% 23% 5% 19% N=60 8 月 26 日 ( 日 8 月 ) 26 日 9% ( 日 ) 20% 9% 20% 35% 35% 27% 27% 9% N=759% 9 月 30 日 ( 日 ) 5% 7% 5% 連節バス利用者 乗車目的 69% 14% N=96 9 月 5 日 ( 水 9 月 ) 0% 5 日 ( 水 ) 20% 38% 38% 40% 15% 60% 15% 23% 80% 5% 23% 19% 100% 5% N=60 19% 9 月 30 日 ( 通勤 通学日計 9 月 ) 30 5% 日 15% ( 7% 日 ) 5% 13% 5% 買い物 7% 5% 19% 観光 69% 39% 国体 スポーツ 69% 14% N=231 その他 N=96 14% 8 月 26 日 ( 日 ) 9% 20% 35% 27% 9% N=75 通勤 通学通勤 通学買い物買い物観光国体 スポーツその他乗車理由観光 ( 目的別国体 スポーツ ) その他 9 月 5 日 ( 水 ) 0% 38% 乗車理由 20% 15% ( 目的別 40% ) 23% 60% 5% 19% 80% N=60100% 休日は 観光及び買い物目的の乗車が多い 9 月 30 日 ( 日 ) 5% 計 7% 5% 20% 11% 69% 64% 14% N=965% N=227 国体期間中は 国体目的の乗車が多い 通勤 通学計 20% 9% 6% 11% 64% 5% N=227 8% N=35 連節バスに乗車した理由通勤 通学買い物観光国体 スポーツその他通勤 通学買い物 9% 6% 24% 8% N=35 乗車理由 3% ( 目的別 ) 69% 4% N=29 買い物 24% 3% 69% 4% N=29 観光 0% 20% 60% 40% 60% 18% 80% 13% 100% 9% N=45 観光 60% 18% 13% 9% N=45 計その他 20% 8% 13% 11% 64% 78% 5% N=227 1% N=118 その他 8% 13% 78% 1% N=118 通勤 通学 9% 6% 8% N=35 連節バスに乗りたかったので目的地に行くのにわかりやすいので買い物連節バスに乗りたかったのでたまたま来たので 24% 3% 目的地に行くのにわかりやすいので 69% その他 4% N=29 たまたま来たので岐阜市のシンボルの一つになるか観光 60% その他 18% 13% 9% N=45 0% 観光客で連節バスに乗った人の ) 20% 40% 60% 6 割が連節バスの乗車が目的の一つであった 80% 100% その他 8% 13% 78% 1% N=118 連節バスは観光資源となっていると考えられる 計 54% 10% 36% N=807 連節バスは岐阜市のシンボルの一つとなると思うか連節バスに乗りたかったので目的地に行くのにわかりやすいので連節バスを岐阜市のシンボルの一つになるか 59% 11% 30% N=598 知っているたまたま来たのでその他 連節バスを 39% 10% 51% N=209 知らない計 54% 10% 36% N=807 連節バスを知っている連節バスを知らない 思う 59% 思わない 11% どちらでもない 30% 連節バスは岐阜市のシンボルの一つとなるという意見が 54% 39% 10% 51% N=209 今後 沿線施設を訪れるときは 連節バスに乗って行きたいかと思うか今後乗りたいと思うか ( 乗車経験別 ) 0% 今後乗りたいと思うか思わない 20% 40% ( 乗車経験別どちらでもない 60% ) 80% 100% 計 66% 16% 18% N=776 計 66% 16% 18% N=776 乗車経験なし今後連節バスを利用したいという意見が 58% 18% 66% と多い 24% N=468 乗車経験なし 58% 18% 24% N=468 乗車経験あり 16% 7% N=308 乗車経験あり 16% 7% N=308 思うどちらでもない思わない思うどちらでもない思わない特に乗車経験がある人では同意見が と多い N=598 N=231 N=75 N=60 N=96 連節バスは再度乗りたくなるような魅力ある車両であると考えられる 図 4 連節バス利用者アンケート結果

6.BRT 導入の導入手続き簡素化の取り組み BRT 導入にあたっては 走行環境や利用環境の整備に向け 関係機関との協議に多大な労力と時間を要することが導入の進まない要因ともなっている 岐阜市では 最初のバスレーンの導入には 検討から 8 年もの時間を要したことから 国の構造改革特区制度を活用し 交通管理者と共同でバスレーン導入計画を策定し 計画的にバスレーンや PTPS の導入拡大を可能としている また 連節バスの導入についても 道路運送法 道路運送車両法に基づく保安基準の緩和 更に道路法に基づく特殊車両通行許可の手続きが必要となり この手続きに時間と労力を要しているため 市は総合構造改革特区制度を活用しトータルの審査期間の短縮や更新時の許可期間 2 年を 5 年に延長するなど 手続きの簡素化を実現している 7.BRT の評価の向上にむけた今後の取り組み BRT については 導入効果の検証途上にある BRT の導入例が今後増えてくるものと考えられるが導入例が少なく 導入に向けた関係機関や市民などの理解 合意形成に腐心している自治体もある こうしたことからも BRT 導入効果の検証方法を確立し 道路利用者や関係機関が BRT 導入に向けた理解を深め 円滑な導入環境が整うよう様々な観点からの評価分析が求められる 評価分析については 1 バス利用者 2 自動車利用者 3 道路管理者 4 交通管理者 5 運行事業者 6 沿線住民の視点からの総合的な評価を行うとともに BRT 導入による CO2 削減などの 7 環境効果や沿線の 8 土地利用及び地価への効果についても視野に入れ 平成 25 年度に導入する長良橋通りでの導入効果の評価分析を進めていく なお BRT 導入による利用促進や運行効率の向上による CO2 削減の試算結果を以下に示した 施策が実施途上にある現段階の試算であり 利用促進の更なる向上により試算値は更に精度が向上すると考えられる 表 2 BRT 導入による CO 2 削減効果の試算 岐阜大学 病院線への BRT 導入による CO2 削減効果 ( 平成 22 年度 - 平成 24 年度比較 ) t-co2 / 年 公共交通利用促進効果 + 運行効率化 93 公共交通利用促進効果 84 運行効率向上効果 9 8. おわりに公共交通の活性化に向けては これまでに国土交通省においても オムニバスタウンや公共交通活性化再生法に基づく支援などの様々な取り組みが行われてきており 全国の自治体において地域交通の確保に向けた努力が続けられている しかし 長年 公共交通が国と交通事業者との連携により運行され 自治体が公共交通の維持確保に主体的に関わる必要が無い期間が長かったことや 平成 14 年 2 月の道路運送法の需給調整規制の緩和以降 比較的まだ日が浅く 専門知識を持った職員の確保や育成が難しいといった事情などから その取り組みが結実している自治体は多くはない 更に 地方都市部では 依然として自動車の利用者が公共交通利用者より圧倒的に多く 道路の活用についても自動車を重視する関係機関が多く 公共交通施策の実現に向けては多くのハードルが存在することも事実である しかし 急激な高齢化や人口減少は確実に起こりうる予測であり 公共交通事業者の置かれている経営環境を勘案すると 地方都市での公共交通の存続は非常に困難になると予想される こうしたことからも BRT など新たな公共交通システムなどの取り組みを通じ 関係機関 市民及び自動車利用者全てが一丸となった公共交通の維持確保に向けた総合的な取り組みが急がれる