研究成果報告書

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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研究成果報告書

第14〜15回 T細胞を介する免疫系.pptx

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産


汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

博士論文 ( 要約 ) Probiotic-derived polyphosphate improves the intestinal barrier function through the caveolin-dependent endocytic pathway ( 腸上皮エンドサイトーシスによ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 山田淳 論文審査担当者 主査副査 大川淳野田政樹 上阪等 論文題目 Follistatin Alleviates Synovitis and Articular Cartilage Degeneration Induced by Carrageenan ( 論文

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

ウシの免疫機能と乳腺免疫 球は.8 ~ 24.3% T 細胞は 33.5 ~ 42.7% B 細胞は 28.5 ~ 36.2% 単球は 6.9 ~ 8.9% で推移し 有意な変動は認められなかった T 細胞サブセットの割合は γδ T 細胞が最も高く 43.4 ~ 48.3% で CD4 + T 細

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のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

私の研究史

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

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研究成果報告書

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

VENTANA PD-L1 SP142 Rabbit Monoclonal Antibody OptiView PD-L1 SP142

様式 C-19 科学研究費助成事業 ( 科学研究費補助金 ) 研究成果報告書 平成 25 年 5 月 15 日現在 機関番号 :32612 研究種目 : 基盤研究 (C) 研究期間 :2010~2012 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) シェーグレン症候群新規治療薬としての B

上原記念生命科学財団研究報告集, 28 (2014)

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 6 月 16 日現在研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26~28 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 好酸球性気道炎症における Th2 サイトカインと TLR3 受容体のクロストーク研究課題名 ( 英文 )

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 6 月 2 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26 ~ 28 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 炭酸ガスおよび半導体レーザーによるオーラルアンチエイジング 研究課題名 ( 英文 ) Oral an

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

原提示細胞によって調査すること 2 イベントの異なる黄砂のアレルギー喘息への影響を評価すること 3 黄砂に付着している微生物成分 (LPS 真菌 ) や化学物質 ( タール成分 ) のアレルギー喘息や花粉症への影響を評価すること 4 アレルギー喘息等の増悪メカニズムを 病原体分子パターン認識受容体

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事務連絡

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Powered by TCPDF ( Title ハイリスクHPV 型のタンパクを標的とした新たな分子標的治療に関する基礎的検討 Sub Title Study of a new therapy targeting proteins of high-risk HPV Au

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研究成果報告書

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

著者 : 黒木喜美子 1, 三尾和弘 2, 高橋愛実 1, 松原永季 1, 笠井宣征 1, 間中幸絵 2, 吉川雅英 3, 浜田大三 4, 佐藤主税 5 1, 前仲勝実 ( 1 北海道大学大学院薬学研究院, 2 産総研 - 東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ, 3 東京大学大

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研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

石黒和博 1) なお酪酸はヒストンのアセチル化を誘導する一方 で tubulin alpha のアセチル化を誘導しなかった ( 図 1) マウスの脾臓から取り出した primary T cells でも酢酸 による tubulin alpha のアセチル化を観察できた これまで tubulin al

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ABSTRACT

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Powered by TCPDF ( Title 組織のスラック探索に関する包括的モデルの構築と実証研究 Sub Title On the comprehensive model of organizational slack search Author 三橋, 平 (M

研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 6 月 16 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2008~2009 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 心臓副交感神経の正常発生と分布に必須の因子に関する研究 研究課題名 ( 英文 )Researc

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

研究の背景 1 細菌 ウイルス 寄生虫などの病原体が人体に侵入し感染すると 血液中を流れている炎症性単球注と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し 感染局所に集積します ( 図 1) 炎症性単球は そこで病原体を貪食するマクロファ 1 ージ注と呼ばれる細胞に分化して感染から体を守る重要な働きをしています

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Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

免疫再試25模範

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研究成果報告書

の基軸となるのは 4 種の eif2αキナーゼ (HRI, PKR, または ) の活性化, eif2αのリン酸化及び転写因子 の発現誘導である ( 図 1). によってアミノ酸代謝やタンパク質の折りたたみ, レドックス代謝等に関わるストレス関連遺伝子の転写が促進され, それらの働きによって細胞はス

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

Mincle は死細胞由来の内因性リガンドを認識し 炎症応答を誘導することが報告されているが 非感染性炎症における Mincle の意義は全く不明である 最近 肥満の脂肪組織で生じる線維化により 脂肪組織の脂肪蓄積量が制限され 肝臓などの非脂肪組織に脂肪が沈着し ( 異所性脂肪蓄積 ) 全身のインス

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ブック2

図 Mincle シグナルのマクロファージでの働き

様式F-19 記入例・作成上の注意

ブック2

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60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起


解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

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Microsoft Word _前立腺がん統計解析資料.docx

PowerPoint プレゼンテーション

第6号-2/8)最前線(大矢)

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Microsoft Word _肺がん統計解析資料.docx

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 5 月 19 日現在 研究種目 : 基盤研究 (B) 研究期間 :2007~2009 課題番号 :19390477 研究課題名 ( 和文 ) Toll 様受容体と C- タイプレクチン受容体とのクロストーク 研究課題名 ( 英文 ) A crosstalk between Toll-like receptor and C-type lectin 研究代表者柴田健一郎 (SHIBATA KENICHIRO) 北海道大学 大学院歯学研究科 教授研究者番号 :50145265 研究成果の概要 ( 和文 ): 生体は微生物の侵入を感知し, 貪食し殺滅する. 本研究では, 微生物の侵入を感知するセンサーからの細胞内シグナルが, 貪食に関わるレセプターからのシグナルで抑制されることを明らかにした. 研究成果の概要 ( 英文 ): Hosts recognize microbial invasion and then kill them intracellularily. In this study, we demonstrated that the signal mediated by a sensor that recognize bacterial invasion was suppressed by that by phagocytic receptor. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 2007 年度 8,300,000 2,490,000 10,790,000 2008 年度 3,200,000 960,000 4,160,000 2009 年度 3,100,000 930,000 4,030,000 年度年度総計 14,600,000 4,380,000 18,980,000 研究分野 : 医歯薬学科研費の分科 細目 : 歯学 病態科学系歯学 歯科放射線学キーワード : 免疫, 感染, 炎症 1. 研究開始当初の背景樹状細胞 (DC) は体全体に分布しており 微生物の侵入を感知した後 貪食処理し T 細胞に抗原を提示する重要な細胞である DC は微生物に存在する分子パターン (PAMPs) を認識する種々のパターン認識受容体 (PRR) である Toll 様受容体 (TLR) C- タイプレクチン受容体 (CLR) NOD(nucleotide-binding oligomerization domain) ファミリー受容体等を発現している TLR は微生物由来の種々の PAMPs を認識し DC の成熟ならびに防御免 疫を惹起する受容体として膨大な研究がなされている 一方 CLR は Ca 2+ 依存的に糖鎖を認識する 2 型の膜貫通受容体であり 自己あるいは非自己抗原の糖鎖を認識し 細胞内に取り込む貪食受容体である 最近 CLR の一つである dectin-1(natural killercell- receptor-like C-type lectin) がカンジダの細胞壁成分であるザイモザンを認識して 単独で細胞内シグナルを惹起できる non-tlr PRR であることが明らかにされつつある (Brown GD. Nature Rev Immunol. 6: 33-,

2006. Gantner et al. J. Exp. Med. 197: 1107, 2003) た ( 図 1B) 2. 研究の目的本研究の目的は TLR を介するシグナルと CLR( 特に DC-SIGN : dendritic cellspecific ICAM-3 grabbing nonintegrin; CD209) を介するシグナルのクロストークを分子レベルで検証することである. 3. 研究の方法 (1)TLR のシグナルに及ぼす DC-SIGN の影響 1 他の TLR2 リガンド すなわち結核菌由来リポアラビノマンナン (LAM), 酵母 zymosan 黄色ブドウ球菌リポタイコ酸による NF-κB の転写活性を調べる 2TLR3 あるいは TLR4 を遺伝子導入した HEK293 細胞を用いた NF-κB あるいは IRF3 ルシフェラーゼレポーター系で poly-i:c あるいは LPS をリガンドとして用いて DC-SIGN 遺伝子を共導入により NF-κB レポーター活性が相乗的に増強されるかを調べる 3Ca イオンの存在下で DC-SIGN と結合することがわかっている Man 9 GlcNAc 2 を加えた時に TLR2 TLR3 ならびに TLR4 によるリガンド認識はどうなるのかを NF-κB あるいは IRF3 ルシフェラーゼレポーター活性で調べる 4TLR 下流のシグナル伝達系のどの段階での増強効果なのかを MyD88, IRAKs, TRAF6, MAPK(p38, JNK, ERK1/2) を標的にとして まず Western blotting 法により検証する 標的分子が決定されれば RNAi 法によりその分子をノックダウンすることにより確認する 5 免疫沈降法により DC-SIGN にチロシンキナーゼ Lyn ならびに Syk との会合を調べる. 6DC-SIGN にリガンドが結合すると MAPK キナーゼ ERK ならびに PI3K が活性化されるかどうかを調べる (Caparros e. et al., Blood 107:3950-, 2006) 次に XS106 細胞を TLR2 および SIGNR のリガンドで刺激した際の機能的な評価を行うために サイトカインの産生を調べた TNF-α,IL-6,IFN-γ では FSL-1 の濃度依存的に サイトカインの産生が増強し FSL-1 刺激で増強したサイトカインの産生は SIGNR のリガンドである Man 9 (GlcNAc) 2 (Man9) との共刺激によって減弱した ( 図 2A) 抑制性のサイトカインである IL-10 は FSL-1 濃度依存的にサイトカインの産生が増強したが SIGNR のリガンドによる共刺激の影響は確認できなかった ( 図 2A) さらに SIGNR のリガンドを結核菌 (Mycobacterium. tuberculosis) の細胞壁の構成成分であるリポアラビノマンナン ManLAM に変えて同様の実験を行ったところ TNF- α,il-6,ifn- γでは FSL-1 において増強 4. 研究成果はじめに A/J mouse 由来の樹状細胞である XS106 細胞 (Toledo 大学 Dr.Takashima より分与 ) を用い フローサイトメトリー リアルタイム PCR 法および western blot にて TLR および DC-SIGN のマウスホモログである SIGNR の発現を調べた XS106 細胞には機能的な TLR2 および SIGNR が発現していることがわかった ( 図 1A,B) さらに Taq man probe R の配列より XS106 に発現しているのは SIGNR ホモログの中で SIGNR1 であることがわかっ

したサイトカインの産生は FSL-1 と ManLAM との共刺激において減弱した ( 図 2B) また TLR 下流の NF-κB の活性を評価するために luciferase reporter assay を行った FSL-1 刺激により NF-κB の転写活性が FSL-1 濃度依存的に増強したが Man9 の刺激によって活性増強は有意に阻害された ( 図 3) を調べるために ヒト胎児腎臓由来の FSL-1 濃度依存的に増強されたサイトカインの阻害が SIGNR 依存的であることを確かめるために XS106 細胞にて SIGNR の RNAi を行い SIGNR の knock down を確認した ( 図 4A) また SIGNR の knock down によって FSL-1 刺激で増強したサイトカインの産生は SIGNR のリガンドである ManLAM との共刺激における影響が解除された ( 図 4B,C) HEK293 細胞に TLR2FLAG タグを安定発現させて DC-SIGN 遺伝子を導入し 免疫沈降法で確認した FRAG で IP して FRAG で Blot したところ 250kDa 以上のところにバンドが検出された ( 図 6) DC-SIGN が約 44kDa で TLR2 が約 100kDa であることから考えて DC-SIGN はリガンド認識する際に TLR2 と会合しており テトラマーを形成していることが示唆された 以上の結果から TLR2 のシグナルと DC-SIGN のシグナルがクロストークし TLR2 シグナルによる炎症性サイトカイン産生が減弱したものと推測している TLR2 と SIGNR の下流の MAPK の活性を評価するために XS106 細胞を FSL-1 と Man9 の単独または同時刺激を 1 時間 2 時間 6 時間で行い western blot にてチロシンのリン酸化および p38,jnk,erk のリン酸化で評価した ( 図 5) チロシンのリン酸化は FSL-1 の刺激で増強し Man9 との同時刺激で減弱した また p38,jnk,erk も FSL-1 の刺激でリン酸化がおこり Man9 との同時刺激で FSL-1 刺激により増強したリン酸化は弱いながらも減弱した ( 図 5) このように MAPK の活性も SIGNR からのシグナルで抑制されることが示唆された DC-SIGN と TLR2 との細胞表面での会合状態 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 4 件 ) 1 HM Shamsul, A Hasebe, M Iyori, M Ohtani, K Kiura, D Zhang, Y Totsuka and K Shibata. The TLR2 ligand FSL-1 is internalized via clathrin-dependent endocytic pathway triggered by CD14 and CD36 but not by TLR2. Immunology, 130: 262-272, 2010. 2 M Iyori, M Ohtani, A Hasebe, Y Totsuka and K Shibata. A role of the Ca 2+ binding site of DC-SIGN in the phagocytosis of E. coli. Biochem. Biophy. Res. Comm. 377 (2):

367-372, 2008. 3 M Iyori, H Kataoka, HM Shamsul, K Kiura, T Nakata, A Hasebe, M Yasuda and K Shibata. Resveratrol modulates phagocytosis of bacteria through an NF-κB-dependent gene program. Antimicrob. Agents. Chemother. 52(1): 121-127, 2008. 4 M Mae, M Iyori, M Yasuda, HM Shamsul, H Kataoka, A Hasebe, K Kiura, Y Totsuka, K Shibata. The diacylated lipopeptide FSL-1 enhances phagocytosis of bacteria by macrophages through Toll-like receptor 2-mediated signaling pathway. FEMS. Immunol. Med. Microbiol. 49: 398-409, 2007. 学会発表 ( 計 9 件 ) 1 柴田健一郎. マイコプラズマ由来リポタンパク質 - リポペプチドのユニークな生物活性.2009 年 6 月 5 日. 札幌. 日本マイコプラズマ学会第 36 回学術集会講演要旨集 :27. 2 MS Haque, A Hasebe, M Iyori, K Kiura, M Ohtani and K. Shibata. How is the diacylated lipopeptide FSL-1processed after recognition by TLR2? The 96th Annual Meeting of The American Association of Immunologists. 2009 年 5 月 11 日. Seattle, Washington, USA. 3 K Shibata, K Kiura, A Hasebe, M Iyori, MS Haque and M Ohtani. Anti- and pro-tumor activities of the TLR2 ligand FSL-1. The 96th Annual Meeting of The American Association of Immunologists. 2009 年 5 月 9 日. Seattle, Washington, USA. 4 M Ohtani, A Hasebe, M Iyori, MS Haque, Y Totsuka and K Shibata. Downregulation of the TLR2-mediated signal by the DC-SIGN ligand Man-LAM. The 96th Annual Meeting of The American Association of Immunologists. 2009 年 5 月 11 日. Seattle, Washington, USA. 5 Shibata K. Kiura K. "Anti- and pro-tumor activities of the mycoplasmal lipopeptide FSL-1 as a TLR2 ligand. Innate Immunity Symposium " Regulation in Innate Immunity - from Recognition Molecules to Antimicrobial Peptides. 2008 年 10 月 28 日. Shionogi Innovation Center for drug discovery, Hokkaido University. 6 木浦和人 長谷部晃 柴田健一郎. ジアシルリポペプチド FSL-1 による制御性 T 細胞の増殖と腫瘍免疫応答の抑制. 日本マイコプラズマ学会第 35 回学術集会. 2008 年 5 月 31 日. 東京. 7 大谷誠 伊従光洋 長谷部晃 木浦和人 戸塚靖則 柴田健一郎. Toll-like receptor 2 と DC-SIGN シグナルのクロストーク. 日本マイコプラズマ学会第 35 回学術集会. 2008 年 5 月 30 日. 東京. 8 大谷誠 伊従光洋 長谷部晃 木浦和人 戸塚靖則 柴田健一郎. Toll-like receptor 2 シグナルに及ぼす DC-SIGN シグナルの影響 ( 優秀ポスター賞受賞 ). 第 50 回歯科基礎医学会学術大会. 2008 年 9 月 24 日東京 9 木浦和人 柴田健一郎. 腫瘍の増殖に及ぼすジアシルリポペプチド FSL-1 の影響.. 自然免疫の最前線 -3 学会合同大会 2008- 第 73 回日本インターフェロン サイトカイン学会学術集会 第 19 回日本生体防御学会学術総会 第 45 回補体シンポジウム. 2008 年 7 月 10 日. 札幌 ( 北海道大学 学術交流会館 ) 図書 ( 計 0 件 ) 産業財産権 出願状況 ( 計 0 件 ) 名称 : 発明者 : 権利者 : 種類 : 番号 : 出願年月日 : 国内外の別 : 取得状況 ( 計 0 件 ) 名称 : 発明者 : 権利者 : 種類 : 番号 : 取得年月日 : 国内外の別 : その他 ホームページ等 http://www.den.hokudai.ac.jp/saikin/ind ex.html 6. 研究組織 (1) 研究代表者柴田健一郎 (SHIBATA KENICHIRO) 北海道大学 大学院歯学研究科 教授研究者番号 :50145265 (2) 研究分担者長谷部晃 (HASEBE AKIRA) 北海道大学 大学院歯学研究科 助教

研究者番号 :90281815 (3) 連携研究者 ( ) 研究者番号 :