ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

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1.4操作マニュアル+ユニット解説

0.3% 10% 4% 0.8% 5% 5% 23% 53%


1


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注 ) 材料の種類 名称及び使用量 については 硝酸化成抑制材 効果発現促進材 摂取防止材 組成均一化促進材又は着色材を使用した場合のみ記載が必要になり 他の材料については記載する必要はありません また 配合に当たって原料として使用した肥料に使用された組成均一化促進材又は着色材についても記載を省略す

数および繁殖農家戸数の推移を示しているが どちらも減少傾向にある 1 戸当たりの繁殖雌牛頭数は18 年に6.0 頭であったが29 年では8.3 頭と増加している しかしながら 農林水産省統計部 農業経営統計調査報告畜産物生産費 によると 長崎県全体の1 戸当たり繁殖雌牛飼養頭数は21 年度の14.8

ローカルコスト負担 65,633 千円その他 相手国側 : カウンターパート配置 44 名土地 施設提供プロジェクト予算 ( 人件費含む ) 3,220,000 千ドン ( ) その他 2. 評価調査団の概要 調査者 ( 担当分野 : 氏名職位 ) 1. 総括 : 星野和久国際協力機

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( 図 2-A-2-1) ( 図 2-A-2-2) 18


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解 説 一方 乳成分にも違いが見られた 分娩後30日以内 産牛100頭規模の農場としている 損失額の計算は で乳脂肪率が5 を超える場合は栄養不足で体脂肪の ①雄子牛の出生頭数減少 雄子牛の売却減 ②雌子 過剰な動員が起こっていると判断できる この時期に 牛の出生頭数減少 更新牛購入コスト ③出荷乳

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ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取り後のカリ肥料の増肥を行うことの効果について 平成 25 年 2 月 8 日に ふくしまからはじめよう 農業技術情報 36 号において紹介しました 牧草へのカリ肥料の増肥は 放射性セシウムの吸収抑制対策として効果的であると同時に 牧草中のカリウム濃度も増加させることから その牧草を家畜へ給与する際はカリウム濃度に留意する必要があります そこで カリ肥料を増肥したほ場から生産される牧草の利用技術についてお知らせします 1 牧草のカリウム含量の変化 農業総合センター畜産研究所において 未更新牧草地におけるイタリアンライグラ ス ( 乾物中 ) のカリウム濃度は 慣行施肥区と比較してカリ肥料 3 倍区において 1 番草は 1.8 倍 再生草は 1.3 倍に増加することを確認しました ( 図 1) 土壌条件により牧草 ( 乾物中 ) のカリウム 濃度は変化しますが 最大 5.0% 程度まで濃度 が上昇することが認め られています 草地の更新後に収穫 した牧草は 必ず飼料 分析を行い 栄養濃度 およびミネラル濃度を 確認してください 牧草中カリウム濃度 % (乾物 ) 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1.8 倍増 1.3 倍増 1 番草 再生草 慣行区 カリ3 倍区 図 1 イタリアンライグラスのカリウム濃度の比較 - 1 -

2 乳用牛の飼養管理 (1) カリウム濃度の指標 乳用牛におけるカリウム濃度の高い牧草での飼養管理で注意すべき点は 低マ グネシウム血症 ( グラステタニー ) および低カルシウム血症 ( 乳熱等 ) です 表 1 飼養形態別カリウムの指標 乳用牛 カリウム要求量カリウム等の指標飼養形態 ( 乾物 ) ( 乾物 ) 家畜への影響 疾病 リスク 育成期 放牧テタニー比 [K/(Ca+Mg)] が2.2 以下マグネシウム欠乏グラステタニー高 0.65% 舎飼給与飼料中のカリウム濃度は3.0% 以下カルシウム欠乏乳熱等低 乾乳期 ( 初産近腹含む ) 舎飼 0.65% 粗飼料中のカリウム濃度は2.0% 以下 カルシウム欠乏 乳熱等 高 泌乳期 舎飼 0.80% 給与飼料中のカリウム濃度は3.0% 以下 カルシウム欠乏 乳熱等 中 (2) 泌乳牛飼養の留意点 給与飼料全体のカリウム濃度が乾物中 3.0% を超えると カルシウムやマグネ シウムの利用率が低下して欠乏します 特に 泌乳牛においては カルシウム欠 乏が原因の一つとされる周産期疾病が問題となります このため 牧草中のカリウム濃度が高くなった場合は カリウム濃度が低い粗 飼料や濃厚飼料を組合せることにより 給与飼料全体のカリウム濃度を下げる必 要があります ( 表 2) 泌乳牛では 給与飼料全体のカリウム濃度が乾物中 3.0% 以下になるように飼 料設計を行って給与してください 表 2 粗飼料と濃厚飼料の組合せによる給与飼料のカリウム濃度と利用の可否 ( : 利用可 利用不可 : 要注意 ) 乾物中カリウム濃度が 4% の牧草を給与した場合 飼料全体のカリウム濃度 % 濃厚飼料中のカリウム濃度 1.00% 1.50% 給与する粗飼料が 除染済み牧草地から生産される牧草のみの場合は 粗飼料の割合を 60% (50%) 以下としてください 粗飼料 : 濃厚飼料 40:60 50:50 60:40 70:30 80:20 (2.2%) (2.5%) (2.8%) (3.1%) (3.4%) (2.5%) (2.8%) (3.0%) (3.3) (3.5%) 乾物中カリウム濃度が4% 及び2% の牧草を半分ずつ給与した場合粗飼料 : 濃厚飼料飼料全体のカリウム濃度 % 濃厚飼料中のカリウム濃度 1.00% 1.50% 40:60 50:50 60:40 70:30 80:20 (1.8%) (2.0%) (2.2%) (2.4%) (2.6%) (2.1%) (2.3%) (2.4%) (2.6%) (2.7%) 給与する粗飼料が 除染済み牧草地から生産される牧草とその他の粗飼料 ( 購入牧草やとうもろこし サイレージ等 ) を半分ずつ給与する場合は 粗飼料の割合を 80% としても問題ありません - 2 -

(3) 乾乳牛および育成牛飼養の留意点ア舎飼い管理乾乳牛においても 泌乳牛と同様に給与飼料中のカリウムが過剰になると カルシウムやマグネシウムは利用率が低下して欠乏します カルシウム欠乏は 乳熱 乳房浮腫を引き起こすとともに 起立不能 第四胃変位 子宮回復の遅れによる繁殖性の低下等 周産期病を引き起こす原因となります このため 乾乳牛では 粗飼料中のカリウム濃度が乾物中 2.0% 以下のものの利用を推奨します また 育成牛では 給与飼料全体のカリウム濃度が乾物中 3.0% 以下になるように飼料設計を行って給与してください イ放牧管理早春や晩秋の人工草地での放牧においてカリウム濃度の高い牧草を採食した場合 乳用牛や肉用牛に関係なくグラステタニーが発生します グラステタニーは 牧草中の窒素とカリウム含量が高く テタニー比 (K/(Ca+Mg) 当量比 ) が2.2 以上のときに発生しやすいとされています このため 放牧前に牧草の飼料分析を行い 栄養濃度の確認を行ってください モニタリング検査により 放牧が可能となった地域 ( 放牧地 ) において乾乳牛 ( 乾乳前期 ) および育成牛を放牧する場合は 馴致放牧により健康状態を十分に確認するとともに 放牧開始時期を遅らせてください また 入牧 2 週前から放牧初期 2 週の期間にマグネシウム入り配合飼料を給与しマグネシウムを補給するか あるいは 放牧期間中に濃厚飼料を少量給与してルーメンの恒常性を維持することも有効なグラステタニー対策となります なお 放牧する牛は放牧前に十分な栄養管理を行った上で放牧をしてください 3 肉用牛の飼養管理 (1) カリウム濃度の指標 肉用牛におけるカリウム濃度の高い牧草での飼養管理で注意すべき点は 放 牧飼養または生草給与による低マグネシウム血症 ( グラステタニー ) です 表 3 飼養形態別カリウムの指標 肉用牛 カリウム要求量飼養形態 ( 乾物中 %) ミネラルの指標 家畜への影響 疾病 リスク 育成期繁殖牛 放牧放牧テタニー比 [K/(Ca+Mg)] が2.2 以下 0.65% マグネシウム欠乏テタニー比 [K/(Ca+Mg)] が2.2 以下グラステタニーマグネシウム欠乏高グラステタニー高舎飼舎飼給与飼料中のカリウム濃度は3.0% 以下マグネシウム欠乏給与飼料中のカリウム濃度は3.0% 以下グラステタニーマグネシウム欠乏低グラステタニー低 肥育牛 舎飼 - - - - (2) 肥育牛飼養の留意点 肥育牛は 乳用牛と比較して粗飼料の給与割合が低く カリウム濃度の高い牧 草を給与することによるカルシウム欠乏の影響は低いと思われます - 3 -

イナワラなどのカリウム濃度の低い粗飼料が主に給与されており ミネラルの 指標もありませんが ミネラルバランスに起因する尿石等の疾病に注意し 十分 に観察しながら飼養管理を行ってください (3) 繁殖牛および育成牛飼養の留意点ア舎飼い管理繁殖牛および育成牛は 乳牛と同様に給与飼料中のカリウムが過剰になると カルシウムやマグネシウムの利用率が低下して欠乏します マグネシウム欠乏は グラステタニーを引き起こす原因となります このため 牧草中のカリウム濃度が高くなった場合は カリウム濃度が低い粗飼料や濃厚飼料を組合せることにより 給与飼料全体のカリウム濃度を下げる必要があります 繁殖牛および育成牛では 給与飼料全体のカリウム濃度が乾物中 3.0% 以下になるように飼料設計を行って給与してください 生草を給与する場合は 健康状態を十分に確認しながら 疾病等に注意し 段階的に給与量を増やしてください イ放牧管理三歳以上の仔付きの母牛においてグラステタニー発生率が高く 死に至ることもあります 牧草中の窒素とカリウム含量が高く テタニー比 (K/(Ca+Mg) 当量比 ) が2.2 以上のときに発生しやすいとされます このため 放牧前に牧草の飼料分析を行い 栄養濃度の確認を行ってください モニタリング検査により 放牧が可能となった地域 ( 放牧地 ) において乾乳牛 ( 乾乳前期 ) および育成牛を放牧する場合は 馴致放牧により健康状態を十分に確認するとともに 放牧開始時期を遅らせてください また 入牧 2 週前から放牧初期 2 週の期間にマグネシウム入り配合飼料を給与しマグネシウムを補給するか あるいは 放牧期間中に濃厚飼料を少量給与してルーメンの恒常性を維持することも有効なグラステタニー対策となります なお 放牧する牛は放牧前に十分な栄養管理を行った上で放牧をしてください テタニー比 (K/(Ca+Mg) 当量比 ) の計算のしかた 飼料分析におけるオーチャードグラスの乾物中ミネラル濃度が カリウム (K)3.50% カルシウム (Ca)0.80% マグネシウム (Mg)0.20% の場合 テタニー比の計算は K 3.50 % のとき [ 3.50 25.6 = 89.60 meq ] Ca 0.80 % のとき [ 0.80 49.9 = 39.92 meq ] Mg 0.20 % のとき [ 0.20 82.3 = 16.46 meq ] K/(Ca+Mg) 当量比 = 89.60 / ( 39.92 + 16.46 ) = 1.59 指標の 2.2 と比較して低いことから 放牧利用可能である - 4 -

問い合わせ先 : 農林水産業に関する相談窓口 ( 電話 :024-521-7319) ホームページ : 農林水産部農業振興課ホームページ (PDF 形式ファイル ) URL:http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/contents?CONTENTS_ID=10786 ( 他の農業技術情報等をご覧いただけます ) モバイル県庁 : 福島モバイル県庁 お知らせ 各種情報 農業技術情報 ( 右欄に掲載のQRコードよりご覧いただけます ) ふくしま新発売 : 以下のホームページより最新の農林水産物モニタリング情報 イベント情報等をご覧いただけます URL:http://www.new-fukushima.jp/ モバイル版 QR コード - 5 -