本章では 衝突被害軽減ブレーキ 車線逸脱警報 装置 等の自動車に備えられている運転支援装置の特性 Ⅻ. 運転支援装置を 備えるトラックの 適切な運転方法 と使い方を理解した運転の重要性について整理しています 指導においては 装置を過信し 事故に至るケースがあることを理解させましょう また 運転支援装

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03 【資料1】自動走行をめぐる最近の動向と今後の調査検討事項

平成 30 年度 自動車局税制改正要望の概要 平成 29 年 8 月 国土交通省自動車局

初任運転者に対する指導内容 ( 座学 ) 菰野東部交通株式会社 指導教育の内容 事業用自動車の安全な運転に関する基本的事項 道路運送法その他の法令に基づき運転者が遵守すべき事項及び交通ルール等を理解させるとともに 事業用自動車を安全に運転するための基本的な心構えをしゅうとくさせる ( 事業用自動車に

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速度規制の目的と現状 警察庁交通局 1

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自動車の車体課税の見直しについて 平成 23 年 11 月 15 日 国土交通副大臣松原仁 Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

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ひっかけ問題 ( 緊急対策ゼミ ) ステップ A B C D 39.4% 学科試験パーフェクト分析から ひっかけ問題 に重点をおいた特別ゼミ! 2 段階 出題頻度 39.4% D ゼミ / 内容 *(2 段階 24.07%+ 安知 15.28%=39.4

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自動車取得税の 税率の特例 ( 法附則第 12 条の 2 の 2 第 12 条の 2 の 3 第 12 条の 2 の 5) 電気自動車 ( 燃料電池自動車を含む ) 天然ガス自動車 対象車両新車中古車 平成 30 年排出ガス規制適合又は平成 21 年排出ガス規制 NOx10% 以上低減 プラグインハ

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1 基本的な整備内容 道路標識 専用通行帯 (327 の 4) の設置 ( 架空標識の場合の例 ) 自 転 車 ピクトグラム ( 自転車マーク等 ) の設置 始点部および中間部 道路標示 専用通行帯 (109 の 6) の設置 ( 過度な表示は行わない ) 専 用 道路標示 車両通行帯 (109)

メールマガジン 事業用自動車安全通信 第 477 号 (H ) =はじめに= このメールマガジンは 国土交通省において収集した事業用自動車に関する事故情報等のうち重大なものについて 皆様に情報提供することにより その内容を他山の石として各運送事業者における事故防止の取り組みに活用していた

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事故及び渋滞対策の取り組み 福岡都市高速 北九州都市高速 福岡北九州高速道路公社

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リスクマネジメント最前線 企業営業開発部 東京都千代田区丸の内 TEL FAX

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ご購入時の注意 OBDⅡ アダプターのご購入前に下記内容を必ずご確認ください 適合表に記載のない車種には取付けできません 国産車に OBD Ⅱアダプターを取付ける場合は OBD2-R3/OBD2-R2/OBD2-R1 をご使用ください 輸入車用 OBD Ⅱアダプター OBD2-IM は使用しないでく

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資料 3 社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会 先進モビリティ ( 株 ) における 自動運転技術開発の取り組み 先進モビリティ株式会社代表取締役 青木 啓二 Advanced Smart Mobility 1

1. 調査の背景 目的 (1) 本調査の背景 1 自動走行システムに関する技術開発が活発化する中 自動走行システムの機能や性能限界等に関する消費者の認識状況 自動走行システムの普及に必要な社会的受容性への正しい理解など 解消すべき不安 ( リスク ) についての事前調査および議論が広範かつ十分に深ま

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1-1 交通死亡事故全体の推移 10 年前と比較し の死者は 40.7% 65 歳以上の死者は 24.0% それぞれ減少 死者に占める 65 歳以上の割合は 24 年以降増加 27 年中死者の半数以上 (54.6%) を 65 歳以上が占める 10 年前と比較し 人口当たり死者数は 65 歳以上のい

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自動車事故に関する現行の法律の整理 交通事故時の法的責任およびその根拠法責任を負う個人 / 法人製品等責任責任根拠 自動車運転死傷行為処罰法刑事責任刑法運転者 - 道路交通法行政処分道路交通法 民法 事業者 運行供用者 - 運行供用者責任自動車損害賠償保障法 使用者 - 使用者責任民法 損害保険会社

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本章では 衝突被害軽減ブレーキ 車線逸脱警報 装置 等の自動車に備えられている運転支援装置の特性 Ⅻ. 運転支援装置を 備えるトラックの 適切な運転方法 と使い方を理解した運転の重要性について整理しています 指導においては 装置を過信し 事故に至るケースがあることを理解させましょう また 運転支援装置の限界を心得て正しく使用するために 支援装置の限界とメーカーによる作動等の違いを明確にさせ 支援装置に頼り過ぎた運転にならないように指導しましょう 指針第 1 章 2-(12) 1. 運転支援装置に係る事故の事例 指導のねらい運転支援装置に関する性能の理解不足や過大評価により事故が発生する場合があります 運転者が事故の特徴を理解し 運転支援装置の機能を正確に把握することの必要性を実感できるような指導を心がけましょう ポイント自動車に搭載された運転支援装置の性能に関する知識や理解が不十分であることや 性能を過大評価することが事故の要因となることを 具体的な事例を基に以下で説明しています 車両メーカー毎に性能の違いがあることや 一般的な認識と正確な性能や作動条件には違いがあることを知るきっかけとなるよう指導しましょう 事故事例 アダプティブ クルーズ コントロール装置を自動ブレーキのようなものと誤解して使用し 大型トラック ( 衝突被害軽減ブレーキ非搭載 ) が高速自動車道を約 85km/h で運行中 当該 トラックの運転者が運転席後方の自分の荷物を取るため脇見運転となり 前方の渋滞に気付く のが遅れ この渋滞の最後尾の乗用車に追突し 5 台を巻き込む多重事故となった この事故 により 追突された乗用車のうち 1 名が死亡 2 名が重傷 7 名が軽傷を負った トラック運転者が早朝運行中に眠くなってきたため アダプティブ クルーズ コントロー ル装置を自動運転のようなものと誤解して使用し トラック ( 衝突被害軽減ブレーキ非搭載 ) が高速自動車道 ( 制限速度 80km/h) を約 80km/h で運行中 当該トラックの運転者が居眠 り状態となり 路側帯でタイヤ交換をしていた 2 人をはねた この事故により はねられた 2 人は全身を強く打ち 間もなく死亡した 安全運転支援装置や警報音を適切に使用する指導 今後も自動車に対する安全運転支援装置は高度化していくことが見込まれます 安全運転支援装置は ドライバーを支援 することを目的としており 安全運転支援機能を 正しく使う ことが前提です 勝手な判断で警報音 装置の切断等をしないよう 適切に使用するよう指導しましょう 104

2. 運転支援装置の性能及び留意点 指導のねらい運転者に直接作用する 代表的な運転支援装置の性能および注意事項を記しています 自動車に搭載された運転支援装置の性能と注意事項を認識させるとともに 装置の性能を過信せずに常に運転に集中し 安全運転を心がけるように指導しましょう 下記の代表的な装置の説明に加え メーカー毎にも作動条件等に違いがあることを認識させ 運転者に対し 自社の車両に装備されている運転支援装置の性能や適正な使用方法を指導しましょう 管理者 運転者が一体となり メーカー担当者から十分な説明を受けることも有効です (1) ブレーキ制御を行う装置ポイントブレーキの制御を行い 衝突時の被害軽減や車速の維持を行う運転支援装置は特に運転者が性能を過信しがちです 装置の性能や限界等の注意事項とともに 運転に集中することの重要性を 指導を通じて運転者は意識する必要があります また これらの装置の作動を 運行管理者等が把握できる体制づくりも重要です 1 衝突被害軽減ブレーキ ( 前方障害物衝突被害軽減制動制御装置 ) 性能 レーダー等により先行車との距離を常に検出し 危険な状況にあるかどうかを監視します 追突の危険性が高まったら まずは音などにより警報し ドライバーにブレーキ操作を促します それでもブレーキ操作をせず 追突する若しくは追突の可能性が高いと車両が判断した場合 システムにより自動的にブレーキをかけ 衝突時の速度を低く抑えるようにします 先行車が急ブレーキを掛けるなどで衝突被害軽減ブレーキの範囲を超えてしまう場合には 運転者の操作が必要となるため 運転者は交通状況の把握を常に行う必要があります 105

注意事項 衝突被害軽減ブレーキは 当システムのみで衝突を回避したり 安全に停止するというものではありません レーダーセンサーに汚れ等が付着している際にはシステムが正しく作動しない恐れがあります 2アダプティブ クルーズ コントロール /ACC( 定速走行 車間距離制御装置 ) 性能 レーダー等で前方を監視し 運転者がセットした車速を維持するとともに 自車両よりも遅い先行車がいる場合には 先行車との車間距離を適正に維持して追従走行します 注意事項 運転操作が軽減されることや 先行車との車間距離が維持される安心感から 居眠り運転や 装置を過信して前方不注意となり 事故の要因となる場合があることを運転者に徹底して指導し 理解を促しましょう 106

(2) ハンドル操作の警告や支援を行う装置ポイント運転者のハンドル操作や車両の挙動から 運転者に対して適切な操作を行うように警告を発したり 操作力を支援する装置は ドライバー自身の操作を前提としたものであることを解説しましょう 路面や天候 周囲の交通状況等に集中することが必要であることを指導しましょう 1 ふらつき注意喚起装置 性能 運転者の低覚醒状態や低覚醒状態に起因する挙動を検知し 運転者に注意を喚起するようにします 注意事項 ふらつき注意喚起装置は 居眠り運転や脇見運転を可能とする装置ではありません 本装置は検出できない環境や運転操作があるため 走行中すべての状況を網羅したモニター装置ではないことをきちんと説明し 走行中は油断せず 常に集中するよう運転者に指示しましょう 2 車線逸脱警報装置 性能 走行車線を認識し 車線から逸脱した場合あるいは逸脱しそうになった場合には 運転者が車線中央に戻す操作をするよう警報が作動します 注意事項 後付け装置の中には ウィンカーと連動せず車線変更や交差点などで曲がった際に警報が作動するものもあるため 運転者は自社の装置の性能を把握する必要があります 3 車線維持支援制御装置 性能 カメラで前方の車線を認識し 高速道路の直線路で車線を維持して走行するのに必要なハンドル操作を適切に支援します 注意事項 本装置はハンドル操作力の軽減であり 装置単体が車線維持の全てを行うものではなく 運転者が適切なハンドル操作を行う必要があることを 指導を通して呼びかけましょう 107

(3) 車体維持を支援する装置ポイント通常の運転時には作動せず 横転の危険に直面した際に 運転者への警告とエンジン出力や制動力の制御により 危険を軽減する装置です 運転者は横転の危険に遭遇しないよう 路面や天候 周囲の交通状況等に集中する必要があります 車両安定性制御装置 性能 急なハンドル操作や積雪がある路面の走行などを原因とした横転の危険を 警報音などにより運転者に知らせるとともに エンジン出力やブレーキ力を制御し 横転の危険を軽減させるものです 注意事項 本装置は急ハンドルや積雪のある路面の走行を可能にする装置ではないので 本装置を過信した運転をしてはならないことを指導し どんな環境においても安全な運転を心がけるよう 運転者に呼びかけましょう 108