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₁₀) 表 1. 穀類 100 あたりの栄養成分 エネルギー kcal タンパク質 脂質 炭水化物 カリウム m 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 大麦押麦 ₃₄₀ ₆.₂ ₁.₃ ₇₇.₈ ₁₇₀ ₆.₀ ₃.₆ 大麦米粒麦 ₃₄₀ ₇.₀ ₂.₁ ₇₆.₂ ₁₇₀ ₆.₀ ₂.₇ 小麦 ₃₃₇ ₁

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図 ₁ 試験体 図 ₂ 試験体の接合金物 図 ₃ 鋼製金物詳細 表 ₁ 試験体名と形態 斜材 ( 段組数 ( 段 ) 設置形態 B₄₀-₃D ₄₀ ₁₀₅ ₃ 対角止め B₄₀-₃C₁ ₄₀ ₁₀₅ ₃ 中央止め B₄₀-₃C₂ ₄₀ ₁₀₅ ₃ 中央止め B₄₀-₁D ₄₀ ₁₀₅ ₁ 対角止め

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2 長田尚子 板橋衛 活用しつつ自給率の低い転作作物等の需要に応じた生産拡大が図られた.2010 年に戸別所得補償モデル対策が開始され, 米の 生産数量目標 に即した生産を行った販売農家 ( 集落営農を含む ) に対して所得補償を行い, 今後の戸別所得補償制度で米以外の多くの品目を広く組み込む方向を

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Transcription:

教育心理学研究,₂₀₁₈,₆₆,81-94 81 中学生に対する認知行動的抑うつ予防プログラムの効果 ₂ 年間のフォローアップ測定による標準群との比較 原著 実践研究 髙橋高人 * 松原耕平 ** 中野聡之 *** 佐藤正二 * 本研究の目的は, 中学生における認知行動的な抑うつ予防プログラムの効果を標準群との比較, さらに ₂ 年間のフォローアップ測定から検討することであった 介入群を構成した ₅₁ 名の中学 ₁ 年生が, プログラムに参加した 標準群は, 中学生 ₁,₈₁₇ 名から構成した 介入内容は, 全 ₆ 回の認知行動的プログラムから構成した プログラムの効果を測定するために, 子ども用抑うつ自己評定尺度, 社会的スキル尺度, 自動思考尺度が, 介入前, 介入後, フォローアップ測定 ₁( ₁ 年後 ),₂( ₂ 年後 ) で実施された 結果から, 抑うつについて介入前と標準群 ₁ 年生の比較では差が見られなかったのに対して, 介入群のフォローアップ測定 ₁ と標準群 ₂ 年生の比較では, 有意に介入群の抑うつが低いことが示された また, 社会的スキルの中のやさしい言葉かけとあたたかい断り方, ポジティブな自動思考に関して, 介入前よりも介入後, フォローアップ測定において向上することが示された ユニバーサルレベルの抑うつ予防プログラムが, 中学生に対して効果的な技法であることが示唆された キーワード : 抑うつ, 中学生, 認知行動的介入, 長期的効果, 標準群 問 思春期青年期の抑うつの問題は, 最も頻繁に起こる心理的な問題の ₁ つである (Costello, Mustillo, Erkanli, Keeler, & Angold, ₂₀₀₃) わが国においても傳田他(₂₀₀₄) は, 小学 ₁ 年生から中学 ₃ 年生までの ₃,₃₃₁ 名 ( 男子 ₁,₅₃₅ 名, 女子 ₁,₇₉₆ 名 ) の児童生徒を対象に Birleson Depression Self-Rating Scale for Children(DSRS-C) を用いて, 抑うつ症状を調査している その結果, 小学生の ₇.₈%, 中学生の ₂₂.₈% がカットオフスコアを超える高い抑うつ得点を示すことが明らかになった さらに佐藤 下津 石川 (₂₀₀₈) は, わが国の中学校 ₁ ₂ 年生を対象に半構造化面接を用いて, うつ病の有病率調査を行っている その結果, うつ病の時点有病率は ₄.₉%( 男子 ₂.₂%, 女子 ₈.₀%) であり, 生涯有病率は ₈.₈%( 男子 ₆.₂%, 女子 ₁₂.₀%) であることが明らかとなった 思春期青年期のうつ病は, 将来の自殺, 学業 * 宮崎大学教育学部 ₈₈₉-₂₁₉₂ 宮崎県宮崎市学園木花台西 ₁ 丁目 ₁ 番地 ** 信州大学教育学部 ₃₈₀-₈₅₄₄ 長野市西長野 ₆ の口 *** 足立区立東伊興小学校 ₁₂₁-₀₈₀₁ 東京都足立区東伊興 ₁-₄-₁₅ 題 不振, 対人関係の問題, 就業の問題, 物質乱用, 犯罪のリスクを高めることが分かっている (Klein, Torpey, & Bufferd, ₂₀₀₈) このように多くの先行研究から中学生の抑うつの問題は, 軽視することのできない問題であることが分かる さらに児童青年期に不安や抑うつの問題を抱える子どものほとんどが適切な支援を受けられておらず (Hirschfeld et al., ₁₉₉₇), そして子どもの不安の問題が ₉ 年後の不安症とうつ病のリスクを ₂ ₃ 倍増加させることも報告されている (Pine, Cohen, Gurley, Brook, & Ma, ₁₉₉₈) これらの知見を背景に世界保健機構 (World Health Organization: WHO) は, メンタルヘルスの問題や精神疾患の予防の重要性について示している (WHO, ₁₉₉₈) また米国医学研究所 (Institute of Medicine) は, エビデンスに基づく予防プログラムを概観し, 米国政府の主導による予防プログラムを実践している (United States Department of Health and Human Services, ₁₉₉₉) そして, 多くの抑うつ予防研究がおよそ ₂₀ 年間にわたり行われ, その基本的な発想は児童青年期に抑うつの改善と予防を図っておくことが, 将来にわたるうつ病の予防につながるという考えである (Merry et al., ₂₀₁₂) メンタルヘルスにおける予防介入は 個人や集団全体に対して, 障害 疾病 社会的な問題のリスクを減らすことを目

82 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ 的として行われる行動的 生物学的 社会的介入 と定義されている (VandenBos, ₂₀₀₇) つまり, メンタルヘルスにおける予防プログラムの前提となる考え方は, ターゲットとなる問題および障害のリスクを低減させ, 問題, 障害に対する防御要因を習得 向上させることを目的としている (Barrett & Turner, ₂₀₀₄) 米国医学研究所は, 予防をインディケイティド, セレクティブ, ユニバーサルの ₃ つのレベルに分類することを推奨しており, 先行研究の多くがこの分類にしたがって予防プログラムを開発している インディケイティドレベルの介入は, すでに中程度の症状を呈しており, 将来的に障害の危険性が高い人に適応される セレクティブレベルの介入は, 個人内要因や環境要因のために心理的問題を抱える人に適応される そして, ユニバーサルレベルの介入は, リスクとは関係なく, 全ての人々に適応される この ₃ つのレベルの予防介入の中で, ユニバーサルレベルの介入は, 全ての児童生徒を対象とするために特定の対象者を絞る必要がなく, 学校教育の授業の一環として実施しやすい このユニバーサルレベルの介入は, 学校管理者に最も好まれるといった報告もなされており (Horowitz, Garber, Ciesla, Young, & Mufson, ₂₀₀₇), わが国の実践研究においても学校の授業を活用して抑うつプログラムが行われている ( たとえば, 髙橋 岡島 シールズ 大藪 坂野, ₂₀₁₄) 現在, 何らかの症状や兆候を呈していなくても将来の抑うつを予防し, リスクを軽減するためにも全ての生徒を対象として, ユニバーサルレベルの予防プログラムを実施することは大きな意義があると考えられる 思春期青年期の抑うつの問題に対しては, 認知行動療法を活用した予防プログラムの有効性が示されている (Merry et al., ₂₀₁₂) 青年期の抑うつ予防プログラムの代表的なものに Penn Resiliency Program (PRP) (Gillham et al., ₂₀₀₇) があげられる PRP は, 認知行動的技法と社会的問題解決スキルから構成される 対象者は, 考え, 感情, 行動のつながり, 悲観的な認知のスタイル, 否定的な考えに挑戦するための認知再構成法, コーピングと問題解決のための技法 を学び, ディスカッションとホームワークを通して彼らの生活に応用させていく また,Adolescent Coping with Depression(CWD-A)(Clarke, Lewinsohn, & Hops, ₁₉₉₀) も, 青年の抑うつに対して有効性を示してきたプログラムである CWD-A は, 行動活性化, 社会的スキル訓練, リラクセーション, 認知再構成法, 問題解決訓練で構成されている CWD-A を基本にして, うつ病のリスクをもつ青年を対象とした予防プログラムの有 効性も示されている ( たとえば,Stice, Rohde, Gau, & Wade, ₂₀₁₀) わが国においても, 佐藤他 (₂₀₀₉) は, 小学生児童の抑うつ予防を目的とした認知行動療法プログラムの有効性を報告している 小学 ₅, ₆ 年生を対象として, 心理教育, 社会的スキル訓練, 認知再構成法から構成したプログラムを行い, 抑うつの低減, 社会的スキル, 認知の誤りにも改善が見られた また, 石川 岩永 山下 佐藤 佐藤 (₂₀₁₀) は, 小学生児童に対する社会的スキル訓練による抑うつ予防プログラムの効果を報告している 介入群とウェイティングリストコントロール群を設定した研究結果から, 抑うつ得点の低減が ₁ 年後のフォローアップ測定においても維持されていることが示された このようにわが国の実践研究においても小学生児童の抑うつ予防プログラムについては, その有効性と維持効果について, 実証的な知見が蓄積され始めている 一方, 中学生を対象とした抑うつ予防プログラムについて, 石川 戸ヶ崎 佐藤 佐藤 (₂₀₀₉) は, 予備的な検討を行っている 結果から, 社会的スキルの向上, 抑うつ得点の低減が一部みられたものの, 対象者の少なさ, 長期的な維持効果についてなど, 課題が残されており, 中学生に対する抑うつ予防プログラムの効果について, さらに検討が必要である 抑うつ予防プログラムの課題として, 長期フォローアップ測定による研究が少ないことが指摘されている ( 石川 戸ヶ崎 佐藤 佐藤, ₂₀₀₆) その数少ない研究の中でも, 長期フォローアップ測定による介入効果に一貫した結果は得られていない たとえば,Gillham et al.(₂₀₀₇) は,₃ つの学校において, ユニバーサルレベルの抑うつ予防プログラムを行った その結果,₂ つの学校では介入後 ₃ 年間のフォローアップ測定において, 抑うつの低減効果がみられたが,₁ つの学校において効果は示されなかった また,Sawyer et al. (₂₀₁₀) による大規模サンプルを対象とした ₃ 年間の抑うつ予防プログラムでは, フォローアップ測定における抑うつ低減効果はみられなかった さらに, 石川他 (₂₀₀₉) においてはフォローアップ測定を実施したものの, ₃ ヶ月までにとどまっており, 長期的な維持効果は検討できていない 加えて, わが国の調査によると中学生は, 学年を重ねるほど, 自己報告式質問紙尺度の抑うつ得点が高まる傾向にあることが報告されている ( 傳田他, ₂₀₀₄; 永井, ₂₀₀₈) 抑うつが高まりやすい思春期青年期に予防プログラムが抑うつの上昇を抑制するかどうかを検証している研究はない このように, 先行研究

83 における長期の予防効果は一貫しておらず, わが国では中学生を対象にした抑うつ予防プログラムの長期的な維持効果を検証している研究もほとんどない さらに, わが国の学校現場の介入研究において, 統制群を設定した効果研究の実施が困難であるという問題点がある 高橋 小関 (₂₀₁₁) による学級単位の社会的スキル訓練の効果を検証したメタ分析研究においても統制群を設定した研究が少ないことが示されている 実証に基づく介入効果を明らかにするためにも介入群だけでなく, 比較群を設定した統制研究が必要となる このような問題点を解決するための ₁ つの方策として, 本研究は標準群 (normative sample) の設定に着目した 標準群の設定は, 標準的なレベルが想定できる測定指標 ( たとえば, 不安や抑うつ ) について, 大規模サンプルから群を構成し, その群との比較によって, 標準的な範囲に近づく, もしくは下回るといった臨床的に重要な変化を検討することができる (Kazdin, ₂₀₀₃; Kendall, Marrs-Garcia, Nath, & Sheldrick, ₁₉₉₉) 思春期青年期における抑うつの問題は, 一定の抑うつの問題を持ち, カットオフスコアを超える子どもの割合が ₂ ₃ 割にものぼる情緒的な問題である ( 傳田他, ₂₀₀₄) 一定の割合の子どもが抱える抑うつの標準範囲を設定し, 介入によって, 標準的レベルとの比較を行うことは, 介入研究の効果測定の方法として ₁ つの選択肢となりうる たとえば,Sato, Ishikawa, Togasaki, Ogata, & Sato (₂₀₁₃) は, 学級単位のユニバーサルレベルの予防介入として, 小学生を対象とした社会的スキル訓練の効果を標準群との比較から検討している ₅ 回の介入プログラムの結果, 標準群に比べて介入群の抑うつが低減することが示された このように, 標準群の設定によって, 標準的なレベルの抑うつとの比較から介入効果を検証し, 介入群における効果を検討することができる 以上をふまえ, 本研究は以下の ₂ つのことを主な目的とした まず第 ₁ に, 中学校 ₁ 年生を対象に抑うつ予防プログラムを行い, その有効性を標準群との比較から検討する 第 ₂ に, 中学生に対する抑うつ予防の効果を ₂ 年間のフォローアップ測定から検討し, 長期的維持効果, とくに学年を重ねるごとに増加する傾向にある中学生の抑うつをユニバーサルレベルの予防プログラムが抑制するかどうかを検討する 方法対象児は,A 県の公立 B 中学校 ₁ 年生 ₂ 学級 ₅₁ 名 ( 男子 ₃₂ 名, 女子 ₁₉ 名 ) を介入群とした 標準群は,A 県 内の公立中学校に通う ₁,₈₁₇ 名であり,₁ 年生 ₆₅₇ 名 ( 男子 ₂₈₇ 名, 女子 ₃₄₅ 名, 無記入 ₂₅ 名 ),₂ 年生 ₅₈₈ 名 ( 男子 ₂₆₄ 名, 女子 ₃₀₇ 名, 無記入 ₁₇ 名 ),₃ 年生 ₅₇₂ 名 ( 男子 ₂₇₈ 名, 女子 ₂₆₉ 名, 無記入 ₂₅ 名 ) で構成した なお, 標準群に B 中学校は含まれていない 介入群と標準群における抑うつ (DSRS-C) のカットオフスコアを超えた人数は, それぞれ介入群 :₁₀ 名 (₁₉.₆%), 標準群 :₄₁₄ 名 (₂₂.₇₈%) であった 手続き介入プログラムは, 授業時間 ( ₁ 回 ₅₀ 分 ) を利用して全 ₆ 回で構成した プログラムは,X 年 ₁₁ 月から ₁₂ 月にかけて, 計 ₆ 回の授業を行った ₁ セッションあたりの時間は ₅₀ 分であり,₁ 週間に ₁ 回のペースで行った プログラムの実施者は, 各クラスの学級担任であった 実施者である学級担任に対し, プログラムとして取り上げる 気持ち ( 抑うつ ) 社会的スキル 認知再構成法 についての基礎理論をふまえ, 各セッション内容についての説明を行った Barrett & Turner (₂₀₀₁) は学校におけるユニバーサルレベルの不安予防プログラムを行い, 実施者が教師である群と専門家である群との比較を行っている 結果は, 両群ともにほぼ同等の不安改善効果がみられている わが国の抑うつ予防研究においても, 一定の説明や教育心理学を学んだ教師によるプログラムが実施され, 有効性を示している ( 佐藤他, ₂₀₀₉; 石川他, ₂₀₁₀) また, プログラムの実施状況の観察, 授業補助のために, 教育心理学を専攻する大学院生が授業に参加した プログラムの構成要素は, わが国で実施され, 効果が示されている佐藤他 (₂₀₀₉) と同様の内容を実施した 心理教育 ( 授業の目的と意義 ) 社会的スキル訓練 認知再構成法 を主な内容とした B 中学校の授業時間割調整の都合上, 佐藤他 (₂₀₀₉) では ₃ 回実施された認知再構成法を ₂ 回に短縮して実施した 全ての回でロールプレイおよびディスカッションは ₄ ₆ 名の小グループで行った 各回のプログラムの内容を Table ₁ に示す 介入群における測定時期は, 介入前 (X 年 ₁₁ 月, 中学 ₁ 年生時点 ), 介入後 (X+₃ ヶ月, 中学 ₁ 年生時点 ), フォローアップ測定 ₁( 以下 :Fw-up ₁,X+₁ 年, 中学 ₂ 年生時点の ₁₂ 月 ), フォローアップ測定 ₂( 以下 :Fw-up ₂,X+₂ 年, 中学 ₃ 年生時点の ₁₂ 月 ) の ₄ 時点であった 介入群と標準群の測定時期は, ほぼ同一時期であり, それぞれ介入群の介入前 後と標準群 ₁ 年生, 介入群 Fw-up ₁ と標準群 ₂ 年生, 介入群 Fw-up ₂ と標準群 ₃ 年生であった 第 1 回目 : 心理教育心理教育として, 本プログラ

84 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ Table プログラムの内容 セッション構成要素具体的な内容 ₁ ₂ ₃ ₄ ₅ ₆ オリエンテーションと心理教育 社会的スキル訓練 あたたかい言葉かけ 社会的スキル訓練 上手な頼み方 社会的スキル訓練 上手な断り方 認知再構成法 認知再構成法 本プログラムの目的と意義について説明した 心理教育として, きもち について学習することをテーマとした あたたかい言葉かけを学ぶ 近くに行く きちんと見る 聞こえる声で優しく言う してほしいことを言う 気持ちをこめて言う 例示場面 ) 重たい荷物を一人で運んでいる人に対する あたたかい言葉 冷たいことば を考える 上手な頼み方を学ぶ 例示場面 ) 学校を休んだとき, ノートを貸してほしいとき, 上手な頼み方を学ぶ 上手な断り方を学ぶ 例示場面 ) 用事があり, 急いでいるときに遊びに誘われる, テスト直前で勉強したいとき ノートを貸して と言われた 認知再構成の基本プロセスに沿って, 気持ちと考えを分ける を学ぶ 例示場面 ) 遊ぶ約束をしていたが, 急に 家族と出かけることになったから遊べなくなった ごめん と言われた 嫌な考えをつかまえて打ち勝つ を学ぶ 例示場面 ) 友だちから 先生たちがあなたのこと何か言っていたよ 何かはわからないけど と言われた 楽しみにしていた理科の実験で, 同じグループの人が何も言わずビーカーを取り, 進めていってしまった ムの目的と意義について説明した 心理教育は先行研究のほぼすべてに含まれており, 抑うつを理解し, コントロールするために, 必要な知識である 心理教育によって正しい知識を持つことは, 抑うつの問題から身を守り ( 防御要因の習得 ), リスクを軽減させることにつながる 内容は Clarke et al. (₁₉₉₀), 佐藤他 (₂₀₁₃) に基づき作成し, 全 ₆ 回の概要と約束事 ( 他人のことを笑わない, ふざけない, はずかしがらない ) について説明した その後, 気持ち について学ぶことをテーマとして, 他人や自分にはさまざまな気持ちがあることを説明した 具体的には いい気持ち と いやな気持ち の ₂ 種類があることを教示し, ワークシートの例を読みながら, 主人公の気持ち ( 悲しい, がっかり, イライラなど ) とその理由を考える作業を行った 第 ₂ ₄ 回目 : 社会的スキル訓練第 ₂ ₄ 回目は, 社会的スキル訓練を行った 抑うつおよびうつ病の発症に社会的スキルの欠如や対人関係ストレスの多さが影響していることが示されている ( たとえば,Rudolph, Flynn, & Abaied, ₂₀₀₈; Wierzbicki & McCabe, ₁₉₈₈) また, 教師評定による調査からも抑うつを示す子どもはそうでない子どもに比べ, 社会的スキルが低く, 引っ込み思案行動が多いことが報告されている (Rudolph & Clark, ₂₀₀₁) このように社会的スキルの低さが, 抑うつの発 症と悪化を誘発させる可能性を高め, そして社会的スキルの習得が抑うつの軽減とリスクの減少につながると考えられる さらに, 松原 佐藤 石川 髙橋 佐藤 (₂₀₁₅) は, 児童に対する抑うつ予防プログラムにおける媒介変数の検討を行っている その結果, 社会的スキルのなかでも, やさしい言葉かけが抑うつの低減を媒介することを報告している やさしい言葉かけは, 社会的スキル訓練のあたたかい言葉かけに該当しているスキルである 以上のことから本研究では, 社会的スキルのなかでも, あたたかい言葉かけ, 上手な頼み方, 上手な断り方の ₃ つをターゲットとした なお, 社会的スキル訓練は Matson et al.(₁₉₈₀), 佐藤他 (₂₀₁₃) に基づいて,(a) 言語教示,(b) モデリング, (c) 行動リハーサル ( ロールプレイと繰り返し練習 ),(d) フィードバックと強化の内容で進行した また, 各セッションでは例示場面を提示し, その場面で活用できる社会的スキルを学習した 各例示場面については, Table ₁ にその詳細を示した 第 ₂ 回目のセッションでは あたたかい言葉かけ のスキルをテーマとした (a) 自分の発する言葉が, 相手にどのような影響を与えるかについて気づくこと, (b) あたたかい言葉かけとは何かを知り, 状況に応じた言葉かけができるようになることを目的とした 授

85 業の最初に, 前回の復習と約束事の確認を行った後, ワークシートの例示場面を使って言葉かけには良い気持ちになるものと, いやな気持ちになるものがあることを説明した 次に, 言葉をかけてきた友だちに対して, 主人公が冷たい言葉で反応した場合と, あたたかい言葉で反応した場合について, その友だちの気持ちを生徒に考えてもらった さらに, 困っている人にあたたかい言葉をかけるだけではなく, あたたかい言葉をかけられた時にあたたかい言葉で反応するという場面も取り上げた その後,₄ ₆ 名のグループに分かれ, ワークブックの例示場面に対し, あたたかい言葉の種類や, その働きを確認した上で, 適切な言葉かけを話し合って考える練習をした 最後に, グループの中でペアを作り, 登場人物になったつもりでロールプレイを行った ホームワークでは, 設定された場面でどのような あたたかい言葉 が考えられるか ( ₃ 問 ), また, あたたかい言葉をかけてもらった際に, どのように返答するか ( ₃ 問 ) を生徒に記述してもらった 第 ₃ 回目は, 上手な頼み方 をテーマとした (a) 頼み方によって, 相手に与える印象が違っていることに気づくこと,(b) 上手な頼み方を知り, ポイントをおさえて上手に頼むことができるようになることを目的として行われた まず, 上手ではない頼み方をしたとき, 相手の気持ち, 相手の反応を生徒に予想してもらった その後, 上手な頼み方を説明し, 例示場面での上手な頼み方のセリフを考え, ロールプレイを行った ホームワークでは,₃ つの場面を設定し, その場合の上手な頼み方を生徒に記述してもらった 第 ₄ 回目は, 上手な断り方 をテーマとした (a) 断り方によって, 相手に与える印象が違っていることに気付くこと,(b) 上手な断り方を知り, 上手に断ることができるようになることを目的として行われた 断り方によって断られた相手が感じる気持ちが異なることを理解するために, 上手ではない断り方を提示した その後, 上手な断り方を教示し, 例示場面を使い, グループでロールプレイを行った ホームワークでは, ₃ つの場面を設定し, それぞれの場面における上手な断り方を生徒に記述してもらった 第 ₅ 6 回目 : 認知再構成法第 ₅ ₆ 回目は, 認知再構成法を行った 認知と抑うつの関係について, Beck, Rush, Shaw, & Emery (₁₉₇₉) が提唱している理論に基づいて構成した Abela & Skitch (₂₀₀₇) は ₆ ₁₄ 歳までの子どもを対象に調査を行い, 階層線形モデルによる解析を行っている その結果, 非機能的態度や低いセルフエスティームといった認知的な脆弱性を持 つ子どもがそうでない子どもに比べ, 抑うつの問題を抱える傾向にあることを明らかにしている また, 佐藤 嶋田 (₂₀₀₆) は, 自動思考と抑うつ, 不安との関連を調べ, 自己の否定と絶望的思考のネガティブな自動思考の高さが抑うつ得点の高さとも関連していることを報告している 本プログラムでは, 抑うつに影響を及ぼす認知のなかでも自動思考に焦点を当てた 自動思考は, 自然に浮かんでくる思い, 考えであり,Beck et al. (₁₉₇₉) によって提唱され, スキーマ, 推論の誤りとともに抑うつに関連する代表的な認知的要因である これらのことから, 非機能的な認知などのネガティブな認知が過度であることは, 抑うつの発症と悪化を誘発させる可能性を高め, そこに介入することが予防プログラムの目的であるリスク要因の低減につながると考えられる 第 ₅ 回目は, 思考と感情の関係 出来事 考え 気持ち の関係について学ぶことをテーマとした まず, 出来事と考え, 気持ちをそれぞれに分け, 出来事ではなく考えが気持ちとその程度を決めていることを説明した その後, 気持ちには種類や大きさがあることを確認し, 気持ちの大きさを ₀ ₁₀₀ で量的に表現する練習を行った 次に, 出来事そのものが気持ちを決めているのではなく, その出来事が起きた時の考えが気持ちの大きさを決めていることを説明した ホームワークでは, 例示された場面での気持ちの種類とその大きさを考える課題と, 指定した気持ちの種類になる考えを選択する課題に取り組んでもらった 第 ₆ 回目は, いやな気持ちになる考えに気がつき, それを和らげるための別の考えを探すことをテーマとした まず, 前回学んだ 出来事 考え 気持ち の関係を復習し, 考えの中にはいやな気持ちになりやすい考え方やいやな気持ちを大きくする考え方があることを説明した そして, 例のなかからそのような考え方を特定する練習を行った 小グループで例に示した場面について, グループでいやな気持ちを和らげる考えについて意見を出し合った いやな気持ちになりやすい考え方やいやな気持ちを大きくする考え方について, どのように考えるか実際に学級全体で話し合い, 提案された考え方に対して教師がフィードバックを行った ホームワークでは, 指定した ₂ つの場面について, 授業と同様に, いやな気持ちになりやすい考え方やいやな気持ちを見つけること, そして, その気持ちを和らげる考えを探す練習に取り組んでもらった 倫理的配慮本研究は, 授業の一貫として行われ, 学校長に対し,

86 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ 事前に研究の趣旨, 個人情報の管理および研究結果の公表方法を説明し, 承諾を得ている 測定尺度への回答に際し, 担任教諭から (a) 回答は強制的でなく, 拒否しても不利益のないこと,(b) 成績に関係がないことを説明した (a)(b) について測定尺度である質問紙にも記載し, 生徒の回答をもってインフォームド アセントとした 測定尺度子ども用抑うつ自己評定尺度 :Depression Self- Rating Scale for Children; DSRS-C(Birleson, 1981; 村田 清水 森 大島, 1996) 児童生徒の抑うつ症状を測定する ₁₈ 項目から構成され, 最近 ₁ 週間の状態について, 各項目 ₃ 件法 いつもそうだ そんなことはない で回答する 日本語版は村田他 (₁₉₉₆) によって作成され, 高い信頼性と妥当性が報告されている 目標スキルの自己評定尺度 ( 藤枝 相川, ₂₀₀1) 社会的スキル訓練で標的とするスキルを ₃₉ 項目で測定する尺度 本研究では, 介入プログラムにおいて標的スキルに該当する やさしい言葉かけ, 上手な頼み方, あたたかい断り方 の ₃ 因子 ₁₈ 項目を用いた 普段の自分にどのくらい当てはまるかを ₄ 件法 よく当てはまる ぜんぜん当てはまらない で回答する 児童用自動思考尺度 :Automatic Thoughts Inventory for Children; ATIC( 佐藤 嶋田, ₂₀₀6) 児童生徒の自動思考を サポートへの期待, 将来への期待, 自己の否定, 絶望的思考 の ₄ 下位尺度,₁₆ 項目で測定する 今の自分の考えにもっともよく当てはまるものを ₃ 件法 そんなことはない そのとおりだ で回答する 佐藤 嶋田 (₂₀₀₆) によって, 信頼性と妥当性が確認されている 本研究における測定は, 介入群が, 抑うつ (DSRS- C), 社会的スキル, 自動思考であった 標準群は, 抑うつ (DSRS-C) のみ測定を行っている 結果介入群と標準群の比較介入群と標準群 ( 無記入を除く ) における性別の割合を χ ₂ 検定によって比較した その結果, 群間に有意な差が見られ, 介入群において男子生徒の割合が女子生徒よりも高かった (χ[₁]=₅.₇₀) ₂ また, 標準群の ₁ 年生において女子生徒の割合が男子生徒よりも大きかった (χ[₁]=₅.₇₀) ₂ 標準群の ₂ 年生においても, 女子生徒の割合が男子生徒より大きかった 標準群の ₃ 年生時点における有意な差は認められなかった (χ[₁]= ₂ ₁.₄₁) また, 介入群と標準群において, 抑うつ得点に 床効果が生じていないかを検討するために, それぞれの群の平均得点から標準偏差を引いた値を最小値と比較した その結果, 両群とも最小値を上回る値を示し, 床効果は生じていないことが確認された 次に, 介入の効果を検討するために, 介入群と標準群の比較を行った 抑うつ得点 (DSRS-C) について, 介入前と標準群 ₁ 年生, 介入後と標準群 ₁ 年生の平均得点を t 検定で比較した なお, 標準群 ₁ 年生の得点は同一のデータを用いている そして, 介入群の Fw-up ₁( ₂ 年生時点 ) と標準群 ₂ 年生, 介入群の Fw-up ₂( ₃ 年生時点 ) と標準群 ₃ 年生の抑うつ得点 (DSRS-C) について t 検定で比較した 結果から, 介入群の介入前 ( ₁ 年生時点 ) と標準群の ₁ 年生との間に有意差はみられなかった また, 介入群の介入後 ( ₁ 年生時点 ) と標準群の ₁ 年生との間に有意差はみられなかった また, 介入群の Fw-up ₁( ₂ 年生時点 ) と標準群 ₂ 年生の DSRS 総得点を比較したところ有意差がみられ, 介入群の DSRS 得点が低いことが示された (t(₆₃₁)=₃.₇₆, p<.₀₀₁) また, 介入群の Fw-up ₂( ₃ 年生時点 ) と標準群 ₃ 年生の DSRS 総得点の比較では, 有意傾向がみられ, 介入群の DSRS 得点が低い傾向にあった (t(₆₁₇)=₁.₇₃, p<.₁₀) 介入群と標準群の ₁, ₂, ₃ 年生における各測定値に基づいて効果サイズを算出したところ, 介入後 - 標準群 ₁ 年生 d=.₂₃,fw-up ₁- 標準群 ₂ 年生 d=.₅₈,fw-up ₂- 標準群 ₃ 年生 d=.₂₅ であった 介入群と標準群の抑うつ得点の変化を Figure ₁,Table ₂ に示した 介入群におけるプログラムの効果抑うつ (DSRS-C) の変化介入群における抑うつの変化を検討するために, 混合モデルによる分析を行った 固定因子として, 時期 ( 介入前, 介入後,Fw-up ₁, 12 10 8 6 4 2 0 介入前 1 年生 介入後 1 年生 1 2 年生 2 3 年生 介入群標準群 Figure 介入群と標準群における抑うつ得点 (DSRS-C)

87 Table 介入群と標準群における抑うつ, 社会的スキル, 自動思考の変化 介入前 M (SD) ₁₀.₄₈ 介入群 標準群 ₁ 年生 ₂ 年生 ₃ 年生 ₁ 年生 ₂ 年生 ₃ 年生 介入後 M (SD) 抑うつ (DSRS-C) ₈.₅₅ (₆.₁₁) (₆.₁₆) 社会的スキル やさしい言葉かけ ₃₁.₄₀ ₃₃.₁₄ (₅.₀₁) (₅.₁₃) 上手な頼み方 ₁₃.₆₈ ₁₃.₉₀ (₂.₁₆) (₂.₅₆) あたたかい断り方 ₂₁.₀₀ ₂₂.₇₆ (₄.₀₂) (₃.₅₈) 自動思考 (ATIC) サポートへの期待 ₆.₇₃ ₇.₀₈ (₁.₃₄) (₁.₂₉) 将来への期待 ₄.₈₄ ₅.₆₄ (₁.₈₆) (₁.₉₂) 自己の否定 ₂.₉₈ ₂.₆₁ (₁.₆₈) (₂.₀₈) 絶望的思考 ₁.₉₈ ₁.₉₄ (₁.₇₇) (₂.₁₇) Fw-up ₁ M (SD) ₈.₀₄ (₅.₄₅) ₃₂.₇₇ (₄.₅₆) ₁₃.₉₆ (₂.₇₈) ₂₂.₆₃ (₄.₅₀) ₇.₆₁ (₀.₇₉) ₅.₈₄ (₁.₈₀) ₂.₅₀ (₁.₇₁) ₁.₅₇ (₁.₅₇) Fw-up ₂ M (SD) ₉.₄₀ (₆.₇₅) ₃₄.₇₄ (₃.₆₇) ₁₄.₆₇ (₂.₇₅) ₂₃.₇₆ (₃.₉₆) ₇.₃₈ (₁.₄₇) ₅.₆₆ (₁.₉₀) ₂.₅₈ (₁.₉₀) ₁.₄₆ (₁.₄₉) M (SD) ₉.₉₅ (₅.₉₆) M (SD) ₁₁.₄₆ (₆.₁₆) M (SD) ₁₁.₀₀ (₅.₉₈) 注 )M: Mean SD: Standard Deviation Fw-up: Follow-Up DSRS-C: Depression Self-Rating Scale for Children ATIC: Automatic Thoughts Inventory for Children Fw-up ₂ ), 変量因子として, 対象者の効果をモデルに投入した その結果, 抑うつ得点について, 時期 ( 介入前, 介入後,Fw-up ₁,Fw-up ₂ ) の測定値に有意な変化がみられた (F(₃, ₁₄₁)=₃.₉₂, p<.₀₅) そこで多重比較を行ったところ, 介入前から Fw-up ₁ にかけて有意に抑うつ (DSRS) 得点が減少していた (p<.₀₅) また, 介入前と介入後の間に有意傾向がみられ, 抑うつ (DSRS) 得点が減少する傾向がみられた (p <.₁₀) その他の時期の間には有意な差は認められなかった 介入群における各測定値に基づいて効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=-.₃₂, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=-.₄₀, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=-.₁₈ であった 介入群における抑うつ得点の変化を Table ₂ に示した 社会的スキルの変化先行研究において, 信頼性の記載がみられない目標スキルの自己評定尺度について, 尺度の信頼性を検討するために,Cronbach の α 係数を算出した その結果,₃ つの下位尺度は, 各測定時点において, 一定程度の信頼性を示す値であった ( 介入前 :.₆₃.₈₄, 介入後 :.₆₇.₈₈,Fw-up ₁:.₆₆.₈₂,Fw-up ₂:.₆₄.₇₆) 次に, 介入群における社会的スキルの変化を検討するために, 混合モデルによる分析を行った 目標スキルの自己評定尺度の ₃ 因子 ( やさしい言葉かけ, 上手な頼み方, あたたかい断り方 ) の得点について, 固定因 子として, 時期 ( 介入前, 介入後,Fw-up ₁,Fw-up ₂), 変量因子として, 対象者の効果をモデルに投入した まず, やさしい言葉かけ得点について, 時期 ( 介入前, 介入後,Fw-up ₁,Fw-up ₂) の測定値に有意な変化がみられた (F(₃, ₁₄₃)=₈.₂₁, p<.₀₁) そこで多重比較を行ったところ, 介入前よりも Fw-up ₂ の得点が有意に増加していた (p<.₀₁) そして Fw-up ₁ よりも Fw-up ₂ のやさしい言葉かけ得点が有意に増加していた (p<.₀₅) さらに, 介入前よりも介入後のやさしい言葉かけ得点が増加する傾向にあった (p<.₁₀) 各測定時点における, やさしい言葉かけ得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=.₃₅, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=.₂₇, 介入前 -Fw-up ₂ Δ =.₆₇ であった あたたかい断り方において, 時期 ( 介入前, 介入後, Fw-up ₁,Fw-up ₂) の測定値に有意な変化がみられた (F (₃, ₁₄₃)=₉.₈₀, p<.₀₁) そこで多重比較を行ったところ, 介入前の得点よりも介入後 (p<.₀₁),fw-up ₁(p<.₀₅), Fw-up ₂(p<.₀₀₁) の得点が有意に増加することが明らかとなった 各測定時点における, あたたかい断り方得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=.₄₄, 介入前 -Fwup ₁ Δ=.₄₁, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=.₆₉ であった

88 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ Table 抑うつに対する社会的スキル, 自動思考の影響 : 重回帰分析の結果 目的変数 : 抑うつ (DSRS-C) 介入後 Fw-up ₁ Fw-up ₂ 説明変数 B SE β B SE β B SE β 社会的スキル.₃₂.₁₂.₃₆*.₄₀.₁₅.₃₉* ポジティブ自動思考 ₁.₀₀.₄₁.₃₄* ネガティブ自動思考 R ₂.₂₇.₁₅ *p<.₀₅ 注 )Fw-up ₁:Follow-up ₁ Fw-up ₂:Follow-up ₂ B: 非標準化回帰係数 SE: 標準誤差 β: 標準偏回帰係数 R ₂ : 重決定係数 DSRS-C: Depression Self-Rating Scale for Children 上手な頼み方について, 時期 ( 介入前, 介入後, Fw-up ₁,Fw-up ₂) の測定値に有意な変化はみられなかった 各測定時点における, 上手な頼み方得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=.₁₀, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=.₁₃, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=.₄₆ であった 介入群における社会的スキル得点の変化を Table ₂ に示した 自動思考 (ATIC) の変化介入群における自動思考の変化を検討するために, 混合モデルによる分析を行った 固定因子として, 時期 ( 介入前, 介入後, Fw-up ₁,Fw-up ₂), 変量因子として, 対象者の効果をモデルに投入した サポートへの期待について, 時期 ( 介入前, 介入後, Fw-up ₁,Fw-up ₂) の測定値に有意な変化がみられた (F (₃, ₁₄₃)=₆.₄₆, p<.₀₁) そこで多重比較を行ったところ, 介入前よりも Fw-up ₁ の得点が有意に増加していた (p<.₀₁) また, 介入前に比べて Fw-up ₂ の得点が有意に増加していた (p<.₀₅) 介入後よりも Fw-up ₂ の得点が増加する傾向にあった (p<.₁₀) その他の時期の間に有意な差はみられなかった 各測定時点における, サポートへの期待得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=.₂₆, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=.₆₆, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=.₄₉ であった 将来への期待に関して, 時期 ( 介入前, 介入後, Fw-up ₁,Fw-up ₂) の測定値に有意な変化がみられた (F (₃, ₁₄₄)=₅.₁₀, p<.₀₁) そこで多重比較を行ったところ, 介入前に比べて介入後 (p<.₀₅),fw-up ₁(p<.₀₁), Fw-up ₂(p <.₀₅) にかけて得点が有意に増加することが示された その他の時期の間に有意な差はみられなかった 各測定時点における, 将来への期待得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=.₄₃, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=.₅₄, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=.₄₄ であった 自己の否定, 絶望的思考の ₂ つのネガティブな自動思考については, いずれも有意な差はみられなかった 各測定時点における, 自己の否定得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=-.₂₂, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=-.₂₉, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=-.₂₄ であった 同様に, 絶望的思考得点の平均値と標準偏差に基づいて, 効果サイズを算出したところ, 介入前 - 介入後 Δ=-.₀₂, 介入前 -Fw-up ₁ Δ=-.₂₃, 介入前 -Fw-up ₂ Δ=-.₂₉ であった 介入群における自動思考得点の変化を Table ₂ に示した 抑うつ (DSRS-C) に及ぼす社会的スキル 自動思考 (ATIC) の影響介入群における社会的スキル, 認知再構成法の習得 向上が, それぞれどの程度, 抑うつ (DSRS) に影響するかを検討するためにステップワイズによる重回帰分析を行った 介入後,Fw-up ₁, Fw-up ₂ のそれぞれの抑うつ (DSRS) 得点を目的変数とし, 介入前から介入後における社会的スキル合計得点の変化量, ポジティブな自動思考 ( サポートへの期待, 将来への期待 ) 得点の変化量, ネガティブな自動思考 ( 自己の否定, 絶望的思考 ) 得点の変化量を説明変数とした 多重共線性の値 (VIF) はすべて ₁.₅ より小さく, 問題はないと判断した 結果から, 介入後の抑うつ (DSRS) に対する社会的スキルの変化量, ポジティブな自動思考の変化量の説明率が有意であった Fw-up ₁ 時点の抑うつ (DSRS) への各説明変数は, いずれも有意な変数が抽出されなかった Fw-up ₂ の抑うつ (DSRS) に対して, 社会的スキルの変化量の説明率が有意であった Table ₃ に重回帰分析の各値を記載した 考察本研究の目的は, 認知行動的技法を用いた抑うつ予防プログラムの効果を大規模サンプルから構成した標

89 準群と比較すること, そして中学校 ₁ 年生から ₃ 年生までの長期維持効果を検討することであった 結果から, 抑うつに対する効果として, 介入群の抑うつ (DSRS-C) は, 介入群 ₁ 年生の介入前 後の時点において, 標準群の ₁ 年生と差異がなかったが, 介入群 ₂ 年生時点の Fw-up ₁ と標準群 ₂ 年生との比較では, 有意に介入群の抑うつ得点が低いことが示された また, 介入群の ₃ 年生時点の Fw-up ₂ においても, 介入群の抑うつ得点が, 標準群 ₃ 年生に比べ, 低い傾向にあった この結果は, 介入群の生徒が, 介入前の ₁ 年生時点には標準的な水準にあった抑うつのレベルが,₂ 年生時点の Fw-up ₁ と ₃ 年生時点の Fw-up ₂ の測定では, 標準的な抑うつレベルを下回っていたことを示している 本研究では, 標準群との比較をすることで介入効果を標準的なレベルとの比較から検討することができた これは統制群の特性 ( たとえば, もともとの抑うつ得点が高いもしくは低い ) に左右されずに介入効果を検証できるという点で介入研究の検証の ₁ つの手法となると考えられる 上述したように, わが国の疫学調査において中学校生活 ₃ 年間における抑うつ得点の変化は, 学年を重ねるほど高くなる傾向にあることが報告されている ( 傳田他, ₂₀₀₄; 永井, ₂₀₀₈) このような知見を踏まえ, 本研究において,₁ 年生時点に介入を受けた生徒が ₂, ₃ 年生になっても標準的な抑うつレベルを下回る状態を維持していたことは, 抑うつ予防プログラムが, 学年を重ねるほど増加傾向を示す抑うつを抑制する効果を持つ可能性が示唆された 本研究における介入プログラムの効果サイズは, 介入後 d=.₂₃,fw-up ₁ d=.₅₈,fw-up ₂ d=.₂₅ であった 介入の直後には小さな効果にとどまっていたものの,Fw-up ₁ には中程度の効果を示していた しかし, ₂ 年後の Fw-up ₂ では再び小さい効果サイズに戻っている これは,Stice et al. (₂₀₁₀) がうつ病のリスクの高い青年に対して予防プログラムを行った研究結果と類似しており, この研究においても ₂ 年後フォローアップ測定では小さい効果サイズにとどまっている ユニバーサルレベルとターゲットレベルの違いはあるものの予防プログラムの効果サイズは,₂ 年間を経過すると低下してしまうことが示唆された このような問題への対策として, ブースターセッションの設定などプログラム内容を復習する活動を継続することが考えられる また, 本研究は中学 ₁ 年生時点でプログラムを行い, その有効性を ₂ 年後の ₃ 年生まで長期間にわたって検 討することができた わが国の先行研究における抑うつ予防プログラムでは, 数ヶ月から約 ₁ 年程度のフォローアップ測定にとどまっている研究が多い 中学生は, 不登校, 暴力行為などの諸問題が小学生に比べ, 増加する年代である ( 文部科学省, ₂₀₁₅) この時期に, 抑うつを低減させる, あるいはそのリスクを減らすことを目的とした授業を行うことは, 生徒それぞれの抑うつとそのリスクの程度にかかわらず, すべての生徒にとって有用なものであると考えられる 次に, 介入プログラムで取り上げた社会的スキルと自動思考の変化について考察する まず, 社会的スキルについて, やさしい言葉かけ と あたたかい断り方 の ₂ つのスキルに介入効果がみられ, その効果が ₂ 年間にわたって維持されることが分かった 社会的スキルの獲得が, 児童生徒の抑うつを軽減させることは,Sato et al.(₂₀₁₃) や石川他 (₂₀₁₀) の小学生を対象とした研究結果と一致する 本研究の結果から, 中学生においても社会的スキルの習得が認められ, 抑うつの軽減がみられた とくに, やさしい言葉かけスキルの向上は, 相手の気持ちを考え, 具体的な言葉をクラスメイトと話し合うという本プログラムの効果が反映されたものと考えられる これは, 人間関係が複雑になる中学生の年代においても発達段階に合わせた介入を行うことで社会的スキルの向上が可能であることを示唆している 自動思考 (ATIC) について, サポートへの期待, 将来への期待の ₂ つのポジティブな自動思考に介入効果が示された サポートへの期待は, こまったときにはまわりの人が助けてくれる, 将来への期待は ₂, ₃ 年後にはきっといいことが起こっていると思う などの質問項目で構成されている これは, 介入要素のなかの認知再構成法が, ポジティブな自動思考を向上させたと予想される 認知再構成法のセッションで取り上げる内容は, 物事をさまざまな視点から捉える練習である そして, グループで話し合い意見をまとめるなど, 他者の意見にも多く触れる機会があることもポジティブな自動思考を向上させた要因であると考えられる 佐藤 嶋田 (₂₀₀₆) は, 児童におけるポジティブ, ネガティブな自動思考と不安症状, 抑うつ症状の関連について検討している その結果, ポジティブな自動思考であるサポートへの期待と将来への期待が, 抑うつ症状を抑制することが示されている また, 松原他 (₂₀₁₅) においても本研究と同様に抑うつ予防プログラムによって, ポジティブな自動思考であるサポート期待, 将来への期待の向上が示されている これらを考

90 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ え合わせるとポジティブな自動思考の改善がみられた本研究の結果も先行研究の結果と一致するものであった その一方で, ネガティブな認知である自己の否定, 絶望的思考の ₂ つの自動思考については, 介入による有意な改善がみられなかった ポジティブな自動思考が向上し, ネガティブな自動思考に変化が見られなかった本研究の結果は, ネガティブな考えがありつつもポジティブな考えも増やすことで抑うつを抑制する可能性を示唆している しかしながら, 多くの先行研究はネガティブな認知の低減が, 抑うつの改善に有効であることを示している ( たとえば,Kendall, Stark, & Adam, ₁₉₉₀; Weitlauf & Cole, ₂₀₁₂) 今後, 予防介入における認知的技法とポジティブ, ネガティブな自動思考との関連を詳細に検討する必要がある また, わが国における介入研究で認知再構成法を実施している石川他 (₂₀₀₉) と佐藤他 (₂₀₀₉) は, 効果指標として 認知の誤り を測定し, 一定の改善を示している 認知の誤り は, 友人とのケンカの場面などでみられる抑うつを強めてしまう認知である 本プログラムにおいても学校など日常場面での考え ( 認知 ) について取り上げている これらを考え合わせると本プログラムのような方法での認知再構成法は, ネガティブな自動思考 ( 自己の否定 : 自分がきらいだ など, 絶望的思考 : これからの人生で楽しみなことなんてなにもない など ) よりも日常場面での認知の誤りを改善させる技法である可能性がある 今後, 予防プログラムのなかで認知的技法の手法と, それによって変容する認知的要因 ( たとえば, 自動思考, 認知の誤り ) との関連性を明らかにする必要がある また, 重回帰分析によって社会的スキル, 自動思考の習得 向上による抑うつへの影響を検討した 介入後の時点では, 介入による社会的スキルとポジティブな自動思考の変化が抑うつに影響を及ぼしていた Fw-up ₁ 時点に有意に影響を及ぼす変数はなく, Fw-up ₂ 時点では社会的スキルの変化のみが抑うつに影響を及ぼしていた これは介入による社会的スキルとポジティブな自動思考の変化が介入後の抑うつを軽減させ, とくに社会的スキルの向上が長期的な抑うつ軽減に影響を及ぼす可能性を示唆している 社会的スキルとポジティブな自動思考の向上が抑うつの上昇や発症を抑制する可能性があり, 思春期青年期に認知行動的な要因を習得することの予防的な意義と重要性が示されたといえる 一方, 抑うつのみの変化をみると Fw-up ₁ 時点が最も大きな効果サイズを示しているが, この変化に介入による社会的スキルと自動思考の変化 はその多くを説明しない可能性があり, 介入以外の要因も考慮しておく必要がある 最後に本研究の限界と課題をまとめる まず, 本研究は, 抑うつについて, 標準群との比較から検討を行ったが, その他の指標である社会的スキル, 自動思考は, 標準群データを収集できていない 抑うつのみでなく, 社会的スキルや自動思考についても標準群を構成し, その比較から介入効果の検証を行うことが求められる また, 本研究における標準群は,₁ つの地域のみのデータである 平均得点やカットオフスコアを超える人の割合など, 他の地域で収集されている抑うつ (DSRS-C) 得点データ ( 例えば, 傳田他, ₂₀₀₄) と比較して概ね同様の傾向がみられているものの標準的な群を構成する場合には, 複数の地域のデータから構成することが望まれる 今後, 調査データを積み重ねる必要がある プログラムの実施者と実施形態 ( 本研究では学級単位およびグループ活動 ) にも課題が残る 本プログラムの実施者は専門家ではなく, 学校現場の担任教師であった 心理教育, 社会的スキル訓練, 認知再構成法のそれぞれにおいて, グループでの活動を多く取り入れている しかし, 本研究のデータのみで担任教師による実践やグループ学習がプログラム効果を高めたかどうかまでは言及できない 実施者が学校教員であることは, 介入の忠実性 (fidelity) について注意が必要になる 今後, 実施者が専門家と学校教員のプログラム効果の比較, グループ形態と個別のプログラム効果の比較が必要になる さまざまな視点を持つクラスメイトと同じテーマについて話し合い, 意見を交換することは, 生徒の日常の抑うつに対して大きな影響があった可能性がある そして, プログラム実施者が, 担任教師であることは, プログラム以外の学校生活においてもプログラム内容を理解している教師と過ごすことであり, 介入プログラムで取り上げている行動や考えを促進, 賞賛する機会が多くあると予想できる 学校現場の教師によって行われたプログラムで ₂ 年間以上のフォローアップ査定が行われた先行研究 ( たとえば,Gillham et al., ₂₀₀₇; Sawyer et al., ₂₀₁₀; Spence, Sheffield & Donovan, ₂₀₀₅) において, 有意な長期的維持効果を示すには到っていない これらのことからも学校教員による実施, 学級単位のグループ学習の効果を検証することは, ユニバーサルレベルの予防における重要な課題となる また, 本研究では ₂ 年間にわたるフォローアップ測定において, 生徒が介入内容を覚えているかどうかまでは検討できていない そのため介入のみの効果に

91 よって, 抑うつ得点の上昇が抑制されたのかは不明である 一方で青年期における抑うつはソーシャルサポートなど個人と環境の相互作用によって影響を受ける (Stice, Ragan, & Randall, ₂₀₀₄) 今後, 長期的な効果検証を行う際は, 生徒がどの程度介入内容を覚えているか, さらにソーシャルサポートなど環境面の影響についてもデータを収集して効果測定を行う必要がある そして, 抑うつ得点について, 介入群である B 中学校の学校全体としての抑うつ得点の推移は検討できていない 学校全体としての抑うつ得点の推移と介入群の得点推移を比較することができれば, より厳密な介入効果の検討ができる さらに, 本研究における抑うつの測定は自己報告式の質問紙のみであった 自己報告式質問紙のみで子どもの抑うつを測定することには限界がある この点にも留意して結果を理解する必要があり, 今後, 半構造化面接や行動観察による抑うつの測定を行う必要がある 本研究において算出した効果サイズは, 小から中程度であった ユニバーサルレベルの予防プログラムの効果サイズが, セレクティブレベル, インディケイティドレベルに比べて, 小さいことは先行研究からも示されている (Brunwasser, Gillham, & Kim, ₂₀₀₉) この理由として, もともと抑うつの高い子どもには効果が大きい一方で, もともと抑うつが低い子どもへの効果は小さいという点があげられる この点については, どの指標の変化をもって 予防効果 とするかという課題が残されている これまで学校現場における予防的プログラムは, 子どもの不安障害やうつ病などの治療に用いる技法や効果指標をそのまま適用してきた 抑うつ症状や治療技法として用いられる指標の変化だけでなく, ユニバーサルレベルの予防プログラムに特化した効果指標を検討する必要がある たとえば, レジリエンスなど困難に直面したときの回復力を取り上げるなど, より広く予防効果を検討する必要がある 治療から予防に焦点を当てた技法と効果指標の洗練が必要になると考えられる 引用文献 Abela, J. R. Z., & Skitch, S. A. (₂₀₀₇). Dysfunctional attitudes, self-esteem, and hassles: Cognitive vulnerability to depression in children of affectively ill parents. Behaviour Research and Therapy, 45, ₁₁₂₇- ₁₁₄₀. doi:₁₀.₁₀₁₆/j.brat.₂₀₀₆.₀₉.₀₁₁ Barrett, P., & Turner, C. (₂₀₀₁). Prevention of anxiety symptoms in primary school children: Preliminary results from a universal school-based trial. British Journal of Clinical Psychology, 40, ₃₉₉-₄₁₀. doi:₁₀. ₁₃₄₈/₀₁₄₄₆₆₅₀₁₁₆₃₈₈₇ Barrett, P. M., & Turner, C. M. (₂₀₀₄). Prevention of childhood anxiety and depression. In P. M. Barrett & T. H. Ollendick (Eds.), Handbook of interventions that work with children and adolescents: Prevention and treatment (pp. ₄₂₉-₄₇₄). Chichester, England: John Wiley & Sons Ltd. Beck, A. T., Rush, A. J., Shaw, B. F., & Emery, G. (₁₉₇₉). Cognitive therapy of depression. New York: Guilford Press. Birleson, P. (₁₉₈₁). The validity of depressive disorder in childhood and the development of a self-rating scale: A research report. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 22, ₇₃-₈₈. doi:₁₀.₁₁₁₁/j.₁₄₆₉-₇₆₁₀. ₁₉₈₁.tb₀₀₅₃₃.x Brunwasser, S. M., Gillham, J. E., & Kim, E. S. (₂₀₀₉) A meta-analytic review of the Penn Resiliency Program's effect on depression symptoms. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 77, ₁₀₄₂-₁₀₅₄. doi:₁₀.₁₀₃₇/a₀₀₁₇₆₇₁ Costello, E. J., Mustillo, S., Erkanli, A., Keeler, G., & Angold, A. (₂₀₀₃). Prevalence and development of psychiatric disorders in childhood and adolescence. Archives of General Psychiatry, 60, ₈₃₇-₈₄₄. doi:₁₀. ₁₀₀₁/archpsyc.₆₀.₈.₈₃₇ Clarke, G., Lewinsohn, P., & Hops, H. (₁₉₉₀). Leader's manual for adolescent groups: Adolescent coping with depression course. Retrieved form http://www. kpchr.org/research/public/acwd/acwd.html(₂₀₁₄ 年 ₁₀ 月 ₃₀ 日 ) 傳田健三 賀古勇輝 佐々木幸哉 伊藤耕一 北川信樹 小山司 (₂₀₀₄) 小 中学生の抑うつ状態に関する調査 Birleson 自己記入式抑うつ評価尺度 (DSRS- C) を用いて児童青年精神医学とその近接領域, 45, ₄₂₄-₄₃₆. 藤枝静暁 相川充 (₂₀₀₁). 小学校における学級単位の社会的スキル訓練の効果に関する実験的検討教育心理学研究, 49, ₃₇₁-₃₈₁. Gillham, J. E., Reivich, K. J., Freres, D. R., Chaplin, T. M., Shatté, A. J., Samuels, B.,... Seligman, M. E. P. (₂₀₀₇). School-based prevention of depressive symptoms: A randomized controlled study of the effectiveness and specificity of the Penn Resiliency Program.

92 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ Journal of Consulting and Clinical Psychology, 75, ₉-₁₉. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₂₂-₀₀₆x.₇₅.₁.₉ Hirschfeld, R. M. A., Keller, M. B., Panico, S., Arons, B. S., Barlow, D., Davidoff, F.,... Wyatt, R. J. (₁₉₉₇). The National Depressive and Manic-Depressive Association consensus statement on the undertreatment of depression. Journal of American Medical Association, 277, ₃₃₃-₃₄₀. doi:₁₀.₁₀₀₁/jama.₁₉₉₇. ₀₃₅₄₀₂₈₀₀₇₁₀₃₆ Horowitz, J. L., Garber, J., Ciesla, J. A., Young, J. F., & Mufson, L. (₂₀₀₇). Prevention of depressive symptoms in adolescents: A randomized trial of cognitivebehavioral and interpersonal prevention programs. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 75, ₆₉₃- ₇₀₆. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₂₂-₀₀₆x.₇₅.₅.₆₉₃ 石川信一 岩永三智子 山下文大 佐藤寛 佐藤正二 (₂₀₁₀). 社会的スキル訓練による児童の抑うつ症状への長期的効果教育心理学研究,58, ₃₇₂-₃₈₄. doi:₁₀.₅₉₂₆/jjep.₅₈.₃₇₂ 石川信一 戸ヶ崎泰子 佐藤正二 佐藤容子 (₂₀₀₆). 児童青年に対する抑うつ予防プログラム 現状と課題教育心理学研究, 54, ₅₇₂-₅₈₄. doi:₁₀.₅₉₂₆/ jjep₁₉₅₃.₅₄.₄_₅₇₂ 石川信一 戸ヶ崎泰子 佐藤正二 佐藤容子 (₂₀₀₉). 中学生に対する学校ベースの抑うつ予防プログラムの開発とその効果の予備的検討行動医学研究, 15, ₆₉-₇₉. doi:₁₀.₁₁₃₃₁/jjbm.₁₅.₆₉ Kazdin, A. E. (₂₀₀₃). Research design in clinical psychology. Boston, MA: Allyn & Bacon. Kendall, P. C., Stark, K. D., & Adam, T. (₁₉₉₀). Cognitive deficit or cognitive distortion in childhood depression. Journal of Abnormal Child Psychology, 18, ₂₅₅-₂₇₀. doi:₁₀.₁₀₀₇/bf₀₀₉₁₆₅₆₄ Kendall, P. C., Marrs-Garcia, A., Nath, S. R., & Sheldrick, R. C. (₁₉₉₉). Normative comparisons for the evaluation of clinical significance. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 67, ₂₈₅-₂₉₉. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₂₂-₀₀₆x.₆₇.₃.₂₈₅ Klein, D. N., Torpey, D. C., & Bufferd, S. J. (₂₀₀₈). Depression disorder. In T. P. Beauchaine & S. P. Hinshaw (Eds.), Child and adolescent psychopathology (pp. ₄₇₇-₅₀₉). Hoboken, NJ: Wiley. 松原耕平 佐藤寛 石川信一 髙橋高人 佐藤正二 (₂₀₁₅). 子どものためのユニバーサル抑うつ予防プログラムの媒介変数の検討認知療法研究, 8, ₂₄₈- ₂₅₇. Matson, J. L., Esveldt-Dawson, K., Andrasik, F., Ollendick, T. H., Petti, T., & Hersen, M. (₁₉₈₀). Direct, observational, and generalization effects of social skills training with emotionally disturbed children. Behavior Therapy, 11, ₅₂₂-₅₃₁. doi:₁₀.₁₀₁₆/s₀₀₀₅- ₇₈₉₄(₈₀)₈₀₀₆₈-₂ Merry, S. N., Hetrick, S. E., Cox, G. R., Brudevold- Iversen, T., Bir, J., & McDowell, H. (₂₀₁₂). Psychological and educational interventions for preventing depression in children and adolescents. Evidence- Based Child Health, 7, ₁₄₀₉-₁₆₈₅. doi:₁₀.₁₀₀₂/ ebch.₁₈₆₇ 文部科学省 (₂₀₁₅). 平成 ₂₆ 年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査 結果について Retrieved from http://www.mext.go.jp/b_menu/ houdou/₂₇/₀₉/ (₂₀₁₆ 年 ₅ 月 ₃₀ 日 ) 村田豊久 清水亜紀 森陽二郎 大島祥子 (₁₉₉₆). 学校における子どものうつ病 Birleson の小児期うつ病スケールからの検討最新精神医学, 1, ₁₃₁-₁₃₈. 永井智 (₂₀₀₈). 中学生における児童用抑うつ自己評価尺度 (DSRS) の因子モデルおよび標準データの検討感情心理学研究, 16, ₁₃₃-₁₄₀. doi:₁₀.₄₀₉₂/jsre. ₁₆.₁₃₃ Pine, D. S., Cohen, P., Gurley, D., Brook, J., & Ma, Y. (₁₉₉₈). The risk for early-adulthood anxiety and depressive disorders in adolescents with anxiety and depressive disorders. Archives of General Psychiatry, 55, ₅₆-₆₄. doi:₁₀.₁₀₀₁/archpsyc.₅₅.₁.₅₆ Rudolph, K. D., & Clark, A. G. (₂₀₀₁). Conceptions of relationship in children with depressive and aggressive symptoms: Social-cognitive distortion or reality? Journal of Abnormal Child Psychology, 29, ₄₁-₅₆. doi:₁₀.₁₀₂₃/a:₁₀₀₅₂₉₉₄₂₉₀₆₀ Rudolph, K. D., Flynn, M., & Abaied, J. L. (₂₀₀₈). A developmental perspective on interpersonal theories of youth depression. In J. R. Z. Abela & B. L. Hankin (Eds.), Handbook of depression in children and adolescents(pp. ₇₉-₁₀₂). New York: Guilford Press. 佐藤寛 今城知子 戸ヶ崎泰子 石川信一 佐藤容子 佐藤正二 (₂₀₀₉). 児童の抑うつ症状に対する学級規模の認知行動療法プログラムの有効性教育心理学研究, 57, ₁₁₁-₁₂₃. doi:₁₀.₅₉₂₆/jjep.₅₇.₁₁₁ 佐藤寛 嶋田洋徳 (₂₀₀₆). 児童のネガティブな自動

93 思考とポジティブな自動思考が抑うつ症状と不安症状に及ぼす影響行動療法研究, 32, ₁-₁₃. 佐藤寛 下津咲絵 石川信一 (₂₀₀₈). 一般中学生におけるうつ病の有病率 半構造化面接を用いた実態調査精神医学, 50, ₄₃₉-₄₄₈. doi:₁₀.₁₁₄₇₇/mf. ₁₄₀₅₁₀₁₂₀₅ Sato, S., Ishikawa, S., Togasaki, Y., Ogata, A., & Sato, Y. (₂₀₁₃). Long-term effects of a universal prevention program for depression in children: A ₃-year followup study. Child and Adolescent Mental Health, 18, ₁₀₃-₁₀₈. doi:₁₀.₁₁₁₁/j.₁₄₇₅-₃₅₈₈.₂₀₁₂.₀₀₆₆₅.x 佐藤正二 佐藤容子 石川信一 佐藤寛 戸ヶ崎泰子 尾形明子 (₂₀₁₃) 学校でできる認知行動療法 子どもの抑うつ予防プログラム日本評論社 Sawyer, M. G., Harchak, T. F., Spence, S. H., Bond, L., Graetz, B., Kay, D.,... Sheffield, J. (₂₀₁₀). Schoolbased prevention of depression: A ₂-year follow-up of a randomized controlled trial of the beyondblue schools research initiative. Journal of Adolescent Health, 47, ₂₉₇-₃₀₄. doi:₁₀.₁₀₁₆/j.jadohealth.₂₀₁₀. ₀₂.₀₀₇ Spence, S. H., Sheffield, J. K., & Donovan, C. L. (₂₀₀₅). Long-term outcome of a school-based, universal approach to prevention of depression in adolescents. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 73, ₁₆₀- ₁₆₇. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₂₂-₀₀₆x.₇₃.₁.₁₆₀ Stice, E., Ragan, J., & Randall, P. (₂₀₀₄). Prospective relations between social support and depression: Differential direction of effects for parent and peer support? Journal of Abnomal Psychology, 113, ₁₅₅- ₁₅₉. doi:₁₀.₁₀₃₇/₀₀₂₁-₈₄₃x.₁₁₃.₁.₁₅₅ Stice, E., Rohde, P., Gau, J, M., & Wade, E. (₂₀₁₀). Efficacy trial of a brief cognitive-behavioral depression prevention program for high-risk adolescents: Effect at ₁- and ₂- year follow-up. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 78, ₈₅₆-₈₆₇. doi:₁₀.₁₀₃₇/ a₀₀₂₀₅₄₄ 高橋史 小関俊祐 (₂₀₁₁). 日本の子どもを対象とした学級単位の社会的スキル訓練の効果 メタ分析による展望行動療法研究, 37, ₁₈₃-₁₉₄. 髙橋高人 岡島義 シールズ久美 大藪由利枝 坂野雄二 (₂₀₁₄). 児童に対する抑うつ改善プログラムの効果 多様性のあるコーピングとリラクセーションの習得行動療法研究, 40, ₁₈₉-₂₀₀. United States Department of Health and Human Services (₁₉₉₉). Mental health: A report of the Surgeon General. United States Department of Health and Human Services, Substance Abuse and Mental Health Services Administration, Center for Mental Health Services, National Institute of Mental Health: Rockville, MD. VandenBos, G. R. (Ed.)(₂₀₀₇). APA dictionary of psychology. Washington, DC: American Psychological Association. Weitlauf, A. S., & Cole, D. A. (₂₀₁₂). Cognitive development masks support for attributional style models of depression in children and adolescents. Journal of Abnormal Child Psychology, 40, ₈₄₉-₈₆₂. doi:₁₀.₁₀₀₇/ s₁₀₈₀₂-₀₁₂-₉₆₁₇-₈ WHO (₁₉₉₈). Primary prevention of mental, neurological and psychosocial disorders. Geneva, Switzerland: World Health Organization. Wierzbicki, M., & McCabe, M. (₁₉₈₈). Social skills and subsequent depressive symptomatology in children. Journal of Clinical Child Psychology, 3, ₂₀₃-₂₀₈. doi: ₁₀.₁₂₀₇/s₁₅₃₇₄₄₂₄jccp₁₇₀₃_₂ (₂₀₁₆.₇.₆ 受稿,₂₀₁₇.₁₀.₂₅ 受理 )

94 教育心理学研究第 ₆₆ 第 ₁ Two-Year Follow-Up Study of Effects of a Cognitive Behavioral Depression-Prevention Program for Junior High School Students: Comparison With a Normative Sample TAKAHITO TAKAHASHI (FACULTY OF EDUCATION, UNIVERSITY OF MIYAZAKI), KOHEI MATSUBARA (FACULTY OF EDUCATION, SHINSHU UNIVERSITY), AKIYUKI NAKANO (ADACHI WARD, HIGASHI-IKO ELEMENTARY SCHOOL) AND SHOJI SATO (FACULTY OF EDUCATION, UNIVERSITY OF MIYAZAKI) JAPANESE JOURNAL OF EDUCATIONAL PSYCHOLOGY, 2018, 66, 81 94 The purpose of the present study was to examine effectiveness of a cognitive-behavioral program aimed at preventing junior high school students' depression, through a comparison involving a normative sample, and including 1- and 2-year follow-ups. The intervention group consisted of 51 seventh graders who participated in the cognitivebehavioral program. The normative sample consisted of 1,817 junior high school students who did not attend the program. The intervention was a cognitive behavioral program, offered in 6 group sessions. To assess the effects of the program, the Depression Self-Rating Scale for Children, the Social Skills Scale, and the Automatic Thoughts Inventory were completed by participants at pre-intervention, post-intervention, and at 2 follow-ups (1 year and 2 years later). The intervention group's pre-intervention depression levels were not significantly different from the seventh graders in the normative sample. However, their depression levels at the first follow-up (8th grade) were significantly lower than those of the normative sample. Additionally, positive messages and skillful rejections on the Social Skills Scale and positive factors (expectancy for the future and expectancy for support) on the Automatic Thoughts Inventory were higher at post-intervention and follow-up than they had been pre-intervention. These results suggest that the universal depression-prevention program provided to the intervention group in the present study may be an effective technique for use with junior high school students. Key Words: prevention of depression, cognitive behavioral intervention, long-term effectiveness, normative samples, junior high school students