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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.


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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repositor Title ヒト末梢血単核細胞移植マウスモデルを用いた抗 HIV-1 療 法の開発 Author(s) 服部, 真一朗 Citation Issue date 2013-03-25 Type URL Thesis or Dissertation http://hdl.handle.net/2298/28586 Right

学位論文 Doctor s Thesis ヒト末梢血単核細胞移植マウスモデルを用いた抗 HIV-1 療法の開発 (Human peripheral blood mononuclear cell-transplanted model mouse useful for development of a novel anti-hiv-1 therapy) 服部真一朗 Shinichiro Hattori 熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻 エイズ先端研究者育成コース 指導教員熊本大学大学院医学教育部博士課程エイズ学 Ⅲ 岡田誠治教授 2013 年 3 月

目次 1 要旨 4 2 発表論文 6 3 謝辞 7 4 略語一覧 8 5 研究の背景と目的 10 5-1) HIV-1 感染と抗 HIV-1 治療法の現状と問題点 10 5-2) HIV-1 治療薬開発における HIV-1 感染モデルマウスの必要性 10 5-3) HIV-1 感染モデルマウス開発の歴 11 5-4) 新規逆転写酵素阻害剤開発の重要性 12 5-5) 4 -ethynyl-2-fluoro-2 -deoxyadenosine(efda) の開発 13 5-6) NK 細胞の機能と特徴 14 5-7) HIV-1 感染と NK 細胞 15 6 実験方法 17 6-1) 抗 HIV-1 薬 17 6-2) Balb/c マウスにおける EFdA の薬物動態解析 17 6-3) ヒト末梢血単核球移植 NOD/SCID/Jak3 ノックアウト (NOJ)( hu-pbmc-noj) マウスの作製 18 6-4) ヒト NK 細胞誘導と NOJ マウスへの移植 18 6-5) HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスの EFdA を用いた治療 18 6-6) フローサイトメトリー解析 19 6-7) 血中 HIV-1 抗原量および HIV-1 RNA コピー数の定量 20 6-8) 統計学的解析 20 7 実験結果 21 7-1) HIV-1 感染 hupbmc-noj マウスにおける EFdA の抗 HIV-1 活性の検討 21 7-1-1) Balb/c マウスにおける EFdA の薬物動態 20 7-1-2) HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける CD4 + および CD8 + T 細に対する EFdA の影響 21 7-1-3) HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける EFdA の血漿 p24 抗原量およびウイルス RNA コピー数に対する抑制効果 23 7-1-4) HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける EFdA の p24 発現細胞抑制効果 23 2

7-2) ヒト NK 細胞高頻度増殖マウスモデルの構築 24 7-2-1) ヒト NK 細胞の NOJ マウスにおける増殖効率 24 7-2-2) K562 細胞刺激によるヒト CD4 + および CD8 + T 細胞への影響 24 8 考察 25 9 表および図 30 10 参考文献 41 3

1 要旨 複数の抗 HIV-1 薬を使用する抗ウイルス療法 ART(antiretroviral therapy) の導入により HIV-1 感染者の予後は飛躍的に改善され AIDS 発症遅延に多大な貢献をしている AIDS はコントロール可能な慢性疾患となった その一方で長期服用による薬剤耐性ウイルス株の出現や副作用などの深刻な問題もあり 新たな抗ウイルス薬や治療法の開発が求められている しかし これらの評価を行う上で HIV-1 はヒトとチンパンジーにのみ感染するため 霊長類を用いた基礎研究を行なうことは非常に困難である 本研究では ヒト末梢血単核球 (PBMC) 移植 NOD/SCID/Janus kinase-3 (Jak3) ノックアウト (NOJ) (hu-pbmc-noj) マウスモデルを用いて新規ウイルス薬評価を行なった 加えて自然免疫細胞である Natural killer(nk) 細胞は 細胞傷害活性やサイトカイン等の分泌により腫瘍細胞やウイルス感染細胞を排除する役割を担っている ヒト NK 細胞の研究は適した動物モデルが無いために 多くが in vitro 実験系に基づいて行なわれている 適切な動物モデルが存在しないという点が HIV-1 研究と同じである そこで本研究では NOJ マウスを用いてヒト NK 細胞の誘導を試み ヒト NK 細胞高頻度増殖 NOJ マウスモデルの構築を行なった はじめに 新規核酸系逆転写酵素阻害剤 ( NRTI ) として開発された 4 -ethynyl-2-fluoro-2 -deoxyadenosine (EFdA) の検討を行った まず NOJ マウスへ hu-pbmc を腹腔内へ移植し その 5 日後に R5 HIV-1 を腹腔内へ攻撃接種した 翌日から EFdA (10 µg/mouse: 0.5 mg/kg) を腹腔内へ 1 日 2 回投与による治療を 14 日間行い HIV-1 感染 15 日後にマウスの末梢血 腹腔細胞および脾臓細胞を回収し抗 HIV-1 効果を解析した PBS 投与マウス群では 脾臓細胞における CD4 + /CD8 + 細胞比は 未治療群 (0.04±0.14) に比べ 治療群で (0.65±0.24) 高値であり (P <0.001) HIV-1 未感染マウス群と同等のレベルが維持された さらに 未治療群の HIV-1 ウイルス量は 9.94 10 4 ±1.75 10 5 copies/ ml と高値であったが EFdA 投与マウス群では 9.02 10 2 ± 1.16 10 2 copies/ ml と顕著に抑制され (P <0.001) EFdA による治療で HIV-1 の複製が抑制されていることを確認した 本研究により HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウス系はヒトにおける HIV-1 感染 特に急性感染期の様相を呈していることが確認され 薬 4

剤評価モデルとしての有用性が示された さらに NOJ マウスを用いて K562 細胞で刺激したヒト PBMC を移植することにより 有意に多くのヒト NK 細胞の増殖が見られる ヒト NK 細胞高頻度増殖マウスモデルである hunk-noj マウスを構築した 一方で 未刺激のヒト PBMC を移植し た hupbmc-noj マウスに比べ CD4 + および CD8 + T 細胞数に有意な違いは認められ なかった これらは K562 刺激ヒト PBMC を移植することでヒト NK 細胞を選択的に誘導 増殖することを示している 本研究において ヒト PBMC 移植 NOJ マウスモデルが新たな HIV-1 感染モデルとして樹立され 本マウスモデルにおいて 新規 NRTI である EFdA の強力な抗 HIV-1 活性が示された 加えて hunk-noj マウスモデルは HIV-1 感染における生理的なヒト NK 細胞の機能を理解するだけでなく 他のウイルス感染症やがん研究に寄与するものである 本研究は ヒト PBMC 移植 NOJ マウスが HIV-1 感染における生理的環境を模倣することで抗 HIV-1 薬の前臨床試験モデル 免疫療法開発に供されることを示すとともに 他のウイルス感染症やがん研究にも寄与するものと期待される 5

2 発表論文 (1) 関連論文 1. Shinichiro Hattori, Kazuhiko Ide, Hirotomo Nakata, Hideki Harada, Shinya Suzu, Noriyuki Ashida, Satoru Kohgo, Hiroyuki Hayakawa, Hiroaki Mitsuya, and Seiji Okada. Potent Activity of a Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor, 4'-Ethynyl-2-Fluoro-2'-Deoxyadenosine, against Human Immunodeficiency Virus Type 1 Infection in a Model Using Human Peripheral Blood Mononuclear Cell-Transplanted NOD/SCID Janus Kinase 3 Knockout Mice. Antimicrob Agents Chemother. 2009; 53(9):3887-93. (2) その他の論文 1. Goto, H., Matsuda, K., Srikoon, P., Kariya, R., Hattori, S., Taura, M., Katano, H., and *Okada, S. Potent antitumor activity of zoledronic acid-induced Vγ9Vδ2 T cells against primary effusion lymphoma. Cancer Lett (in press) 2. Kudo, E., Taura, M., Matsuda, K., Shimamoto, M., Kariya, R., Goto, H., Hattori, S., Kimura, S., and *Okada, S. Inhibition of HIV-1 replication by a tricyclic coumarin GUT-70 in acutely and chronically infected cells. Bioorg Med Chem Lett 23(1):606-609, 2013 3. Michai, M., Goto, H., Hattori, S., Vaeteewoottacharn, K., Wongkham, C., Wongkham, S., and *Okada, S. Soluble CD30: a possible serum tumor marker for primary effusion lymphoma. Asian Pac J Cancer Prev 13(10):4939-4941, 2012 4. Ono, A., Hattori, S., Kariya, R., Iwanaga, S., Taura, M., Harada, H., Suzu, S., and *Okada, S. Comparative study of human hematopoietic cell engraftment into Balb/c and C57BL/6 strain of Rag-2/Jak3 double-deficient mice. J Biomed Biotechnol 2011;539748, 2011 6

3 謝辞 本研究の機会を賜り ご指導いただきました熊本大学エイズ学研究センターエイズ学 Ⅲ 岡田誠治教授に深謝いたします 実験手技 実験計画などについてご指導いただきました熊本大学大学院生命科学研究部感染免疫診療部 血液内科 満屋裕明教授 中田浩智先生 井手一彦先生 熊本大学エイズ学研究センターエイズ学 Ⅲ 原田英樹先生 同エイズ学 Ⅳ 鈴伸也准教授に深謝いたします HIV-1 JR-FL ウイルス株およびプラスミド HIV-1 JRFL を供与いただいた京都大学ウイルス研究所 小柳義夫教授に深謝いたします 実験補助をいただいた熊本大学エイズ学研究センターエイズ学 Ⅲ 鈴郁子技官 遠藤由佳技官 徳永京子技官に深謝いたします 7

4 略語一覧 ADCC:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity AIDS:acquired immunodeficiency syndrome APC:allophycocyanin AC7:allophycocyanin cyanin 7 (APC-Cy7) ART:antiretroviral therapy AZT:azido thymidine β2m:β2 microglobulin Cy7:cyanin 7 DMSO:dimethyl sulfoxide dntp:deoxynucleotide triphosphate EFdA:4 -ethynyl-2-fluoro-2 -deoxyadenosine FBS:fetal bovine serum FITC:fluorescein isothiocyanate FIV:feline immunodeficiency virus HIV-1:human immunodeficiency virus type 1 HPLC:high-performance liquid chromatography PBMC:peripheral blood mononuclear cells Jak3:janus kinase-3 LTNP:long-term non-progressor MHC:major histocompatibility complex NK:natural killer NOD:nonobese diabetic NOJ:NOD/SCID/Jak3 -/-, NOD/SCID/Jak3 ノックアウト NNRTI:non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor NRTI:nucleoside reveres transcriptase inhibitor PBS:phosphate buffered saline PE:phycoerythrin 8

PC7:phycoerythrin cyanin 7 (PE-Cy7) PI:protease inhibitor rhil-2:recombinant human interleukin-2 SCID:severe combined immunodeficiency SIV:simian immunodeficiency virus SPF:specific pathogen free TCID 50 :50 % tissue culture infectious doses TDRTI:translocation-defective reverse transcriptase inhibitor 9

5 背景と目的 5-1) HIV-1 感染と抗 HIV-1 治療の現状と問題点ヒト免疫不全ウイルス 1 型 (human immunodeficiency virus type 1, HIV-1) はヒトとチンパンジーなどの一部の霊長類にのみ感染する HIV-1 は CD4 + T 細胞を始めとした様々な免疫細胞へ感染 増殖を繰り返す事により 数年をかけて徐々に免疫を低下させ 最終的には後天性免疫不全症候群 (acquired immunodeficiency syndrome, AIDS) となり 種々の日和見感染症を発症し 死に至る 2011 年末現在 世界で 3,400 万人もの人々が HIV に感染しており (2) 新規感染者数は減少傾向にあるものの HIV-1 の発見から四半世紀以上が経過した現在でも根治に至る治療法は確立されていない 現在 HIV-1 のライフサイクルを標的とした複数の抗 HIV-1 薬を併用する抗ウイルス療法 (antiretroviral therapy, ART) が行なわれている ART により HIV-1 治療は長足の進歩を遂げ その結果 HIV 感染症の病態は大きく改善し 死亡者数も激減した (14, 44) AIDS は今やコントロール可能な慢性疾患と呼ばれるまでになった しかしながら ART を以てしても 血液中や感染組織に存在するウイルスリザーバーのために体内から HIV-1 を完全に排除する事は不可能であると考えられている (16) そのため治療は長期にならざるを得ず ART により一旦ウイルス量が検出感度以下になった症例で 再度持続的なウイルス血症が見られるようになる治療失敗症例 (treatment failure) は 30-60% にも及ぶと言われている (31) このような HIV-1 治療の限界は 薬剤耐性ウイルスの出現 長期服用に伴う様々な副作用の出現 煩雑な服用によるアドヒアランスの低下といった問題が大きく関与していると考えられる (18, 21, 34, 73) そのため 薬剤耐性ウイルス株にも強力な抑制活性を有し 副作用が全く無いか最小限に抑えられ 服用しやすい薬剤を開発する事が重要である 5-2) HIV-1 治療薬開発における HIV-1 感染モデルマウスの必要性 抗 HIV-1 薬やワクチンの開発では通常 細胞株や健常者末梢血単核球 (peripheral blood 10

mononuclear cells, PBMC) に HIV-1 を感染させたものを用いてその効果を in vitro にて検討し 次いで動物を用いた in vivo にて評価を行なう これらの前臨床評価を行う動物モデルとしては従来 マウス サル ネコに対して それぞれ HIV-1 simian immunodeficiency virus (SIV) feline immunodeficiency virus (FIV) あるいはそのキメラウイルスなどが用いられることが多かった これらの各種実験系には一長一短があるが SIV や FIV あるいはキメラウイルスなどを用いた系は それぞれウイルス自体に微妙な違いがあり HIV-1 に対する効果や現象と必ずしも一致しない可能性があるため HIV-1 に対する薬剤やワクチンの開発において適切とは言い難い そのため HIV-1 に対する薬剤やワクチンを評価するには HIV-1 を用いた動物モデルが適切と考える そのような動物モデルとしてはチンパンジーあるいはヒト胎児胸腺や肝臓 (Thy/ Liv) ヒト PBMC を移植したマウスの系などがあり (63, 67) 特にマウスモデルは安価で飼育 維持の簡便さに加え 遺伝子改変技術が確立されていることから HIV-1 研究以外にも 非常に多くの研究に利用されている その一方で従来のマウスモデルの問題点は Thy/ Liv などの貴重な組織を要すること 移植細胞の生着率が低いために多くのドナー PBMC を必要とすること さらに生着率の違いから個体間で結果のばらつきが見られるため一連の検査で大量のサンプルやマウスを必要とすることが挙げられる (39, 47) これらの問題点を改善するべく新たなマウスの開発や改良が行われている 5-3) HIV-1 感染モデルマウス開発の歴史 HIV-1 感染モデルマウスの開発は HIV-1 を感染させるためのヒト細胞を効率良く生着 増殖させるための免疫不全マウスの作製を重点に行なわれてきた このようなマウスとしては 1980 年代初頭に T B 細胞を欠失した突然変異体である CB17-scid(sever combined immunodeficiency SCID) マウスに対して Thy/ Liv を移植した SCID-hu マウスが最初となる (38, 53) 同様の系でヒト PBMC を移植したマウス (hu-pbl マウス ) でもヒト細胞の生着が確認されていた (46) その後 糖尿病モデルマウスである nonobese diabetic 11

(NOD)/ LtSz に scid 遺伝子を交配した NOD/LtSz-scid マウスが開発され ヒト細胞の生着率の向上が確認された (70) これらのマウスでヒト細胞の生着性が高い理由として マウスの補体活性の低下 マウス NK(natural killer) 細胞活性の低下など NOD マウス自体の免疫不全の関与が大きい事が考えられた つまりマウス本来の免疫を低下 欠失させることがヒト細胞の生着性を更に向上させると考えられた 事実 抗 NK 活性処理を行なうことがヒト細胞の生着率を上昇させることも明らかとなった そこで遺伝子改変により マウス NK 細胞あるいはその活性を完全に欠損させたマウスの作製が試みられるようになった NK 活性に関わる β2 microglobulin (β2m) 遺伝子を欠損した β2m ノックアウトマウスと NOD-scid マウスの交配マウス (8) NK 細胞を含むリンパ球の増殖に重要な IL-2 ファミリーサイトカインのレセプターである IL-2Rγ 鎖 (γc) を欠損したマウス (IL-2Rγc ノックアウトマウス ) と NOD-scid マウスの交配マウスや (NOD/SCID/γc ノックアウト NOG マウス ) (24) 本研究で用いた IL-2Rγc 鎖下流のシグナル分子である Janus kinase 3 (Jak3) 遺伝子を欠損したマウス (Jak3 ノックアウトマウス ) と NOD-scid マウスの交配マウス (NOD/SCID/Jak3 ノックアウトマウス, NOJ マウス )(58) などが相次いで開発されてきた これらの NK 活性あるいは NK 細胞そのものを欠損したマウスは 従来の抗 NK 活性処理をしたマウスに比べ 移植細胞の生着性が劇的に改善された (8, 24) これにより マウス個体間でばらつきが少なく高いヒト細胞の生着性が確保され 安定した HIV-1 感染モデルマウスの作製が可能となった このような T B 細胞および NK 細胞を欠損した免疫不全マウスは ヒト幹細胞研究やガン研究においても注目 利用されている 5-4) 新規逆転写酵素阻害剤開発の重要性現在の抗 HIV-1 薬のほとんどは ウイルスのライフサイクルを標的としている HIV-1 のRNA ゲノムは HIV-1 自身が持つ逆転写酵素によって相補的なプロウイルス DNA へと転写された後 核内へと移入し宿主 DNA に組み込まれる 逆転写酵素はウイルスに特有な酵素でヒトは有していないため これを標的とすることで副作用が少なく効果的なウイルス抑制効果が期待できると考えられ 逆転写酵素阻害剤が開発されてきた 逆転写酵素阻 12

害剤には2 種類あり核酸系逆転写酵素阻害剤 (nucleoside reverse transcriptase inhibitor, NRTI) と非核酸系逆転写酵素阻害剤 (non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor, NNRTI) に分けられる NRTI は DNA の基質である核酸 (nucleos(t)ide) のアナログであり これが逆転写時にプロウイルス DNA に取り込まれることで DNA 鎖の伸長が停止するため chain terminator とも呼ばれる NNRTI は逆転写酵素に結合することで酵素の化学構造を変化させて酵素の働きを失わせ その結果プロウイルス DNA の合成を阻害する NRTI である AZT(azido thymidine) が世界初の抗 HIV-1 薬であることからも (43) NRTI は非常に注目され 多くの薬剤が研究 開発された 現在の NRTI は基礎薬 ( バックボーンドラッグ ) として治療に用いられており 本邦では 2012 年 3 月現在で 7 種類が承認されている ( 表 1) (1) NRTI は 主要薬 ( キードラッグ ) と呼ばれる NNRTI やプロテアーゼ阻害剤 (protease inhibitor, PI) などと比べると 抗ウイルス活性は低いとされるが NRTI との併用で主要薬に対する耐性発現の遅延が示唆されるなど 抗ウイルス活性以外にも重要な役割があると考えられている (60, 65) しかしながら これら既存の NRTI はその基本骨格に 3 -OH 基を有しないという共通の特徴があり 同じ作用機序を有することから 多剤耐性もしくは交叉耐性変異が問題となっている そのため既存の NRTI 耐性ウイルス株に効果があり 異なる作用機序を有する新規 NRTI の開発が試みられている 5-5) 4 -ethynyl-2-fluoro-2 -deoxyadenosine (EFdA) の開発これまでの NRTI の構造的特徴は 3 -OH 基の不在であり このことが抗ウイルス活性に必要と考えられ そのような構造的特徴を有する薬剤の開発がなされてきた (42) しかしながら 3 -OH 基の不在は抗ウイルス活性を付与する一方で 活性型である三リン酸型への変換効率が低いために 本来の DNA の基質である dntp (deoxynucleotide triphosphate) よりも逆転写酵素への結合力が低くなるという 阻害剤にとって有害な特徴も付与している (17) そこで様々な置換基を 4 位に置き 3 -OH 基を付与したままの新規 NRTI 候補化合物が検討 開発された (28) これらは既存の NRTI に比べ優れた抗ウイルス活性を示すとと 13

もに 毒性も著しく低いものであった さらにこの 4 位置換型 NRTI は様々な既存 NRTI 耐性ウイルス株をも効果的に抑制した この 4 位置換型 NRTI のなかでもエチニル基置換型 (4 -ethynyl) のアデノシンアナログが最も強力な効果を示した しかし強力な抗 HIV-1 活性を示した一方で アデノシン脱アミノ酵素により分解されてしまうことがわかった (28) そのためアデニン環の 2 位にハロゲンであるフッ素を置換した第 2 世代の 4 -ethynyl 化合物である 4 -ethynyl-2-fluoro-2 deoxyadenosine(efda) が開発された (27) EFdA は既存 NRTI のみならずハロゲン非置換型 4 -ethynyl 化合物と比べても優れた効果を示し かつアデノシン脱アミノ酵素による分解も受けなかった 最近では EFdA はヒト DNA ポリメラーゼ α β γ を阻害しないことも確認された (55) EFdA が宿主因子への活性は示さずに HIV-1 逆転写酵素特異的に作用することから 副作用の非常に少ない化合物であると考えられる 本研究では EFdA の臨床応用を最終目標に HIV-1 感染 NOJ マウスモデルを用いた in vivo でのアッセイ系の確立と EFdA の抗 HIV-1 活性を検討した 5-6) NK 細胞の特徴と機能 Natural Killer(NK) 細胞は 自然免疫において中心的な役割を担い 抗原の感作無しに腫瘍細胞 ウイルス感染細胞等を排除するリンパ球である NK 細胞は標的細胞を直接認識して細胞傷害活性やサイトカイン産生を示すが その認識機構の1つに 非自己 の認識機構がある 現在 NK 細胞を同定する単一分子は無く CD3 - CD56 + リンパ球として研究が進められている NK 細胞は MHC クラス I 分子を認識する抑制性レセプターを介して MHC クラス I 分子を発現する細胞を 自己 と認識し 欠落あるいは発現低下している細胞では抑制性レセプターによる結合が低下し 非自己 と認識する (26, 74) 実際に いくつかのウイルス感染細胞や腫瘍細胞では MHC クラス I 分子の発現低下が見られる HIV 感染においては HIV Nef タンパク質が感染細胞の MHC クラス I 分子の発現低下を誘導することがすでに知られており NK 細胞の標的対象となり得る (15) 一方で 獲得免疫を担う T 細胞は 標的細胞に発現する MHC クラス I 分子と結合した病原体由来のペプチドとの複合体を特異的に認識し細胞傷害活性を示す つまり ウイルス感染細胞や腫瘍細胞における MHC クラス I 分子の発現制御は T 細胞による認識を逃れるためと考えられる 14

しかしながらその結果 これらの細胞は NK 細胞の抑制性レセプターに認識されないため NK 細胞による傷害を受ける 従って NK 細胞は 生体防御において重要な機能を担うと考えられている 実際に NK 細胞の機能不全患者では T B 細胞は正常であるにも関わらず 重篤なサイトメガロウイルス感染症や単純ヘルペス感染症に陥ることが知られている (5) 5-7) HIV-1 感染と NK 細胞 NK 細胞は 先に述べたように抗原非特異性だけでなく 抗体依存性細胞傷害活性 (Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity ADCC) も示す NK 細胞が発現する CD16 分子と抗体の Fc 部が結合することで NK 細胞の活性化を促進する 近年 ヒトが本来有している免疫システムを補助 増大することによる免疫療法が がん領域を中心に効果を挙げている 特に抗 CD20 抗体であるリツキサン ( 一般名リツキシマブ ) や 抗 HER2 抗体であるハーセプチン ( 一般名トラスツズマブ ) などの分子標的薬 抗体医薬品の登場により免疫療法への期待は非常に高まっており ADCC 活性が重要な抗腫瘍機序であることも報告されている (9) HIV 感染においても 抗 gp120 抗体の結合した HIV 感染細胞が NK 細胞に破壊される (75) 実際 HIV 特異的 ADCC 活性が高い感染者では 症状の進行が遅いという報告がある (4) これらを応用することで NK 細胞の ADCC を用いた感染細胞特異的な治療法の開発が期待されている HIV-1 感染におけるヒト NK 細胞に関する研究はそのほとんどが in vitro あるいは臨床検体を用いてなされている その最大の理由は 有用な動物モデルが無いためである 前述の通り 免疫不全マウスを用いた技術進歩は多くのヒト細胞の研究に貢献している 現在までに ヒト臍帯血単核球と Willms 腫瘍由来 HFWT 細胞の共移植により 選択的にヒト NK 細胞の増殖する NOD/SCID モデルマウスが報告されている (20) HIV 感染における NK 細胞の役割や動態は 様々な報告が有り不明瞭な部分が多い 特に 感染初期に関しては有用な実験系が少ないこともその一因となっている 本研究では NK 細胞を用いた免疫療法の開発を最終目標に 高度免疫不全を呈する NOJ マウスを使用して ヒト NK 細胞が高率に存在するヒト NK 細胞マウスモデルを樹 15

立した 本マウスモデルは 詳細な AIDS 病態解析や免疫療法などの新たな治療法の開発 に貢献できるものである 16

6 実験方法 6-1) 抗 HIV-1 薬 EFdA(Fig. 1) は ヤマサ醤油株式会社 ( 千葉 ) にて合成されたものを供与いただいた EFdA はこれまでの実験で 一連の 4 -E nucleoside アナログの中でも in vitro で特に強力な抗ウイルス活性が確認されていたので (27, 51, 56) 今回のマウスを用いた in vivo での抗 HIV-1 効果の評価に用いることとした EFdA は DMSO(dimethyl sulfoxide) で 1 g/ml になるように溶解したものをストック溶液 (-80 保存 ) とし PBS(phosphate buffered saline) にて希釈して使用した 6-2) Balb/c マウスにおける EFdA の薬物動態解析および亜急性毒性試験 Balb/c マウス (n=4) 腹腔内へ PBS で希釈された EFdA(20 mg/kg) を 1 回投与した後 4 時間まで経時的 (15 30 60 120 240 分 ) に採血を行い 血中濃度の測定を行なった 血液を遠心して得られた血漿 50 µl と 内部標準として用いた 50 µl の 10µg/ml 4 -ethynyl-2-chloro-2 -deoxyadenosine(10% MeOH 50 mm KH 2 PO 4 溶液 ) に 1 ml の 100% アセトニトリルを加えて混合し これを 10000 rpm 10 分で遠心した 回収した上清は遠心エバポレーターを用いて乾固させ 残渣を 100 µl の HPLC 溶出溶媒 (10% MeOH 50 mm KH 2 PO 4 ) で溶解した それをフィルター (0.45 µm ) 濾過後 HPLC システムで解析し 血中濃度を測定した カラム (XBridge Phenyl 5 µm, 4.6 250 mm Waters corp., Milford, MA) は 35 で使用し HPLC 溶出溶媒を流速 1ml/min で流した 溶出液は 262 nm の UV で測定した EFdA を 300 1000 3000 および 10000 µg/ml になるように PBS にて調整した 100 µl の各濃度の EFdA を Balb/c マウス腹腔へ 1 日 2 回 14 日間投与し (1 回あたり各 1.5 5 15 および 50 mg/kg 各群 n=10) マウスの生死および状態を観察した また投与直前から投与終了後 1 週間まで体重測定を行なった 17

6-3) ヒト PBMC の NOJ マウスへの移植 NOJ マウスは Jak3 ノックアウトマウスを NOD/ SCID マウスと 10 世代戻し交配することにより作製された (69) 実験には熊本大学生命資源研究 支援センター動物資源開発研究施設において specific pathogen free (SPF) 環境下で飼育された 16-20 週齢の NOJ マウスを用いた ヒト PBMC は血中抗 HIV-1 抗体陰性の健康な成人ドナーの血液から Ficoll 法により分離することで得られた 1 10 7 個の PBMC をPBS (0.1 ml) に再懸濁後 前日に 1.8 Gy 放射線照射された NOJ マウス腹腔内へ移植し (30, 52) ヒト PBMC 移植 NOJ(huPBMC-NOJ) マウスを作製した 本研究に用いた健常者血液検体は 熊本大学医学薬学研究部等倫理委員会の承認を得て 熊本大学医学や苦学研究部の定める指針に準じ インフォームドコンセントを得た後に収集および使用した すべての動物実験は熊本大学動物実験委員会の承認を得て 熊本大学動物実験等に関する規則に準じて行われた 6-4) ヒト NK 細胞誘導と NOJ マウスへの移植前述同様分離したヒト PBMC を 10 % fetal bovine serum (FBS) を含む RPMI1640 培地で再懸濁し 使用するまで氷上に保存した NK 細胞は マイトマイシン C(MMC)(80 µg/ml 37 C 5% CO2 1 時間 ) 処理による増殖不能にした K562 細胞 (MHC class I 欠損急性骨髄性白血病細胞株 ) と 100 U/ml rhil-2 存在下で 37 C 5 % CO2 インキュベーターにて 3 日間培養を行なった (19, 59) 細胞を回収し 前日に 1.0 Gy 放射線照射した NOJ マウス腹腔へ移植 (10 7 cells/mouse) した ( 図 8) 細胞移植 14 日後にマウス末梢血 腹腔 脾臓から細胞を回収し解析を行なった 6-5) hu-pbmc-noj マウスへの HIV-1 感染および EFdA を用いた治療 CCR5 指向性 HIV-1 JR-FL 株 (HIV-1 JRFL )(25000TCID 50, 50 % tissue culture infectious doses)( 10) を hu-pbmc 移植 5 日後にそれぞれのマウスの腹腔内へ接種した HIV-1 JRFL 18

は小柳義夫教授 ( 京都大学 ) より供与された HIV-1 接種翌日より治療群に 100 µl の PBS に懸濁した EFdA (10 µg/mouse; 0.5 mg/kg)(21 22) を 1 日 2 回ずつ 14 日間連続投与した HIV-1 未感染コントロール群および HIV-1 感染未治療群には 100 µl の PBS を治療群同様に 1 日 2 回 14 日間投与した (20) HIV-1 接種後 15 日目に マウス血液検体を眼窩採血法により回収し その後マウスを頸椎脱臼法により屠殺した マウス末梢血は 遠心により血漿と細胞に分離した後 細胞分画を赤血球溶血液 (155 mm NH 4 Cl, 10 mm KHCO 3, 0.1 mm EDTA) にて赤血球を溶血した 血漿は使用するまで-80 にて保存した 加えて PBS を用いて腹腔内を洗浄することで得られた腹腔内細胞懸濁液および脾臓より細胞を回収した 実験スケジュールを図 3 に示す 6-6) フローサイトメトリー法を用いた免疫学的解析 HIV-1 接種後 15 日目にそれぞれのマウスより回収した細胞における CD4 + T/CD8 + T 細胞比 CD4 + T 細胞数 CD8 + T 細胞数をフローサイトメトリーにて解析 算出した 細胞を PBS にて洗浄後 staining medium(2 % fetal bovine serum 0.5 % sodium azide in PBS) に ~2 x10 7 個 /ml になるように再懸濁し anti-mouse-cd45 (mcd45)- allophycocyanin cyanin 7 (APC-Cy7, AC7)(BD Pharmingen, San Diego, CA) anti-human-cd45 (hcd45)-pacific blue hcd4-apc(dako, Glostrup, Denmark) hcd3- phycoerythrin cyanin 7 (PE-Cy7, PC7) (e-bioscience, San Diego, CA)hCD8-FITC もしくは hcd8-ecd (Beckman Coulter, Fullerton, CA) mcd45-alexa Flour 700 (mcd45-af700) hcd4-ac7 hcd56-brilliant Violet 421 (BioLegend, San Diego, CA) hcd45-pacific Orange(Invitrogen, Camallio, CA) hcd8-ecd (Beckman Coulter, Brea, CA) を適当量添加した 氷上暗所にて 30 分静置した後 staining medium にて 2 回遠心 洗浄し 1 % パラホルムアルデヒド溶液を加え 室温暗所にて静置し細胞を固定した 20 分後 staining medium にて 2 回遠心 洗浄した 続いて 細胞内 HIV-1 p24 + 抗原の染色のためサポニン溶液 (0.1 % サポニン in staining medium) を加え氷上暗所にて細胞膜透過処理を行った 10 分後 anti-hiv-1 p24-pe(beckman Coulter, Fullerton, 19

CA) を加え氷上暗所にて静置した 30 分後 サポニン溶液にて洗浄 staining medium にて再度洗浄し LSR II フローサイトメーター (BD Bioscinece, San Jose, CA) にて解析した フローサイトメトリーデータは FlowJo(Tree Star, San Carlos, CA) ソフトウェアを用いて解析した 6-7) 血中 HIV-1 p24 抗原量および HIV-1 RNA コピー数の定量マウス血液検体を遠心分離により得られた血漿検体における HIV-1 p24 抗原量を RETRO-TEK HIV-1 p24 Antigen ELISA (Zepto Metrix corp., Buffalo, NY) を用いて 使用説明書に準じて測定した 加えてマウス血漿検体中の HIV-1 RNA コピー数は AMPRICOR HIV-1 monitor test kit version 1.5(Roche Diagnostics, Branchburg, NJ) を用いて使用説明書に準じて定量した 6-8) 統計学的解析ノンパラメトリック統計処理は Mann-Whitney s U test(statview, version 4.0, Abacus Concepts, Berkeley, CAあるいはJMP ソフトウェア, SAS Institute, Cary, NC) を用いて行った P 値は 0.05 以下を統計学的に有意差有りと決定した 20

7 実験結果 7-1) HIV-1 感染 hupbmc-noj マウスにおける EFdA の抗 HIV-1 活性評価 7-1-1) Balb/c マウスにおける EFdA の薬物動態本研究では 20 mg/kg の濃度の EFdA を腹腔内へ投与することにより EFdA の Balb/c マウスにおける薬物動態を検討した マウス血漿サンプルを EFdA 投与後 4 時間まで経時的に採取し HPLC を用いて EFdA の血中濃度を測定した 図 3-A に示すように EFdA の血中濃度は 腹腔投与後 15-30 分で最大となり その後速やかに減少した 投与直後の血中濃度にはおおきなばらつきがあるものの 薬物血中濃度時間曲線下面積 (area under the curve) は今回実験を行なった 4 匹のマウスで 4.18 2.44 6.10 および 7.23 mg/liter-h(mean ±SD=4.99±1.68 mg/liter-h) となり同等の結果が確認された 次いで 1.5 50 mg/kg の濃度の EFdA を 1 日 2 回 14 日間 Balb/c マウス腹腔へ投与し EFdA の亜急性毒性を検証した その結果 1.5 50 mg/kg の濃度範囲では死亡例は確認されなかった ( 表 2) しかし PBS を投与したコントロールマウス群と比べると 5 mg/kg 以上の EFdA 投与マウス群でわずかではあるが体重の減少を認めた ( 図 3-B, C) さらに 50 mg/kg を投与したマウス全 10 匹中数匹に毛羽立ちが見られた ただし 行動不能になるマウスや肉眼において主要な臓器への異常は見られなかった これらの結果は EFdA は高濃度であったとしても 急性 亜急性ともに副作用がほとんどないことを示唆している 7-1-2) HIV-1 感染 hupbmc-noj マウスにおける CD4 + および CD8 + T 細胞への EFdA の影響 HIV-1 接種後 15 日目に マウス血液検体 腹腔内洗浄液 脾臓より回収された各々の細胞を用いて CD4 + /CD8 + 細胞比をフローサイトメトリー解析により決定した ( 図 4) HIV-1 を接種した PBS 投与マウスの脾臓細胞における代表的なものでは CD4 + T 細胞はわ 21

ずかしかなく (7.0 %)( 図 4-A) 結果として CD4 + /CD8 + 細胞比の中央値は 0.04(range, 0.02 0.12)(n=14)( 図 4-B) と非常に低値となった しかしながら EFdA 投与が行われたマウス脾臓細胞では明瞭な CD4 + T 細胞の増殖が見られ (39.4 %) その結果 CD4 + /CD8 + 細胞比の中央値は 0.66(range, 0.31 1.12) となり 統計学的に有意に高かった (P < 0.001) これはHIV-1 未感染マウスの脾臓細胞で見られるCD4 + /CD8 + 細胞比の中央値 (0.79; range, 0.57 1.43) と同等であった 同様に 末梢血および腹腔内細胞における CD4+/CD8+ 細胞比の中央値は PBS 投与群 ( 各々 0.05; range, 0.01 0.32; n=8 および 0.02; range, 0.01 0.14; n=12) に比べ EFdA 投与群 ( 各々 0.61; range, 0.35 1.19; n=10 および 2.18; range, 0.92 4.45; n=10) で統計学的に有意に高かった ( 各々 p < 0.001 および p < 0.001) EFdA 投与群と未感染群に差異は認められなかった HIV-1 接種後 15 日目の脾臓における CD4 + および CD8 + T 細胞数を示す ( 図 5) PBS 投与マウス群での末梢血における CD4 + T 細胞数の中央値は 2.02 10 3 cells/ml(range, 8.70 10 2 2.91 10 4 cells/ml, n=9) であった一方 EFdA 投与マウス群は 5.37 10 4 cells/ml(range, 2.79 10 3 3.89 10 5 cells/ml, n=8) であり PBS 投与マウス群と比較して統計学的有意に高値であった (P < 0.001) これは HIV-1 未感染マウス群 ( 中央値 9.65 10 4 cells/ml; range, 5.02 10 3 4.70 10 5 cells/ml, n=7) と同等であることから EFdA の治療により CD4 + T 細胞が高いレベルで維持されていることが示された ( 図 5 上段左列 ) 脾臓および腹腔内( 図 5 中段および下段左列 ) においても PBS 投与マウス群 (9.31 10 3 ±5.31 10 4 cells, n=14 および 6.99 10 2 ±1.72 10 3 cells, n=12) と比べて EFdA 投与群 (3.17 10 5 ±2.17 10 5 cells, n=12 および 8.66 10 4 ±2.12 10 5 cells, n=12) で統計学的に有意に高値であった (p < 0.001 および p < 0.001) 一方で 末梢血における CD8 + T 細胞数は PBS 投与群 ( 6.67 10 4 ±4.42 10 4 cells/ml, n=9) EFdA 投与群 ( 1.46 10 5 ±2.32 10 5 cells/ml, n=8) および HIV-1 未感染群 (1.39 10 5 ±3.94 10 5 cells/ml, n=7) に有意差は見られなかった ( 図 5 上段右列 ) マウス脾臓および腹腔内の各細胞においても同様の結果が得られた( 図 5 中段および下段右列 ) これらは EFdA が HIV-1 感染による細胞死から CD4 + T 細胞を防御していることを示している 22

7-1-3) HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける血漿中 HIV-1 p24 抗原量および HIV-1 RNA コピー数の EFdA による抑制効果 HIV-1 接種 15 日後の hu-pbmc-noj マウス血液から得られた血漿中における HIV-1 p24 抗原量を測定した PBS 投与マウス群では 1.88 10 3 pg/ml( 中央値 )(range, 8.25 10 2 5.62 10 3 pg/ml, n=14) と高値を示したが EFdA 投与マウス群では 2.09 10 2 pg/ml(range, 8.25 10 1 6.34 10 2 pg/ml, n=12) であり 統計学的に有意に低値を示した (P<0.001)( 図 6-A) 次に 我々は血漿中の HIV-1 RNA コピー数を定量した PBS 投与マウス群における血漿中 HIV-1 RNA コピー数の中央値は 9.94 10 4 copies/ml(range, 1.31 10 4 5.42 10 5 copies/ml, n=11) と非常に高値であったのに対して EFdA 投与マウス群では 9.02 10 2 copies/ml(range, 8.13 10 2 1.12 10 3 copies/ml, n=10) であり 有意に抑制されていることが確認された (P<0.001)( 図 6-B) 7-1-4) HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける細胞内 HIV-1 p24 抗原レベルの EFdA による抑制効果 HIV-1 接種後 15 日目における HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスの脾臓細胞内 HIV-1 p24 抗原陽性細胞の割合を フローサイトメトリーを用いて解析した PBS 投与マウス群では細胞内 HIV-1 p24 抗原陽性細胞の割合は中央値で 1.90%(range, 0.33 3.68%, n=7) であった 一方で EFdA 投与マウス群では 0.11%(range, 0.00 1.00%, n=8) であり PBS 投与マウス群と比較して統計学的に有意に低値であった (P<0.01)( 図 7) マウス末梢血および腹腔内の各細胞においても PBS 投与マウス群 ( 各々 0.41±0.57%, n=7 および 2.42± 1.33, n=7) に比べ EFdA 投与マウス群 ( 各々 0.01±0.05%, n=8 および 0.31±0.21, n=8) で有意に低値であった また 本実験期間においては EFdA 投与による明らかな副作用は確認されなかった 23

7-2) ヒト NK 細胞増殖マウスモデルの構築 7-2-1) ヒト NK 細胞の NOJ マウスにおける増殖効率 K562 細胞で刺激したヒト PBMC を移植することによりヒト NK 細胞が高率に増殖するマウスモデルシステムを構築した 移植後 14 日目において K562 細胞で刺激したヒト PBMC を移植した NOJ(huNK-NOJ) マウスと未刺激のヒト PBMC を移植した NOJ (hupbmc-noj) マウスを比較して ヒト CD3 - CD56 + NK 細胞はそれぞれ マウス末梢血 (peripheral blood PB)( 2.58 10 5 ± 1.24 10 6 cells/ml 1.13 10 4 ± 6.12 10 4 cells/ml)( P=0.01554) 腹腔内 (peritoneal cavity PC)( 3.58 10 6 ± 3.80 10 6 cells/pc 6.62 10 5 ± 4.63 10 5 cells/pc) (P=0.04009) および脾臓 ( spleen SP)(1.23 10 6 ± 3.10 10 6 cells/sp 2.36 10 5 ± 1.28 10 5 cells/sp) (P=0.01243) にて有意に増加した ( 図 9) これは 我々が以前に報告した NOD/SCID モデルマウスと比較しても NOJ マウスではより多くのヒト NK 細胞が増殖していた (20) 7-2-2) K562 細胞刺激によるヒト CD4 + および CD8 + T 細胞への影響 K562 細胞のヒト CD4 + および CD8 + T 細胞の NOJ マウスにおける生着と増殖に与える影響を検討した CD4 + T 細胞数は hunk-noj マウスと hupbmc-noj マウスを比較して PB(5.30 10 4 ± 4.12 10 4 cells/ml 2.19 10 4 ± 7.75 10 4 cells/ml) PC(2.95 10 5 ± 7.68 10 4 cells/pc 2.62 10 5 ± 6.38 10 5 cells/pc) および SP(6.08 10 5 ± 4.23 10 5 cells/sp 4.65 10 5 ± 2.36 10 5 cells/sp) であり 統計学的有意差は得られなかった ( 図 10-A) 同様に CD8 + T 細胞数においても PB(1.03 10 5 ± 1.38 10 5 cells/ml 5.25 10 4 ± 3.16 10 5 cells/ml) PC(3.31 10 5 ± 1.60 10 5 cells/pc 5.50 10 5 ± 4.11 10 5 cells/pc) SP(1.19 10 6 ± 7.60 10 5 cells/sp 1.06 10 6 ± 5.21 10 5 cells/sp) すべてにおいて hunk-noj マウスと hupbmc-noj マウスに違いは認められなかった ( 図 10-B) このことは K562 細胞による PBMC への刺激は NOJ マウスにおいて 選択的かつ効率的にヒト NK 細胞を増殖し ヒト CD4 + および CD8 + T 細胞の増殖には影響しないことを示している 24

8 考察 今回用いた hu-pbmc-noj マウスモデルでは CCR5 指向性である HIV-1(R5 HIV-1) の感染は全てのマウスで成立し 感染後 15 日目でマウス末梢血中のヒト CD4 + /CD8 + 細胞比は 0.1 以下に低下し ( 図 4) p24 抗原量も 5.6 10 3 pg/ml に達していた ( 図 6-A) 加えて本実験では HIV-1 RNA 量が 10 5 copies/ml にまで達しており 高いウイルス血症を認めた ( 図 6-B) 本モデルマウスで認められたウイルス血症のレベルは ヒトの HIV-1 感染急性期もしくは AIDS 期で見られるものと同程度であった (11, 12) このような R5 HIV-1 の高い感染性 複製能は 移植した PBMC が マウス体内にて激しく活性化したことによりもたらされていると考えられる 実際 NOG マウスを用いた同様の実験系では 異種環境下で PBMC が強く活性化され HLA-DR の高発現し 急速に細胞増殖し また活性化に伴い CCR5 も高発現することが報告されている (52) 移植した PBMC に見られる速い細胞増殖や CCR5 の高発現が hu-pbmc-noj マウスでの R5 HIV-1 の高い複製能とウイルス血症を呈する理由と考えられる Hu-PBMC-SCID マウスとして知られる ヒト PBMC を移植した SCID マウスは HIV-1 感染の病態解析に用いられている動物モデルであった (37, 45, 47) しかし SCID マウスでの PBMC の生着率は実験手技 実験環境 移植試料およびマウス個体によってかなり変動する (50) その後登場したマウス NK 活性が減弱した NOD/SCID マウスでは SCID マウスに比べ PBMC の生着率は著しく増加する (22, 30) 最近では マウス NK 細胞を欠失し ヒト造血幹細胞同様に PBMC の生着も飛躍的に改善されたNOG マウス (23, 24, 76) Balb/c Rag2 /- γc -/- マウス (72) NOJ マウス (58) が相次いで樹立され より安定した詳細な研究が可能となってきた (33, 52, 69) 特に hu-pbmc-nog マウスでは HIV-1 感染への感受性やウイルス複製能が高いことから 多くの研究に利用されている しかし従来の研究では R5 HIV-1 は ヒト PBMC 移植後すぐでは十分な感染を示さないという理由で 移植 2 週後に HIV-1 の接種が行なわれている (13, 52, 64) 我々は PBMC 移植から HIV-1 接種までの期間を最適化することで より短期間での実験を可能とした ( 図 2) 本モデルマウスは細胞移植から5 日間と従来の 3 分の 1 の期間で HIV-1 接種を行な 25

った 血中ウイルス RNA 量は従来の方法と比べ若干低いものの薬剤評価をするに十分であり ヒト細胞の生着率や細胞数に違いは見られなかった 異種移植によるマウスに与える負担を軽減することで マウスのコンディションを良好に維持することができ 安定した結果が得られるものと考える 本研究で用いた hu-pbmc-noj マウスモデルは これまでの研究 (22, 30, 52, 64) よりも比較的少量の PBMC を用い 短期間で十分な HIV-1 感染 複製が見られることから HIV-1 感染病理や前臨床での抗ウイルス薬の研究 評価に有用なモデルとして供される これまでに第一世代として多くの 4 -ethynyl (4 -E)-nucleoside アナログが合成され in vitro において実験室株および臨床株の広範囲な HIV-1 の複製を強力に抑制する抗 HIV-1 化合物が同定された (28) しかしこれらは 強力な抗ウイルス活性を示すが アデノシン脱アミノ酵素により分解されてしまうことが示された (57) その後 アデニン環 2 位にハロゲンを置換することで アデノシン脱アミノ酵素の影響を受けない第二世代のハロゲン化 4 -E-2 -nucleoside アナログが合成され これらの中でも最も強力な抗ウイルス活性を呈する化合物として EFdA が同定された (27, 54) EFdA は in vitro において多剤耐性株を含む HIV-1 株に対して EC 50 で subnanomolar という強力な抗 HIV-1 活性を有するが 細胞毒性は極めて低い (CC 50 >10 µm)(51, 54) 本研究では Balb/c マウスにおいて 20 mg/kg の EFdA を腹腔内への一回投与による血中消失時間を測定したところ 投与後 30 分で最大濃度となり 半減期は約 1 時間であった ( 図 2 A) しかし EFdA は細胞内安定性が高く 活性型である EFdA 三リン酸の半減期は約 18 時間であり 既存の NRTI である AZT の 3 時間と比べてはるかに長い (51, 56) さらに in vitro 実験系にて EFdA を細胞に前処理した後 EFdA を培地から完全に除去し その後 HIV-1 を暴露すると EFdAが培地中に無い状態でもEFdA の HIV-1 に対する阻害効果は長時間持続する (51) EFdA は 血中消失時間は早いものの 細胞内に安定な状態で長時間残存することで 十分な抗 HIV-1 効果をもたらしていると示唆される EFdA はユニークな抗 HIV-1 機能と特性を示し逆転写酵素阻害剤として作用するが 宿主細胞性 DNA ポリメラーゼの働きは阻害しない (51, 55) Balb/c マウスへの亜急性毒性試験において 50 mg/kg の EFdA を 1 日 2 回 14 日間投与しても 死亡例や肉眼によ 26

る臓器異常は認められず わずかな毛羽立ちや体重減少が見られたのみだった 本研究において抗 HIV-1 効果の評価に用いた濃度 (0.5 mg/kg) の 100 倍濃度を投与しても 副作用をほとんど示さないことから EFdA は安全域の広い薬剤であると考えられる これは in vitro 実験系において報告されていることに一致する (51) 既存の NRTI の特徴は 3 -OH を欠如することで それ以上のプロウイルス DNA の合成を阻害することにある (42) 一方 EFdA は エチニル基を付与することで 逆転写酵素の活性中心の移行を阻害する (translocation-defective reverse transcriptase inhibitor, TDRTI) 機能により それ以上の DNA 合成を阻害する (40, 41) 最近 SIV 感染サルモデルにおいても EFdA は 副作用無しに強力なウイルス抑制効果を示すという報告がなされた (49) ことからも EFdA は既存 NRTI とは異なる独自の機序を有し 高い抗 HIV-1 活性を示し 副作用がほとんどないという点で有効性と安全性に優れた薬剤であると言える 臨床で ART が奏功した場合 HIV-1 ウイルス量は数週間のうちに減少し 最終的には検出感度以下となる 本実験では EFdA を投与したマウスにおけるウイルス量は 未治療のものに比べかなりの減少を示していたが 依然として全てのマウスで検出可能なレベルであった ( 図 6-B) これは 一つは本研究では EFdA の単剤治療であったこと 二つ目に前述のようにマウス体内ではヒト PBMC は激しく活性化され 増殖も亢進していたため ウイルス複製が盛んになっている可能性があることが 完全なウイルス血症の抑制に至らなかった原因に挙げられる しかし EFdA 治療群の CD4 + 細胞数は未治療群より有意に多く 未感染群と同等であったこと ( 図 5) 細胞内 p24 + 細胞も未治療群に比べ極めて少ないことから ( 図 7) ごく一部の細胞で激しいウイルスの増殖を示し 大多数の CD4 + 細胞は HIV-1 に感染していないと考えられる EFdA による治療を受けた HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスは高レベルの CD4 + リンパ球を維持し 血漿中 p24 抗原量や HIV-1 RNA 量を抑制し p24 + 感染細胞を減少し 実験期間中は重篤な副作用を認めなかった EFdA は強力かつ安全な抗 HIV-1 治療薬であることが示され 今後の臨床開発に期待される 加えて EFdA が強力なウイルス増殖抑制効果を示せたことは hu-pbmc-noj マウスを用いたエイズモデルが HIV-1 の感染病理や抗ウ 27

イルス薬の前臨床評価に有用なモデルであることを示すものである さらに本研究では NOJ マウスを用いて K562 刺激したヒト PBMC の移植により マウス体内にてヒト NK 細胞が選択的かつ高率に増殖する hunk-noj モデルマウスシステムを構築した ( 図 8) NOJ マウスはマウス T 細胞 B 細胞だけでなく NK 細胞も完全に欠落しているため NOD/SCID マウスと比べてヒト細胞の生着率が向上し よりヒト細胞の研究に適したものである (58) 加えて NOJ マウスにおいて K562 細胞による刺激は CD4 + および CD8 + T 細胞の増殖を促進も抑制もしないことから ヒト NK 細胞が選択的にマウス体内にて増殖することが確認された T 細胞の生着性が HIV-1 感染モデルマウスとして樹立されている hupbmc-noj マウスと同等であることから hunk-noj マウスにおいても HIV-1 感染が可能であると考えられる 本研究で樹立したシステムは他の免疫不全マウスでも利用可能であると考え より広範な研究への応用が期待される HIV 感染者では NK 細胞の機能不全を認め (61, 62) 病期の進行に伴い NK 活性が減衰することが報告されている (3, 6, 7) 現在 ART の奏功により ウイルス血症の減少 日和見感染症による死亡率が激減し AIDS はコントロール可能な慢性疾患となった HIV の高ウイルス血症は NK 細胞の機能異常を誘導するため (29, 32, 35, 36, 71) ART によるウイルス血症の抑制は NK 細胞の機能を回復し HIV の抑制ばかりでなく日和見感染症や悪性腫瘍に対する防御にも働き AIDS 発症遅延や死亡率減少に寄与していると考えられる また HIV 感染長期未発症者 (Long-term non-progressor, LTNP) では末梢血中 NK 細胞数が高い傾向がある (45) さらに HIV に対して感染高リスクにありながら感染を免れている人たちでは NK 細胞の細胞傷害能が強く ケモカインやサイトカインの産生能も高いことが報告されている (66) NK 細胞の維持には IL-2 や IL-15 などのサイトカインが重要であることが in vitro (48, 68) in vivo (10, 25) の両方の研究で言われている NK 細胞の維持 増殖に関与する IL-2 や IL-15 などを補うことで より強力な HIV-1 抑制効果を発揮すると考えられる これらは NK 細胞が AIDS 発症抑制ばかりでなく感染予防にも寄与する可能性を示唆している NK 細胞は抗原非特異的に作用するだけでなく 抗体依存性細胞傷害活性 (antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity, ADCC) による抗原特異的抗体を介し HIV 感染細胞を排除することができる (4, 75) さらにがん研究において ADCC は リツキサンやハーセプチンなどの抗体医薬品の登場により最も重要な抗腫瘍機能であることが報 28

告されている (9) これは抗体を併用することで NK 細胞の ADCC による感染細胞特異的かつ強力な治療も可能であることを示している NK 細胞は T 細胞や B 細胞に比べて 不明な点が多くあるが 活性 抑制性受容体に関する新たな知見や樹状細胞との相互作用等の研究により 活性化調節機構や自然免疫と獲得免疫を橋渡しするなどの免疫系における重要性が明らかとなってきた 加えて HIV 感染においては CD4 + T 細胞数だけでは進行期の判断が難しい場合も NK 細胞数を考慮することで進行期の判別が容易になる可能性も報告されている NK 細胞の活性をより体内で高めることは 感染者体内から HIV を完全に排除するには至らないまでも AIDS の進行を遅らせ 関連する日和見感染症や悪性腫瘍の予防や治療につながり QOL(quality of life) を高く保つことができると考える 本研究では EFdA の強力な抗 HIV-1 活性が hupbmc-noj マウスを用いた in vivo 系にて示された 独自の作用機序を有する EFdA は既存の薬剤耐性 HIV-1 にも強力に作用すると期待されており 今回の結果は臨床開発に更に歩みを進めるものと考える 加えて本研究において NOJ マウス体内にてヒト NK 細胞が選択的に増殖する hunk-noj マウスモデルが樹立された 本マウスモデルは HIV-1 感染初期の NK 細胞の動態や機能解析に適するモデルと考えられる さらに NK 細胞には免疫細胞として抗 HIV-1 活性も期待されることから hunk-noj マウスモデルは 免疫療法の評価モデルとしても期待される ヒト PBMC 移植 NOJ モデルマウスは HIV-1 感染下での薬剤評価や 免疫細胞の機能解析にと 広く応用可能なモデルマウスである ヒト細胞移植 NOJ マウスは HIV/AIDS 研究のみならず 腫瘍に対する治療法の開発やその評価モデルとしても期待でき より詳細かつ広範囲な研究に寄与し 医学の発展に貢献するものである 29

9 表および図 表 1. 本邦で認可されている核酸系逆転写酵素阻害剤 商品名 一般名 略称 Emtriva emtricitabine FTC Epivir lamivudine 3TC Retrovir zidovudine/ azidothymidine ZDV/ AZT Videx didanosine, dideoxyinosine ddi Viread tenofovir disoproxil fumarate TDF Zerit stavudine d4t Ziagen abacavir sulfate ABC 表 2. EFdA 投与による Balb/c マウス生存率 EFdA (mg/kg) Survivor/Total PBS 10/10 1.5 10/10 5 10/10 15 10/10 50 10/10 Balb/c マウスへ EFdA(1.5, 5, 15, 50 mg/kg) を 1 日 2 回 14 日間投与 30

図 1. 4 -ethynyl-2-fluoro-2 -deoxyadenosine(efda) の構造式 31

図 2. EFdA の薬物動態と亜急性毒性 (A)Balb/c マウスにおける EFdA の薬物動態. マウス (n=4) に 20 mg/kg の EFdA を腹腔内へ投与後 15 30 60 120 および 240 分後に採血した 血漿中の EFdA の濃度は投与後 30 分まで上昇し その後速やかに減少した (B C)Balb/c マウスにおける EFdA の亜急性毒性. マウスに PBS( ) および 1.5( ) 5( ) 15( ) 50 ( ) mg/kg( 各 n=10) の EFdA を 1 日 2 回 14 日間 腹腔内に投与した EFdA の濃度依存的に体重の減少が見られたが 投与終了後 7 日目までに全てのマウスで元の体重まで回復した 図中の矢印は EFdA 投与終了日を示す 32

図 3. hu-pbmc-noj マウスを用いた EFdA の抗 HIV-1 活性評価プロトコル 33

図 4. HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける CD4 + /CD8 + T 細胞比に対する EFdA の効果 (A)HIV-1 接種後 15 日目に回収した脾臓細胞のフローサイトメトリー解析による CD4 + CD8 + T 細胞の代表的なプロファイルを示す PBS 投与群では CD4 + T 細胞は 7.0% のみである一方 EFdA 投与群の CD4 + T 細胞は 39.4% を示し未感染群と同等であり 明瞭な細胞の増加が認められた (B) 脾臓 ( 中のパネル ) における脾臓における CD4 + T および CD8 + T 細胞比 (CD4/CD8) は PBS 投与群において 0.08 と非常に低値となったが EFdA 投与群では 0.85 であり未感染群 (0.93) と同等であった 末梢血と腹腔内細胞 ( 左と右のパネル ) においても同様の結果が得られた N.S., not significant 34

図 5. HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける CD4 + および CD8 + T 細胞への EFdA の影響 HIV-1 感染 15 日後の末梢血 脾臓 腹腔内における CD4 + および CD8 + T 細胞数への EFdA の影響 末梢血において未治療群 (n=9) の CD4+T 細胞数は 2.02 10 3 ±10.5 10 4 cells/ml (median±sd) であった一方 EFdA 投与群 (n=8) では 5.37 10 4 ±1.28 10 5 cells/ml であった (P < 0.001) HIV-1 未感染群は (n=7)9.65 10 4 ±1.60 10 5 cells/ml であった 未治療群の CD8 + T 細胞数は未治療群 EFdA 投与群と未感染群の各々で 6.67 10 4 ±4.24 10 4 cells/ml 1.49 10 5 ±2.32 10 5 cells/ml と 1.39 10 5 ±3.94 10 5 cells/ml であり各群の間に統計学的有意差は無かった 脾臓 腹腔内においても同様の結果が得られた N.S., not significant 35

図 6. HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける EFdA の血漿中 HIV-1 p24 抗原量およびウイルス RNA コピー数抑制効果 (A)HIV-1 接種 15 日後の血漿中 HIV-1 p24 抗原量 血中 p24 は未治療群 (n=14) の 1.88 10 3 ±1.56 10 3 pg/ml(median±sd) に比べ EFdA 投与群 (n=12) では 2.09 10 2 ±1.96 10 2 pg/ml であり有意に低値であった (P < 0.001) (B)HIV-1 接種 15 日後の血漿中 HIV-1 RNA 量 未治療群 (n=11) の 9.94 10 4 ±1.75 10 5 copies/ml に比べ EFdA 投与群 (n=10) では 9.02 10 2 ±1.16 10 2 copies/ml であり EFdA 投与群で統計学的有意に抑制された (P < 0.001) 36

図 7. HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウスにおける細胞内 HIV-1 p24 産生の EFdA による抑制効果 (A)HIV-1 感染 hu-pbmc-noj マウス脾臓における ヒト CD3 + CD8 - サブセット中の細胞内 HIV-1 p24 + 細胞の典型的なフローサイトメトリーデータ (B) マウス脾臓 末梢血および腹腔内の細胞における細胞内 p24 + 細胞の割合 いずれの組織の細胞においても未治療群と比較して EFdA 投与群で p24 + 細胞の割合は統計学的に有意に低値であった 37

図 8. ヒト NK 細胞高頻度生着マウス作製スケジュール 38

図 9. NOJ マウスへの K562 刺激ヒト PBMC 移植による NK 細胞の増殖誘導効果細胞移植 14 日後の マウス末梢血 腹腔 脾臓におけるヒト CD3 - CD56 + NK 細胞とヒト CD3 + T 細胞のフローサイトメトリー解析 (A) マウス末梢血において K562 刺激ヒト PBMC を移植した hunk-noj マウスで 未刺激ヒト PBMC を移植した hupbmc-noj マウスと比べてヒト NK 細胞頻度は高く ( 各々 90.3% と 6.35%) 腹腔と脾臓においても同様の結果であった ヒト CD3 - CD56 + NK 細胞数は hupbmc-noj マウス (n=8) と hunk-noj マウス (n=10) を比較して 末梢血 (1.13 10 4 ± 6.12 10 4 cells/ml と 2.58 10 5 ± 1.24 10 6 cells/ml; median±sd) で有意に増加していた (P < 0.05) 腹腔 脾臓においても同様の結果であった グラフ中の横棒は中央値を示す 39

図 10. K562 刺激の有無によるヒト T 細胞増殖への影響細胞移植 14 日後のマウス末梢血 腹腔 脾臓における ヒト CD4 + および CD8 + T 細胞数を測定 マウス末梢血において hupbmc-noj マウス (n=8) と hunk-noj マウス (n=10) を比較して CD4+ T 細胞数 (A) および CD8+ T 細胞数 (B) に違いは見られない 腹腔と脾臓においても同様の結果であった グラフ中の横棒は中央値を示す N. S., not significant. 40

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