事例に基づく耐震性能の評価と被災度区分判定および復旧計画

Similar documents
<4D F736F F F696E74202D208C9A927A94C782518E9F8A8893AE95F18D E EF8B AD955C A2E707074>

AP 工法 による増設壁補強計算例 (1) 設計フロー RC 耐震改修設計指針に示された 中低層鉄筋コンクリート造建物を対象とした開口付き増設壁に AP 工法 を用いて強度抵抗型補強とする場合の補強壁 ( せん断壁 ) の設計フローを示す 周辺架構から補強壁に期待できる耐力の目安をつけ プロポーショ

コンクリート実験演習 レポート

PowerPoint プレゼンテーション

Taro-2012RC課題.jtd

構造番号質疑回答 3 講習会資料 P5 判定事例の対応集 横補剛材について屋根ブレース等により水平移動が拘束された大梁に対して 例えば図 1 のよう下図 a 又は b 又は a b 材共に ( 梁に ) 対する横補剛材として c の火打ち材をに大梁せいの中心位置に横補剛材を設け 補剛材

参考資料 -1 補強リングの強度計算 1) 強度計算式 (2 点支持 ) * 参考文献土木学会昭和 56 年構造力学公式集 (p410) Mo = wr1 2 (1/2+cosψ+ψsinψ-πsinψ+sin 2 ψ) No = wr1 (sin 2 ψ-1/2) Ra = πr1w Rb = π

技術基準改訂による付着検討・付着割裂破壊検討の取り扱いについてわかりやすく解説

コンクリート工学年次論文集 Vol.30

PowerPoint プレゼンテーション

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D CC82E898678E77906A E DD8C7697E181698F4390B3816A312E646F63>

国土技術政策総合研究所資料

2-3. 設計段階の検討事項設計では本建物の条件として, 特に以下に着目した 1 兵庫県南部地震により杭への被災が想定される 2 建物外周地下に液状化対策として地盤改良が行われている 以上の条件で, 免震改修工法の検討を行うにあたり, 比較検証を基本設計で行った. 比較案は, 基礎下免震型 2 案,

を 0.1% から 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% まで増大する正負交番繰り返し それぞれ 3 回の加力サイクルとした 加力図および加力サイクルは図に示すとおりである その荷重 - 変位曲線結果を図 4a から 4c に示す R6-1,2,3 は歪度が 1.0% までは安定した履歴を示した

鉄筋コンクリート構造配筋標準図 (1) S-02

Microsoft Word - 技術資料Vol.2.docx

1

要 約 本件建物は 構造上の安全性に問題がある 前回裁判で提出されている本件の問題点に加え 現地調査書 (( 株 ) 日本建築検査研究所岩山氏作成 ) 施工図及び竣工図をもとに再検討を行なった その結果下記に示すように建物の安全性を損なう重要な問題点が発覚した 発覚した問題点を反映し構造の再計算を行

水平打ち継ぎを行った RC 梁の実験 近畿大学建築学部建築学科鉄筋コンクリート第 2 研究室 福田幹夫 1. はじめに鉄筋コンクリート ( 以下 RC) 造建物のコンクリート打設施工においては 打ち継ぎを行うことが避けられない 特に 地下階の施工においては 山留め のために 腹起し や 切ばり があ

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

コンクリート工学年次論文集 Vol.32

コンクリート工学年次論文集 Vol.29

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~ 構造研究グループ荒木康弘 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 2)~ 構造設計法の開発 ~

道路橋の耐震設計における鉄筋コンクリート橋脚の水平力 - 水平変位関係の計算例 (H24 版対応 ) ( 社 ) 日本道路協会 橋梁委員会 耐震設計小委員会 平成 24 年 5 月

第 14 章柱同寸筋かいの接合方法と壁倍率に関する検討 510

Microsoft Word - (23)久保田淳.doc

公開小委員会 鉄筋コンクリート構造計算規準の改定案

<4D F736F F D C082CC8BC882B08B7982D182B982F192668E8E8CB12E646F63>

付着割裂破壊の検討の概要と取り扱いの注意点

コンクリート工学年次論文集 Vol.30

Microsoft Word - 「Q&A」_改修:最終) DOC

コンクリート工学年次論文集 Vol.30

建築支保工一部1a計算書

<8D5C91A28C768E5A8F91836C C768E5A8F A2E786C73>

コンクリート工学年次論文集 Vol.27

05設計編-標準_目次.indd

POWER-直接基礎Ⅱの出力例(表形式)

<4D F736F F D208E9197BF A082C68E7B8D A815B82CC8D5C91A28AEE8F C4816A2E646F63>

構造力学Ⅰ第12回


L 型擁壁 (CP-WALL) 構造図 S=1/30 CP-WALL(B タイプ ) H=1900~2500 断面図 正面 背面図 製品寸法表 適用 製品名 H H1 H2 B 各部寸法 (mm) B1 B2 T1 T2 T3 T4 T5 水抜孔位置 h1 h2 参考質量 (kg) (

集水桝の構造計算(固定版編)V1-正規版.xls

Microsoft PowerPoint - zairiki_11

技術基準およびRC規準改訂による開口補強筋の取り扱いについてわかりやすく解説

超高層RC造住宅のフルプレキャスト工法およびタワークレーンのフロアクライミング工法による超短工期施工

コンクリート工学年次論文集 Vol.29

Microsoft Word - 建築研究資料143-1章以外

コンクリート工学年次論文集 Vol.34

表 6.3 鉄筋のコンクリートに対する許容付着応力度 (N/mm 2 ) 長 期 短 期 異形鉄筋 かつ 5 上端筋 Fc 以下 75 0 その他の鉄筋 かつ.35 + Fc 以下 25 < 表を全面差し替えた > 長期に対する値の.5 倍 丸鋼 4 Fc かつ 0.9 以下 00

Microsoft PowerPoint - zairiki_10

目次構成

<4D F736F F D208D7E959A82A882E682D18F498BC78BC882B B BE98C60816A2E646F63>

Microsoft PowerPoint - BUS_WALL_DOC_全スライド 公開用.pptx

<4D F736F F D208D5C91A297CD8A7793FC96E591E6328FCD2E646F63>

<4D F736F F F696E74202D F4390B3817A8C9A927A8AEE8F8090AE94F591A E28F958BE08E968BC F18D

Microsoft PowerPoint - 課題S6スラブ協力幅_修正

1.2 耐荷力の算定対象となる柱部材の危険断面における耐荷力を算定する場合, 曲げ耐力 ( 課題 1にて学習した方法 ) およびせん断耐力 ( 課題 2の方法 ) を求め, 両者のうち小なる耐荷力がその部材の終局耐荷力となる. 別途設定された設計外力に対して十分な耐荷力を有することはもちろんのこと,

<4D F736F F D2096D88E4F BE095A88D C982E682E989A189CB8DDE8B7982D197C090DA8D878BE095A882CC8C9F92E8>

<4D F736F F D208AD88D D80926E906B94ED8A5192B28DB891AC95F15F41494A2E646F6378>

Microsoft Word - A doc

目次 はじめに P.1 1. 実務における補強設計 1.1 基本原則 P 補強設計の進め方 P 補強設計 P 段階的耐震改修 P RC 造 SRC 造の補強 2.1 適用範囲 P 補強設計の進め方 P 補強設計

(3) 基準強度 a) 鋼材 平成 12 年建設省告示第 2464 号 ( 平成 19 年国土交通省告示 623 号改正 ) による (N/mm 2 ) 種類 基準強度 鋼材 SS400 板厚が 40mm 以下 235 SM490 板厚が 40mm 以下 325 鋼材の材料強度の基準強度は 表中の値

Microsoft Word - KSスラブ 論文.doc

横浜市のマンション 耐震化補助制度について

I 鉄筋コンクリート造の耐力度調査(I-1~I-46)

申請図書の作成要領 耐震診断評定の対象とする建築物等 耐震診断評定に適用する基準等 標準的な業務の流 れ 変更評定の業務の流れ及び留意事項等は 別に定める申請要領をご参照ください 1-1 申請図書の体裁 (1) 申請図書は A4 判の差し替え可能なファイルとしてください ( 両面印刷可 ) 図面等で

コンクリート工学年次論文集 Vol.29

静的載荷実験に基づく杭頭部の損傷度評価法の検討 柏尚稔 1) 坂下雅信 2) 向井智久 3) 平出務 4) 1) 正会員国土交通省国土技術政策総合研究所 主任研究員博士 ( 工学 ) 2) 正会員国立研究開発法人建築研究所 主任研

コンクリート工学年次論文集Vol.35

第 回日本地震工学シンポジウム (0) 2. 擬似全体崩壊メカニズムと応力推定 2. 基本的な考え方と検討の流れ本研究では C 造フレーム構造の全体崩壊メカニズムとして 倒壊に対する耐震安全性が高い梁曲げ降伏型全体崩壊メカニズム 2) を想定する その際 最上階の柱頭ヒンジと 階の柱脚ヒンジは許容す

A-2

日付 2017 年 12 月 21 日 新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法 による計算表 計算プログラム ホームズ君 耐震診断 Pro Ver.4.2 建物概要建物名称診断者備考所在地竣工年月建物用途構法建物仕様階高外壁材種地震地域係数 Z 軟弱地盤割増形状割増係数積雪深さ積雪割増基

< 被害認定フロー ( 地震による被害木造 プレハブ > 第 次調査 ( 外観による判定 一見して住家全部が倒壊 一見して住家の一部の階が全部倒壊 地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊 いずれかに いずれにも ( 傾斜による判定 全壊 外壁又は柱の傾斜が/ 以上 ( % 以上 ( 部位

RC 規準改定に関する第 2 回公開小委員会 解析 WG 計算例 8 条構造解析の基本事項 9 条骨組の解析 竹中工務店角彰 2008 年 3 月 31 日 計算例 : 建物概要 / 使用材料 中規模事務所ビルを対象 コンピューター一貫計算手法での設計 耐震スリットの無い RC 造 延べ面積 362

コンクリート工学年次論文集 Vol.30

Super Build/FA1出力サンプル

施設・構造1-5b 京都大学原子炉実験所研究用原子炉(KUR)新耐震指針に照らした耐震安全性評価(中間報告)(原子炉建屋の耐震安全性評価) (その2)

. 軸力作用時における曲げ耐力基本式の算定 ) ここでは破壊包絡線の作成を前提としているので, コンクリートは引張領域を無視した RC 断面時を考える. 圧縮域コンクリートは応力分布は簡易的に, 降伏時は線形分布, 終局時は等価応力ブロック ( 図 -2) を考えることにする. h N ε f e

コンクリート工学年次論文集 Vol.29

Microsoft Word - 沿道建築物の補強設計マニュアル.doc

Microsoft PowerPoint - fuseitei_6

<4D F736F F F696E74202D E518D6C8E9197BF31817A92DD82E E494C282CC8D5C91A2>

スライド 1

<4D F736F F F696E74202D E838A815B83678D5C91A295A882CC90DD8C7682CC8AEE967B F A2E707074>

はじめに

<4D F736F F F696E74202D208D8790AC D5C91A28C768E5A934B8D8790AB94BB92E88E9E82CC97AF88D38E968D802E707074>

<4D F736F F D208C46967B926E906B94ED8A5192B28DB891AC95F18A4F C8D4891E5816A E646F6378>


じるとする考え方とは異なり, 曲げモーメントに対する抵抗機構の最大抵抗モーメントにより接合部の終局強度が決まる je De De C M e = ( ) + C (1) 2 2 2bbσ cb T T C + N 0 (2) b = M b Lb = M e (3) L D b c σ

<4D F736F F D2095BD90AC E8D918CF08D9091E D862E646F63>

強化 LVL 接合板および接合ピンを用いた木質構造フレームの開発 奈良県森林技術センター中田欣作 1. はじめに集成材を用いた木質構造で一般的に用いられている金物の代わりに スギ材単板を積層熱圧した強化 LVL を接合部材として用いる接合方法を開発した この接合方法では 集成材と接合板である強化 L

コンクリート工学年次論文集,Vol.36,No.2,2014 論文低強度コンクリート RC 部材の合理的なせん断設計法の構築 根口百世 *1 *2 南宏一 要旨 : 本論では, 圧縮強度 13.5N/mm 2 未満の低強度コンクリート RC 部材のせん断強度を, 合理的に評価する手法を提案する 提案

IT1815.xls

2005年度修士論文

コンクリート工学年次論文集 Vol.31

説明書 ( 耐震性 ) 在来木造一戸建て用 ( 第二面 ) 基礎根入れ深さ深さ ( mm ) 住宅工事仕様書 適 基礎の 立上り部分 高さ ( mm ) 厚さ ( mm ) 基礎伏図 不適 各部寸法底盤の寸法厚さ ( mm ) 幅 ( mm ) 基礎詳細図 基礎の配筋主筋 ( 径 mm ) 矩計図

富士市が所有する市営住宅の耐震性能に係るリスト 目 次 頁 1. 公表の趣旨 1 2. 要旨 1 3. 各別の耐震性能と富士市の耐震性能判定基準 2 4. 用語の説明 3 5. 市営住宅の耐震性能に係るリスト 4 ~ 8 6. 一般公共建築物の耐震性能に係るリスト 別掲載

<8E7B8D E838A8358C495CA8E86352E786C73>

P-2 パラレル構法 工法の長所 建物を使用しながら補強工事を進めることが可能( 居ながら施工 ) である 既存建物の外側に取付けるので 既存の壁やサッシュの解体 復旧工事が不要である 解体工事が不要のため 産業廃棄物を大幅に削減可能であり 騒音や振動および粉塵等の問題が解消できる 細くて強靭なPC

Transcription:

被災した建物を実例とした日本の応急復旧技術の紹介 東北大学 Tohoku University 迫田丈志 Joji Sakuta 京都大学 Kyoto University 坂下雅信 Masanobu Sakashita 日本の応急復旧の流れ 1 応急危険度判定 危険 2 応急措置 軸力支持 水平抵抗力の確保 3 被災度区分判定 大破 4 準備計算 図面作成 建物重量 5 構造特性係数 Is の算定 強度指標 C 靭性指標 F 6 復旧計画 恒久補修 恒久補強 1

被災建物の概要 用途 : 都江堰市の集合住宅 建設年 : 2008 年 ( 建設中 躯体は完成 ) 構造種別 : 鉄筋コンクリート構造 構造形式 : 鉄筋コンクリートラーメン造 2F~6Fのみレンガ造壁有り 各階面積 : 約 1,000m2 (X=50.4m,Y=20.2m) 階数 : 地上 6 階 地下無 階高 : 2.85m 2~6F レンガ造壁 Soft-First Story 都江堰の RC 造の集合住宅 2

建物 1 階が損傷 柱の被害 ( 損傷度 Ⅴ) 応急危険度の判定 Ⅴ10% 超 危険 残留変形角 9/100 rad. ( 南北方向 = 長辺 ) 3

側柱柱頭の被害 ( 損傷度 Ⅴ) コアコンクリート圧壊 主筋座屈 フープ外れ 中柱柱頭の被害 4

隅柱柱脚の被害 主筋破断 被災度区分判定 耐震性能残存率 R=0 大破 倒壊 応急復旧 5

応急復旧の要否判定 被災度震度 軽微 R 95 小破 95>R 80 中破 80>R 60 大破 倒壊 60>R Ⅴ 弱以下 (7) Ⅴ 強 (8) Ⅵ 弱 (9) ( ) Ⅵ 強以上 (10~) ( ) ( ) : 軽微な補修 継続使用 : 応急復旧 ( 補修 ) 継続使用 : 応急措置 応急復旧 原則 使用禁止 : 耐震診断を行い恒久復旧 ( ) は 71 以前の建物 調査建物 応急措置の例 ( 倒壊防止 ) 軸力の支持 水平抵抗力の確保 山留鋼材配置鉄筋コンクリート壁山留鋼材ブレース 6

レンガ壁 日本の耐震診断方法の適用例 被災前の構造耐震指標 Is 建物の現地調査 (2008.6.22 都江堰市 ) 図面作成 荷重算定 強度指標 C と靭性指標 F の算定 Is=C F S D T > 0.6( 日本の基準値 I so ) C T S D > 0.3 建物調査 ( 基準階平面図 ) バルコニー バルコニー 7

柱断面リスト φ10 φ10 中柱 側柱 X( 長辺 ) 方向軸組図 レンガ壁 8

レンガ壁 Y( 短辺 ) 方向軸組図 準備計算 ( 荷重算定 ) 単位面積床重量 ( 実際の荷重に基づく ) スラブ 120mm 24kN/m 3 2.9kN/m 2 床仕上 80mm 24kN/m 3 1.9kN/m 2 レンガ ( 空隙率 0.5) 20kN/m 3 壁仕上 50mm 20kN/m 3 3.2kN/m 2 ( 見付 ) 階高 3m, 2 枚 / スパン5.6m 3.4kN/m 2 積載荷重 0.8kN/m 2 柱自重 0.8kN/m 2 合計 9.8kN/m 2 10kN/m 2 レンガ形状 9

階 単位重量 (kn/m 2 ) 建物重量 床面積 (m 2 ) Wi (kn) ΣWi (kn) 6 10 1018 10180 10180 5 10 1018 10180 20360 4 10 1018 10180 30540 3 10 1018 10180 40720 2 10 1018 10180 50900 1 10 1018 10180 61080 1 階の層せん断力係数 C B =0.3 とすると Q1=18324kN 柱断面 :BXD=450X650 1 階柱の軸力 コンクリート圧縮強度 :σ B =30N/mm 2 柱 単位 重量 (kn/m 2 ) 床面積 (m 2 ) 層数 軸力 (kn) 軸 応力度 (N/mm 2 ) 軸力比 中柱 10 28.6 6 1714 5.9 0.2 側柱 10 28.0 6 1680 5.7 0.2 10

強度指標 C M u 0.8at y D 0.5ND1 Q mu = M u / ( h o / 2 ) Q su 0.053pt M Q d Q u = min ( Q mu, Q su ) 曲げとせん断の比較 C = Q u / ΣW 0.23 18 F c 0.12 0.85 p w s N bdf wy C 0.1 o b (0.8D) Mu 強度指標 C と靭性指標 F 中柱の算定曲げ終局時せん断強度 Q mu = 457kN せん断終局強度 Q su = 554kN Qu = min(q mu,q su ) = 457kN Q mu <Q su より 曲げ柱 全体の強度指標 C C = Q u / ΣW = 0.26(1 階の層せん断力係数 ) 靭性指標 F = 2.6 降伏変形角 Ry=1/150 終局変形角 Ru=1/50 11

耐震性能の評価 方向階 C F C F X( 長辺 ) 1 0.26 2.60 0.67 強度係数 C=0.26 構造耐震指標 Is=Eo S D T =0.67 1.0 1.0 =0.67>0.6( 日本の Iso) C T S D =0.26<0.3 F=2.6 変形係数 被災後の耐震性能 耐震性能残存率 R=0 大破 倒壊 復旧検討 12

復旧措置後の耐震指標 RIs 部材の耐力回復係数 ψ 損傷度 Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ ψ 0.95~1.0 0.9~0.95(~1.0) 0.8~0.9(~1.0) 0.7~0.8(~0.9) 括弧 ( ) 内は 工法の組合せ 応急措置 復旧技術シートあり 基本計画 復旧例 1 被災前と同じ状態に建築物を復旧する 復旧手順 11 階柱の損傷により沈下した 2 階より上をジャッキアップして 水平移動して 1 階柱の傾斜も修正する 2 損傷が激しい 1 階柱柱頭 柱脚は 座屈した主筋は切断して交換する 3 コアコンクリートの打ち直し エポキシ樹脂ひび割れ補修 4 せん断補強筋を交換して コンクリートを打設 問題点 耐力は被災前の 70% 程度 ジャッキアップなどの難しい施工技術が必須 13

復旧例 1( 被災前に戻す ) 復旧技術シート 16 軸力支持材 継手に必要な長さ 回復係数 ψ=0.7 RIs=0.47 C T S D =0.18 同じ規模の地震 継手 新規主筋 せん断補強筋 コンクリート打設 軸力支持材撤去 倒壊の可能性 基本計画 復旧例 2 被災前よりも曲げ耐力を上げる 復旧手順 1 残留変形を矯正せずに 1 階柱の外殻に主筋を配筋する 主筋を 2 階柱まで施工することで定着長を確保する 2 せん断補強筋を柱周囲に配置する 3 型枠を設置してコンクリートを打設する 問題点 残留変形角が大きいため 柱が太くなる 中子筋を配置できず せん断破壊が先行する可能性がある 14

片面溶接 10d 片面溶接 10d 100~ 150 程度 片面溶接 10d 復旧例 2( 恒久補強 ) 増設主筋補助筋パネル補強 ひび割れ補修 大梁 回復係数 ψ=0.7 RIs=0.75(C=0.52,F=2.1) C T S D =0.36 増設帯筋 A A 断面 コンクリート打設 増設主筋 主筋とフープ 増設帯筋 柱際スラブ除去 R=1/10 大梁 B あと施工アンカー 大梁 850mm 450mm あと施工アンカー D13@150 程度増設主筋 B 断面 復旧技術シート 14 主筋を 2 階と基礎にアンカー 内部の耐力予測 中子筋 基本計画 復旧例 3 復旧例 1 と 2 を組み合わせることで被災前の耐力を確保し断面は復旧例 2 ほどは大きくしない 復旧手順 1 復旧例 1 を用いて 2 階以上をジャッキにより支持し 水平移動し元の断面を修復する 2 復旧例 2 を用いて主筋とせん断補強筋を配置して断面補強する 3 型枠を設置してコンクリートを打設する 問題点 建物を水平移動するという施工が難しい 15

復旧例 3( 恒久補強 ) 既存柱と同主筋では元の建物相当となる 復旧例 2 回復係数 ψ=0.7 RIs=0.49(C=0.39,F=1.8) C T S D =0.27 主筋とフープ R=1/10 850mm 450mm 650mm 450mm 主筋を 2 階と基礎にアンカー 内部の耐力予測 中子筋 立て起こしが困難 反力として杭や地盤アンカーなどが考えられる 基本計画 復旧例 4 曲げ強度を大きくするとともに せん断強度も大きくなるように補強し 強度指標 C と靭性指標 F の両者を大きくする 復旧手順 1 復旧例 3 の型枠として恒久的な鋼板を用いる 2 コンクリートを打設する 問題点 復旧コストが高い 16

片面溶接 10d 片面溶接 10d 100~ 150 程度 片面溶接 10d 復旧例 4( 組合せ恒久補強 ) 鋼板巻き 増設主筋 補助筋 回復係数 ψ=0.8 RIs=1.33(C=0.52,F=3.2) C T S D =0.42 主筋量に対応したせん断補強 補強効果 Q mu >Q su パネル補強 ひび割れ補修 大梁 増設帯筋 A 主筋定着 A 断面 コンクリート打設 増設主筋 増設帯筋 外周フープ 柱際スラブ除去 大梁 B 大梁 せん断補強鋼板 あと施工アンカー B 断面 あと施工アンカー D13@150 程度増設主筋 強度指標 C 大きく靭性指標 F 大きく 基本計画 復旧例 5 せん断耐力を大きくするために耐震壁を設置する 復旧手順 1 柱の復旧補修を行う 2 柱 梁にあと施工アンカーを打ち 壁筋を配筋する 3コンクリートを打設しフレームと壁を一体化する問題点スペースを区切ることになる 17

耐震壁 t=200 L=5600 Qsu 2240kN 6 枚設置柱の補修と壁補強 ψ=0.8 Cw=0.22 F=1.0 Cc=0.26 F=2.6 Eo=ψ(C w +0.7C c )F=0.32 RIs=0.32 復旧例 5( 恒久補強 ) 1 の柱補修 耐震壁施工 基本計画 復旧例 6 袖壁を設置して柱の強度を大きくする復旧手順 1 柱の復旧補修 ( 復旧例 1) を行う 2 柱 梁にあと施工アンカーを打ち 壁筋を配筋する 3コンクリートを打設しフレームと袖壁を一体化する問題点柱と袖壁の一体化とその評価方法が難しい 18

復旧例 6( 恒久補強 ) 袖壁 t=300 片側 L=1000 柱の補修と壁補強 ψ=0.7 C=0.86 F=1.0 RIs=0.60 後施工アンカー 柱補修後に袖壁施工 まとめ 被災した建物を実例とした日本の応急復旧技術を紹介した ただし 1 階のみを対象としている 今回の復旧計画は 必ずしも実際の復旧に最適ではないが 四川省 ( 中国 ) で用いられる材料 地域性 施工性などを考慮して意見交換や技術交流を行うことで より実用的な復旧技術を確立することが可能と思われる 19