プログラムを取り入れた指導事例 ( 小学校 3 年算数 ) 1 単元名長さ 2 単元について (1) 教材観本単元は, 学習指導要領第 3 学年の次に示す目標及び内容を受けて設定したものである 目標 (2) 長さ, 重さ及び時間の単位と測定について理解できるようにする B 量と測定 (1) 長さについての理解を深めるともに, 重さについての単位と測定の意味を理解し, 重さの測定ができるようにする ア長さの単位 ( キロメートル ( km )) について知ること (2) 長さや重さについて, およその見当をつけたり, 目的に応じて単位や計器を適切に選んで測定したりできるようにする 長さに関して,1 年では, 具体物を用いた活動によって物の長さを比べる直接比較や間接比較, 身近にあるものの大きさを単位にして, そのいくつ分あるかを測る任意単位による比べ方をしている また,2 年では, 長さの普遍単位である,mm,cm,m についての学習をしている 本単元では, 長いものの長さや曲がった対象物などを測る活動を通して, 巻尺に初めてふれ, そのよさを知る また, 新しい長さの単位のkmを知り,1 年から続いた長さの学習はここで完結する 児童の日常生活では, およそどれぐらいの長さ を見積もらせることが大切である 測定を通して, 長さの量感を一層養うとともに, 目的に応じて単位や計器を適切に選び, 測る対象物について見当をつけながら, 測定できることも主なねらいとなっている キロメートル の学習では, 道のりと距離の違いを理解し, 道のりや距離を使った長さの計算ができるようにしていきたい また,1km を体感したり, 道のりの計算の学習に実生活に生かせる問題を取り入れたりして, 児童の長さへの理解を深めていきたい 系統図 第 1 学年 長さの概念 測定の基礎 ( 直接比較, 間接比較, 任意単位 ) (13 大きさくらべ ) 第 2 学年 長さの測定 長さの単位 cm,mm,m, 単位関係 1 cm =10 mm 1m=100 cm 長さの加法性 (6 長さ ) 第 3 学年 巻尺での長さの測定, 計器の選択 長さの単位km, 単位関係 1km=1000m 道のりと距離 (10 長さ ) (2) 児童の実態本学級の児童は, 活発に自分の意見を述べる児童が多い また, 課題に対して, 自分なりの考えを持って自力解決に取り組んだり, 工夫して問題を解こうとチャレンジしたりできる児童もみられる その反面, 既習の定着が十分にできておらず, 自力解決が困難な児童もいる そういった児童には, 自力解決するための作業方法や考え方のヒントをあたえたり, グループでの話し合い活動から気づかせたりしていきたい
じゅんびテスト (% 正答率 ) 1. ものさしを使って, 直線の長さを測る 73% 2. 指示された長さの直線をかく 84% 3. 単位換算 13 cm = mm 95% 269 mm = cm mm 97% 31m= cm 89% 42m8 cm = cm 54% 4. 長さくらべ 16 cm 8 mm 7 cm 95% 23 cm 29 mm 89% 34 cm 5 mm 45 mm 68% 4210 cm 2m1 cm 73% 5. 単位の選択 1 算数の本のあつさ 70% 2 えんぴつの長さ 95% 3 黒板の横の長さ 97% じゅんびテスト の結果から, ものさしを使って直線を正確に測る作業や単位の換算に正答率の低いものがみられた そこで, 本単元では, ものさしや, 巻き尺を使っていろいろな長いものの長さを測りとる活動を多く取り入れ, 正確に測定できる力をつけていきたい また, そこから, 実際の目盛りや位取り教具を利用して, 長さの換算ができるようにしていきたい アンケート (1 好き 2 どちらかといえば好き 3 どちらかといえば嫌い 4 嫌い ) 1 2 3 4 算数は好きですか? 15 人 15 人 5 人 2 人 計算は好きですか? 15 人 18 人 3 人 1 人 問題を考えるのは好きですか? 22 人 7 人 8 人 0 人 算数で友達と話し合っているとき, 自分の考えを言うのは好きですか? 12 人 15 人 7 人 2 人 算数で友達と話し合っているとき友達の考えを聞くのは好きですか? 算数で学級の友達の前で発表するは好きですか? 算数で学級の友達が発表するのを聞くのは好きですか? 20 人 11 人 6 人 0 人 12 人 13 人 9 人 3 人 21 人 10 人 6 人 0 人 クラスの半数以上の児童が, 算数で計算をしたり, 問題を考えたりする事が好き と答えており, また, 発表したり, 聞いたりする事が好き な児童も多い しかし, やはり中には, 苦手意識を持っていて, 自信をもって考えを発表できない児童もいるので, そういった児童への支援が必要となる ヒントとなる既習事項を明確にして提示したり, 自分の力で考えられたことを個人の力に応じて認めていったりしながら, わかる喜びを一人ひとりが感じられるようにしていきたい (3) 指導観 仮説との関連 研究の仮説に基づいて, 次の事項を重点的に考えて取り組むことにした 研究仮説 1 既習事項を活かして課題を解決することにより基礎 基本を身につければ できる喜びを感じ学習意欲が高まるであろう 既習習事項の活用 2 年生までに学習した 長さ の活動をふり返りながら, 共通点, 相違点に着目して, 課題解決の手がかりにしていく 既習事項の何を活用すれば, 課題が解決できそうなのか, 学習の見通しを持たせることで, 課題解決をスムーズにさせる ヒントとなる学習の足跡を掲示する
研究仮説 2 一人ひとりが自分の考えを持ち, 話し合いを充実させることができれば, 学びの楽しさを感じることができるであろう 一人ひとりが自分の考えを持つ 長さを実際に体感する活動を多く積み重ねることにより, 児童の長さに対する量感を育み, 実感を伴う理解を促すことで, 長さに対する理解を深めさせていく 身近な素材や実生活に即した課題を与えることにより, 長さを身近に感じて, 関心を持って課題解決に取り組むことができるようにしていく 話し合いの充実 自分の考えを自由に書き込むことができるワークシートを用意し, 地図と式を対応させたり, 色分けをしたりといったいろいろな方法で自分の考えを友達にわかりやすく説明できるように, 表現活動に取り組ませる 友達の考えを自分の考えと比べながら聞くことで, 理解を深めさせる 3 単元の目標 測定の対象に応じて計器を選び, 進んで測定しようとする ( 関心 意欲 態度 ) kmと m の関係がわかり, 目的に応じて単位を選んだり, 適切な計器を選んだりすることを考えている ( 数学的な考え方 ) 巻き尺を使って, 身の回りのものの長さを測ったり, kmや m を単位として長さを表したりすることができる ( 技能 ) 長さの単位 1 kmを知り, 他の単位との関係を理解している また, 長さについての豊かな感覚をもっている ( 知識 理解 ) 4 指導計画 ( 総時間 8 時間本時 6/8) (3) キ小単元学習活動評価の具体的な内容 1 はかり方2 ロメートル1 紙飛行機を飛ばして, 飛んだ 2 3 4 5 (3) 6 距離の長さを測る方法を考える きょり の意味を知る 巻き尺を使って距離を測る 巻き尺の目盛りの読み方を練 習する 測る対象物にあったものさし や巻き尺がどれかを考える グループで, 実際にいろいろ な物の長さを測る 測定するときに気をつけるこ とや, 気づいたことを話し合う 道のりと距離の違いを知る 単位kmや m との関係を知る 長さの計算のしかたを知る 実際に学校から 1 km歩き, 歩 数や時間を測定する 道のりとかかる時間を組み合 わせて, 市内めぐりをするコー スを考える 回り方の違いによる, 道のり とかかる時間の差を求める ( 本時 6/8) 巻き尺を使って長さを測 ることのよさに気づき, 進 んで測定しようとしてい る ( 観察 発表 ) 長さの見当をつけ, 測定 する対象物に応じて単位や 測定計器を選ぶことができ る ( ノート 発表 ) 長さの予想をもとに適切 な計器を選び, 正確に測る ことができる ( 観察 発表 ) 道のり と きょり の 違いや, 長さの単位の関係 を理解している ( ノート ) 1 kmのだいたいの量感を 持っている ( 観察 発表 ) 道のりとかかる時間から 効率のよいコースを考えて いる 既習を活かして, 工夫し て計算している ( ワークシート 発表 ) 評価の観点 関考技知
(1) 力(1) だめし7 8 練(2) 展開見出す10 分わかる 習 既習事項の理解を深める 既習事項のたしかめをする 標識を読み取り, 長さを計算 で求める 文章や標識から道のりの 関係をつかみ, 図に表すこ とができる ( ノート ) 5 本時の指導 ( 本時 6/8) (1) 本時の目標 道のりと時間を使って効率的なコースを考えることができる ( 数学的な考え方 ) 既習を活かし, 長さの計算を工夫する仕方を理解している ( 知識 理解 ) 1. 素材を知る 学習活動支援 ( ) 評価 () 資料 道のり 学校もろ神社 3 km もろ神社運動 公園 もろ神社文化 文化 文化 運動 公園 運動 公園 運河 運河 時間 7 分 2 km 600m 6 分 2 km 5 分 2 km 500m 6 分 7 km 15 分 9 km 20 分 写真, 地図, データを表示する 地図上で, スタートとゴールを確認し, どのようなコースがあるかをたどって, 問題場面をつかませる 効率的に移動することの意味をつかむ バスに乗って, 市内めぐりをします 学校を出発して, 最初にもろ神社に 行ってから, 文化と運動公園に行って, 最後に運河へ行きます 文化と運動公園のどちらを先に行ったほうがどのくらい近くなるで しょうか 道のりでく らべられそ うだ 運動公園に先に いったほうがよ さそうだな 時間でも くらべられ そうだ 写真 地図 データ ワークシート 道のりを全部 たしてみれば 吹き出し を使って, 問題に対する 自分の考えや答えの見通しを自由に書 かせて発表する 吹き出し に書かれた考えを把握して, 児童の反応をつかむ 2. 学習問題をつくる
( 学 ) 目てき地までの近い道のりをさがそう 15 分深める15 分まとめあげる3. 自力解決する 道のりを全部たしてくらべる 計算しやすい工夫を考えるように助言する 調べる( 式 )3 km+2km+2 km500m+9 km= 16km500m 3 km+2 km600m+2km 500m+7 km= 15 km100m 16km 500m-15km 100m=1 km400m 学校からもろ神社までは同じだから, 計算しない ( 式 ) 2km+2 km500m+9km=13 km500m 2km600m+2km500+7km=12km100m 13 km 500m-12km 100m=1 km400m 道のりが同じところは, たさなくてもいいので, のこりでくらべる ( 式 )2 km+9km=11 km 2km 600m+7km=9km 600m 11km-9 km600m=1km 400m 4. それぞれの考えを発表し合う グループで発表し合い, 考えを交換する 全体で発表し合う * 運動公園を先にまわった方が近い * 道のりの差は 1km 400m * 同じところをはぶいて計算すると, 簡単に計算できる 5. 時間でもくらべてみる 時間も同じところを除いて残りで計算してくらべると, 運動公園に先に行く方が4 分短くなる 6. まとめをする 工夫したことは, どんなことでしょう ( ま ) 地図に道のりや時間を書きこむとわかりやすい なる 必要なデータを地図に書き込ませたり, 計算したところを色分けしたりするとわかりやすいことに気づかせる 道のりやかかる時間から, 効率のよいコースを考えている ( 数学的な考え方 ) 1 つの式にすると比べやすいことを助言する 前時までに学習した長さの計算の仕方を理解して計算しているか確認する 1 つのやり方ができた児童は, 他の考え方でもやってみる より簡単に計算できる方法を見つけさせる 地図と対応させながら発表する 友達の発表をよく聞きながら共通点や相違点に気づかせる また, 友達の考えのよいところに気づかせる たさなくてよい部分があることがわかり, 手際よく計算する仕方を理解している ( 知識 理解 ) たさなくてもすむところは, のぞいて計算するとかんたんに 掲示用画用紙
5 分 7. ふり返りカードを書く 自分の考えを書くことができたか 友達の考えを聞いて, 同じところや違うところを見つけることができたか 本時の学習をふり返り, 自己評価や学習の感想を書き, 次時への意欲をもたせる ふり返りカード 地図 運河 もろ神社 学校 文化 運動公園 (3) 板書計画 バスで市内めぐりをします 学 目てき地までの近い道のり をさがそう 写真写真写真写真 児童の考え 児童の考え 地図 児童の考え データ ま くふうしたこと たさなくてすむところは, のぞいて計算するとかんたんになる 地図に道のりや時間を書きこむとわかりやすい