長期/島本1

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平成18年3月17日

研究成果報告書

STAP現象の検証の実施について

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STAP現象の検証結果

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背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

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資料 3-1 CREST 人工多能性幹細胞 (ips 細胞 ) 作製 制御等の医療基盤技術 平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度 10 件 7 件 6 件 進捗状況報告 9.28,2010 総括須田年生

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八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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上原記念生命科学財団研究報告集, 29 (2015)

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資料3-1_本多准教授提出資料

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論文の内容の要旨

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル


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を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

学位論文の要約

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NIHS Since 1874 平成 26 年 3 月 5 日 ヒト多能性幹細胞加工製品に残存する未分化多能性幹細胞の高感度検出法の開発 国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部佐藤陽治 本発表で述べられている見解は発表者の私見であって 国立医薬品食品衛生研究所および厚生労働省の現在の公式な見解では

費 複写費 現像 焼付費 通信費 ( 切手 電話等 ) 運搬費 研究実施場所借り上げ費 ( 研究機関の施設において補助事業の遂行が困難な場合に限る ) 会議費 ( 会場借料 食事 ( アルコール類を除く ) 費用等 ) リース レンタル費用 ( コンピュータ 自動車 実験機器 器具等 ) 機器修理費

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

3 SCN1A ips 2. SCN1A ips SCN1A GABA ips

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本成果は 主に以下の事業 研究領域 研究課題によって得られました 日本医療研究開発機構 (AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム ( 平成 27 年度より文部科学省より移管 ) 研究課題名 : 遺伝子改変マーモセットの汎用性拡大および作出技術の高度化とその脳科学への応用 研究代表者 : 佐々木えり

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

資料 4 生命倫理専門調査会における主な議論 平成 25 年 12 月 20 日 1 海外における規制の状況 内閣府は平成 24 年度 ES 細胞 ips 細胞から作成した生殖細胞によるヒト胚作成に関する法規制の状況を確認するため 米国 英国 ドイツ フランス スペイン オーストラリア及び韓国を対象

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

主論文 Role of zoledronic acid in oncolytic virotherapy : Promotion of antitumor effect and prevention of bone destruction ( 腫瘍融解アデノウイルス療法におけるゾレドロン酸の役割 :

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るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

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( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

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公益財団法人京都大学教育研究振興財団 京都大学教育研究振興財団助成事業成果報告書 平成 28 年 4 月 25 日 会長辻井昭雄様 所属部局 研究科 ( 申請時 ) ips 細胞研究所特定研究員 ( 報告時 ) ETH Zurich Department of Biosystems Science and Engineering ポスドク研究員 氏名島本廉 助成の種類 平成 27 年度 若手研究者在外研究支援 在外研究長期助成 研究課題名 ips 細胞誘導時の体細胞への逆戻り分子機構の解明 受入機関 スイス連邦工科大学チューリッヒ校 渡航期間 助成対象期間平成 27 年 4 月 1 日 ~ 平成 28 年 3 月 31 日 ( 現在留学継続中 ) 成果の概要 タイトルは 成果の概要 / 報告者名 として A4 版 2000 字程度 和文で作成し 添付して下さい 成果の概要 以外に添付する資料 無 有 ( ) 交付を受けた助成金額 使用した助成金額 返納すべき助成金額 3,000,000 円 3,000,000 円 0 円 会計報告 渡航費 ( 航空券 ) 96,870 円 交通費 98,000 円 助成金の使途内訳 滞在費充当 2,805,130 円 ( 今回の助成に対する感想 今後の助成に望むこと等お書き下さい 助成事業の参考にさせていただきます ) 当財団の助成について 助成金は渡航費 交通費 滞在費に使わせて頂きました これによって生活基盤が安定し 研究を円滑に進めることができました 海外留学のための助成金は数が少なく 競争率が高いです 一人でも多くの研究者の留学を支援できるようにこの在外研究長期助成を続けて頂きたいです 一年間の留学期間に研究だけでなく海外生活のノウハウなど様々なことを学びました このような情報をこれから留学する方に伝えるための場 例えば前年度採択者と交流会などがあればと思います

ips 細胞誘導時の体細胞への逆戻り分子機構の解明 ETH Zurich Department of Biosystems Science and Engineering/Timm Schroeder 研究室 島本廉 研究目的体細胞に特定の遺伝子を発現させることによって 人工多能性幹細胞 (ips 細胞 ) が誘導される 最近 ips 細胞の誘導過程において 一度多能性幹細胞に特異的なマーカーを発現するようになった細胞 (ips 細胞前駆細胞 ) の 実に 50% 以上が体細胞へと逆戻りすることが示された しかし そのメカニズムは明らかにされていない 本研究では生細胞イメージングを用いて 逆戻り細胞を一細胞レベルで特定し 逆戻り細胞で生起する変化とその機構を分子レベルで解析する 逆戻りの分子機構を解析することにより より詳細な ips 細胞誘導の必要条件を明らかにする 結果 OKMS MEFで逆戻りは起きないまず初めにこれまで報告されている逆戻りがマウス ips 細胞誘導中に起こるかどうかを確認した ips 細胞誘導には Collagen1a1 TetO-Oct3/4-Klf4-c-Myc-Sox2, Rosa26 rtta マウス胎仔線維芽細胞 (OKMS MEF) を用いた この細胞は Collagen1a1 遺伝子座に Oct3/4, Klf4, c-myc 及び Sox2 (OKMS) が挿入されており ドキシサイクリンを加えることによって ips 細胞を誘導することが可能である ウイルスやプラスミドを用いた方法ではリプログラミング因子のコピー数や挿入部位が細胞毎に異なり 細胞毎のリプログラミング因子の発現レベルが異なる この方法では 細胞間で発現レベルが均一であり リプログラミング因子の働きをより直接的に見ることができる 逆戻りは ips 細胞誘導開始後 6 日目に SSEA1 陽性 Thy1 陰性細胞 (ips 細胞前駆細胞 ) を回収し 3 日後に SSEA1 陽性 Thy1 陰性細胞がどれだけ含まれているかで判断した SSEA1 は多能性細胞マーカー Thy1 は皮膚細胞マーカーとして知られている 誘導開始後 5 日目で SSEA1 陽性の細胞が出現し始めることが予備実験により分かっていた ips 細胞誘導が進むにつれて細胞は ips 細胞へと変化し 逆戻りが起こりにくくなると考えられたため 出来るだけ早い日の 6 日目の細胞集団から ips 細胞前駆細胞を回収した

細胞回収直後に 97.4% であった Thy1 陰性 SSEA1 陽性の割合が 9 日目には 95% となり 2.4% 減少した ( 図 1) これまでの報告のような 50% 程の大きな減少はなく OKMS MEFでは逆戻りが起きていないと考えられた モノシストロニック O, S, K, Mレトロウイルスでは逆戻りが起きるこれまでの報告により ips 細胞誘導過程の細胞の変化はリプログラミング因子の発現量のバランスや遺伝子導入方法に依存することが知られており 逆戻りも ips 細胞誘導方法に依存して起こる可能性が考えられる そこで 逆戻りが起こる方法と起こらない方法を比較し 逆戻りの原因を調べるため 逆戻りが起こる方法を探すこととした まず初めに ヒトにおいて逆戻りの報告があるモノシストロニック O, S, K, Mレトロウイルスを検討した この方法では誘導開始後 10 日目から SSEA1 陽性細胞が出現し始める 11 日目に 98% であった Thy1 陰性 SSEA1 陽性画分が 14 日目には 61% であり 37% の減少が見られた ( 図 2) この結果からモノシストロニック O, S, K, Mレトロウイルスを用いた方法では逆戻りが起こることが分かった 生細胞イメージングによる逆戻り細胞の特定標識に用いる抗体の検討逆戻りする細胞を特定するため タイムラプスムービーを用いることとした まず初めに ips 細胞前駆細胞を標識に用いる抗体の検討を行った マウス ES 細胞もしくは MEFを ibidi μ-slide vi0.4に播種し 一日培養した後 抗体を添加した phenol red freeの培地に交換し 30 分後写真を撮影した その結果 SSEA1-FITC 抗体を用いた場合ポジティブコントロールである ES 細胞は標識されるがネガティブコントロールの MEFは標識されなかった ( 図 3) Thy1-APCを用いた場合 ポジティブコントロールの MEFが標識されるがネガティブコントロールの ES 細胞は標識されなかった ( 図 4) 以上の結果からこれらの抗体を ips 細胞前駆細胞の識別に用いることにした

今後の予定 OKMS MEFでは逆戻りが起こらずモノシストロニック OSKMレトロウイルスを用いた方法では逆戻りが起きた この結果から逆戻りの原因としてリプログラミング因子の発現のバランス 発現量 プロモーターのサイレンシングが考えられる 今後これらと逆戻りの関係について調べる 生細胞イメージングついては 今回検討した抗体を用いて ips 細胞前駆細胞を標

識し 逆戻りする細胞 (SSEA1 陽性 Thy1 陰性から変化する細胞 ) を特定する その後 免 疫染色を用いて逆戻り細胞の遺伝子発現について調べる 以上