SpO2 と血液ガス 2011 年 6 月 22 日
血液ガスではかっている項目 検査結果に表示される項目 ph PaCO2 PaO2 HCO3- BE SaO2 Na, K, Cl, etc. 実際に機械が測定する項目 ph PaCO2 PaO2 Na, K, Cl, etc.
低酸素血症の評価 SpO 2 で代用可能 ph PaO 2 PaCO 2 HCO - 3 SaO 2 呼吸 代謝の評価
低酸素血症を評価する
SpO 2? SaO 2? PaO 2? サチュレーションモニター, パルスオキシメーターと呼ばれる機械で測定しているのが SpO2 血液ガスを測定してわかるのが SaO 2 や PaO 2 SaO 2 SpO 2 PaO 2 酸素飽和度 動脈血酸素分圧
酸素分圧の流れ 大気 :760mmHg 水蒸気圧 :47mmHg 酸素濃度 :21% (760-47) 0.21 150 大気中 150 mmhg 静脈血 40mmHg 肺胞 100 mmhg 動脈血 100mmHg
酸素の流れ 大気中 150 mmhg 静脈血 40mmHg 肺胞 100 mmhg 動脈血 100mmHg 酸素分圧に応じて 血液中に酸素が溶けて運ばれる しかし 酸素は少ししか溶けることができない そこで 酸素はヘモグロビンにくっついて運ばれる仕組みがある
SaO 2 PaO 2 に応じて ヘモグロビンに酸素が結合する その割合がSaO 2 SpO 2 酸素と結合していないヘモグロビン 酸素と結合したヘモグロビン PaO 2 40mmHg SaO 2 70% PaO 2 60mmHg SaO 2 90% PaO 2 100mmHg SaO 2 100%
正常な肺では 大気中 150 mmhg 静脈血 40mmHg 肺胞 100 mmhg 動脈血 100mmHg
動脈血の酸素化の異常 大気中 150 mmhg 肺炎などによる障害 静脈血 40mmHg 肺胞 100 mmhg 動脈血 60mmHg H b H b H b H b H b H b H b H b H b H b
SaO 2 (%) PaO 2 と SaO 2 の関係 100 90 1 PaO 2 100mmHg SaO 2 100% ( 動脈血 ) 74 2 PaO 2 60mmHg SaO 2 90% 3 PaO 2 40mmHg SaO 2 74% ( 静脈血 ) 40 60 PaO 2 (mmhg) 100 直線ではなく S 字曲線になっていることが特徴
SaO 2 (%) PaO 2 と SaO 2 の関係のポイント 95 90 85 SpO 2 で 90~95% の変化幅は PaO 2 では 60~96mmHg に相当 一方 SpO 2 で 85~90% の変化幅は PaO 2 では 50~60mmHg に相当する 50 60 PaO 2 (mmhg) 96
SpO 2 でなにが分かるのか? SpO 2 で 酸素のとりこまれ具合が分かる 実際の肺の障害の程度は PaO 2 をみないと分からない SpO 2 が低い 肺で酸素がうまく取り込まれていない 患者さんは苦しいかもしれない SpO 2 が高い 肺で酸素がうまく取り込まれているだろう 患者さんは苦しくないだろう 例外あり
酸素が必要なのは? SpO 2 年齢基礎疾患息苦しさ呼吸数 97% 30 歳なしなし 12 回 / 分 90% 80 歳なしあり 20 回 / 分
酸素が必要なのは? SpO 2 PaO 2 PaCO 2 SaO 2 97% 80 40 97 90% 60 32 90
SpO 2 が 90% でもケロッとしている患者さんもいるのでは?
酸素が必要なのは? SpO 2 年齢基礎疾患息苦しさ呼吸数 97% 30 歳なしあり 30 回 / 分 90% 80 歳 COPD なし 12 回 / 分
酸素が必要なのは? SpO 2 PaO 2 PaCO 2 SaO 2 97% 80 24 97 90% 60 48 90
A-a DO 2 を計算してみよう A-a DO 2 : 肺胞気動脈血酸素分圧較差 A-a DO 2 = 150 - (PaO 2 + PaCO 2 /0.8) 大気中 150 mmhg 静脈血 40mmHg 肺胞 100 mmhg 動脈血 60mmHg
A-a DO 2 を計算してみる AaDO 2 = 150 ( 80 + 40/0.8 ) AaDO 2 = 150 ( 60 + 32/0.8 ) SpO 2 97% 90% 97% 90% PaO 2 80 60 80 60 PaCO 2 40 32 24 48 SaO 2 97 90 97 91 AaDO 2 20 50 40 30 AaDO 2 = 150 ( 80 + 24/0.8 ) AaDO 2 = 150 ( 60 + 48/0.8 )
どんな状態での血液ガス所見でしょう SpO 2 PaO 2 PaCO 2 SaO 2 70% 40 48 70 54% 25 13 54 健常者の静脈血 無酸素でエベレスト山頂付近
SaO 2 (%) モニタリングの指標として適切な SpO 2 100 90 74 40 60 PaO 2 (mmhg) 100 200 300
SaO 2 (%) モニタリングの指標として適切な SpO 2 100 90 74 PaO 2 が 100 でも 200 でも 300 でも SpO 2 は 100% のまま 酸素を使っているのに SpO 2 が 100% のままでモニタリングをしているのは 昇圧剤を使っているのに 100mmHg までしか測定できない血圧計をつかっているのと同じ 40 60 PaO 2 (mmhg) 100 酸素投与下では SpO 2 が 98% を越えたままにしないように 酸素投与量を調整する
P/F 比 酸素を吸っている場合 A-a DO 2 の計算は最適とはいえません 酸素を吸っている 人工呼吸器を使用している状況では P/F 比という指標で 酸素化を評価することがあります P/F = PaO 2 /FiO 2 例 30% の酸素 (FiO 2 = 0.3) を吸っている時の血液ガス所見で PaO 2 が 90 であれば P/F = 90/0.3 = 300
SpO 2 に関連する事項のまとめ SpO 2 は簡単に測れるので便利 数値だけでなく 呼吸数など患者さんの状態を把握する 血液ガスをとらないと低酸素血症の評価ができない場合も多い 酸素を投与しているのであれば SpO 2 が 100% のままにしておくことは モニタリングとしては不適切
呼吸 代謝を評価する
低酸素血症の評価 ph PaO 2 PaCO 2 HCO - 3 SaO 2 呼吸 代謝の評価
血液ガスはなぜ分かりにくいのか 代謝性 とか 代償 とかまぎらわしい 呼吸性アルカローシスと代謝性アシドーシスの合併 などいくつかの病態が重なることがある しかも 急性 だとか 慢性 だとかが重なる 例 : 慢性呼吸不全の人が CO2 ナルコーシスになる 代償された慢性呼吸性アシドーシスに急性の呼吸性アシドーシスが加わり それをさらに代償しようとする とりあえずは あまり深入りしない 複雑な病態の時は 表や iphone に任せる
血液ガスのみかたの流れ phをみる主要な病態を考える アニオンギャップを計算する省略代償が充分か考える病態をもう一度考える
血液ガスのみかたの流れ phをみる主要な病態を考える 代償が充分か考える病態をもう一度考える
ph をみる 7.4 前後が正常範囲 7.4 以下のときは酸性に傾いているので アシデミア ( 酸血症 ) 7.4 以上のときはアルカリ性に傾いているので アルカレミア ( アルカリ血症 )
病態 ( 呼吸の障害 ) 呼吸性アシドーシス 換気量が減少 CO 2 が増える ph が下がる COPD, ARDS, 肺結核後遺症など 呼吸性アルカローシス 換気量が増加 CO 2 が減る ph が上がる 過呼吸となる疾患 ( 肺炎, 敗血症, 過呼吸症候群など )
病態 ( 代謝の障害 ) 代謝性アシドーシス 酸が増える HCO 3 - が減る ph が下がる 腎障害, 糖代謝異常, 下痢, 敗血症など 代謝性アルカローシス 酸が減る HCO 3 - が増える ph が上がる 嘔吐, 利尿剤など
代償 呼吸性の異常は代謝により 代謝性の異常は呼吸により代償される 呼吸による代償は比較的早いが 代謝による代償には時間がかかる 代償しすぎることはない たとえば アシデミアに傾いたものが 代償によりアルカレミアになることはない
病態 ( 呼吸の障害 ) 呼吸性アシドーシス 換気量が減少 CO 2 が増える ph が下がる 代謝で調整 HCO 3 - が増える ph が少し上がる 代謝による代償
病態 ( 呼吸の障害 ) 呼吸性アルカローシス 換気量が増加 CO2 が減る ph が上がる 代謝で調整 HCO3- が減る ph が少し下がる 代謝による代償
病態 ( 代謝の障害 ) 代謝性アシドーシス 酸が増える HCO3- が減る ph が下がる 換気量増加 CO2 が減る ph が少し上がる 呼吸による代償
病態 ( 代謝の障害 ) 代謝性アルカローシス 酸が減る HCO3- が増える ph が上がる 換気量低下 CO2 が増える ph が少し下がる 呼吸による代償
流れで考える ( アシデミア ) ph 主要な病態 代償 ph が 7.4 に近づく 代償が不充分な理由 7.4 以下は アシデミア 呼吸性アシドーシス 代謝性アシドーシス 充分 不充分 充分 不充分 代償しきれない 代償が間に合わない 代謝性アシドーシスも合併 呼吸性アシドーシスも合併
流れで考える ( アルカレミア ) ph 主要な病態 代償 ph が 7.4 に近づく 代償が不充分な理由 7.4 以上は アルカレミア 呼吸性アルカローシス 代謝性アルカローシス 充分 不充分 充分 不充分 代償しきれない 代償が間に合わない 代謝性アルカローシスも合併 呼吸性アルカローシスも合併
ph 7.49(7.38 7.46), PaO 2 115 Torr, PaCO 2 28Torr(32 46), HCO 3-22mEq/l(21 29) ph 主要な病態 代償 ph が 7.4 に近づく 代償が不充分な理由 7.4 以上は アルカレミア 呼吸性アルカローシス 代謝性アルカローシス 充分 不充分 充分 不充分 代償しきれない 代償が間に合わない 代謝性アルカローシスも合併 呼吸性アルカローシスも合併 急性呼吸性アルカローシス
ph 7.38(7.38 7.46), PaO 2 70 Torr, PaCO 2 55Torr(32 46), HCO 3-35mEq/l(21 29) ph 主要な病態 代償 ph が 7.4 に近づく 代償が不充分な理由 7.4 以下は アシデミア 呼吸性アシドーシス 代謝性アシドーシス 充分 不充分 充分 不充分 代償しきれない 代償が間に合わない 代謝性アシドーシスも合併 呼吸性アシドーシスも合併 慢性呼吸性アシドーシス
ph 7.48(7.38 7.46), PaO 2 80 Torr, PaCO 2 50 Torr(32 46), HCO 3-35 meq/l(21 29) ph 主要な病態 代償 ph が 7.4 に近づく 代償が不充分な理由 7.4 以上は アルカレミア 呼吸性アルカローシス 代謝性アルカローシス 充分 不充分 充分 不充分 代償しきれない 代償が間に合わない 代謝性アルカローシスも合併 呼吸性アルカローシスも合併 代謝性アルカローシス
ph 7.20(7.38 7.46), PaO2 70 Torr, PaCO2 38 Torr(32 46), HCO3-18 meq/l(21 29) ph 主要な病態 代償 ph が 7.4 に近づく 代償が不充分な理由 7.4 以下は アシデミア 呼吸性アシドーシス 代謝性アシドーシス 充分 不充分 充分 不充分 代償しきれない 代償が間に合わない 代謝性アシドーシスも合併 呼吸性アシドーシスも合併 代謝性アシドーシスの時の裏技ルール HCO 3- + 15 = 予測 CO 2 代謝性アシドーシスと呼吸性アシドーシスの合併
血液ガスのまとめ ステップで考えると分かりやすい ( はず ) ステップと同じ手順で 理解を深めていく なんとなくわかってきたら, アニオンギャップにも挑戦 iphone APP : Acid Plus など