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行列を用いた連立一次方程式の解法 概要私たちは数学 C で一次連立方程式の正方行列を用いた解法を学んだ 今回はこれをベースとし 元一次連立方程式の解法への拡張を目標とした まず 行列の性質から解をもつ条件 不定解の処理を考えた また 逆行列を求める手法は一般的に煩雑である そこでそれ以外に Crmer の定理 掃き出し法などの解法も検証した 今回の研究は発展的で難しかったが 研究を通してより多角的で数学的な思考の一端を学べた. 目的 実数係数の連立一次方程式の行列を用いた解法を検証 実践する. 方針数学 C の分野で学んだ行列を用いた二元一次連立方程式の解法を 元連立一次方程式まで拡張することを目標とする そのために 以下の概念を順に検証する Ⅰ 解をもつ条件 Ⅱ 解の処理 Ⅲ 実際の解法 逆行列を用いた解法 Crmer の定理を用いた解法 掃き出し法. 検証 これ以降 すべての数を実数の範囲で考える 〇検証にあたってこの研究にあたって 以下の事柄を前提として進める 線型性 写像に関する次の性質二つを線型性線型性という y f f y f f 加法 f 定数倍 有限個の元に対してこの二操作 加減 定数倍 を有限回行って作られる元 集合の要素 を もとの元に対して線型従属 一次従属 であるという -

一方 この操作で作れない元をもとの元に対して線型独立 一次独立 であるという また 線型従 属である元を一次結合一次結合という 線型従属である元は 線型独立である有限個の元の一次結合で表される これに関して ベクトル,, が線型独立かつベクトル,,,, が線型従属ならば は,, に線型従属である は,, の一次結合で表される が成り立つ 証明 ベクトル,,,, について 少なくとも一つ以上が でない任意の実数,,,, を用 いると 次の関係式が成り立つ このとき とすると となり,, が線型独立であることに反する ならば であることが導かれる 証明終わり が成り立ち は,, に線型従属 また このとき, l m と 通りで表されると仮定すると l l m,, は線型独立であるから零ベクトルは高々 つである ゆえに m よって仮定は成立せず 一次結合はただ一つの形で 一意に 表される m l よりl m ベクトルとスカラー 大きさ と 向き を併せもつものをベクトルベクトルといい 大きさ のみをもつ物をスカラースカラーという 特に 図形に現れる有向線分 B などと表記されるもの は幾何学的ベクトルと呼ばれる 一方,, は数ベクトルと呼ばれる 原点を始点 座標,, を終点とする位置ベクトルはただ一通りに,, を示す -

行列は各行 列ごとに分割して行 列ベクトルに分解できる 例 は列ベクトル,, に 行ベクトル,, に分解し て考えることができる 行列 の i, 成分が で与えられているとき i,,, と表すことがある クロネッカーのデルタ δi をクロネッカーのデルタ クロネッカーのデルタという これは単位行列 E の i, 成分を表す関数である つまり E から対角成分は それ以外は であるからδi i i である 例 δ δ 置換ある有限集合があるとき その要素を自身の上へ一対一に移す写像のことを置換という 集合 {,, } を像 {,,, } に移すとき σ と表す 例 σ は 要素 が に 要素 が 自身に 要素 が に 要素 が に移されていることを示す 行列式 個の変数 i,,,, に関する多項式 σ σ σ σ S sgσ を 次の行列式という 定義 行列式は正方行列ごとに定義される固有の多項式である -

これを一般的には de と表す 行列式の値が でない数になる行列を特に正則な行列正則な行列という, 例 行列式の性質 ある行列の行成分と列成分を入れ替えた行列 転置行列 の行列式の値は 元の行列式の値に等しい よって 行列式は行と列に関して対称であり 一方にいえる性質は他方にもいえる行列式は行と列に関して対称であり 一方にいえる性質は他方にもいえる 行列の多重線型性行列式は各行 列 ベクトルについて線型である ⅰ. 第 列の成分が複数項の和で表されるとき この行列式の値は第 列を各項で置き換えて得られる複数の行列式の値に等しい ⅱ. 第 列の成分を定数倍して得られる行列の行列式は 元の行列式の値の定数倍に等しい 行列の交代性 ⅰ. 行列式の行を入れ換えると 行列式の値の符号が変わる ⅱ. 行列式の複数行が一致すれば その値は である 以上の性質から次のことがいえる 行列式のある行 列 に他の行 列 の各成分を定数倍したもの 一次結合 を加えても行列式の値は変わらない 例 第 列に第 列の成分を加えても 行列の基本変形行列式との操作とは別に 以下の操作を行列の基本変形と呼ぶ ⅰ. ある行 列 同士を入れ換える ⅱ. ある行 列 を定数倍する ⅲ. ある行 列 に他の行の定数倍を加える以上で示したように 基本変形によって行列式の値は変わらない -

階数 行列は基本変形によって 左式のように対角成分のいくつかを その他の成分を にすることができる この形を標準形といい の成分の個数を階数という 階数は行列の基本変形をどのような順で行っても変わらず 一つの行列に対してただ一つ決まる また ある行列を {,, } という列ベクトルの並びであると考えると 線型従属であるベクトル 同士はその定数倍に一致するため排除できる ゆえに 階数はこれらのベクトルが互いに線型独立であるベクトルの数であると考えることもできる 小行列式と余因子 例 正方行列のある行と列を除いた行列式を小行列式小行列式という また その行 列を第 i 行 第 列とすると その小行列式に を乗じたものを余因子余因子という この行列式の, 小行列式は である また, 余因子は ある行列の i, 成分を その余因子 で置き換えた行列の転置行列を余因子行列 余因子行列という 例 の余因子行列は で与えられる 行列式の展開 余因子展開 これは行列式の値を求める方法の一つで 列に対して 行に対して i i で定義される 例 つまり ある行 列について展開するとき i, 成分とその余因子の項の総和のことを指す de この行列式を第 列について展開する -

-,,, 以上より de 一般的に 行列式の展開は非常に煩雑である 実際に展開する際は行列の基本変形を用いて 展開する行 列にできるだけ を増やしてから展開するといくらか手間が省ける 連立方程式への応用連立方程式への応用連立方程式への応用連立方程式への応用一般の連立一次方程式は以下のような形で表すことができる m m m m m このとき 左辺の係数をそのまま並べた行列を係数行列係数行列係数行列係数行列といい 右辺の定数項から成る列ベクトルを係数行列の右端に並べた行列を拡大係数行列拡大係数行列拡大係数行列拡大係数行列という また 解が存在するとき,,, から成る列ベクトルを解ベクトル解ベクトル解ベクトル解ベクトルという また 係数行列を 右辺の列ベクトルを とおくと上記の連立方程式は と表せる 例 において 係数行列は 拡大係数行列は である

Ⅰ 解をもつ条件一般の一次連立方程式の解について 以下の定理が成り立つ 連立一次方程式 について 拡大係数行列 とおく この連立方程式が解をもつための必要十分条件は r r 証明 連立方程式 すなわち m について考える m この連立方程式の係数行列の列ベクトルを {,, } この連立方程式が解,,,,,,, り 次の等式が成り立つ, m とおく ただし係数行列は正則 をもてば 各列ベクトルは線型独立であ,, に対して線型従属である は列ベクトル {,, } の線型結合で表せる つまり { } 行列の基本変形によって階数は変わらないから 解をもつならば r r が成り立つ 逆に r r r r とおくと 拡大係数行列においてベクトル は線型独立で はなく 係数行列の r 個のベクトルの一次結合として表すことができる つまり 任意の定数 {, }, が定まれば が成り立つ このとき {,, } は 解そのものであり この連立方程式が成り立つことと同値である 証明終わり また 次の定理は解の種類を判定するのに必要なものである 消去法の原理 連立方程式 m m * は必ず自明な解 をもつ しかし それ以外の解をもつならば係数行列の行列式の値は である 正則な行列ではない この定理に関する諸証明はⅢ 章 Crmer の定理のパートで示す この定理から が正則であることは連立方程式がただ一組の解をもつことの必要十分条件である が示される つまり 連立方程式がただ一組の解をもつためには係数行列が正則である必要がある 正則でなければその連立方程式は解をもたない 不能 か 解の組が複数存在する 不定解をもつ -

Ⅱ 解の処理解の組数は階数と変数の個数によって異なる 階数とは先述したように行列における互いに線型独立な行または列ベクトルの個数であるので ここでは y z と yz のような ある方程式をスカラー倍すると互いに一致する方程式を極力除いたときの方程式の本数と読み替えても良い ⅰ < r のとき 変数の個数より階数が大きいとき rr > とするとき 係数行列のr 次の小行列式は とは異なる このとき その r 次の小行列式を r とおく r は拡大係数行列の小行列式でもある 階数の定義から r の行ベクトル,, は互いに線型独立である よって残りの r 個の行ベクトル r に入っていない行ベクトル は線型従属であり ベクトル,, r の一次結合で表される つまり 残りの r 本の方程式はベクトル,, r の一次結合で表されるから 最初のr 本の方程式を満たす解は必ず残りの方程式も満たす ゆえに この場合は任意の r 本の方程式だけを考えればよい また ただ一組の解ただ一組の解をもつ 後述 r m r rr mr r m r m 線型独立である r 行 上の r 行の一次結合 r r m m r m この r 本のみを考えればよい 上の r 本が満たされれば自動的に満たされるため 考える必要は無い ⅱ > r のとき 階数より変数の個数が大きいとき 次の定理が成り立つ 一般の連立方程式においてr r r ならば 個の変数のうち r 個はその連立方程式の 解として 任意の値をとり得る つまり このとき 必ず r 個の解は任意の値をとる解を含めた形で与えられる ゆえにr 個の解 は残りの r 個の解の一次結合で表せる 実際は一次結合に定数項が加わることが多い またこの解 は一つに定まらないため不定解 一般解 である r 個の解は任意の値でその連立方程式を満たすから r 個の解もその連立方程式を満たす よって 不定解が出るときは任意の r 個の変数を任意の値をとり得る定数として扱えばよい 数として扱えばよい -

- ⅲ r のとき 階数と文字の個数が等しいとき ⅱ の定理から 任意の値をとる定数はないからただ一つの解の組ただ一つの解の組ただ一つの解の組ただ一つの解の組 特異解 をもつをもつをもつをもつ 例連立方程式 を解く 係数行列 より r である 変数は三個あるからいずれか一つは任意の値をとる ⅱ のパターン ここでは変数 が任意の値をとり得るとして を任意の値の定数 で置き換える すると これを解くと ゆえに解は となる 逆に この解を代入すると となり 確かに の値に依らずこの連立方程式を満たす Ⅲ 実際の解法実際の解法実際の解法実際の解法 逆行列を用いた解法逆行列を用いた解法逆行列を用いた解法逆行列を用いた解法まず そもそも逆行列を用いて解が求められるかを示す 連立方程式 について は正則な行列とする この式に左から をかけると となり解ベクトルが求めることができる このとき逆に より は確かにこの方程式の解である この解法でポイントになるのは 次の正方行列の逆行列を求める方法である

d 次の正方行列 に対して逆行列は で定義されることは有名である d が 次以上の場合も含め 逆行列を求める根本的な方法を検証する まず 必要となるのは次の定理である δ i i これは行列式の展開 余因子展開 の拡張で 成分と余因子の積についての性質を説明している 上の式でi のとき つまり成分が一致しないときそれぞれの積は i のとき つまり成分が一致するときこの式は余因子展開そのもので 積の総和は行列式の値と等しい この定理を利用して次の定理を証明する を正則な行列 の余因子行列とおいたとき E 証明 E 積は必ず対角成分が行列式の値に等しくなるため同様に E も示される 証明終わり この定理から 次のように変形できる つまり 逆行列は次の形で与えられる 行列 の余因子行列 として 逆行列は で与えられる -

- 例 z y z y z y を逆行列を用いて解く この連立方程式は z y とおける まず 係数行列の逆行列を求める ゆえに係数行列は正則であり 連立方程式はただ一組の解をもつ 次に余因子行列を求める のように他の成分についても余因子を求めると余因子行列は ゆえに逆行列は 最後に解を求める 逆行列を左からかけて ゆえに求める解は z y

Crmer の定理を用いた解法この解法の中核となるのは次の定理である Crmer の定理 連立一次方程式 m は 係数行列 が正則ならばただ一組の解 m m,, をもつ ただし は係数行列の第 列を右辺の成分で置き換えた行列 である 証明 係数行列 は正則であるとする 連立方程式 とおく この第一行 の両辺に第 行第 列の余因子 をかけると が得られる i この操作を 行まで行い両辺をたすと このとき左辺の ゆえに δ より 以外の項は となる i の係数 i は係数行列の行列式である i δ かつi より は の を で置き換えたものである つまり 第 列を右辺の定数項で置き換えた行列の行列式である -

- これを とおくと 命題の式が導かれる ここで求められた解を元の連立方程式に代入すると i i i i 括弧内のうち を含む項以外は になる 含む項は であるから ゆえに元の式が導かれ 確かにこの連立方程式の解であることが示された 証明終わり 例 z y z y z y を Crmer の定理を利用して解く まず係数行列は よって係数行列は正則であり Crmer の定理が適応できる この連立方程式は z y とおけるから 係数行列の第 列を右辺の成分で置き換えた行列について

から, y, z ゆえに求める解はy z 消去法の原理 Crmer の定理より,, が定義されることで 係数行列が正則 ならば 連立方程式はただ一組の解をもつ が成り立つ このとき 連立方程式 m m * を考える * は必ず自明な解 をもつ ここで上の定理から ならば自明な解以 外の解 以外の解 をもつことは無い この対偶をとると 連立方程式 * が自明でない解 をもつならば 係数行列は正則でない これが消去法の原理である またこの対偶において,, を係数行列の列ベクトルとすると 少なくとも一つ以上が でない任意の実数,, を用いて,, に関する等式 が成り立つ ゆえに,, は線型従属である ベクトル,, 列ベクトル,, から成る行列 をとおくと 連立方程式 は -

複数組の解をもつ ゆえに 列ベクトルが線型従属ならばその行列式は正則でない列ベクトルが線型従属ならばその行列式は正則でない ことは消去法の原理に同値である 消去法の原理は逆も成り立つ それを示すには次の補題を示す必要がある ベクトルの集合 {,, } B {,, }, p を考える, の元のベクトルが互いに線型独立かつ 各元が B の元に線型従属ならば 特に p p s である p s ならばB の元のベクトルも互いに線型独立であり の元に線型従属である 証明 ベクトルの集合 {,,,, }, p s を考える これを左から順に線型独立であるものを できるだけ個数が大きくなるように選び出す操作を行う すなわち線型独立であるベクトルの極大集合をとる ベクトル,, p は仮定よりすべて選び出され このとき この極大集合の元の数は p r である は一部のみ 個数 r s が選び出される また {,,, }, s p についても極大集合をとると は必ず のいずれかに対して線型従属 であるからすべて選ばれず は一部のみ 個数 s とする 選び出される このとき この極大集合の元の数は である 以上の 操作より得られた極大集合は集合 {,,, }, p s クトルの極大集合に変わらないから 元の個数は等しい つまりp r より s からp s が得られる よって p s から得られる 互いに線型独立なベ また p であるときはr の場合であり p s である 補題証明終わり さて 補題から 次元ベクトルの集合 {,,, } れる m のうち 線型独立なものは 個以下 が得ら これは先ほど示した命題において B を単位ベクトルの集合 { e, e,, } に置き換えて考えたものと等しい つまり m が成り立つ 特に m であるとき はe, e, e の一次結合であり,, は互いに線型独立である このとき が成り立つとき であり 連立方程式 は自明解 しかもたない e -

ゆえに Crmer の公式より,, であり かつ 正則である 以上より 連立方程式 * が自明な解ただ一組をもつならば 係数行列は正則である が成り立つ 同時に対偶 係数行列が正則でな係数行列が正則でないならば連立方程式は自明な解以外ももついならば連立方程式は自明な解以外ももつ も成り立ち 消去法の原理は逆が成り立つことが導かれた これより が正則であることは連立方程式がただ一組の解をもつことの必要十分条件である 掃き出し法行列の階数を求める際 行列の基本変形を繰り返し行い標準形を作った この操作を掃き出し法という この解法では 拡大係数行列に掃き出し法を適用し 係数行列部分のみを標準形に直すことで解を求める ここで必要な操作は基本的に行についての操作 つのみである この解法の目的は すなわち の形をつくることである よって列についての操作は意味を成さない 行にのみ基本変形を使って右辺の項だけを残す形になれば完了となる ここで 行に対しての変形は 行列を使わずに加減法を用いて各方程式を加減 定数倍する操作を行列上で行っていることに他ならない 例 を掃き出し法を用いて解く この連立方程式の拡大係数行列は である 第 行の - 倍を第 に - 倍を第 行に加える -

第 行を - 倍し それを第 行に加える 第 行を 倍し その - 倍を第, 行に加える 第 行を 倍し その - 倍を第 行に加える ゆえに求める解はy z. 考察一つ目に 連立一次方程式と行列の関連性について 両者とも一次結合 一次式 で表すことができるという共通点を持っている 前述したように 行に関する基本操作は方程式間での加減法そのものである これは ベクトルの集合として構成されるという行列の基本概念によるものである 少々煩雑ながらも 複数の解を一度に出せるというのは行列を利用するメリットの一つである 二元一次の連立であれば逆行列 Crmer の解法 掃き出し法のいずれを用いても手間は同じくらいである ぜひ日常の計算で実践されたい 逆に この特性上 y などの未知数の積の形や など二次以上の項は扱えない また 例からも 分かるように次数が一つ上がると元は 次関数的に増えていくために煩雑さが増す 手計算で高次の行 列を処理するのはかなり大変であるため 解法の一例として考えてもらいたい また もう一つのメリットとして解の判別が容易になることが挙げられる 次方程式においては判 別式を用いることで解の判別ができる 連立一次方程式においては 係数行列が正則か否かを調べるこ とが判別式を解くことに相当すると考えられる その上 方程式間の加減 代入を積み重ねる方法より も不定解の処理がしやすい 日常的に不定解をもつ方程式ばかり解くことは少ないだろうが 行列を使 うことで方程式を解く手順に迷うことは少なくなるだろう 二つ目に 一般の方程式全体について考える 連立一次方程式の特徴として 任意の値をとる変数を -

定数として考えれば 解が存在する限りすべての解を求められる性質を検証した Ⅱ この性質は実数の範囲で考えても複素数の範囲で考えても成り立つことが分かる これは 任意の値の定数に代入する数の範囲 体 で解の数の範囲が決まることによる 実数の範囲で解けない連立方程式は複素数の範囲でも解けない 逆に複素数の範囲で解けるならば実数の範囲でも解ける つまり 任意解を実数の範囲で考えれば実数解が 複素数の範囲まで考えれば複素数解が出る これは一次の項のみで構成される からこその特徴である 例えば y y という方程式は実数では解が存在しないが複素数では存在する 一般に代数方程式は高次になれば解の範囲が変化する性質 解の自由度 を持っている その系として 連立一次方程式では解の自由度は体に依らないことが分かる. 感想連立一次方程式は 数学の上で基本的かつ重要な事項であるが 日常の計算では加減法 代入法しか用いていなかった よって今回は研究を進めるうちにそれ以外の解法が多数あることに驚いた 普段当前だと思って考えていることを 別の観点から見ることで新たな考え方と結論に到達できる 今回はその結論に達するための力を身につけることができた 今回は特に大学で習う発展的な概念を学んだために それを強く感じた 今後の学習に対しても 今回学んだ概念や態度をもとに取り組んでいきたい. 参考文献書籍線型代数学 裳華房 佐武一郎著線型代数学入門 学術図書出版社 横井英雄著 We サイト 考える線型代数 旧線型代数 @wii 阿原一志著 線型代数学入門横田壽著 -