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x: あばら筋の間隔 wf t : あばら筋の長期許容引張応力度その他の記号は前出による ⅱ) 梁 柱の長期設計用せん断力は その部材の長期荷重による最大せん断力とする (2) 短期荷重時せん断力に対する修復性の検討は 下記による なお 本条 2 項 (3) によっ て短期設計を行う場合は 下記の算

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安藤建設技術研究所報 コンクリートフランジを有する 梁と 柱で構成される 十字型柱梁接合部の部分架構実験 田畑 卓 * 西原 寛 ** Partial Frame Test of Inner Beam-Column Joint Composed of Steel Beams with Conrete Flange and RC Columns by Taku TABATA and Hiroshi NISHIHARA Abstrat We proposed an RCS struture that added the onrete flange to the top and bottom of the steel beam, and verified the strutural performane by the partial frame test. The prinipal parameters were the existene of beam bars, width of the onrete flange and the existene of an orthogonal beam et. If alulation value is based on the SRC standard of AIJ, the shear strength of the beam-olumn joint panel was midway between that of steel reinfored onrete beams and that of steel beams. The strength of the rak ourrene point and steel yield point at the beam-olumn joint panel was safely evaluated by the allowable strength for sustained loading and temporary loading. 要 旨柱 RC 梁 S 構造の接合部せん断耐力を確保するために, 梁鉄骨の上下にコンクリート製のフランジを付加する工法を提案し, 部分架構実験よりその性能を検証した 実験因子は梁主筋の有無, コンクリートフランジ幅, 直交梁の有無などである 実験結果による本工法の柱梁接合部せん断耐力は,SRC 規準に基づき評価したところ, 梁部材をコンクリートフランジと同幅の断面を有する SRC 造とみなした場合, コンクリートフランジを無視して S 造とみなした場合のほぼ中間に位置した また, 柱梁接合部におけるひび割れ発生荷重および帯筋 鉄骨ウェブの降伏荷重について, それぞれ長期 短期許容耐力により安全側に評価できることを確認した キーワード : 混合構造 / 合成梁 / 柱梁接合部 / せん断耐力 / 部分架構実験 1. はじめに柱を鉄筋コンクリート (RC) 造, 梁を鉄骨 (S) 造とする RCS 構造は, 軸力に強い RC 造と曲げ及びせん断力抵抗に優れる S 造を組み合わせた合理的な架構形式の一つである RCS 構造においては従来, 柱梁接合部の性能を確保するために, ふさぎ板やダイヤフラム, バンドプレート等の加工を施した様々なディテールが提案されているが, 近年ではこれらの適用範囲拡大のほかに, 接合部応力の比較的小さい場合を対象として, 加工を出来るだけ省力化した簡易な接合部形式の需要が高まってきている 梁鉄骨貫通型の RCS 構造では, 柱と梁の応力伝 達機構を確保する上で, 接合部のせん断破壊とともに, 梁鉄骨のてこ機構による接合部支圧破壊を防止する必要がある このうち, 後者の破壊形式は梁を SRC 造とした場合には想定されず,RCS 構造において特有となる問題である また, 文献 [1][2] によれば,RCS 構造は SRC 構造よりも接合部有効体積が小さく, 接合部せん断耐力が低くなる傾向にある そこで,SRC 梁に対して梁鉄骨ウェブ側部のコンクリートを省略する形式の合成梁による RCS 架構を提案し, 接合部耐力の確保と梁部材の軽量化を目指した 本報では部分架構実験により接合部の構造性能を検証したので, その概要を報告する * 技術研究所構造研究室 ** 技術研究所所長 59

安藤建設技術研究所報 梁 試験体 SRC1 SRC3 2 3 軸方向筋 3-D19 [SD49] ( 接合部貫通 ) 3-D6 [SD295A]( 柱面定着 ) コンクリートフランシ x75 x75 x75 x75 x75 x75 225x 鉄骨 スタッド直交梁 柱 接合部補強筋 実験要因 SRC タイフ 基準 H25 14 14 9 C フランシ 幅狭 表 試験体一覧 H 14 15 1 H25 14 14 9 H25 14 25 9 2-φ13@75 2-φ13@15 あり なし あり 断面 : bxd=xmm 主筋 : 12-D19 [SD685] 帯筋 : 4-D1@75 [SD295A] 軸力 :72kN (=.15FbD) 2-D6 x 3 組 [SD295A] ( 分割補強筋 ) C フランシ 幅広 梁鉄骨サイス 大 直交梁なし タイフ 基準 C フランシ 幅狭 C フランシ 形状 SRC1 3-D19 3-D19 (SD49) (SD49) 3-D6 12-D19 (USD685) 4-D1 反曲点距離 =26 反曲点距離 =18 12-D19 (USD685) 4-D1 12-D19 (USD685) 4-D1 5 65 17 65 柱断面 5 65 5 65 17 5 2-D6 8 14 8 2-D6 3 14 3 13 14 13 8 14 8 8 14 8 3 14 3 SRC1 SRC3 2 3 図 試験体断面詳細 4 35 75 45 2-D6 25 35 65 45 42.5 14 42.5 225 2. 実験計画 2.1 試験体表 に試験体一覧, 図 に試験体断面詳細を示す 試験体は約 1/2 縮尺の十字型部分架構で全 8 体である いずれも接合部せん断破壊が先行するように計画した 梁鉄骨が接合部内を貫通する形式とし, 接合部では柱面に上下フランジ間の支圧板 (FBP) を溶接しただけの簡易な形式とした 鉄骨上下のコンクリート部分 ( コンクリートフランジと称する ) は, 完全合成梁として挙動するように, 梁鉄骨フランジに十分なスタッドを配置するとともに [3], 材軸直交方向に割れ止め用鉄筋を配筋した また, 接合部内のせん断補強筋は, 鉄骨ウェブを貫通させない分割方式とした 試験体は上下コンクリートフランジ内に梁主筋を 表 使用材料の材料試験結果 種別 鋼種 使用箇所 降伏応力引張強さヤンク 係数 (N/mm 2 ) (N/mm 2 ) (kn/mm 2 ) D19 SD49 梁主筋 54 72 D19 USD685 柱主筋 759 121 26 D1 SD295A 帯筋 36 522 189 D6 SD295A 接合部補強筋 371 538 187 PL14 SS フランシ (SRC1-3,5) 267 446 197 PL9 SS ウェフ (SRC1-3,5) 325 472 195 PL15 SS フランシ () 31 467 24 PL1 SS ウェフ () 331 48 21 PL25 SS フランシ (-3) 257 416 21 PL1 SS ウェフ (-3) 31 464 211 b) コンクリート 使用箇所 圧縮強度割裂強度ヤンク 係数 (N/mm 2 ) (N/mm 2 ) (kn/mm 2 ) コンクリートフランシ ( 下 ) 32.7 2.92 27.2 コンクリートフランシ ( 上 ) 接合部 下柱 32.4 2.78 26.1 上柱 35. 3.2 27.1 6

コンクリートフランジを有する 梁と 柱で構成される十字型柱梁接合部の部分架構実験 内蔵した SRC タイプ と, スラブ筋程度の軸方向筋を柱面手前で定着した タイプ とに大別される SRC タイプでは梁主筋およびコンクリートフランジ厚を共通に, コンクリートフランジ幅, 鉄骨サイズ, 直交梁の有無を変動させた タイプではコンクリートフランジ幅および形状を変動因子とした 表 に使用材料の材料試験結果を示す コンクリートの設計基準強度は F=3N/mm 2 である 2.2 加力 計測 実験は柱に.15F b D の一定軸力を与えた状態で, 柱反曲点位置をピンローラー支持し, 梁に逆対称の正負交番漸増繰り返しの載荷を行った 加力 は層間変形角による変形制御とし,R=1/,1/ を各 1 回,R=1/,1/5,1/33 を各 2 回,R=1/25 を 1 回繰り返した後,R=+1/2 まで載荷した 3. 実験結果 3.1 破壊経過および履歴性状図 に層せん断力 - 層間変形角関係, 写真 に最大耐力時 (R=1/5rad.) および R=1/25rad. 時の破壊状況を例示する また, 表 に実験結果一覧を示す 各試験体とも R=1/~1/rad. で接合部せん断ひび割れが発生し, およそ R=1/rad. までに接合部内鉄骨フランジが降伏した その後,SRC タイプでは接合部せん断ひび割れが複数発生するともに, 接合部せん断補強筋, 接合部内鉄骨ウェブがそれぞれ SRC1-4 -2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - - - -4-2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - - - - - -4-2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - -4-2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - - - - - -4-2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - 2 - - -4-2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - SRC3-4 -2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - - - 26 N=.15bDF 18 点線 : 接合部せん断耐力計算値 (SRC 規準梁 S) 一点鎖線 : 接合部せん断耐力計算値 (SRC 規準梁 SRC) : 接合部せん断ひび割れ発生, : 接合部内鉄骨フランジおよびウェブ降伏 : 接合部内せん断補強筋降伏 : 最大耐力 3-4 -2 2 4 6 - R ( 1-3 rad.) - - - 図 層せん断力 - 層間変形角 関係 61

安藤建設技術研究所報 Vol.16 21 表 3 実験結果一覧 試験体 接合部 実験値 [kn] ひび割れ 計算値 [kn] 耐力 実/計 最大耐力実験値 [kn] 梁曲げ 計算値1 [kn] 耐力 (実/計1) 柱曲げ 計算値2 [kn] 耐力 (実/計2) 計算値3 [kn] (実/計3) 接合部 せん断 計算値4 [kn] (実/計4) 耐力 計算値5 [kn] (実/計5) SRC1 116 97 1.2 334 518 (.64) (.62) 248 (1.34) 412 (.81) 318 (1.5) 112 96 1.16 312 518 (.6) (.58) 248 (1.26) 372 (.84) 299 (1.4) SRC3 117 98 1.19 343 518 (.66) (.64) 248 (1.38) 452 (.76) 337 (1.2) 158 118 1.35 389 683 (.57) 554 (.7) 332 (1.17) 52 (.75) 374 (1.4) 138 97 1.42 35 518 (.59) (.57) 248 (1.23) 412 (.74) 299 (1.2) 125 88 1.41 336 483 (.7) (.63) 231 (1.45) 289 (1.16) 2 121 86 1.4 313 483 (.65) (.59) 231 (1.35) 27 (1.16) 3 131 96 1.37 351 476 (.74) 554 (.63) 239 (1.47) 294 (1.19) 備考 本報の式(11)による 完全剛性梁としての 全塑性曲げ耐力 SRC規準による[S梁] コンクリートフランジ無視 SRC規準による[SRC梁] (コンクリートフランジ幅=梁幅) 本報の式(1)による 降伏し R=1/5rad.で最大耐力に達する傾向であっ たが 鉄骨せいを大きくした では最終変形ま で鉄骨ウェブの降伏は認められなかった 梁主筋は いずれの試験体も弾性範囲に留まった 一方 タイプでは R=1/rad.のサイクルで 鉄骨ウェブ およびフランジが降伏した後 接合部内せん断補強 筋も降伏して R=1/5rad.で最大耐力に達した 接合 SRC1 (R=1/5rad.) SRC1 (R=1/25rad.) (R=1/5rad.) (R=1/25rad.) (R=1/5rad.) (R=1/25rad.) 部せん断ひび割れの発生状況においては SRC タ イプと タイプとで有意な差はみられなかった いずれの試験体も最大耐力時においてはコンクリ ートフランジのずれや梁端部での圧壊の兆候は認め られなかったが 最大耐力以降では 接合部せん断 ひび割れの拡大 進展に伴い 梁端部コンクリート も圧壊し始めた 直交梁のない は他の試験体 に比べて 最大耐力以降の接合部の損傷が激しい 履歴性状は逆 S 字化の傾向であるものの 耐力低 下の少ない安定した挙動を示した 最大耐力は SRC1 SRC3 および 2 にお いて コンクリートフランジ幅が広いほど高くなる 傾向であった また に対しては SRC1 の最 写真 1 破壊状況例 大耐力が 1 割程度高く 直交梁による効果が認めら れた ける接合部変形成分は 7%程度で 全試験体中最 も高い値を示している 一方 タイプは SRC タ 3.2 変形成分 柱梁接合部の正面四隅で計測した鉛直 水平変位 イプと比べて 接合部変形成分の割合が低めで 梁 変形成分の割合が高めに推移する傾向が認められる より 全体変形を柱 梁 接合部のそれぞれの変形 これは SRC タイプでは梁主筋の存在により 梁か 成分に分離した 図 3 に各サイクルピーク時の変形 ら直接的に接合部の RC 部分に伝達されるせん断力 成分の比率を示す の割合が大きいのに対し タイプでは接合部内 同図より いずれの試験体も層間変形角とともに の鉄骨ウェブによる抵抗が大きいためと考えられる 接合部の変形成分の割合が増大している SRC タ 柱の変形成分は全試験体を通して 最大で 1%程 イプでは最大耐力時の R=1/5rad.において 同変形 度であり 層間変形角に伴う増大傾向も認められな 成分が 5%程度を占めており このうち特に接合 かった 部鉄骨せいを大きくした は R=1/33rad.にお 62

コンクリートフランジを有する 梁と 柱で構成される十字型柱梁接合部の部分架構実験 % 2% 4% 6% 8% % % 2% 4% 6% 8% % % 2% 4% 6% 8% % % 2% 4% 6% 8% % 1/ 1/ 1/(1) 1/ 1/ 1/(1) 1/ 1/ 1/(1) 1/ 1/ 1/(1) 1/(2) 1/(2) 1/(2) 1/(2) 1/5(1) 1/5(1) 1/5(1) 1/5(1) 1/5(2) 1/5(2) 1/5(2) 1/5(2) 計測不能 % 2% 4% 6% 8% % % 2% 4% 6% 8% % % 2% 4% 6% 8% % % 2% 4% 6% 8% % 1/ 1/ 1/(1) 1/ 1/ 1/(1) 1/ 1/ 1/(1) 1/ 1/ 1/(1) 1/(2) 1/(2) 1/(2) 1/(2) 1/5(1) 1/5(1) 1/5(1) 1/5(1) 1/5(2) 1/5(2) 1/5(2) 1/5(2) 計測不能 図 各サイクルピーク時における変形成分の推移 接合部せん断補強筋の歪み 図 に接合部内せん断補強筋歪みε r と層せん断力の関係 ( 包絡線 ) を示す 同図より, 各試験体では接合部せん断ひび割れが発生する Q=15kN 程度からせん断補強筋の歪みが生じ始め, 最大耐力以前に降伏歪みに達している このことは, 接合部内のせん断補強筋を鉄骨ウェブ間での分割方式としても, せん断抵抗要素として有効に機能し得るといえる 特に SRC1 と では, 直交梁の有無により補強筋の分割数が異なるが, 歪みの推移は殆ど一致した 一方, コンクリートフランジ幅が異なる SRC1~3 および と 2 では, コンクリートフランジ幅が狭いほど早期に降伏歪みに達する傾向が認められた 直交梁のない は直交梁のある SRC1 と, 概ね同様の歪み推移であった 4. 柱梁接合部せん断強度の検討 接合部作用せん断力 本報における接合部作用せん断力は,SRC 規準 [1] による式 (1) で定義する また, 同式中における柱の内法高さh は, 上下コンクリートフランジの外 - 外面で定義した梁せい B Dより評価する.5.4.3.2.1..5.4.3.2.1. εr (%) εr (%) SRC1 SRC3 εry=.198% 2 3 εry=.198% 図 せん断補強筋歪み 層せん断力関係 すなわち, 本定義ではコンクリートフランジを含める形で, これをSRC 造梁とみなし接合部作用せん断力を求める M ( M + M ) h' h j = B B 2 1 (1) ここで, j M: モーメント換算した接合部作用せん断力 B M 1, B M 2 : 左右梁の柱面曲げモーメント h: 階高 ( 上下柱反曲点距離 ) h : 柱の内法高さ (=h- B D) 接合部有効体積 SRC 規準においては接合部終局せん断耐力式として下式が示されている 同式は接合部せん断強度と接合部有効体積の積で定義されるRC 部負担分と, 鉄骨ウェブによるS 部負担分との和によりせん断耐力を与える 本工法においても基本的には同様の考え方でせん断耐力を評価できるものと考えられるが, 63

安藤建設技術研究所報 この場合, 梁の構造形式によって接合部有効体積 V e が異なる点に注意が必要となる 1. 2sV s σy = e J s J w w Y + (2) 3 M V ( F δ+ p σ ) j U F min(. 12F, 1. 8 + 3. 6F ) J V e s = = (3) C b+ 2 B b mb d mc d : 梁 SRC or RC (4) C b V = d d : 梁 S (5) 2 e sb mc 5 4 3 2 1 接合部有効体積 (m 3 ) SRC 梁相当 SRC1 SRC3 S 梁相当コンクリートフランジ幅 (mm) V = t d d (6) s J w sb sc ここで, J δ: 接合部の形状による係数で以下による十字形 =3,T 字 ト字形 =2,L 字形 =1 C b, B b: 柱幅および梁幅 mc d, mb d: それぞれ柱および梁の主筋間距離 sb d: 鉄骨フランジの重心間距離 w p, w σ Y : せん断補強筋比および降伏強度 J t w, s σ Y : 鉄骨ウェブの厚さおよび降伏強度そこで,RC 部のせん断強度と鉄骨ウェブの負担せん断耐力はSRC 規準に倣うものとして, 本実験値から接合部有効体積を再評価を試みた 図 は, コンクリートフランジ幅のみ異なるSRC1~SRC3を対象として, 式 (7) および式 (8) より接合部有効体積の実験値 ( V e.exp ) を逆算し, コンクリートフランジ幅との関係を調べたものである ここで, J M max は式 (1) に基づく最大耐力時の接合部作用せん断力である また, 同図中にはコンクリートフランジを無視して S 梁とみなした場合, および鉄骨ウェブ側面にもコンクリートが充填されたSRC 梁とみなした場合の, SRC 規準に基づく有効体積の計算値も併せて示す J V e.exp M = J M RC.exp F δ+ p p (7) RC.exp J s J w w Y 1. 2sV s σy = J M max (8) 3 同図より, 接合部有効体積の実験値はコンクリートフランジ幅と線形関係にあり, 両計算値に対しては, ちょうどその中間を縫う形で分布していることがわかる すなわち, 本工法におけるコンクリートフランジ幅は,SRC 規準による梁幅ほど敏感には接合部有効体積に影響を及ぼさないといえる また, 両計算値は切片値にも違いがある これは梁の応力 図 接合部有効体積とコンクリートフランシ 幅の関係 中心間距離 ( 接合部有効高さ ) の採り方に起因しており, 具体的にはSRC 梁で梁主筋間距離,S 梁で鉄骨フランジ重心間距離としている スラブ付きRCS 構造における梁応力中心間距離の評価方法については文献 [4] に提案があり, ここではこれを踏襲し, コンクリートフランジおよび鉄骨ウェブを含めた断面の弾性曲げ応力から応力中心間距離 ( B b) を評価するものとした 以上より, 本工法における接合部有効体積を式 (9) で表す V e 2 = C b+ 4 B b B d mc d 接合部終局せん断耐力 前節では接合部有効体積について検討を行ったが, 本実験では前述したように, 直交梁の有無による影響も認められている SRC 規準にはこの影響が考慮されていない そこで, 接合部有効体積を式 (9) より評価するものとして, 接合部終局せん断耐力式を式 (1) で評価した j M U (9) 1. 2sV s σy = Ve ( η J Fs J δ+ wp w σy ) + (1) 3 ここで, η: 直交梁の影響を表す係数で以下による 直交梁あり =1., 直交梁なし =.9 図 に最大耐力に基づく接合部せん断耐力実験値と式 (1) による計算値の関係を示す なお, では最大耐力時において鉄骨ウェブが降伏しなかったため暫定的に, 式 (1) における第 2 項の係数 1.2を 1.として計算耐力を求めた 64

コンクリートフランジを有する 梁と 柱で構成される十字型柱梁接合部の部分架構実験 同図より,SRCタイプにおいては実験値と計算値が良好な対応を示していることがわかる タイプでも, コンクリートフランジに関わる実験因子の影響は概ね良く表現できているが,SRCタイプに比べると全体的にやや過小評価の傾向となった 本評価による梁応力中心間距離は,SRCタイプで269~ 274mm(を除く ),タイプで242~258mmであり, 双方で1 割程度の差異がある これに対して, 実験ではSRC1と,と2の最大耐力は殆ど一致する結果であった 接合部せん断ひび割れ耐力 SRC 規準では, 長期荷重時に柱梁接合部にせん断ひび割れを発生させないものとしている ここでは, 下式により接合部せん断ひび割れ耐力を評価する M = V f ( 1 β) J L s + 3 (11) V = b d d (12) B mc β = 15 J t w C b (13) f s = min F 3,. 5 + F (14) ( ) 同式はSRC 規準の長期許容せん断耐力式について, 梁有効せい ( B d) を前節と同様にコンクリートフランジおよび鉄骨ウェブを含めた断面の弾性曲げ応力から求めるとともに,βの算定において, 鉄骨ウェブの柱せい方向の長さは柱主筋間距離 mcdに等しいと仮定したものである 図 に接合部せん断ひび割れ耐力に関する実験値と計算値の対応を示す せん断ひび割れの観察は目視によるため幾分ばらつきがみられるが, 計算値は実験値を概ね良好に且つ安全側に評価できている 鉄骨ウェブおよびせん断補強筋の降伏耐力 接合部の終局せん断耐力は, 接合部内の鉄骨ウェブおよびせん断補強筋が降伏していることを前提に構成されているが, 接合部の損傷制御の観点からは, 1 次設計レベルでの過度な歪みの進展は望ましくない そこで, これらの鋼材の降伏がどの程度で生じるのか, 式 (15) で表されるSRC 規準による短期許容せん断耐力との関係を調べた 図 にその結果を示す ここで, 計算値は, 鋼材の基準強度 (F 値 ) および規格降伏点強度を用いて求めた J M S Ve ( fs j δ+ wp w ft ) + sv s fs = 2 (15) 6 実験値 jmmax (kn m) 同図より, 鉄骨ウェブについてはSRCタイプに比べ,タイプで幾分早期に生じる傾向がみられるが, いずれの試験体も鉄骨ウェブおよびせん断補強筋の降伏は, 短期許容せん断耐力を上回った 5. まとめ 3 2 SRC3 SRC1 SRC タイプ タイプ 計算値 jmu (kn m) 6 図 接合部せん断耐力の実験値と計算値の対応 25 15 5 実験値 jms (kn m) 2 3 SRC1 3 SRC タイプ タイプ 計算値 jml (kn m) 5 15 25 図 接合部ひび割れ耐力の実験値と計算値の対応 実験値 jmy (kn m) SRC タイプ ( 補強筋 ) タイプ ( 補強筋 ) SRC タイプ ( ウェブ ) タイプ ( ウェブ ) 計算値 jms (kn m) 図 鋼材降伏耐力と短期許容耐力の関係 柱 RC 梁 S 構造の梁鉄骨の上下にコンクリート製の 65

安藤建設技術研究所報 フランジを付加する工法を提案し, 接合部せん断破壊先行型の十字型部分架構試験体により, その構造性能を検証した 本実験より得られた知見を以下に示す 1) コンクリートフランジ内に梁主筋を配したSRC タイプ, 割裂防止筋のみを配したタイプともに, 接合部せん断耐力はコンクリートフランジ幅が広いほど高くなった また, 直交梁による1 割程度の耐力増大効果が認められた 最大耐力以降の荷重低下は比較的緩やかで安定した挙動を示した 2) 接合部内のせん断補強筋は, 鉄骨ウェブを貫通させない分割方式としたが, いずれも最大耐力以前に降伏し, せん断抵抗要素として有効に機能することが確認された 3) 本工法の接合部せん断耐力をSRC 規準に基づき評価したところ,RC 部の負担せん断力は, コンクリートフランジ幅と同じ梁幅を有するSRC 造梁, およびコンクリートフランジを無視した S 梁, それぞれの計算値のほぼ中間に位置した この結果に基づき, 本工法における接合部有効体積の評価方法を提案した 4) 接合部せん断ひび割れ荷重は,SRC 規準の長期許容せん断耐力式で安全側に評価された また, 接合部内鉄骨ウェブおよびせん断補強筋の降伏荷重は,SRC 規準の短期許容せん断耐力を上回った 参考文献 [1] 日本建築学会 : 鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準 同解説,1 [2] 日本建築学会 : 鉄筋コンクリート柱 鉄骨梁混合構造の設計と施工,1 [3] 日本建築学会 : 鋼構造限界状態設計指針 同解説,1998 [4] 坂口昇 : 鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁で構成される架構の剛性, 耐力および変形, 日本建築学会構造系論文集, 第 437 号,pp.125-134,1992.7 66