平成 24 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究 Ⅱ 論文題目 2011 年版医療関連問題集 の作成 Construction of 2011 editions medicinal workbook 情報薬学研究室 6 年 07P169 金子俊郎 ( 指導教員 : 土橋洋史 )
要旨 薬剤師になるための薬学教育は 平成 18 年度の入学生より 4 年制から 6 年制に変わり 薬剤師に求められる知識や技術は高度になってきている 今後必要とされる薬剤師は 患者との問診によって得られた症状から疾患や有害事象を特定し それらの重症化を未然に防ぐことや随伴症状を早期に発見し 適切な対応ができるように臨床的な判断力が求められていくものと考えられる 情報薬学土橋研究室では実際の症例データを入手し 医薬品副作用症例データベース を作成している 土橋 1 は 医薬品副作用症例データベース を基に 違いのわかる医薬品集 2 違いのわかる医薬品の重大な副作用 3 違いのわかる医薬品の重篤な副作用の随伴症状 4 違いのわかる医療用語集 5 および 違いのわかる医薬品の危険度 6 を作成し すでに書籍とした これらの書籍を用いることにより問題集を作成することが可能となり 医薬品とその薬理作用に関する問題や重篤な有害事象の随伴症状に関する問題 医薬品とその重大な副作用に関する問題 医療用語とその意味に関する問題や略語とその正式名称に関する問題 同効薬における第一選択薬の問題や同効薬を用いる際に注意が必要な医薬品の問題などを作成することが可能であると考えられる これらの問題に対して解答を得る行為は 薬剤師を含む医療関係者の知識の向上となり 薬剤師の臨床的な判断力の養成と向上に繋がるものと考えられるので 2011 年版医療関連問題集 の作成を試みた キーワード 1. 医薬品副作用症例データベース 2. 違いのわかる医薬品の重大な副作用 3. 違いのわかる医薬品の重篤な副作用の随伴症状 4. 違いのわかる医療用語集 5. 違いのわかる医薬品危険度 6. 違いのわかる医薬品集 7. 症状 8. 医療倫理 9. 医療用語
目次 1. はじめに 1 2. 対象と方法 2 3. 結果 2 4. 考察 7 5. 謝辞 9 6. 引用文献 10
論文 1. はじめに薬剤師になるための薬学教育は 平成 18 年度の入学生より 4 年制から 6 年制に変わり 薬剤師に求められる知識や技術は高度になってきている 病院や薬局の薬剤師は 調剤ができれば良いというわけでなく 患者が適切に医薬品を使用できるように服薬指導を行わなければならない 服薬指導を行う際は 患者にとって理解しにくい医療用語を患者にも理解しやすい言葉に変えて伝える必要があり また 問診によって患者の状態を見極め 状況に合わせて対応できる力が求められる ドラッグストアの薬剤師は お客の症状から必要な商品を的確に判断し 必要な情報を提供しなければならない 場合によっては医療機関への受診を勧めることも必要であり 病院や薬局の薬剤師と同様に状況に合わせて対応できる力が求められている 今後必要とされる薬剤師は 患者との問診によって得られた症状から 疾患や有害事象を特定し それらの重症化を未然に防ぐことや随伴症状を早期に発見し 適切な対応ができるように臨床的な判断力が求められていくものと考えられる 情報薬学土橋研究室では実際の症例データを入手し 医薬品副作用症例データベース を作成している 土橋 1 は 医薬品副作用症例データベース を基に 違いのわかる医薬品集 2 違いのわかる医薬品の重大な副作用 3 違いのわかる医薬品の重篤な副作用の随伴症状 4 違いのわかる医療用語集 5 および 違いのわかる医薬品の危険度 6 を作成し すでに書籍とした これらの書籍を用いることにより問題集を作成することが可能となり 違いのわかる医薬品集 では 医薬品とその薬理作用や適応に関する問題を作成することが可能であり 違いのわかる医薬品の重大な副作用 や 違いのわかる医薬品の重篤な副作用の随伴症状 では 重篤な有害事象の随伴症状に関する問題や医薬品とその重大な副作用に関する問題 違いのわかる医療用語集 では 医療用語とその意味に関する問題や略語とその正式名称に関する問題 違いのわかる医薬品の危険度 では 同効薬における第一選択薬の問題や同効薬を用いる際に注意が必要な医薬品の問題などを作成することが可能であると考えられる これらの問題に対して解答を得る行為は 薬剤師を含む医療関係者の知識の向上となり 薬剤師の臨床的な判断力の養成と向上に繋がるものと考えられるので 2011 年版医療関連問題集 の作成を試みた 1
2. 対象と方法 Ⅰ. 使用システム構成開発機器は MacBook Air(MacOSⅩ 10.6.5) を用いた Ⅱ. 作成方法問題集は 医療倫理 症状 医療用語 医薬品の適応 医薬品の薬理作用 有害事象 および 複合問題 の 7 分野を予定しており 本稿では症状の分野について作成した 症状 は 全身症状 と 局所症状 に分け 全身症状 の項目として 睡眠 体温 食欲 体重変化 栄養 浮腫 疲労 うつ病 神経症 健忘 かゆみ しびれ 関節痛 糖代謝検査 脂質代謝検査 尿酸代謝検査および電解質検査の 14 項目に分類し 局所症状 の項目として 頭痛 発熱 顔色 視力 霧視 眼底検査 眼圧検査 聴力 難聴 めまい 口渇 嗄声 咳 痰 痰検査 肩こり 腰痛 動悸 息切れ 胸痛 呼吸機能検査 胃痛 胃もたれ 吐き気 嘔吐 腹痛 膵機能検査 下痢 便秘 血便 便検査 内視鏡検査 血尿 頻尿 乏尿および尿検査の 25 項目に分類した 3. 結果全身症状について 300 問 ( 睡眠 16 問 体温 6 問 食欲 体重変化 15 問 栄養 14 問 浮腫 37 問 疲労 12 問 うつ病 神経症 15 問 健忘 12 問 かゆみ 20 問 しびれ 関節痛 27 問 糖代謝検査 40 問 脂質代謝検査 26 問 尿酸代謝検査 27 問および電解質検査 33 問 ) を作成し ( 表 1) 局所症状について 425 問 ( 頭痛 発熱 35 問 顔色 5 問 視力 14 問 霧視 26 問 眼圧 眼底検査 25 問 聴力 8 問 難聴 めまい 46 問 口渇 10 問 嗄声 18 問 咳 痰 21 問 痰検査 10 問 肩こり 腰痛 24 問 動悸 息切れ 胸痛 15 問 呼吸機能検査 6 問 胃痛 胃もたれ 7 問 吐き気 嘔吐 9 問 腹痛 17 問 膵機能検査 13 問 下痢 便秘 20 問 血便 21 問 便検査 7 問 内視鏡検査 5 問 血尿 18 問 頻尿 乏尿 23 問および尿検査 22 問 ) を作成した ( 表 2) 2
表 1. 全身症状の項目ごとの問題数項目睡眠体温食欲 体重変化栄養浮腫疲労うつ病 神経症健忘かゆみしびれ 関節痛糖代謝検査脂質代謝検査尿酸代謝検査電解質検査合計 問題数 16 問 6 問 15 問 14 問 37 問 12 問 15 問 12 問 20 問 27 問 40 問 26 問 27 問 33 問 300 問 3
表 2. 局所症状の項目ごとの問題数項目頭痛 発熱顔色視力霧視眼圧 眼底検査聴力難聴 めまい口渇嗄声咳 痰痰検査肩こり 腰痛動悸 息切れ 胸痛呼吸機能検査胃痛 胃もたれ吐き気 嘔吐腹痛膵機能検査下痢 便秘血便便検査内視鏡検査血尿頻尿 乏尿尿検査合計 問題数 35 問 5 問 14 問 26 問 25 問 8 問 46 問 10 問 18 問 21 問 10 問 24 問 15 問 6 問 7 問 9 問 17 問 13 問 20 問 21 問 7 問 5 問 18 問 23 問 22 問 425 問 4
作成した問題を 8 例下記に示した 例 1. 糖尿病の症状についての記述のうち 誤っているのはどれか 1. 口が渇く 2. 体重減少 3. 多飲 4. 血圧が高い 5. 頻尿解答 4 例 2. せきや痰の出方と疾患との組合せのうち 誤っているのはどれか せきや痰の出方 疾患 1. 夜中から明け方の咳で目が覚める 気管支炎 2. ときに痰に血が混じる 肺結核症 肺癌 3. 大きく息をすると咳がでる 間質性肺炎 4. 緊張すると咳が出る 神経性咳嗽 5. 最近 高血圧の薬が変わった ACE 阻害剤の副作用解答 1 例 3. タール便 のとき 疑われる疾患として誤っているのは 次のどれか 1. 食道静脈瘤 2. 胃潰瘍 3. 十二指腸潰瘍 4. 胃癌 5. 潰瘍性大腸炎解答 5 例.4 次の疾患と症状の組み合わせのうち 誤っているのはどれか 1. 白内障 水晶体が白く濁り 物が二重に見える 2. 緑内障 電灯の周りに虹色の輪が見えたりする 高度の視力障害が起こる 3. 糖尿病網膜症 眼底に新しくできた血管や出血が見られる 4. 老視 ( 老眼 ) 暗いところでは極端に見えない 5. 網膜剥離 光が散乱するようでまぶしい 霧の中に入ったように見える解答 5 5
例.5 次の尿量に関する記述のうち 誤っているのはどれか 1. 1 日の尿量が 400mL 以下を乏尿という 2. 1 日の尿量が 100mL 以下を無尿という 3. 1 日の尿量が 3000mL 以上を多尿という 4. 成人の正常な 1 回の尿量は 200 300mL である 5. 1 日の排尿回数が 1~2 回であることを頻尿という解答 5 例.6 ビタミンの種類と働きの関係についての次の記述のうち 誤っているのはどれか 1. ビタミン C,E 過酸化物質の生成を防ぐ 2. ビタミン K 出血を防ぐ 3. ビタミン B12, 葉酸 貧血を防ぐ 4. ビタミン D 新陳代謝を円滑に行う 5. ビタミン A 視力障害を防ぐ解答 4 例.7 床ずれができないように注意する次の記述のうち 誤っているのはどれか 1. 栄養状態を改善する 2. 体位は変えない方が良い 3. マッサージをして血行を良くする 4. 皮膚を清潔にする 5. パウダーで乾燥させる解答 2 例.8 次の記述のうち 誤っているのはどれか 1. 人の体温は 一日の中で 1 以内の変動があるが 一日で最も体温が低いのは夕方である 2. 一般成人として比較して 幼少年期では体温がやや高く 高齢者ではやや低い 3. 有経 ( 初経後から閉経まで ) の女性では 基礎体温は排卵期に 0.2~0.3 上がり 月経の開始と共に排卵前の体温に戻る 4. 妊娠すると 胎盤の完成する 4 カ月位まで高温期が続く 5. 体温は 脳の視床下部にある体温調節中枢でコントロールされている解答 1 6
4. 考察例 1~4 は 患者の症状から予想される疾患を特定する問題である 例 1 は糖尿病に関する記述で 糖尿病の症状に 口が渇く や 体重減少 多尿 および 頻尿 があるということが判っていなければ解答を特定できない問題である これらの症状は糖尿病の代表的な症状であるので 必ず覚えておきたい内容であると考えられる 例 2 は咳や痰に関する記述で 各疾患の咳の特徴を問う問題である 問診から得られる患者の症状が咳である場合 各疾患の咳の特徴を把握できていなければ患者の疾患および有害事象を特定することはできない 各疾患の特徴的な症状を特定するために覚えておきたい内容であると考えられる 例 3 は タール便に関する問題である タール便となる理由として 消化器官で出血が起き 血液が胃酸によって酸化され それがタール便となると考えられる タール便の原因として胃酸が関係していることを把握していれば解答を特定できる問題であり こういった問題は身体のどこに異常が発生しているかを判断するために有用な内容であると考えられる 例 4 の問題は 眼疾患に関する記述である 眼疾患は 症状が進行した際 適切な治療を受けなければ回復しないものがあるため 早期に疾患を発見しなければならない 特に緑内障は治らない病気とされており 早期に発見し症状を進行させないようにすることが求められるので 各眼疾患の特徴は覚えておきたい内容であると考えられる 例 5 は 臨床検査値の基準値に関する問題である 臨床検査値は 薬局においては患者に問診した際に得られる情報であるので 瞬時に判断しなければならないため可能な限り記憶し 難しい場合はすぐに確認できるように表などにしておく必要があるものと考えられる 例 6 はビタミンに関する問題である ビタミンは身体に必要不可欠なものであり それぞれ働きが異なっている 医薬品の中には 特定のビタミンの影響を受けるものがあるため 各ビタミンの種類と働きの関係は覚えておきたい内容であると考えられる 例 7 は床ずれに関する問題である 床ずれは 長期間ベッドに寝ている患者や車いすを利用している患者に多くみられるものであり 栄養状態や血行を良くすることで改善できる場合がある このような内容の問題は病院の薬剤師にとって覚えておきたい内容であると考えられる 例 8 は体温に関する問題である 人の体温は 常に一定というわけではなく 一日の中で 1 以内の変動がある また 一般成人として比較して 幼少年期では体温が 7
やや高く 高齢者ではやや低い 女性は妊娠すると体温が一定期間上昇することがあり 風邪だと勘違いして医薬品を服用してしまう可能性があるため 注意をしなければならな い このような問題はドラッグストアの薬剤師にとって覚えておきたい内容であると考えら れる 現在の病院薬剤師は 病棟で入院患者に服薬指導を行い また チーム医療の一員 としての役割も大きく より高い知識と技術が求められている 一方 薬局の薬剤師は 処 方箋と患者への問診を頼りに患者の病状を把握し その上で医薬品の効果と有害事象 のモニタリングを行うというコミュニケーション能力に特化しているので 病院薬剤師と同 様に高い知識と技術が求められている いずれの薬剤師も自ら判断する力が問われる仕 事の内容が増加するものと考えられ それに対応できる知識を身に付けなければならな い また 阿部 7 地田 8 および尾坂 9 は 医薬品副作用症例データベース を基に 各医 薬品を使用した際に 発現した有害事象の項目について危険指標値 有害事象発現率 重症化率および死亡率を求め 注意が必要な医薬品とその有害事象の項目を示し 佐 10 藤は重篤な副作用を早期に発見するための予測プログラムを作成しており 今後は こ のような情報を有する薬剤師も必要になるものと考えられる 著者は 症状 の分野について問題の作成を行ったが 問題集は 医療倫理 症 状 医療用語 医薬品の適応 医薬品の薬理作用 有害事象 および 複合問 題 の 7 分野を予定しており 早急に残りの 6 分野についての問題を作成し 医療関連 問題集 を完成することが期待される 8
謝辞 本研究にあたり終始御懇切なるご指導を賜りました 恩師 新潟薬科大学 土橋洋 史准教授に心からの感謝の意を表します 9
引用文献 1. 土橋洋史 : 医薬品副作用症例データベースの応用 1 医療費換算を用いた重み付けによる危険指標値の試み. 医学と薬学 60(2);195-220,2008. 2. 土橋洋史 : 違いのわかる医薬品集, ( 株 ) 考古堂書店, 2008. 3. 土橋洋史 : 違いのわかる医薬品の重大な副作用, ( 株 ) 考古堂書店, 2008. 4. 土橋洋史 : 違いのわかる医薬品の重篤な副作用の随伴症状, ( 株 ) 考古堂書店, 2011. 5. 土橋洋史 : 違いのわかる医療用語集, ( 株 ) 考古堂書店, 2006. 6. 土橋洋史 : 違いのわかる医薬品危険度, ( 株 ) 考古堂書店, 2010. 7. 阿部充 : 重篤な副作用の随伴症状に関する研究, 平成 23 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究 Ⅱ. 8. 地田淳輝 : 医薬品の危険度と有害事象に関する研究, 平成 23 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究 Ⅱ. 9. 尾坂早苗 : 医薬品の危険度に関する研究, 平成 23 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究 Ⅱ. 10. 佐藤仁史 : 重篤な副作用予測プログラムの作成に関わる研究, 平成 23 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究 Ⅱ. 10