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第6回 糖新生とグリコーゲン分解

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次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

1. 電子伝達系では膜の内外の何の濃度差を利用してATPを合成するか?

解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

1-1 栄養素の代謝と必要量 : 糖質 炭水化物 1 糖質の消化吸収 デンプンは唾液中のα アミラーゼの作用により加水分解され かなりの部分が消化を受ける ヒト の唾液中に存在するデンプン消化酵素は α アミラーゼがほとんどである 胃では糖質の消化酵素は 分泌されないが 食道から胃内に流入した食塊が

EC No. 解糖系 エタノール発酵系酵素 基質 反応様式 反応 ph 生成物 反応温度 温度安定性 Alcohol dehydrogenase YK エナントアルデヒド ( アルデヒド ) 酸化還元反応 (NADPH) 1ヘプタノール ( アルコール ) ~85 85 で 1 時

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木村の有機化学小ネタ 糖の構造 単糖類の鎖状構造と環状構造 1.D と L について D-グルコースとか L-アラニンの D,L の意味について説明する 1953 年右旋性 ( 偏光面を右に曲げる ) をもつグリセルアルデヒドの立体配置が

細胞の構造

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生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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シトリン欠損症説明簡単患者用

4 章エネルギーの流れと代謝

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

糖質(炭水化物)

第 Ⅳ 部細胞の内部構造 14 エネルキ ー変換 -ミトコント リアと葉緑体 ( 後半 )p 葉緑体 chloroplast と光合成 photosynthesis 4. ミトコント リアと色素体の遺伝子系 5. 電子伝達系 electron-transport chain の進

第 8 章代謝概論 8.1 はじめに 代謝 (metabolism): 栄養素 生体成分の構築 8.2 異化と同化 講義用補助資料 の獲得 異化 (catabolism): 外界から取り込んだ物質 ( 食物 ) を分解し, より簡単な化合物に変 え エネルギーを取り出す過程 発生するエネルギーで,A

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第1回 生体内のエネルギー産生

切に分類することが重要である. 炭水化物は,1 単糖,2 二糖とオリゴ糖,3でんぷん, 非でんぷん性多糖ならびにグリコーゲンなどの多糖に分類される. そのなかでも食物として重要なでんぷんとグリコーゲンならびにスクロースの消化の過程を 1 に示した. 1 単糖ヒトの食物として量的に重要であるのは,3

1 編 / 生物の特徴 1 章 / 生物の共通性 1 生物の共通性 教科書 p.8 ~ 11 1 生物の特徴 (p.8 ~ 9) 1 地球上のすべての生物には, 次のような共通の特徴がある 生物は,a( 生物は,b( 生物は,c( ) で囲まれた細胞からなっている ) を遺伝情報として用いている )

第11回 肝、筋、脳、脂肪組織での代謝の統合

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2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

第1回 生体内のエネルギー産生

ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

第3回 糖類(炭水化物)

(2) 二 糖 類 二 糖 類 は, 単 糖 が2つグリコシド 結 合 したものである たとえば,マルトース( 麦 芽 糖 )は,グル コース+グルコース,スクロース(ショ 糖 )は,グルコース+フルクトース,ラクトース( 乳 糖 )は, グルコース+ガラクトースのグリコシド 結 合 によるものであ

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平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号

H27看護化学-講義資料13rev

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

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脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

3 章酵素と代謝

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遺 伝 の は な し 13

犬の糖尿病は治療に一生涯のインスリン投与を必要とする ヒトでは 1 型に分類されている糖尿病である しかし ヒトでは肥満が原因となり 相対的にインスリン作用が不足する 2 型糖尿病が主体であり 犬とヒトとでは糖尿病発症メカニズムが大きく異なっていると考えられている そこで 本研究ではインスリン抵抗性

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インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

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バクテリアはなぜ、またどれくらいの量の水素を発酵で発生するか

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生化学平成 18 年度 (2006) 前期試験問題 2 年生本試験 + 再々試験 平成 18 年 7 月 26 日 ( 水 I 第一講義室 ) 解説 金 番号 X 氏名生化一郎点 問題 1 ( 初版 Essential 問題 7-19, 第 2 版 Essential 問題 7-1

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

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大麦食品推進協議会 技術部会報告 (公財)日本健康・栄養食品協会で評価された   大麦由来β-グルカンの機能性について

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

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x, y x 3 y xy 3 x 2 y + xy 2 x 3 + y 3 = x 3 y xy 3 x 2 y + xy 2 x 3 + y 3 = 15 xy (x y) (x + y) xy (x y) (x y) ( x 2 + xy + y 2) = 15 (x y)

ポイント 糖尿病性腎臓病の進展に関わる新しいメカニズムを解明! ~2 つのフルクトース代謝酵素の異なる役割 ~ 糖尿病性腎臓病の進展において 2 種の果糖 ( フルクトース ) の代謝酵素 ケトヘキソキナー ゼ (KHK-A KHK-C) の相反する役割を解明しました 糖尿病ではポリオール経路の活性

解剖・栄養生理学

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相模女子大学 2016 年度 AO 入学試験 適性試験問題 栄養科学部 2015 年 8 月 29 日 ( 土 )10 時 00 分 ~10 時 50 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題冊子を開いてはいけません 2. これは 適性試験の問題冊子です 問題の本文は 1ページから 5 ページ

9.Ⅵ.低血糖症の概要・体質・原因

成人の人体に占める水の量 ( 重量 ) は細胞内液が 35%, 細胞外液が 25% を占める. 細胞外液は血漿, 組織間液, 消化液に分けられる. 血液は体重の ( 13 ) 分の 1 であり, 血漿は血液から血球 ( 赤血球, 白血球, 血小板 ) を除いたものである. 血液の ph は ( 7.

SSH資料(徳島大学総合科学部 佐藤)

ATP (PCr) ADPAMP (Cr) β (beta oxidation) (fatty acid) CoA (Acetyl-CoA) CoA (pyruvate) TCA NAD NADH NADH ADP ATP ATP Cr PCr ADP ATP PCr ADP ATP

Nobelman 絵文字一覧

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新技術説明会 様式例

必要ならば, 次の原子量および定数を用いなさい H = ₁.₀ He = ₄ C = ₁₂ N = ₁₄ O = ₁₆ S = ₃₂ 気体定数 :R = ₈.₃₁ # ₁₀[Pa ₃ L/(K mol)] Ⅰ. ~ に答えなさい ₃₅ ₁₇Cl の塩素原子の中性子の数はいくつか 1~5のうちから一つ

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はじめに 液体クロマトグラフィーには 表面多孔質粒子の LC カラムが広く使用されています これらのカラムは全多孔質粒子カラムの同等製品と比べて 低圧で高効率です これは主に 物質移動距離がより短く カラムに充填されている粒子のサイズ分布がきわめて狭いためです カラムの効率が高いほど 分析を高速化で

Transcription:

解糖系 (1) 平成 24 年 4 月 24 日病態生化学分野 ( 生化学 2) 教授 山縣和也

本日の学習の目標 糖の多様性を知る 解糖系によるグルコース代謝を理解する 解糖系の律速酵素について理解する 解糖系の異常によりどのような病気がおきるか NAD NAD についてを理解する

グルコースは最も重要な糖質であるが 様々な糖質が存在する 単糖類トリオース ( 三炭糖 ) テトロース ( 四炭糖 ) ペントース ( 五炭糖 ) リボースやデオキシリボースヘキソース ( 六炭糖 ) グルコース ガラクトース マンノース フルクトースヘプソース ( 七炭糖 ) 二糖類 2 個の単糖が縮合したものマルトース ( 麦芽糖 ) ラクトース ( 乳糖 ) スクロース ( ショ糖 ) など オリゴ糖類 3-10 個の単糖が結合したもの ヒトではほとんど分解されない 多糖類単糖が 11 個以上縮合したもの デンプンやグリコーゲンなど

グルコース : 自然界に最も広く存在する グルコースには鏡像関係にある D 型と L 型が存在するが 哺乳類におけるグルコースは D 型 C2 と が反対方向のものを α 型とよぶ 水溶液中で非環状 ( 鎖状 ) はほとんど存在しない

フルクトースは溶解するとピラノース ( 六員環 ) フラノース ( 五員環 ) をとることができる 解糖系の中で生じるフルクトースリン酸は五員環である

エピマー

デンプンの基本構成単位二分子のグルコースからなるマルトース ( 麦芽糖 ) ガラクトースとグルコースからなり 乳汁中に存在するラクトース ( 乳糖 ) グルコースとフルクトースからなり サトウキビの糖分 シュークロース ( ショ糖 )

乳糖不耐症 ラクターゼ + 2 グルコース + ガラクトース 小腸のラクターゼの欠乏のために 牛乳中の乳糖が分解されずに未消化のまま腸管内に残存し 下痢 腹痛などをきたす

植物 : デンプン 動物は吸収した糖をグリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵する 動物 : グリコーゲン

α- グルコシダーゼ阻害薬 でんぷん アミラーゼ マルトース 糖尿病の治療薬 α- グルコシダーゼ阻害薬 α- グルコシダーゼ ( マルターゼ ) グルコース

エネルギー代謝経路 グリコーゲン グリコーゲン代謝 タンパク質 アミノ酸代謝 トリアシルグリセロール グルコース グルコース 6 リン酸 アミノ酸 脂肪酸 脂質代謝 解糖系 糖新生 β 酸化 乳酸 ピルビン酸 アセチル CoA ケト酸 ピルビン酸脱水素酵素 クエン酸回路電子伝達系 ATP

解糖 Glycolysis エムデン マイヤーホフ経路 Embden-Meyerhof pathway 細胞質でおきる反応 ATP ADP ATP ADP グルコース グルコース 6-リン酸 フルクトース 6-リン酸 フルクトース 1,6-ビスリン酸 ATP 3-ホスホグリセリン酸 ADP 1,3- ビスホスホグリセリン酸 グリセルアルデヒド 3- リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 NAD NAD 2- ホスホグリセリン酸 ADP ATP NAD NAD ホスホエノールピルビン酸ピルビン酸乳酸 ミトコンドリア ( クエン酸回路, 酸化的リン酸化 )

アデノシン三リン酸 Adenosine triphosphate ATP 高エネルギー結合 N N 2 N - P - P P - - C 2 N N アデノシン Adenosine アデノシン一リン酸 Adenosine monophosphate AMP アデノシン二リン酸 Adenosine diphosphate ADP アデノシン三リン酸 Adenosine triphosphate ATP

アデノシン三リン酸 Adenosine triphosphate ATP 呼吸などの異化作用の過程で放出された遊離エネルギーを化学エネルギーとして蓄えた有機リン酸化合物 活性型は通常 Mg2+ との結合型 ATP は細胞のエネルギー通貨 ATP の消費と合成 1.ATP 消費量軽労働に従事する体重 65kg の成人男子 60 kg/ 日 2. 細胞中の ATP 量数分の必要量 3.ATP はエネルギー貯蔵型ではない備蓄できない, 必要に応じて合成される 4.ATP の寿命数秒 数分 ( 細胞の種類によって異なる ) 5.ATP の合成と分解 ( 消費 ) がつりあって一定濃度を保つ

ATP 消費系 1ATP/ グルコース 1ATP/ グルコース 計 2ATP/ グルコース 解糖 Glycolysis - ATP 消費系と合成系 ATP ADP グルコース ヘキソキナーゼ グルコース 6- リン酸 フルクトース 6- リン酸 ATP ADP グルコース6-リン酸イソメラーゼ フルクトース 1,6- ビスリン酸 2-3P 2-3P ホスホフルクトキナーゼ アルドラーゼ 2-3P C2 C2 C2 C2 C2 C2 P3 2- 炭素数 C6 C6 C6 C6 グリアセルアルデヒド 3- リン酸 2-3P C2 トリオースリン酸イソメラーゼ + ジヒドロキシアセトンリン酸 C2 P3 2- C3, C3

ATP 合成系 +2 ATP/ グルコース +2 ATP/ グルコース 計 +4 ATP/ グルコース 解糖 Glycolysis - ATP 消費系と合成系 グリアセルアルデヒド 3- リン酸 NAD + Pi NAD 1,3- ビスホスホグリセリン酸 ADP ATP 2-3P グリセルアルデヒド 3- リン酸デヒドロゲナーゼ ホスホグリセリン酸キナーゼ 2-3P C2 C2 2-3P C2 3-ホスホグリセリン酸 C 2-ホスホグリセリン酸 C2 C 2 ADP ATP ピルビン酸 ホスホグリセリン酸ムターゼ エノラーゼ ホスホエノールピルビン酸 ピルビン酸キナーゼ 2-3P 2-3P C2 C3 C C C - - - - P3 2- 炭素数 C3 C3 C3 C3 C3 C3

解糖 Glycolysis - ATP 消費系と合成系 ATP 消費系 : 2ATP/ グルコース ATP 合成系 :+ 4 ATP/ グルコース 解糖による ATP 消費 合成の収支グルコースあたり 2 ATP 合成 解糖系で得られる ATP の量は少ないけれども 酸素は必要としない

どうやって 100m 走るエネルギーを獲得するのか? (1) 最初は筋肉内の ATP を使用 (1 秒程度 ) (2) 次にクレアチンリン酸から ATP を作って利用 (3 秒程度 ) クレアチンはアミノ酸から合成される有機酸 (1- メチルグアニジノ酢酸 ) 筋肉中に存在する (3) 残りは筋肉のグリコーゲンから解糖により ATP 産生

解糖系の制御段階 ヘキソキナーゼ (K) グルコース + ATP グルコース 6- リン酸 + ADP + + ホスホフルクトキナーゼ (PFK) フルクトース 6- リン酸 + ATP フルクトース 1,6- ビスリン酸 + ADP + + ホスホエノールピルビン酸 + ADP ++ ピルビン酸キナーゼ (PK) ピルビン酸 + ATP

反応の自由エネルギー変化と活性化自由エネルギー ギブス自由エネルギー Gibbs free energy:g A + B G C + D 遷移状態 ( 活性化状態 ) A + B ΔG ΔG 遷移状態 ( 活性化状態 ) A B ΔG: 反応の自由エネルギー変化 ΔG : 活性化自由エネルギー C + D 反応の自発性をきめる 反応速度に関与する 反応軸 Reaction Coordinate ΔG < 0: 過程は自発的に進む ΔG = 0 : 系は平衡状態にある ( 過程は止まっている )

標準自由エネルギー変化 (DG0') と生理的条件での自由エネルギー変化 (DG) 単位,kJ/mol 反応酵素 DG 0 ' DG 反応 1 ヘキソキナーゼ -20.9-27.2 グルコースグルコース 6- リン酸 2 3 グルコースリン酸イソメラーゼホスホフルクトキナーゼ +2.2-1.4 フルクトース 6- リン酸 -17.2-25.9 4 アルドラーゼ +22.8-5.9 5 6 7 8 トリオースリン酸イソメラーゼ グリセルアルデヒド- 3-リン酸デヒドロゲナーゼホスホグリセリン酸キナーゼホスホグリセロムターゼ +7.9 +4.4-16.7-1.1 フルクトース 1,6-ビスリン酸ジヒドロキシアセトンリン酸 +グリセルアルデヒド 3-リン酸ジヒドロキシアセトンリン酸グリセルアルデヒド 3-リン酸 1,3- ビスホスホグリセリン酸 3- ホスホグリセリン酸 +4.7-0.6 2- ホスホグリセリン酸 9 エノラーゼ -3.2-2.4 ホスホエノールピルビン酸 10 ピルビン酸キナーゼ -23.0-13.9 ピルビン酸

ヘキソキナーゼ exokinase ATP 利用 / 消費 C 2 グルコース Glucose + ATP Mg 2+ + ADP + + C 2 P 3 2- グルコース 6- リン酸 Glucose 6-phosphate

肝臓と膵 β 細胞にはグルコキナーゼ ( ヘキソキナーゼ IV) が発現 肝臓 膵臓 β 細胞 インスリンを分泌する ( 膵 β 細胞 ) インスリンは血糖をさげる グルコースを取り込み グリコーゲン合成 インスリン分泌

ヘキソキナーゼとグルコキナーゼの違い 同じ活性 血糖に応じて活性が異なる グルコキナーゼは高い Km ( より低い親和性 ) をもつ その活性はグルコース濃度の上昇に伴って増加する 血糖レベル Km: 最大速度の 1/2 を与える基質濃度

食事 吸収 血糖 ( グルコース ) 上昇 膵臓 解糖系 TCA サイクル 電子伝達系で ATP が産生 グルコキナーゼ インスリン グルコース濃度に応じて ATP が産生され ATP に応じてインスリンが分泌される

グルコキナーゼ遺伝子異常 Exon V16-E70del Q26X L30P R36W Q38P K39fsdelG E40dup21 E40K R43 G44S G44D G44fsdelG 50R 50Y A53S V62A T65I E70K IVS3-1G>A IVS3-1G>T IVS3-2A>G L122P L122V Y125del C129Y I130T S131P 133dup L134P 137R S151fsdelCC Q138P V154fsdelTG L144P 156Y T149P E157K F150S K161N S150del IVS4+2del10 F150L IVS4+2del15 V203A T206M T206M T206R T209M M210K M210T C213R Y214C Y215X E216X E220X E221K G223S M224T I225M I225F G227C V226M IVS6+2T>A IVS7-1G>A IVS8+1G>A G294D G295fsdelG Y297X M298K G299R E300Q E300K L304P L309P V310fsdelGT L315 F316V G318R V266fsdelTinsAA G318A F334fsdel19 S336L IVS9-7del11 IVS9-1G>C S433-I436del C434X C434T I436N S441W S445fsdel11 G446R R447Q R447del29 C452X S453L S453X A454V A454E K459fsX61 V455M A460fsdel22 A456V 1a 1b 1c 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M8I E9fsdelG IVS1A;1G>T インスリン分泌が悪くなり 糖尿病になる G72R D73G D78E D78 G80S G81A G81S L88fsdel10 E93del10 Q98X W99R W99X V101M T103N K104fsdel4 I110T Y108C P111L Y108F A119D Y108 IVS3+1G>A Y108X IVS3+1G>T G162fsdelG L164P T168P K169N F171L A173S G175E G175R G175V G178R G178E N180K V181A V182M R186X R186Q A188E G193R A188T G193D194ins R191W IVS5+1del33 R191Q T228M T228A T228R N231fsdelA M235T M238fsdelT Q239R E248K G263S E248X E265X R250C Q266X M251I Q258C M251V Q286X C252Y E268X C252R L271fsdel22 E256K R275C W257R D278E A259T E279Q G261R E279X G261E S281F S263P IVS6-2A>T R358X S360X V367M R369P 380Q 380D C382Y S383L S383fsdelC S383X A384T IVS9+1G>C G385V IVS9+1G>T A387V I404S A387T I404fsdelAT R392C G407S E395X S411F E395-R403del K414E E399X L415V V401fsdelG S426fsdelGC R403fsdelC F419L

グルコキナーゼ活性増強剤による血糖降下作用 Science 301: 370, 2003 新しい糖尿病の治療薬 グルコキナーゼ活性化薬でインスリン分泌が増える グルコキナーゼ活性化薬をマウスに投与すると血中のグルコース濃度が下がる

肝臓におけるグルコキナーゼ 食事 吸収 血糖上昇 GK 肝臓 糖取り込みグリコーゲン蓄積 血糖に応じて 肝臓でグルコースが取り込まれ グリコーゲンとして蓄積される

6- ホスホフルクト -1- キナーゼ Phosphofructokinase (PFK, PFK-1) ATP 利用 / 消費 解糖系の調節酵素 ( 解糖系調節の主役 ): 律速酵素 -2 3 PC 2 C 2-2 3 PC 2 C 2 P 2-3 + ATP フルクトース 6- リン酸 Fructose-6-phosphate (F6P) Mg 2+ + ADP + + フルクトース 1,6- ビスリン酸 Fructose-1,6-bisphosphate (FBP) -2 3 PC 2 C 2 - - P Mg 2+ - P - P Adenosine -2 3 PC 2 C 2 - フルクトース 1,6- ビスリン酸 P - フルクトース 6- リン酸 ATP + ADP + +

筋 PFK 欠損症 ( 垂井病 ) 症例 S.K. 20 才女性 主訴 : 運動時の筋肉の急速な疲労 小さいときから 鬼ごっこ で鬼になるとどうしても相手をつかまえることができなかった 小学校のランニングでは長距離が走れなかったが 安静にすると軽快した 遠足でも友達についていけなかった また長く教科書の朗読を続けると声がかすれた 最近でも地下鉄の階段をのぼるのに苦労することがある 筋肉の症状について精査希望にて受診 家族歴 : 両親は従兄妹結婚 兄弟 5 人中 3 人に同様の症状を認める 筋肉の PFK が欠損すると 筋肉運動に十分な ATP が産生されない 運動できない

グリセルアルデヒド -3- リン酸デヒドロゲナーゼ Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPD) 解糖系中の唯一の酸化過程 (NAD を NAD へ ) C C P3 2- C + NAD + + Pi C + NAD C2P3 2- グリセルアルデヒド 3- リン酸 Glyceraldehyde 3-phosphate (GAP) C2P3 2-1,3- ビスホスホグリセリン酸 1,3-Bisphosphoglycerate (1,3-BPG) 高エネルギーリン酸化合物

NAD +, NAD - アデノシン P C 2 N N N 2 N N アデニン NAD はニコチン酸を材料として生成される補酵素 NAD は様々な酵素と協同して酸化反応における水素の回収を行う - (2e-, +) C N2 - P C 2 + N C N2 ニコチン酸 : ビタミン B 群の一つ - (2e -, + ) N R 還元型 (NAD) 酸化型 (NAD, NAD + ) NAD は再利用される ( リサイクル ) 一度 還元されたら 別の酵素反応によって酸化されなければならない

解糖 Glycolysis(NAD をどのように再利用するか?) ATP ADP ATP ADP グルコース グルコース 6-リン酸 フルクトース 6-リン酸 フルクトース 1,6-ビスリン酸 ATP 3-ホスホグリセリン酸 ADP 1,3- ビスホスホグリセリン酸 グリセルアルデヒド 3- リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 2- ホスホグリセリン酸 NAD NAD ADP ATP NAD NAD ホスホエノールピルビン酸ピルビン酸乳酸 酸素がある場合には NAD はミトコンドリアで NAD にもどされるが 酸素が十分に利用できない時はピルビン酸を乳酸に変換し その時 NAD を NAD にもどす ミトコンドリア ( クエン酸回路, 酸化的リン酸化 )

ピルビン酸の嫌気的代謝 乳酸発酵 乳酸デヒドロゲナーゼ Lactate dehydrogenase (LD) NAD の再生 : 解糖系における嫌気的 ATP 産生 R S C C N 2 C + + N + C 3 R C C + C 3 ピルビン酸 NAD 乳酸 NAD + + N R C N 2

酵母では NAD を再生するためにエタノールをつくる アルコール発酵

ホスホグリセリン酸キナーゼ Phosphoglycerate kinase (PGK) 解糖系の ATP 産生 : 基質レベルリン酸化 C C P C 2 P 3 2-1,3- ビスホスホグリセリン酸 (1,3-BPG) 高エネルギーリン酸化合物 P Mg 2+ P Mg 2+ -ADP P C C C2P3 2- Mg 2 + P 3- ホスホグリセリン酸 (3PG) P Mg 2+ -ATP

エノラーゼについて フッ素入りのスピッツ フッ素はエノラーゼを阻害する 血糖測定用のスピッツにはフッ素化合物をいれておかないと 赤血球でグルコースが消費 ( 解糖 ) され 徐々に血糖値が下がっていく

ピルビン酸キナーゼ Pyruvate kinase (PK) K + Mg 2+ C C C 2 解糖系の ATP 産生 : 基質レベルリン酸化 P Mg 2+ P P アデノシン Mg 2+ Mg 2+ -ATP P P P アデノシン ホスホエノールピルビン酸 (PEP) Mg 2+ -ADP Mg 2+ K + C C C2 C C C3 ピルビン酸

ピルビン酸キナーゼ (PK) 欠損症 赤血球はミトコンドリアをもたないためにエネルギー産生を解糖系によっている PK 欠損により 赤血球内で解糖がすすまず ATP 産生低下がおこり エネルギー不足で赤血球がこわれ貧血がおきる ( 溶血性貧血 ) 正常 PK 欠損症

理解の確認のために 1. ガラクトースは自然界に最も広く存在する糖である 2. マルトースはグルコースとフルクトースからなる 3. 膵臓 β 細胞はグルコースに応答してインスリンを分泌する 4. へキソキナーゼはグルコースをグルコース1リン酸に変換する 5. 解糖系はミトコンドリアでおきる 6. ヘキソキナーゼのKm 値はグルコキナーゼのKm 値より小さい 7. グルコキナーゼの遺伝子異常により糖尿病が発症する 8. PFKは解糖系の律速酵素である 9. GAPDによりNADが産生される 10. 解糖系で差し引き4 分子のATPが産生される 11. PK 欠損により溶血性貧血がおこる 12. 酸素が不十分な場合には乳酸を産生してNADを再生する 13. アルコール発酵ではエタノールを産生してNADを再生する 14. NADはニコチン酸を原料に構成される補酵素である