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入院後に急激な呼吸状態悪化を認めた再発性多発軟骨炎の 1 例 沖縄協同病院総合内科 本庄裕二郎目々澤遥露木寛之石井隆弘嵩原安彦諸見川純沖縄協同病院病理内間良二沖縄協同病院放射線科伊良波祥子聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター山野嘉久

はじめにはじめに 再発性多発軟骨炎 ( 以下 RP) は 全身の軟骨組織に特異的かつ再発性の炎症をきたす稀な疾患である アメリカでは100 万人あたり 3.5 人で発症すると報告されている 日本国内の患者数は400~500 人と推定されている 今回我々は 入院後に急激な呼吸状態の 悪化を来たした RP の一例を経験したので報告 する

症例症例 3 歳女性 主訴主訴 2 か月前から続く微熱 咳 微熱 咳 全身痛全身痛 下痢 既往歴既往歴 統合失調症 痙攣発作統合失調症 痙攣発作 逆流性食道炎 ( 来院 1 週間前に上部内視鏡施行 ) 嗜好歴嗜好歴 飲酒 : 機会飲酒喫煙 :15 本 / 日 10 年間 家族歴家族歴 特記事項なし 現病歴現病歴 来院 2 ヶ月前から微熱 (37 台 ) 湿性咳嗽 前胸部痛 両肩 肘 股関節 膝の両肩 肘 股関節 膝の関節痛 筋肉痛 体重減少 (1 ヶ月で 52kg 49kg) 下痢が生じた 心か部に持続的にひりひりする感じ 呑酸感があった 症状が改善しないため 年 月に当院内科外来を受診した 来院時バイタルサイン来院時バイタルサイン 意識清明 体温 36.4 血圧 102 /61 mmhg 脈拍 75 回 / 分 呼吸数 16 回 / 分 SpO2 99% ( 室内気 ) 身体所見身体所見 眼球結膜 : 黄疸 (-) 眼瞼結膜 : 貧血 (-) 充血 (-) 咽頭 : 発赤 (-) 扁桃腫大 (-) 胸骨部に圧痛 (+) 発赤 (-) 腫脹 (-) 呼吸音 心音 : 異常所見なし腹部 : 軟上腹部に圧痛 (+) 反跳痛 (-) 筋性防御 (-) 皮膚 : 皮疹 (-) リンパ節 : 腫脹 (-) 両肩 肘 股関節 膝の圧痛 (-) 発赤 (-) 熱感 (-) 腫脹 (-) 手関節 指関節の疼痛 (-) こわばり (-)

血算血算 WBC 11800 /μl ( 好中球 80.8 %) RBC 382 万 /μl Hb 10.8 g/dl MCV 88.2 fl MCH 28.3 Plt 60.1 万 /μl 検査結果検査結果 生化生化 Na 141 meq/l K 4.2 meq/l Cl 102 meq/l BUN 4.8 mg/dl Cre 0.57 mg/dl CRP 13.44 mg/dl AST 16 IU/l ALT 13 IU/l LDH 373 IU/l BS 109 mg/dl CPK 38 IU/l T-Bil 0.3 mg/dl TP 7.4 g/dl 血沈 100mm/h 検尿 沈渣検尿 沈渣 尿 ph:7 尿潜血 (±) 尿蛋白 (-) 尿糖 (-) 尿ウロビリノーゲン (±) 赤血球 :5-9/ 毎視野 白血球 :1 未満 / 毎視野

胸部単純 X 線写真 ( 入院時 ) 明らかな異常所見なし

入院後検査結果 リウマチ因子 陰性 抗 CCP 抗体 陰性 抗核抗体 陰性 抗 Sm 抗体 陰性 抗 Scl-70 抗体 陰性 抗 dsdna 抗体陰性 P-ANCA 陰性 C-ANCA 陰性 クオンティフェロン陰性 血液培養陰性喀痰 尿培養陰性 心エコー 腹部エコー 下部消化管内視鏡明らかな異常所見なし

入院後経過 1 感染性疾患 膠原病 炎症性腸疾患の可能性は低いと考えられた 逆流性食道炎 関節痛に対して PPI イブプロフェンを処方したが 症状は改善しなかった 第 9 病日深夜にトイレに行く途中 トイレに行く途中 突然の呼吸困難突然の呼吸困難を訴え廊下で倒れこんだ SpO2が60% % 台まで低下まで低下し し 意識レベル低下も認めたため認めたため 緊急で 緊急で気管挿管気管挿管を施行し ICU 管理とした 挿管時 声門は容易に確認できたが気管チューブ挿入の際に抵抗を感じた 第 10 病日に頸部 ~ 骨盤造影 CT を施行した

胸部造影 CT 気管から両側主気管支に連続した全周性壁肥厚 内腔狭窄を認める 肋軟骨周囲の軟部陰影の軟部陰影の腫脹を認める

入院後経過 2 RP による気道閉塞を疑い 第 11 病日からからステロイドパルス療法ステロイドパルス療法を開始開始 治療後の CT で炎症の改善を認めた 胸部 CT ( 第 10 病日 ) 胸部 CT ( 第 17 病日 ) 気管内腔の開大 気管壁肥厚の改善を認める

C T C T

第 37 病日気管軟骨 肋軟骨生検を施行 病理組織像 1 気管軟骨 HE 染色 x400 気管軟骨 AlcianBlue 染色 x100 軽度の軟骨の変性 破壊 軟骨周囲の線維化 血管増生 リンパ球浸潤を認めた

病理組織像 2 肋軟骨 HE 染色 x400 肋軟骨 AlcianBlue 染色 x100 軽度の軟骨の変性 破壊 軟骨周囲の線維化 血管増生 リンパ球浸潤を認めた

再発性多発軟骨炎の背景再発性多発軟骨炎の背景 病因病因 現在のところ不明であるが 軟骨組織の構成成分に対する自己免疫反応も示唆されている 年齢 男女比年齢 男女比 発症年齢 :3~97 歳平均年齢 :53 歳男女比 = ほぼ 1:1 症状症状 耳介軟骨炎 (78%) 喉頭 気管障害 (50%) 眼症状 (46%) 関節炎 (39%) 鼻軟骨炎 (39%) 蝸牛 前庭障害 (27%) 皮膚症状 (11%) 神経系 (9.6%) 心 血管系 (7.1%) 腎障害 (6.7%) 骨髄機能障害 (2.1%) ( 赤字は本症例での該当項目 )

再発性多発軟骨炎の検査所見再発性多発軟骨炎の検査所見 血液検査血液検査 特異的なものはない 炎症状態を反映して 血沈 CRP の上昇 正球性正色素性貧血 血小板の増加を認めることがある 自己免疫疾患としての特徴を有し 1 50% が抗 type II コラーゲン抗体陽性 2 22 66% が抗核抗体陽性 3 約 16% がリウマチ因子陽性 4 約 25% % で抗好中球細胞質抗体 (ANCA) 陽性となる 抗体検査の感度 特異度は低い 画像検査画像検査 CT では気管および気管支内腔の狭窄気管および気管支内腔の狭窄とびまん性の壁肥厚びまん性の壁肥厚を多く認める ( 赤字は本症例での該当項目 )

再発性多発軟骨炎の再発性多発軟骨炎の診断基準診断基準 診断診断 <McAdam s Criteria:1976 年 > 以下の 3 つ以上が陽性 両側性の耳介軟骨炎 非びらん性 血清陰性 炎症性多発性軟骨炎 鼻軟骨炎 眼炎症 : 結膜炎 角膜炎 強膜炎 上強膜炎 ぶどう膜炎 気道軟骨炎 : 咽頭あるいは気管軟骨炎 蝸牛あるいは前庭機能障害 : 神経性難聴 耳鳴り めまい生検 ( 耳 鼻 気管 ) の病理学的診断は 臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要である <Damiani s Criteria:1979 年 > 以下のいずれかを満たす 1McAdam s Criteriaで3 つ以上が陽性 21 つ以上が陽性で 確定的な組織所見が得られる 3 軟骨炎が解剖学的に離れた 2 箇所以上で認められ steroid/dapsone 治療に反応 ( 赤字は本症例での該当項目 )

再発性多発軟骨炎の病理 治療再発性多発軟骨炎の病理 治療 病理所見病理所見 軟骨組織では 炎症細胞浸潤炎症細胞浸潤を伴ってを伴って硝子軟骨や弾性軟骨の破壊や消失を認める 軟骨細胞は空胞化 核濃縮し変成する Alcian Blue 染色ではプロテオグリカン喪失のため 病変部の軟骨の好塩基性が低下する 治療治療 プレドニゾロン換算量で 0.5~1mg/kg のステロイドを中心に消炎鎮痛薬や免疫抑制薬を併用する 喉頭 気管病変を認める場合は致命的となりうるのでステロイドパルス療法を含むを含む大量ステロイド療法 ( プレドニゾロン換算で 1mg/kg) を行う ステロイド抵抗性の場合や減量困難な場合は免疫抑制薬を使用する

考察 本症例では気管軟骨炎 関節炎のみで RP に特徴的な所見に乏しく 抗体検査で陽性所見を全く認めない非典型例だったが 早期に CT 検査を行えば早期診断できた可能性がある 本症例では Damiani s Criteria 3 に該当したため RP と診断した RP の診断には生検の重要性が高く 耳介 鼻軟骨炎を認めない本症例では確定診断が困難だった 病理所見はごく軽微な変化だった すでにステロイド治療が行われており臨床経過が良好だったことから ステロイド治療が病理所見に影響していると考えられた

結語結語 我々は, 再発性多発軟骨炎の 1 例を経験した. 説明のつかない慢性咳嗽 多発関節痛を呈する場合は RP も鑑別に挙げ CT 画像等での詳細な検討が必要であると考えられた

清水潤, 他 : 再発性多発軟骨炎. 呼吸 2012;7:641 641-645 645 参考文献 梅原久範 : 再発性多発軟骨炎. 日内会誌 99. 2467-2471. 2471. 2010 岡寛, 他 : 再発性多発軟骨炎の全国疫学調査. リウマチ科 44:381 381-383. 383. 2010 Up to date:diagnostic diagnostic evaluation of relapsing polychondritis