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卒業研究 題 目 光 SSB 変調波長変換器の適用範囲の明確化 報告者 108053 島田泰樹 指導教員 岩下克教授 平成 0 年 月 19 日 高知工科大学工学部電子 光システム工学科

第 1 章序論... 1.1 研究背景... 1. 研究内容... 1.3 論文の構成...3 第 章光 SSB 変調の原理 特徴...4.1 振幅変調 (AM)...4.1.1 DSB 変調...7.1. SSB 変調...8. 光 SSB 変調...9..1 光 SSBの原理...9.. 光 SSBの構成 [5]...10 第 3 章波長変換システム...14 3.1 波長変換の方法 フィルタ特性...14 3.1.1 波長変換 (MZI 1 段 )...14 3.1. 段 MZI 波長変換器...15 3. 波長変換器の基本系...16 3.3 光 SSB 変調周波数決定...17 3.4 光干渉計の設計...18 3.5 PLC 型 MZI...0 第 4 章実験機材の概要...1 4.1 光変調...1 4.1.1 LN 変調器 [7]... 4. フォトダイオード...4 4.3 光増幅器...5 第 5 章光波長変換測定...6 5.1 特性測定...6 5.1.1 光 SSB 変調特性...6 5.1. SSB 変換効率...7 5.1.3 光干渉計...8 5.1.4 誤り率特性...31 5. 波長変換測定...33 5..1 実験系 測定方法...33 5.. 測定結果...34 第 6 章結論...36 謝辞...37 参考文献...38 1

第 1 章序論 1.1 研究背景 近年 ブロードバンドの普及により インターネット利用者が増大し 超高速大容量伝送のネットワークを構築する技術が需要を増すようになった 大容量化ネットワークを構築するために WDM(Wavelength Division Multiplexing: 波長分割多重 ) 伝送方式が用いられている WDM は一本の光ファイバに異なる波長の光信号を通して信号多重する伝送技術で 主に光ネットワークの長距離伝送に用いられているが それぞれの異なる波長に宛先を割り当て 通信を行う波長ルーティングの技術が注目されている この波長ルーティングを実現するためには 順時波長を変換して伝送する波長変換技術が必要不可欠となる 波長変換する方法として波長変換技術には光 SSB (Single Side Band) 変調の波長変換 [1] 特性を利用した方法や つ以上の異なる波長の光が相互作用して新しい光を発生させる四光波混合 (Four Wave Mixing FWM) [] がある 光 SSBは 新しい周波数帯の研究や周波数利用効率の高い変調効率の開発 応用が行われており 四光波混合では 波長変換を実現する高非線形の分散シフトファイバの研究などが行われている [3] 1. 研究内容 本研究では SSB 変調器と MZI(Mach-Zehnder Interferometer) の組み合わせにより光波長変換器を構成し 波長を変換する場合に 光フィルタの狭窄化や SSB 変調器に数回光が通過することよって通過帯域幅が狭くなる また SSB の変換効率やループ内の光増幅器の増加雑音によって信号劣化が起こり 波長変換の範囲に制限がある 今回は数回ループによって出力ポートが切り替わるように光干渉計 (MZI) を作成し SSB 変調器を 回 (MZI1 段 ) 4 回 ( 段 ) 通ったときの波長変換のスペクトルを測定する それぞれの状態で信号の変調速度を上げて誤り率測定を行い この結果を元に波長変換可能な領域を明確にする

1.3 論文の構成 第 章では光 SSB 変調の原理 特徴や波長変換特性について述べる 第 3 章では波長変換システムの概要と光干渉計 (MZI) について説明を行う 第 4 章では波長変換の測定に使用した実験機材の概要を説明する 第 5 章では本実験前に個々の特性を測定し 波長変換のスペクトル アイパターン 誤り率の測定結果を述べる 第 6 章に結論 を述べる 3

第 章光 SSB 変調の原理 特徴 この章では SSB の原理と特徴 [4] について述べる また 光 SSB 変調器の構成や特性に ついても説明を行う.1 振幅変調 (AM) 信号や情報を遠くへ伝送する場合 信号の運び主である搬送波 (carrier wave : キャリ ア ) に乗せて送ることにより 伝送が可能となる その搬送波としては光や電波が知ら れている この搬送波に情報を乗せることを変調 (modulation) といい 変調された搬送 波から信号を取り出すことを復調 (demodulation) という 信号は信号波 (signal wave) もしくは変調波 (modulating wave) という 変調後の搬送波は 被変調波 (modulated wave) という 搬送波を正弦波として考えると v ( t) = V sin( ω t + θ ) ω πf c c c c c = 式 -1 で表される Vc は搬送波の振幅 t は時間 θ はωt に対する位相差 ω c は搬送波の角周波数 f は搬送波の周波数である 搬送波の振幅 V 周波数 f 位相差 θ を信号に c 応じて変化させることにより変調が行われる ここで信号に応じて信号のみを変化させる場合を振幅変調 (Amplitude Modulation : AM) といい 周波数のみを変化させる場合を周波数変調 (Frequency Modulation : FM) 位相差のみを変化させる場合を位相変調 (Phase Modulation : PM) という c c 搬送波の振幅を信号波に応じて変調することを振幅変調という 図 -1に示すように振幅がV である正弦波の搬送波 (t) を振幅がV である余弦波の信号波 (t) で強度 C V C 変調を行うとV AM (t) のような被変調波が得られる 被変調波の振幅は搬送波に信号波を加えたものとなり 振幅の最大値はV C + V S となり 最小値はVC VS となる この被変調波の振幅変化の度合いを変調度 m (modulation factor) といい S V S 変調度 m V S / V = 式 - C で表わされる 被変調波の外側を包んだ線を包絡線 (envelope) といい これが信号波形である 4

図 -1 振幅変調波 AM 信号波を数式で表現し 次の式を -4 搬送波 信号波 V C ( t) = Vc sinωct ω c πf c VS ( t) = Vs cospt p πf P としたとき 被変調波 V AM (t) は次の式で与えられる V AM { V + V ( t) } sin ω t C S = : 搬送周波数式 -3 f c = f : 信号周波数式 = 式 -5 C VS = VC ( 1+ cos pt)sinωct 式 -6 V C = V ( 1+ m cos pt)sin ω t 式 -7 C となり この式は AM の一般式である この式を展開して整理すると C p 5

V AM VC m VCm = VC sinω Ct + sin( ωc + p) t + sin( ωc p) t 式 -8 6

となる この式より第 1 項は搬送波であり 第 項は搬送波より信号周波数が高い成分で上側波帯 (upper side band : USB) と呼び 第 3 項は搬送波より信号周波数が低い成分で下側波帯 (lower side band : LSB) と呼ばれる 周波数スペクトルで搬送波 上側波帯 下側波帯を表すと図 -となる 図 - AM 波の周波数スペクトル.1.1 DSB 変調 DSB(Double Side Band) とは両側波帯のことを表し 正しくは DSB-SC(DSB with suppressed carrier) と言い 全搬送波両側波帯と呼ぶ これは図.1b のように搬送波の周りに上側波帯と下側波帯が出力される AM 波のことを示す この図からわかるように搬送波の出力は常に一定であるが 上 下側波帯の出力は信号波に応じて変化する AM 放送などは この DSB 波が用いられており 一般の AM ラジオ放送では搬送波の出力をそのまま伝送するが DSB では搬送波を無くし 両側波帯のみで伝送する 変調には平衡変調器が用いられており この変調器は搬送波を抑圧して上 下側波帯を生成し DSB 波を作り出すものである 平衡変調器への入力は信号波と搬送波で 変調された後にフィルタが設けられており 上 下側波帯のいずれかを選択して使用する DSB 波は後に説明する SSB 波の生成方法よりも簡単で SSB の代わりとして用いられるが 両側波使用しているため送信電力を多く使う 7

.1. SSB 変調 SSB(Single Side Band) とは単側波帯振幅変調のことで 情報を上 下側波帯のどちらか片方の側波帯のみで伝送するもの 短波帯の業務無線やアマチュア無線などで利用される SSB はエネルギー効率が良く 少ない送信電力で伝送できる また フェージングの影響を受けにくく 占有周波数帯域が狭いという利点があり SSB の技術は帯域抑圧 送信電力削減において有効な技術である 変調時に搬送波と復調に使う搬送波が異なるため 搬送波の S/N 比が悪いと瞬時的に搬送波の周波数が変化することとなり 復調時の信号の品質が損なわれることになる SSB 信号 (SSB 波 ) を生成する方法として位相推移法がある 位相推移法とは ある DSB 信号と 搬送波および信号波の位相が 90 度違ったDSB 信号を生成し この つの DSB 信号を合成し SSB 信号を得るものである 生成方法として平衡変調器を つ用いてそれぞれでDSB 信号を生成する方法があり その構成図を図 -3に示す この構成では平衡変調器 1 にはそのままの搬送波と信号波が入力されるが 平衡変調器 には搬送波と信号波をそれぞれの位相がπ/ シフトしたものが入力される ここで 信号波と搬送波を Vs( t) = sinω t 式 -9 V C m ( t) = V sinω t 式 -10 c C とすると 平衡変調器 1 の出力 v ( ) と平衡変調器 の出力 v ( t) は次のようになる v ( t) v V 1 t sin ω t sin ω t 1 = c m c 式 -11 ( t) V { cos( ω ω ) t cos( ω + ω ) t} c = c m c m 式 -1 V cosω t cosω t = c m c 式 -13 V { cos( ω ω ) t + cos( ω + ω ) t} c = c m c m 式 -14 これらの式より 出力 SSB(t) は次式で表される SSB t) = v ( t) + v ( t) = V cos( ω t 式 -15 ( 1 c c ωm ) 8

この式は下側波帯の SSB 波を表わしている また v ( ) と v ( t) の差を取ることで上 側波帯から成る SSB 波を得られることがわかる 1 t 図 -3 位相推移法による SSB 波生成. 光 SSB 変調 この節では 光 SSB 変調器の原理および構成について説明する..1 光 SSB の原理 これまで説明してきたSSBを光の領域において適応した変調器を光 SSB 変調器と呼び 無変調の光をSSB 変調により周波数をシフトして出力する波長変換特性がある 変調器にバイアスをかけることによって位相変調を行い バイアスの制御によって搬送波と両側波帯どちらかを抑圧することができます ( 図 -4) SSB 変調するとき USB で搬送波 下側波帯を抑圧することを Up conversion LSB で搬送波 上側波帯を抑圧することを Down conversion と呼ぶ 9

図 -4 光 SSB の原理.. 光 SSB の構成 [5] 光 SSB 変調器の構成を図 -5 に示す この光 SSB 変調器はメインマッハツェンダー干 渉計 (MZI) である MZ と上下にあるサブマッハツェンダー干渉計となる MZ と MZ C を設けた構成になる それぞれのサブマッハツェンダー MZ MZ にはDC 電極とRF 電極が設けられている メインマッハツェンダー MZ C にはDC 電極が設けられている 入射した光は最初に MZ の Y 型分岐で分波され MZ と MZ のそれぞれのサブマ C ッハツェンダーの Y 分岐で分波され 位相変調されて合波される 位相変調された MZ A と MZ B のサブマッハツェンダーからの出力が合波されて最終的な出力となる構成になっている A A B B A B 10

図 -5 光 SSB 変調器の構造 次の図 -6に示すようにサブマッハツェンダー MZ A の位相変調部をそれぞれarm1 arm とし MZ の位相変調部をarm3 arm4 とする 搬送波を Acosωt としそれぞれ の arm に B π 3π cos pt cos( pt + π ) cos ( pt + ) cos( pt + ) の電気信号を与え 位相変調行うと arm1 A cos( ω t + mcos pt) 式 -16 arm A cos( ω t m cos pt) 式 -17 arm3 A sin( ω t msin pt) 式 -18 arm4 A sin( ω t + msin pt) 式 -19 11

と表わされ これらを展開すると arm1 arm arm3 arm4 A A A A n= n= n= n= J n (m) : ベッセル関数 J J J J n n n n π ( m) cos{ ω t + n( pt + )} 式 -0 π ( m)cos{ ω t n( pt + )} 式 -1 ( m)sin( ω np) t 式 - ( m)sin( ω + np) t 式 -3 となり arm1 と arm で位相変調された搬送波は合波され これを V ( t 1 ) とすると V t) = A[ J ( m){sin( ω p) t + sin( ω + p) } 1( 1 t + J ( m){sin( 3p) t + sin( ω + 3p) }] ω 式 -4 3 t と表され arm3 と arm4 の合波されたものを V ( t ) とし V t) = A[ J ( m){sin( ω p) t sin( ω + p) } ( 1 t + J ( m){sin( 3p) t sin( ω + 3p) }] ω 式 -5 3 t ベッセル関数値 : J ~ J 4 4 で表され 以上より MZ 出力 V ( ) と MZ 出力 V ( ) を合波したものを (t) とし A V out ( 1 3 t 1 t t) = A{ J ( m)sin( + p) t + J ( m)sin( ω 3p) } の最終的な出力が得られ 図 -7 のようになる B t V out ω 式 -6 1

図 -6 光 SSB 動作原理 図 -7 合波によるスペクトル変化 13

第 3 章波長変換システム この章では 波長変換の方法 [6] と 光 SSB 変調器と組み合わせて使う光干渉計 (MZI) について説明する 3.1 波長変換の方法 フィルタ特性 3.1.1 波長変換 (MZI 1 段 ) 波長変換の方法について 光 SSB 変調器は 1 回の通過で変調周波数 分の波長変換 が行われ 任意の波長に変換させるためには 何度が変調器を通過して出力させる必要がある そこで 入力光波長によって出力ポートが切り替わるマッハツェンダー干渉計のフィルタ特性を利用する 波長変換器の構成として図 3-1のようになり 光 SSB 変調器とマッハツェンダー干渉計 (MZI) を組み合わせた系になる これが波長変換器の基本系となる 波長変換を行う過程として 図 3-1の入力 1 の光は MZIを通って出力される このときの光波長は f の状態であり 図 3- のフィルタ特性では入力 1 から出力 入力 から出力 1 なので 入力光は出力 へ行き SSB 変調器を通ってシンセサイザ等で設定した周波数 f m 分シフトする そして入力 からもう一度 MZIを通り 次のフィルタ特性では f + f m の状態なので 入力 から出力 へ行きもう一度 SSBを通り 合わせて 回分 f m 分波長シフトする このときの波長は f + f m なので MZIの出力 1 を通り 光が取り出される MZI 1 段の基本系では 回 SSB 変調器を通り ( ループ ) Δf = f m の波長変換が行われる 取り出された光は SSB 変調器のバイアス電圧により上下側波帯を切り替えることができ このどちらかを選んで使うことができる f m 図 3-1 波長変換器 (1 段 ) の構成 図 3- フィルタ特性 14

3.1. 段 MZI 波長変換器 波長変換器にMZIを つ接続した場合では 図 3-3のような構成になり つMZIを用いることによって光の波長シフト量が 1 段のときよりも変化する MZI 段の波長変換器は全部で 4 回 SSB 変調器を通過する 1 回の通過で f m = Δf / MZI 1 段で 回通過 Δf = f m の波長変換を行うので 段では倍である Δf のシフト量に拡大する フィルタ特性について 図の MZI は前の 1 段の状態である Δf 分波長シフトすると出力ポートが切り替わるが MZI1 は Δf 分波長シフトしたときに出力ポートが切り替わる 図 3-3 波長変換器 ( 段 ) の構成 15

3. 波長変換器の基本系 波長変換器のまとめとして 基本系を図 3-4のように 段 3 段とMZIを追加していくことによって 最終的に出力される波長シフト量が大きくなり また これらを直列に接続して組み合わせることによってさらに波長範囲の拡大が可能である ( 図 3-5) 図 3-4 波長変換器の基本系 図 3-5 基本系の直列接続 16

3.3 光 SSB 変調周波数決定 光 SSB 変調器に光を通したときの周波数変化量を決める 伝送する信号の強度変調速度最大 5Gbps を考慮し 10GHz の帯域が必要になる 10GHz の帯域を波長に変換すると 0.08nm である これは強度変調の広がりを表しており 波長シフトする場合に変調領域の重なりが起こらないように 隣接するチャネルをこれ以上の波長差 ( 波長シフト量 ) にする必要がある これより光 SSB の変調周波数を 1.5GHz とし シフト前の波長を 1550nm とした場合 波長シフト量は c λ 1 = f f f f = 1 + Δ 1 = c λ 1 λ λ λ f = 1 + Δ 1 c c λ λ 1 = = f f1 f1 + Δf f1 c c = c f 1 Δf ( f + Δf ) 1 Δf f 1 c = Δf c λ 1 c = λ1 c Δf 式 3-1 = (1550 10 8 3 10 9 ) 1.5 10 9 1 10 10 m = 0. 1nm となり 変調領域以上の波長シフト量が得られるので SSB の変調周波数を 1.5GHz に 設定する ( 図 3-6) 波長変換器ではシンセサイザを f m =1.5GHz にし MZI1 段 ( Δ f = f m ) では 5GHz で 0.nm 段 ( Δf = 4 f m ) では 50GHz で 0.4nm のシフト量が得られる 100GHz の WDM 伝送において MZI 段は半分の周波数 MZI1- 段はさらに半分の周波数シフトを行い ます 17

図 3-6 変調周波数と周波数シフト 3.4 光干渉計の設計 光干渉計について微動台を用いて図 3-7 のような干渉計を設計する MZI1 段の状態 では 周波数 5GHz のシフトで出力ポートが切り替わるようにするために 光の到達 時間差を作る SSB 変調器の変調周波数が 1.5GHz なので光の到達時間差は π ω = τ π π f = τ π = = πτ 1 τ 1 1 f = = 1. 5GHz τ = τ 9 1.5 10 τ = 40 ps になり 干渉計で設計する光路差の距離は ΔL =τ c f 式 3- ΔL = τ c 式 3-3 = 40 10 1 3 10 8 = 0.01m = 1mm τ = 光の到達時間差 となり この長さになるように微動台を調節する 18

微動台の調整法として 光路差を設けるため反射鏡 の位置を適度な場所に配置し 入力 1 出力 1 をつないだ状態で スプリッタ 1 から分波されたルート A ルート B の光を出力 1 の光ファイバに入光させる 基本的な調整として可視光で入出力側それぞれでファイバに通過するように光路を調整する 細かな調整としてはルート B の光は反射鏡 出力 1 の微動台のみ ルート A は反射鏡 1 スプリッタ のみを調節し それぞれパワーメータで各ルートの光出力が最大及び同じ値になるように調節する このときに第 5 章の特性測定で説明するフィルタ特性の測定を行い フィルタ周期が 0.nm になるように反射鏡 の配置を変えて第 1 段階の工程を繰り返す 次に光路差が設定されている状態で出力 の微動台を設け つのルートの光を調整する 最後に入力 の微動台を設け 入力光を入力 として出力 1 出力 に光が通るように調節をする 最終確認として 入力 1 入力 それぞれの入力光に対する出力 1 出力 の各ルートの光出力が最大及び同じ値になっているかを確認する 図 3-7 光干渉計の設計 19

3.5 PLC 型 MZI MZI 段では この干渉計に加えもう一つ干渉計を用いるが つ目の干渉計は図 3-8 のようなPLC-MZIを用いる この干渉計は導波路型のマッハツェンダー干渉計で 本研究では出力ポートが切り替わる周波数間隔を 50GHzのMZIを用いる このMZIは温度制御や電圧によってフィルタ特性の波長が変化する特性を持っている PLC(Planar Lightwave Circuit) とは LSI と同じ薄膜形成で微細加工を施して作製される石英ガラス導波路で構成される光回路のことで スプリッタや WDM 用の波長合分波器などに実用化されている MZI の構造を基本として導波路上の薄膜ヒータで導波路を加熱することで波長が変化し 出力ポートが切り替わる この PLC-MZI には温度制御するためのサーミスタやペルチェ素子が用いられている サーミスタ (hermistor) は半導体の温度が上昇すると抵抗値が下がるという特徴を利用した温度センサであり 自身の周囲の温度変化に対して抵抗値を変える素子である サーミスタは 温度センサとして冷蔵庫やエアコンなどの家電製品などに用いられている ペルチェ素子は異なる 枚の金属板で構成される冷却効果を持った半導体素子である この 枚の金属板の接合部分にバイアスを加えると片側の温度が下がり もう一方の温度が上がる ペルチェ素子はこういった金属板の一方が放熱し もう一方が吸熱するというペルチェ効果を利用している 半導体レーザの温度制御に用いる場合は 半導体レーザに直接触れて放熱と吸熱の動作を繰り返し行うことによって半導体レーザの温度を一定に保ち 波長を制御する役割を行っている 図 3-8 PLC-MZI 0

第 4 章実験機材の概要 この章では 光変調 波長変換の実験系や特性測定に用いる光部品について説明する 4.1 光変調 光ファイバを用いた通信を実現するには 音声や画像の情報の電気信号を光信号に変換させる必要がある これを光変調と呼ぶ この光変調には 大きく分けて 図 4-1[1] の半導体レーザ (laser diode :LD) などの光源の光を直接強度変調を行う直接変調方式と 図 4-1[] の光源からの出力光に対し 別に用いられた変調器により外部から変調を行う外部変調方式のつがある 電気信号を光信号に変換する方法には大きく分けて 通りある 直接変調方式は構成が簡単であり 小型化できるという利点を持ち 広く用いられているが 数 GHz 以上の高周波になると半導体レーザの持つチャーピングにより 伝送速度に制限ができてしまう チャーピングとは 半導体レーザの変調時に瞬時的なキャリアの変動によって活性層の屈折率が変化して光の波長が変わる現象である 一方の外部変調器の場合では 半導体レーザからの安定光に対し電気光学効果などで変調を行うためチャーピングの問題がなく 高速で長距離の伝送が可能である 外部からの光に対して制御を加える方法として 主に電気光学効果 (Electrooptic Effect :EOE) 音響光学効果(Acoustooptic Effect :AOE) 熱光学効果(Thermooptic Effect :TOE) 磁気光学効果(Magnetooptic Effect :MOE) などがある 電気光学効果による光制御では 後に説明する LiNbO 3 (LN) に代表されるような強誘電体結晶を用い LiNbO3 結晶は大きな電気光学定数をもっているため光変調器の基盤としてよく利用される 図 4-1 光変調方式 1

4.1.1 LN 変調器 [7] LN 変調器とは LiNbO 3 ニオブ酸リチウムもしくはリチウムナイオベートと呼ばれ 大きな電気光学定数を持ち 通信波長帯で低損失な光導波路を形成することができる 光スイッチや電界センサなどの電気光学効果を利用した多くの光デバイスに利用されている LN 変調器は1 次の電気光学効果であるポッケルス効果を用いた屈折率変化によって光変調を行うデバイスで 電気光学効果の応答速度は非常に早く 高速なスイッチング応答が可能である LN 変調器には位相変調 強度変調 偏波変調の各動作があり その中でつの位相変調器を組み合わせたマッハツェンダー型にすることによって 強度変調器を構成する マッハツェンダー型は光をつの導波路に分岐させて 再びつの光が合流するときの干渉条件によって光の on off を行う光強度変調器で 光の導波路上にある電極に位相差を発生させるように電圧を加えることで光が合流するときの干渉条件を変えることで光のパワーを変化させることができる マッハツェンダー型の基本構造として図 4-のようにLN 変調基板上につの導波路と分岐して合流するときのY 分岐があり 電圧を加えるための電極によって構成されている 入射した入射光はY 分岐にて分波され 分かれた光はそれぞれ直進光と変調される光に分かれる 導波路 1 の光はそのまま進み 導波路 では光が位相変調されて 再びY 分岐にて上下両アームの光が合波されることで強度変調された光が出力される このとき下側のアームでは電極が設けられており 電極から導波路にバイアスかけると 電気工学効果によって位相変化が起こる この位相変化が導波路 1 の光と逆位相となる場合 後段のY 型導波路で合波されると つの光が打ち消し合って光が出力されなく なる このとき加えた電圧を半波長電圧 V π と呼ぶ LN 変調器の特性は図 4-3のような変調曲線となり 駆動電圧を P と P max の間で変 化させることにより強度変調を行う この つの電位差は π シフト電圧と呼ばれ 表す P と P の中間値をV とし これは変調器の動作点になっており この動作 min max B 点を中心に電気信号を加えると 電気光学効果によって光デジタル信号に変換され 効率よく出力されます. このとき加えたバイアス電圧は 温度や経時によって変化していき 変調曲線が時間とともに横軸方向に移動するという 熱ドリフトや DC ドリフトと呼ばれる現象がある min V π で

図 4- LN 変調器の構造 図 4-3 LN 変調器の特性 3

4. フォトダイオード フォトダイオード (PD) を組み込んだ出力回路として受光素子で送信側からの光信号を電気信号に変換し それを効率よく出力する 受光素子は逆バイアスで行い 光出力に比例して光電流が受光素子に流れる 受信回路は受信する電力の大きさによって信号対雑音比 (SN 比 ) は変化する 実際の受信回路で受信信号の信号対雑音比を確保することは重要であり 信号対雑音比は対数表現のdBで表し S/Nが大きいほど通信品質が良好であることを示している ノイズの発生する要因として フォトダイオードなどの光検出器上に光学的な放射を入射させずに動作電圧 ( 逆バイアス ) を電極に印加したとき きわめて微弱な電流が流れるようになる これを暗電流と呼ぶ これは電極に印加する電圧を上昇させて 一定の電圧を越えると電極に印加する電圧に関わらず一定の電流が流れるようになる またさらに電圧を大きくしていくと ある部分から急激に逆電流が増 加する この電圧をブレークダウン電圧 V といい V 以上逆バイアスを加えると ダ イオードが破壊に至ることがある フォトダイオードのV-I 特性を図 4-4に示す B B 図 4-4 PD V-I 特性 本研究では図 4-5に示す 10Gbps 用のPDプリアンプモジュール (PDPRE) を用い 実験や干渉計の測定に用いる これは受光素子であるフォトダイオードと I V 変換増幅器であるプリアンプICを主として構成される光受信用モジュールである 4

図 4-5 PDPRE 受信回路 4.3 光増幅器 光ファイバを伝搬中に光のパワーが減衰し 受信端では光検出器の感度限界に近い微弱な光になっている これに加えて本実験においても 光干渉計や SSB 変換効率の特性で光が減衰するため 受信端の手前で光を増幅させる必要がある これにより光ファイバ増幅器を実験系に組み込んで用いる 光増幅器の原理としては反転分布における誘導放出であり これが生じると, 入射光子数よりも出射光子数のほうが多くなり 光が増幅されるのである 光増幅器はレーザ構造における光の共振器部分を除去して, 増幅過程のみを利用するものである この中で光 ファイバ増幅器は光ファイバのコア部にエルビウム などの希土類イオンをドープし た増幅器である この増幅器の中でもエルビウムドープ光ファイバ増幅器 (Erbium Doped Fiber Amplifier :EDFA) は光ファイバの低損失域である波長 1550nm 帯を増幅域として 高利得 広帯域 低雑音などの特徴を持っている EDFA で増幅された信号光は増幅された信号に加えて 広帯域なスペクトルが付加される これは 自然放出光の一部が光ファイバの基本モードに結合し さらに誘導放出による増幅を受けたもので ASE(Amplified Spontaneous Emission) 雑音と呼び 光増幅器では一般的にこの ASE 雑音が主な雑音要因となる E r 5

第 5 章光波長変換測定 この章では波長変換の実験結果について述べる 5.1 特性測定 この節では光 SSB 変調器の基本特性 変換効率について測定を行ったのでその結果について述べる 5.1.1 光 SSB 変調特性 本研究にて波長変換に用いる光 SSB 変調器の基本特性を測定するために図 5-1の実験系で測定を行った 光源の発振波長 1550nmを使用し シンセサイザからは信号周波数 1.5GHz アンプの出力 Vp-p=10Vの正弦波信号で光 SSB 変調を行った 光 SSB 変調を行い 上側波帯 (USB) と下側波帯 (LSB) をそれぞれ発生させた場合の周波数スペクトルが図 5-となった また シンセサイザからの出力を無くした状態がRF offである 光 SSB 変調するとき USBで搬送波 下側波帯を抑圧する場合をUp conversionとし LSB で搬送波 上側波帯を抑圧することをDown conversion としたとき up conversionでusb を発生させた状態において搬送波抑圧は 19dB 下側波帯抑圧は 7dBであった down conversionでlsbを発生させた状態においては搬送波抑圧は 0dB 上側波帯抑圧は 9dBであった この結果より波長変換に適した良好なデータであると言える Up conversionとdown conversionでusbとlsbはそれぞれ搬送波から 1.5GHzの周波数で波長にして 0.1nm 程度波長シフトしていることが図で分かる 図 5-1 SSB 基本特性実験系 6

図 5- 光 SSB 基本特性 5.1. SSB 変換効率 次に 強度変調した搬送波を光 SSBで変調し 光 SSBの変換効率を求めるために図 5-3の構成にて測定を行った 光源とシンセサイザはSSB 基本特性と同じ設定とし PPG から 1Gbpsの信号で強度変調を行った PPGから出た信号のアンプ出力は 14Vp-pで V B と同じ値にして LN 変調器を動作させる この構成にて光 SSB 変換前のスペクトルと 変換後 (USB) のスペクトルを測定したものが図 5-4となる 変換前と変換後の光出力のピーク値を比べてみると 変換前が-3.6dBmであったのに対して 変換後が-5.3dBm となった よって光 SSB 変調における変換損失は 1.7dBであることがわかる 図 5-3 変換効率測定系 7

図 5-4 光 SSB 変換効率 5.1.3 光干渉計 次に 3 章の 3.4 節で微動台で設計した光干渉計のフィルタ特性を図 5-5 のような測定系で実験を行った 光源の波長は 1550nm とした LN で強度変調し MZI から出力された光を光スペクトルアナライザで測定を行った もう一方の光は MZI の精度を上げるため 電気特性を行った PD で電気的特性に変換され 周波数に対する振幅の変化をネットワークアナライザで測定を行った スペクトル測定の結果としては図 5-6 のようになり フィルタ周期は 5GHz で 0.nm なので 測定したフィルタ周期はこの値にほぼ近い値となっている 電気測定 ( 図 5-7) では変調周波数は 1.5GHz で設定しているので この周波数付近でパワーが落ちているのがわかる 図 5-5 MZI フィルタ特性測定系 8

図 5-6 MZI フィルタ特性 図 5-7 MZI 電気測定 9

次に PLC-MZI のフィルタ特性と温度制御や電圧による波長変化の特性を測定するために図 5-8 のような測定系で実験を行った 光源からの光を MZI に通したとき 何も制御を行っていない状態 ( 室温 3 ) 温度制御をかけた状態 電圧を印加したときの状態 温度 電圧両方制御した状態のときのスペクトルを測定した このとき温度制御 8 加える電圧を 10V とした 結果として測定したスペクトルを図 5-9 に示す それぞれ PLC-MZI に制御をかけた光は制御を行っていないときのフィルタ特性と比べ 波長が変化しているのがわかる 図 5-8 PLC-MZI 特性測定系 図 5-9 PLC-MZI フィルタ特性と制御 30

5.1.4 誤り率特性 次に LN 変調器により強度変調された信号の誤り率特性の測定系を図 5-10 に示す PPG からの信号の変調速度を 1~3Gbps と変化させたときのアイパターンと誤り率特性を図 5-11 図 5-1 に示す 図 5-10 誤り率測定系 31

図 5-11 1~3Gbps 時のアイパターン 図 5-1 誤り率特性 3

5. 波長変換測定 この節では本研究である波長変換器を用いた測定結果について述べる 5..1 実験系 測定方法 波長変換器基本系のユニットを組んだ構成は図 5-13(MZI-1 段 ) 図 5-14(MZI- 段 ) のようになる シンセサイザの信号周波数を 1.5GHz とし 光源には可変波長レーザー 1550nm を用いる PPG から出力された信号を LN 変調器で強度変調し 光信号が MZI を通り 波長変換を行う MZI-1 段とき 度 MZI- 段は 4 度光 SSB 変調器を通過し波長変換を行う このとき MZI- 段で用いる PLC-MZI(MZI-) で 温度制御や電圧で一方の MZI-1 とフィルタ周期を合わせる MZI-1 段のそれぞれの波長変換のスペクトルを測定し そして 1Gbps 及び 3Gbp 時の誤り率の測定を行った 図 5-13 MZI-1 段実験系 図 5-14 MZI- 段実験系 33

5.. 測定結果 測定結果として波長変換後のスペクトルを図 5-15 に示す また 1Gbps 及び 3Gbps のそれぞれ MZI を通過した波形を図 5-16 に示す 波長変換のスペクトルにおいて MZI に入力したときのスペクトルのピークの波長に比べると MZI-1, 段のときのピークの波長がそれぞれ 0.nm 0.4nm 波長がシフトしているのがわかる MZI- 段のスペクトルのピークが他のスペクトルのピークと比べ 光出力が下がっており これは つ MZI の通過しない出力ポートから光が漏れ その分の光増幅の利得が得られなかったためだと考える 信号波形においては MZI の光フィルタ狭窄化により MZI-1 段とも 3Gbps で信号劣化が生じていたが 段の場合 利得が得られなかったためアイパターンの振幅が下がっていた 用いた部品の光損失は PC( 偏波コントローラ )3 つはそれぞれ 0.5dBm MZI-1 MZI- はそれぞれ 0.4dBm 0.3dBm であった 光 SSB 変調器後の光増幅器の利得は 3dBm であった 図 5-15 波長変換スペクトル 34

図 5-16 波長変換後のアイパターン 35

第 6 章結論 本論文において波長範囲の適用に関しての研究成果を述べた 以下に本研究で明らか にしたことを示す 光 SSB の基本特性から波長変換器 MZI1 段 MZI 段の状態で入力波長の 倍 4 倍の波長変換をすることができた 波長変換器の光フィルタ狭窄化によって信号劣化が生じ 3Gbps までの波長変換が可能だった 周辺機器等の影響 ( 振動や音 ) により MZI が不安定のため誤り率特性から定量的な数値を出すことが困難であり 波長変換における適用範囲を明確化することはできない状態であった 36

謝辞 本研究を進めるにあたり 高知工科大学工学部電子 光システム工学科岩下克教 授には多くのご指導と助言を頂き深く感謝の意を表します また 同研究室の先輩方である恒安宏一氏 多木勝彦氏 島村卓嗣氏 渡部隆寛氏 中妻宏太氏 速水佑治氏には日頃から多くの助言を頂き心から感謝を申し上げます そして 非常に良い環境で研究を行うことができたことをお世話になった皆様に心か ら感謝の意を表します 008 年 月 島田泰樹 37

参考文献 [1] 日隈薫他, LiNbO 3 光周波数シフタ /SSB 変調器の応用検討, 住友大阪セメント, テクニカルレポート,003 年度版 [] 高非線形ファイバを用いた四光波混合器による WDM 信号の広帯域波長変換 武田鎮一他, 電子情報通信学会技術研究報告, 光通信システム,Technical report of IEICE. OCS Vol.97, No.408(1997118) pp. 19-4 [3] 高非線形性分散シフトファイバと波長変換への応用 大西正志他, 電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集 Proceedings of the Society Conference of IEICE Vol.1997 年. エレクトロニクス, No.1(19970813) p. 186 [4] 無線通信機器, 提坂秀樹大庭英雄共著, 日本理工出版会 [5] X cut LN SSB-SC 変調器 /X cut LN FSK 変調器の商品紹介 住友大阪セメント株式会社, 光電子事業部, 商品開発部 [6] 光 SSB 変調によるディジタル型波長変換技術高知工科大学岩下克 [7] LiNbO 3 導波路型光変調器の製品紹介 住友大阪セメント株式会社, 光電子事業部, 商品開発部 38