糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

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2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

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通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

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2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

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2018 年 10 月 4 日放送 第 47 回日本皮膚アレルギー 接触皮膚炎学会 / 第 41 回皮膚脈管 膠原病研究会シンポジウム2-6 蕁麻疹の病態と新規治療法 ~ 抗 IgE 抗体療法 ~ 島根大学皮膚科 講師 千貫祐子 はじめに蕁麻疹は膨疹 つまり紅斑を伴う一過性 限局性の浮腫が病的に出没

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

2009年8月17日

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診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

2015 年 9 月 30 日放送 カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE) はなぜ問題なのか 長崎大学大学院感染免疫学臨床感染症学分野教授泉川公一 CRE とはカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 以下 CRE 感染症は 広域抗菌薬であるカルバペネム系薬に耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの いわゆる

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医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として


どく拡張する ( 中毒性巨大結腸症 ) こともあります. このような場合には緊急に手術が必要です. また 大腸癌になった場合にも手術が必要になります. 内科的治療が効きにくい難治例や重症例の場合にも 内科的治療のバランスの点から手術を選択することがあります. 手術の方法は 大腸全摘ですが 肛門を残す

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

されており これらの保菌者がリザーバーとして感染サイクルに関与している可能性も 考えられています 臨床像ニューモシスチス肺炎の 3 主徴は 発熱 乾性咳嗽 呼吸困難です その他のまれな症状として 胸痛や血痰なども知られています 身体理学所見には乏しく 呼吸音は通常正常です HIV 感染者に合併したニ

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

学会名 : 日本免疫不全症研究会 アンケート 1 1. アンケート 2 に回答する疾患名 (1) X 連鎖無 γ グロブリン血症 (2) 慢性肉芽腫症 2. 移行期医療に取り組むしくみあり :1 年に1 回の幹事会で 毎年 discussion している また 地区ごとの地方会で 内科の先生方にいか

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

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2019 年 5 月 1 日放送 Clostridioides (Clostridium) difficile 感染症診療カ イト ラインのホ イント 愛知医科大学大学院臨床感染症学教授三鴨廣繁はじめに Clostridioides difficile は医療関連感染としての原因菌として最も多くみられる嫌気性菌であり 下痢症や偽膜性腸炎などの多様な C. difficile infection(cdi) を示すことが広く認知されています 公益社団法人日本化学療法学会 一般社団法人日本感染症学会 CDI 診療ガイドライン作成委員会は 2018 年 10 月に CDI に対する診療の向上のために日本の臨床現場の現状を考慮した診療ガイドラインを作成し発表しています CDI の病態抗菌薬関連下痢症の原因の一つが C. difficile です C. difficile は 芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌で 健常成人の 5~10% 新生児の 15~70% に無症候性保菌がみられ 土壌, 水, 家庭のペットなどの環境中にも存在しています 抗菌薬投与中の患者では約 20~30% に保菌しています CDI は 抗菌薬 プロトンポンプ阻害薬 各種化学療法薬 ステロイド薬などによる腸管内細菌叢 免疫の撹乱 長期療養 食事 ペットなどの環境要因 高齢 炎症性腸疾患や免疫不全などの基礎疾患などの宿主要因など さまざまな要因によって発症します また 施設内で発症患者から直接的または医療従事者を介して伝播した外因性感染もあり 院内での集団発生の報告もあります CDI の臨床症状は多彩であり 軽度の下痢症から偽膜性腸炎 イレウス, 中毒性巨大結腸症, 消化管穿孔の他 CDI に伴うショックなどから死に至るケースもまれではあるが存在します C. difficile の病原性には 腸管毒である toxin A と細胞毒である toxin B の 2 毒素が大きく関与しています 近年 遺伝子が欠損したために toxin A や toxin B の毒素を多量に産生する機序を有する binary toxin 産生株が存在し注目されています binary toxin 産生株は 特に北米や欧州で流行しているリボタイプ 027 株が注目されています

が 日本では 027 株のアウトブレイク報告は現在のところありませんが binary toxin 産生株は散発的に検出されています CDI の診断 C. difficile による腸管感染症は 2 歳以上で Bristol Stool Scale 5 以上 ( 表 1) の下痢を認め CDI 検査にて便中のトキシンが陽性もしくはトキシン産生性の C. difficile を分離する もしくは下部消化管内視鏡や大腸病理組織にて偽膜性腸炎を呈するものと定義されます 下痢は 24 時間以内に 3 回以上もしくは平常時よりも多い便回数で Bristrol Stool Scale5 以上の便を目安とします ただし トキシン産生の有無や CDI の重症度と Bristol Stool Scale スコアは相関しません なお 日本版ガイドラインでは 2 歳未満の CDI については定義されていません CDI 診断迅速検査は C. difficile 抗原であるグルタミン酸脱水素酵素 (GDH) および毒素を検出可能な試薬が有用であるが GDH 陽性 トキシン陰性の場合には一定の施設条件下で CDI 迅速診断に PCR 法などの遺伝子検査法を用いた検出法が承認されており Nucleic Acid Amplification test:naat 検査を実施し 陽性の場合は臨床評価で CDI または保菌と判断します CDI の重症度現在 国際的に重症 CDI の統一された定義はありませんが 年齢やアルブミン 腎機

能 画像所見などが評価項目にあげられています 重症度の決定が必要な最大の理由は治療薬の選択につながるためです 代表的な重症度基準である Zar 基準では 65 歳の高齢者かつ低アルブミン血症に起きた CDI はすべて重症に分類されてしまうなど臨床的にも大きな問題がありました そこで 日本嫌気性菌感染症学会では日本の実情に合致した重症度基準を作成しようという試みがなされ MN 基準が提唱され ( 表 2) これが日本版 CDI 診療ガイドラインにも引用されました CDI の再発 CDI 患者では再発率の高さが臨床上の問題です CDI 患者の再発率については CDI 発症患者のうち 25% が再発し そのうち約 45 65% が再発を繰り返しますが 日本版 CDI 診療ガイドラインでは 再発を 適切な診療を受けたにもかかわらず CDI 発症後 8 週間以内に CDI を再度発症したもの と定義し 遺伝子学的に同一菌株による再発を再燃 異なる菌株による再発を再感染 と定義しています 再感染か再燃かといった判断は アウトブレイク時の原因検索や治療薬の有効性の評価には影響する可能性がありますが その判断は遺伝子型の比較により 実臨床における判断は困難であることから再発は再燃と再感染を含めた概念としています CDI 難治例日本版 CDI 診療ガイドラインでは CDI に対する初回治療以降 2 回以上の再発を認める症例 や VCM 内服治療 FDX 内服治療にも関わらず 治療終了時までの下痢の改善を認めない例 もしくはショック 麻痺性イレウス 中毒性巨大結腸症 腸穿孔を認め CDI が原因と考えられる症例 は難治性として定義しています CDI の治療 C. difficile 腸炎の場合, 原因として疑われる抗菌薬を中止すると,10~20% 症状が改善します 抗菌薬投与中止が困難である場合や 抗菌薬中止後も CDI の改善がみられない場合には C. difficile に対する標的治療薬を行いますが 日本版 CDI 診療ガイドラインの CDI 治療の項目内では MNZ と VCM の 2 薬剤が標準的です いずれも腸管内

で十分な抗菌活性を有することが重要であり VCM は経静脈投与では腸管内への移行が不良なため無効であり 経口投与を選択します MNZ は経口薬 静注薬とも効果があります 初発例 ( 軽症 中等症 ) では MNZ( 経口または静注 ) を用いて 初発例 ( 重症例 ) や再発例では VCM( 経口 ) を用いて治療します その場合 完全なイレウスの場合には VCM 直腸注入を検討します 2 剤の位置づけの理由として 軽症 中等症での VCM 内服と MNZ 内服のメタアナリシスにおいて臨床的有効性に差がみられないこと VCM 投与の場合 VCM 耐性腸球菌出現リスクが高まること MNZ 内服の方が VCM 内服に比べ安価であることなどがあげられます CDI 治療薬として 2018 年国内で FDX が使用可能となりました FDX は国内第 3 相試験で VCM に対する非劣性は検証されていませんが再発率は VCM より低く 治癒維持率は VCM より高かったことから再発リスクの高い症例では初期治療薬として推奨されます なお 腸管ぜん動抑制薬は CDI 患者における症状を悪化させる可能性が高いため使用しないことが推奨されます CDI の再発予防 CDI の再発を繰り返す場合は VCM 漸減療法やヒトモノクローナル抗体 ( ベズロトクスマブ ) の使用を検討します ベズロトクスマブによる CDI の再発抑制効果は認められています 日本版 CDI 診療ガイドラインでは CDI 再発リスクの低い患者においては ベズロトクスマブの使用は強く推奨されません 一方 CDI の再発リスクの高い患者においては CDI の再発抑制を目的とした抗トキシン B 抗体の使用は弱く推奨されています CDI 再発リスクの高い患者においては 薬価基準の一部改正に伴う留意事項に注意した上で CDI 再発抑制を目的として CDI 標準治療薬にベズロトクスマブを併用することが弱く推奨されています CDI 患者では 腸内細菌叢のバランスが破綻しており (dysbiosis) 欧米では糞便移植の有用性が指摘され積極的に治療に応用されるようになっています しかし 治療において

はプロバイオティックスの有用性を指摘した論文報告はいくつかありますが 十分なエビデンスがあるとは言い難いのが現状です しかし プロバイオティクスによる CDI の予防についてはエビデンスがあります プロバイオティックスによる予防に関するメタアナリシスでは 早期における投与開始がより有用と示唆されていることから 日本版 CDI ガイドラインでは CDI 予防におけるプロバイオティックスの有用性に言及しています おわりに最後に 日本版の CDI 診療ガイドラインが 日本における C. difficile 研究のさらなる発展の端緒となることをガイドラインの作成委員の一人として期待しています また 将来的には CDI 感染対策に特化したガイドラインの作成も望まれます