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The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No NUTRITION AND METABOLISM IN CALF 総 説 子牛の栄養 代謝の特異性 久米新一 京都大学大学院農学研究科 ( 京都市左京区

黒毛和種子牛の免疫グロブリンの移行と産生および ホエータンパク質を用いた人工ほ乳技術の開発に 関する研究 2015 安松谷 恵子

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部屋に収容した (40 羽 /3.3 平方メートル ) 表 1 試験区分 区 ( 性別 ) 羽数 飼 料 対照区 ( ) 52 通常 ( 市販飼料 ) 対照区 ( ) 52 通常 ( 市販飼料 ) 試験区 ( ) 52 高 CP(4~6w 魚粉 4% 添加 ) 試験区 ( ) 52 高 CP(4~6

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

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岡山農総セ畜研報 6: 55 ~ 59 (2016) < 研究ノート > 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討 福島成紀 木曽田繁 滝本英二 Examination of the Feeding Method Aiming at Improving reproductive Per

(Taro-09\221S\225\ \221S\225\266\217\274\226{.jtd)

乳牛の繁殖技術と生産性向上

2) 飼養管理放牧は 5 月から 11 月の期間中に実施した 超音波検査において受胎が確認された供試牛は 適宜退牧させた 放牧開始時および放牧中 3 週間毎に マダニ駆除剤 ( フルメトリン 1 mg/kg) を塗布した 放牧には 混播永年草地 2 区画 ( 約 2 ha 約 1 ha) を使用し

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H25.18

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

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Microsoft Word - 02肉牛研究室

A 農場の自家育成牛と導入牛の HI 抗体価の と抗体陽性率について 11 年の血清で比較すると 自家育成牛は 13 倍と 25% で 導入牛は 453 倍と % であった ( 図 4) A 農場の個体別に症状と保有している HI 抗体価の と抗体陽性率を 11 年の血清で比較した および流産 加療

The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No DELAYED PARTURITON AND INFLUENCE OF INDUCED PARTURITION ON CALVES 総 説 黒毛和種繁殖雌牛の分娩遅延の要

25 岡山農総セ畜研報 4: 25 ~ 29 (2014) イネ WCS を主体とした乾乳期飼料の給与が分娩前後の乳牛に与える影響 水上智秋 長尾伸一郎 Effects of feeding rice whole crop silage during the dry period which exp

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徳島県畜試研報 No.14(2015) 乾乳後期における硫酸マグネシウム添加による飼料 DCAD 調整が血液性状と乳生産に及ぼす影響 田渕雅彦 竹縄徹也 西村公寿 北田寛治 森川繁樹 笠井裕明 要 約 乳牛の分娩前後の管理は産後の生産性に影響を及ぼすとされるが, 疾病が多発しやすい時期である この時

研究の中間報告

B 農場は乳用牛 45 頭 ( 成牛 34 頭 育成牛 7 頭 子牛 4 頭 ) を飼養する酪農家で 飼養形態は対頭 対尻式ストール 例年 BCoV 病ワクチンを接種していたが 発生前年度から接種を中止していた 自家産牛の一部で育成預託を実施しており 農場全体の半数以上の牛で移動歴があった B 農場

黒毛和種の受動免疫による呼吸器病ワクチネーション効果と飼養管理 現場では時間的 労力的な制約から十分実施されることは少なく断続的に発生する呼吸器病の対応に苦慮する事例が多い また 黒毛和種は乳用種に比べ幼齢期の免疫能が劣る [5] のに加え ロボットでは運動量増に伴う栄養要求量の増加 闘争によるスト

れた。

焼酎粕飼料を製造できることを過去の研究で明らかにしている ( 日本醸造協会誌 106 巻 (2011)11 号 p785 ~ 790) 一方 近年の研究で 食品開発センターが県内焼酎もろみから分離した乳酸菌は 肝機能改善効果があるとされる機能性成分オルニチンを生成することが分かった 本研究では 従来

参考1中酪(H23.11)


子牛育成の参考書 ~ 子牛育成プロジェクトの調査結果から ~ 平成 26 年 3 月 東松浦農業改良普及センター唐津農業協同組合上場営農センター北部家畜保健衛生所

表 症例 の投薬歴 牛 8/4 9 月上旬 9/4 9/5 9/6 9/7 9/8 9/9 3 Flu Mel TMS Flu Mel Flu Mel Flu 体温 :39.0 体温 :38.8 : エンロフロキサシン Flu: フルニキシンメグルミン Mel: メロキシカム : ビタミン剤 TMS

豚丹毒 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 23 年 2 月 8 日 ( 告示第 358 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した豚丹毒菌の培養菌液を不活化し アルミニウムゲルアジュバントを添加したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称豚丹

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

2 Vol. 17, No.1, 2009

抄録/抄録1    (1)V

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

Taro-④H24成績書『(イ)肉用牛への給与技術の確立 ①繁殖雌牛・子牛への給与技術の確立』【校正済み】

報告書

日本脳炎不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した日本脳炎ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株 名称日本脳炎ウイル

記載データ一覧 品目名 製造販売業者 BE 品質再評価 1 マグミット錠 250mg 協和化学工業 2 酸化マグネシウム錠 250mg TX みらいファーマ 3 酸化マグネシウム錠 250mg モチダ 持田製薬販売 # 4 酸化マグネシウム錠 250mg マイラン マイラン製薬 # 5 酸化マグネシ

研究の中間報告

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

現在 本事業で分析ができるものは 1 妊娠期間 2 未経産初回授精日齢 3 初産分娩時日齢 / 未経産妊娠時日齢 4 分娩後初回授精日 5 空胎日数 6 初回授精受胎率 7 受胎に要した授精回数 8 分娩間隔 9 供用年数 / 生涯産次 10 各分娩時月齢といった肉用牛繁殖農家にとっては 極めて重要

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

Microsoft Word - H19_13.doc

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負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

BUN(mg/dl) 分娩後日数 生産性の良い牛群の血液データを回収 ( 上図は血中尿素窒素の例 ) 各プロットが個々の牛のデータ BUN(mg/dl) BUN(mg/dl)

387 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

褐毛和種(熊本系)の遺伝的能力の推移について

和牛開始マニュアル

Microsoft Word - Ⅲ-11. VE-1 修正後 3.14.doc

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スライド 1

Taro-H23.08

第90回日本感染症学会学術講演会抄録(I)

注 ) 材料の種類 名称及び使用量 については 硝酸化成抑制材 効果発現促進材 摂取防止材 組成均一化促進材又は着色材を使用した場合のみ記載が必要になり 他の材料については記載する必要はありません また 配合に当たって原料として使用した肥料に使用された組成均一化促進材又は着色材についても記載を省略す

検査項目情報 γ-gtp ( ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ ) [ 血清 ] gamma glutamyl transpeptidase 連絡先 : 3487 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 3B090 分析物 γ-

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

Ł\”ƒ-2005

平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄 沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と 沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究 取組 琉球大学農学部長嶺樹

Microsoft Word - 要約.docx

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに


測定方法 測定方法 ( ラット マウス共通 一部の系統でのみ測定されている項目も含む ) 血液学的検査 測定条件 絶食 : 約 16 時間 麻酔 : ネンブタール腹腔内投与 採血部位 : 後大静脈 抗凝固剤 : EDTA-2Na(WBC RBC HGB HCT MCV MCH MCHC PLT) E

報告書

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スイスイ検診ってなに?? 20 歳以上の方で ご自分の身体について ふと思う事はありませんか? たとえば 健康について気になるけど健康診断 人間ドックを受けていない! 病院で診察を受けるまでもないけど ちょっと気になる! 健康管理に気をつけているから大丈夫だと思うけど 検査の数値が気になる! 主人は

“にがり”の成分や表示等についてテストしました

「中小企業・ベンチャー挑戦事業の内実用化研究開発事業」の進め方について

参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 参考 11 慢性貧血患者における代償反応 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 赤血球液 RBC 赤血球液

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1. 尿毒素に関する検査 尿素窒素 (BUN) 70~90 mg/dl タンパク質の燃えカスです タンパク質の過剰摂取 透析不足 消化管出血などで上昇します 筋肉でエネルギーとして使われた後の代謝 クレアチニン (Cr) 16 mg/dl 以下 物質で 筋肉量の多い人は高値になります 透析不足でも上

血糖高いのは朝食後のため検査項目 下限値上限値 単位名称 9 月 3 日 9 月 6 日 9 月 15 日 9 月 18 日 9 月 21 日 9 月 24 日 9 月 28 日 10 月 1 日 10 月 3 日 10 月 5 日 10 月 9 日 10 月 12 日 10 月 15 日 10 月

The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.1 No The Transition of Calf Nutrition and Management 総 説 齋藤昭 全国酪農業協同組合連合会 ( 全酪連 ) 購買部酪農生産指

テイカ製薬株式会社 社内資料

Taro-kv12250.jtd

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検査項目情報 クリオグロブリン Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5A. 免疫グロブリン >> 5A160. クリオグロブリン Ver.4 cryo

O1-1 O1-2 O1-3 O1-4 O1-5 O1-6

第43号(2013.5)

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

( 図 2-A-2-1) ( 図 2-A-2-2) 18

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

分娩後の発情回帰と血液生化学値との関係(第2報)

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値


はじめに 現在 国内酪農を取り巻く情勢は 飼料価格の上昇 後継者不足および飼養頭数の減少などの大きな変化によって 生産基盤の弱体化が懸念されており 一方で 消費者の需要の多様化や国際環境の変化等により 今後の酪農経営の発展に向けた好機となっています 近年 人口減少等により国内需要の減少が見込まれる中

スライド タイトルなし

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

別紙1 参加医療施設における本研究実施に関する掲示ポスター

肉牛生産管理ご紹介

平成24年度農研機構シンポジウム資料|牛肉における放射性セシウムの飼料からの移行について

Transcription:

1. を主原料主原料としたとした代用乳代用乳の給与給与によるによる子牛子牛の疾病予防疾病予防と発育改善効果および β 添加効果添加効果の検討 ( 代用乳を用いた近畿産ブランド和牛のほ乳期発育改善 第一報 ) 西野治 安川幸子 赤池勝 要約 ( 乳清 ) を主原料とした代用乳 ( 代用乳 )(=区) β ppm を添加した代用乳 (=区) 従来の脱脂乳主体の代用乳(= ) を用いて子牛への給与試験を実施し 発育や糞便スコア 血中成分の解析を実施した 3 種類の代用乳を給与した各試験区における子牛の体重の推移および一日当たりの増体量については 3 区間に差は認められなかった ほ乳期間中の毎日の糞便スコアの平均値はが区に比べて有意に高く がやや軟便傾向であったが 生後 2 14 42 日に測定した糞中水分値には 3 区間に有意差は認められなかった また 区 区ではゼリー状の独特な糞便性状を示した 血中成分では 生後 14 日の血中総コレステロールおよび生後 42 日の血中尿素窒素で 区 区がに比べ有意に低下し 血中 β濃度は区で上昇した 以上のことから 代用乳によって従来の脱脂乳代用乳と同等以上の発育が得られることが示され 新たな代用乳としての使用が可能であると考えられた 一方で 独特の糞便性状と血中総コレステロールの低下は脂質代謝の変化によると考えられたが 血中尿素窒素の低下については考えられる原因がなく 今後これらのメカニズムの解明が必要である 目的 近年 和牛の繁殖効率改善の目的で早期母子分離が提唱され これに伴って人工ほ乳による和牛 子牛育成技術の研究が進められている しかし 和牛子牛の人工ほ乳技術は十分確立されるには 至っておらず 農家での不適切な飼養管理による発育不良や下痢等の疾病発生による損耗が多い また 奈良県での和牛子牛生産は酪農家での受精卵移植 (ET) 由来産子が多く 初乳からの免疫 の獲得が不足しがちである これらの課題をクリアするため 現在近畿 2 府 3 県と京都大学 ( 株 ) 中部飼料が共同でほ乳期和牛の発育改善試験を実施している ( 新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業 ( 旧 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業 )H19~21) 本試験は 免疫グロブリン (IA) 含 有量が高く 免疫賦活効果が期待できるを主原料とした新しい代用乳 ( 代用乳 ) の 開発とその免疫賦活機序の解明および和牛子牛への給与試験と 母牛初乳からの抗体獲得が不足 しがちな ET 由来産子の疾病発生予防で主に構成される 当センターでは人工ほ乳技術確立のた めの 1 代用乳の給与試験 ET 産子の下痢防止のための 2 ワクチンにより抗体価を高め た強化初乳の給与試験 および 3 これらの成果を踏まえた農家での実証試験を担当する 今回は 第一報として 代用乳およびさらなる免疫力の向上を目的として作成した β 添加 代用乳の給与試験の結果を報告する

材料およおよび方法 1) 供試牛の条件および 試験区の設定供試牛は黒毛和種人工授精由来子牛とし 出生直後に市販の免疫グロブリン含有初乳製剤 ヘッドスタート (BAYER 社 )1 袋を強制給与し その後母牛の初乳を自由摂取させた 生後 3 日目に母子分離し 表 1に示すそ β主原料 CP(%) れぞれの代用乳の給与を開始し 生後 7 (ppm) 日目の時点で健康状態に異常のない ( 特 に下痢がない ) 子牛を試験に供した 試 験は各区 5 頭で実施した なお 今回の試験では 当センターで通 常使用している 牛下痢 5 種混合不活化 ワクチン (( 株 ) 微生物化学研究所 ) を 母牛に接種していない 脱脂粉乳 ( 従来品 ) 26 区 26 区 26 表 1 試験区設定と主な成分 2) 供試牛の飼養管理 代用乳は 1 日 2 回 ( 朝 9 時 分 夕方 16 時 分 ) 給与で 給与量は生時体重に応じて最 大日量 6~8k とした スターターは 7 日齢より給与を始め 不断給餌とした スターターは TDN75% 以上 CP% 以上のものを使用した 乾草は cm 程度に細切したチモシーを自由採食させた また 3 日齢前後でサルファ剤 ( エクテシン ) を 28 日齢前後で牛 5 種混合生ワクチン (IBR BVD PI3 RS Aeno:( 株 ) 微生物化学研究所 ) を接種した 3) 調査項目 以下の項目について 飼料摂取量と糞便スコアは朝 夕の代用乳給与時 それ以外は調査日 の午後 2 時に実施した 統計処理は分散分析の後 Tukey 法による多重検定を行った 1 体重および体高 体重は出生直後 7 14 21 28 42 56 63 日齢 体高は 7 28 56 日齢に測定した 2 飼料摂取量 スターターおよび各代用乳の給与量と残量を重量で記録した 3 糞便検査 糞便スコアは 3 段階で記録した 通常便 =1 軟便 =2 水様下痢便 =3 また 糞中水分については 2 14 42 日齢の直腸便を採取して検査した 4 血液検査 2 14 42 日齢に頸静脈より真空採血管 ( プレインおよびヘパリン入り ) にて採取した 調査は以下の計 14 項目について行った 血清成分は 凝固処理 (37 15 分間 ) 後 5 5,rpm で 15 分間遠心して血清分離し 検査した

血球成分 3 項目 : 赤血球数 (RBC) 白血球数 (WBC) ヘマトクリット値 (HCT) 血清成分 11 項目 : 総タンパク (TP) 総コレステロール (T-CHO) 血糖 (Gu) 遊離脂肪酸 (NEFA) 血中尿素窒素 (BUN) 中性脂肪 (TG) GOT γ-gtp カルシウム (Ca) リン (P) 血清 β 5 その他 発熱や呼吸器症状などの下痢以外の異常および投薬などが発生した場合 その他特記事項と して記録した 結果 1 各試験区における子牛の体重の推移および一日当たりの増体量については 良い方から 区 区 の順で 区が良好であった ( 図 1) しかし 3 区間に有意差は認 められなかった ( 区 vs. :P=.6) 体高の推移についてはやや個体差が大きかっ たが 3 区間に差は無かった ( 図 2) 図 1 体重の推移 図 2 体高の推移 9 9 8 ) (k 重 6 体 区区 85 ) m8 (c 高体 75 区区 生時 7 14 21 28 42 56 63 65 7 28 56 2 各試験区における代用乳の摂取量については 有意差は認められなかった ( 図 3) また 代用乳の残飼量の総量はでやや多かった ( :.6k 区 :1.4k 区 :2.5k) が総給与量の約 3% と少なく 有意差も認められなかった スターター摂取量は各試験区とも個体差が大きく ( 最小 :1,935 最大:29,5) 有意差は認められなかった ( 図 4)

6 図 3 代用乳摂取量 区 図 4 スターター摂取量 ( k ) 量 取摂 区 6 ( ) 量取 摂 区区 ~7 8~14 15~21 22~28 29~35 36~42 43~49 ~56 57~6 区間 ( 日齢 ) ~7 8~14 15~21 22~28 29~35 36~42 43~49 ~56 57~6 区間 ( 日齢 ) 3 哺乳期間全体での各試験区における糞便スコアは が区に比べて有意に高かった (P=.16 表 2)1 週間ごとの期間に区切った平均スコアでは 区 区は 21 日齢まで高く推移したが それ以降は低いスコアを維持した 一方 は 49 日齢まで高いスコアが続いていた 表 2 糞便スコア糞スコア 1.3 区 1.259 区 1.144 また 区 区で糞便がゼリー状の形状を示した この独特な形状は 代用乳を給与した全期間で見られたが スターターやチモシーの摂取量の少ない試験前半で顕著であった a a,b b ±.59 ±.42 ±.25 mean ± SEM 同列異符号間に有意差 (a-b:p<.5) 1.6 1.5 1.4 図 5 糞便スコアの推移 区 区 スコア 1.3 1.2 1.1 1 8~14 15~21 22~28 29~35 36~42 43~49 ~56 57~6 区間 ( 日齢 )

4 各試験区における血液成分は 14 日齢では T-CHO 42 日齢では BUN で有意差が認められた また 血中 β は各試験区とも 2 日齢には低値であったが 日齢が進むにつれて区で上昇した それ以外の項目の 14 42 日齢では 各試験区間での差は無かった 表 3 総コレステロール 2 日齢 14 日齢 42 日齢 ( 単位 :m) 39.2 a ± 5.86 68.4 a,c ± 9.31 1.2 a ± 22.2 区 44. a ± 4.6 34. D,e ± 2.39 78.6 a ± 3.19 区 35. a ± 4.25 43.2 b,e ± 2.92 7.4 a ± 18.98 mean ± SEM 同列異符号間に有意差あり (a-b:p<.5 C-D:P<.1) 表 4 尿素窒素 ( 単位 :m) 2 日齢 14 日齢 42 日齢 14.9 a ± 2.1 12.2 a ± 1.43 14.8 A ±. 区 11.8 a ± 2.32 8.8 a ±.99 8.7 B ±.69 区 8.9 a ± 1.97 8.2 a ± 1. 9.2 B ±.43 mean ± SEM 同列異符号間に有意差あり (A-B:P<.1) 12. 図 6 血中 β 濃度. 8. ) 6. ( μ 4. 2.. 区 区 2 7 12 17 22 27 32 37 42 47 有意差が認められなかった項目 総タンパク質 中性脂肪 9 9 8 8 7 6 5 4 6 m 3 2 1

38 遊離脂肪酸 16 血糖 36 1 3 1 3 L q E μ28 26 2 8 m 6 2 γgtp GOT 6 L I U L I U 区 区 14 カルシウム 12 リン 13 12 11 m 9 m 8 6 4 2 8 1 μ 9 4 1 8 赤血球数 1 9 8 μ 2 1 6 白血球数 6

ヘマトクリット値 55 45 % 35 25 5 各試験区における 下痢以外の症状に対する投薬回数の合計は 7 回 (24 日間 ) 区 1 回 (3 日間 ) 区 1 回 (5 日間 ) 下痢に伴う生菌剤の使用日数の平均は 24.8 日 区 14. 日 区 12.2 日で いずれもでやや多い傾向であった 考察和牛子牛のほ乳期における死亡事故の原因の約半数は下痢によるといわれている また 死亡しないまでも発育の停滞や飼料効率の低下をもたらすため 畜産農家における損失は非常に大きく 下痢の発生を低下させることが生産性の向上につながる 一方 はチーズ等の乳製品を生産する際に発生する副産物であり そのほとんどが廃棄されている しかし 免疫グロブリンや各種アミノ酸を豊富に含んでいるため 子牛のほ乳期に給与することで 下痢による損耗の防止効果や 発育の促進効果が期待できるが 現在市販されている子牛用代用乳は脱脂粉乳を主体に製造されており は原材料の数 % を占めるにすぎない また β は腸管での IA 産生を促進する効果があり 腸管免疫の向上による下痢予防効果が期待される そこで を主原料に作成した代用乳と さらに β を添加した代用乳の 2 種類を新たに作成し 従来型の子牛用代用乳を含めた 3 種類の代用乳の給与試験を実施 その成績を比較 検討した その結果 発育に関しては3 試験区間 また 9 週齢までの代用乳給与全期間での有意差は無出荷時平均く 代用乳やスターターの摂取量も同じであり 体重日齢代用乳の主要なタンパク源としてが使用 272. 291.8.9 可能であることが示唆された ( 図 1~4) また 区 262.4 255.4 1.27 9 週齢の時点で比較すると と比較してホ区 281. 266.8 1.59 エー区 区ともに発育 スターターの食表 5 出荷時の日齢および体重い込みがやや良好であった このことは その後の育成成績に好影響をもたらしたと思われる なお 実際の出荷成績は表 5の通りであった 体重 日齢 糞便性状については 区 区ともにと比較して下痢の抑制傾向が見られた また 給与時に特有の ゼリー状便 の排泄が確認されたが 排泄時の子牛の健康状態に

は何ら問題なく 発育に悪影響を及ぼすことは無いと考えられた しかし 畜産農家には 軟便 ( のように見える便 ) を引き起こす代用乳として敬遠されるおそれがあること 体調不良を伴う 本当の軟便 下痢 が発生した場合に気づくのが遅れる可能性があること 等を考慮すれば今後の改良が必要であると思われる 区 区での血中 T-CHO 値の低下については 先に述べた ゼリー状便 の発生とも併せて考えると 腸管への胆汁酸の分泌促進により糞便中に排泄するためと考えられる しかし T-CHO が低下していても発育成績に悪影響はなく 問題はないと思われる また 区での血中 β 濃度は期待通り上昇しており 代用乳中の β が子牛の体内へうまく取り込まれていたことが示された しかし 区と区の明確な差は他になく 今回の試験の範囲では β 添加効果は認められなかった 以上のことから は和牛子牛用代用乳として利用が可能であることは示された しかし 実用化に至るまでには 特有の糞便性状の改善や血液成分の変化をもたらす原因の解明が必要である 参考文献 1) Kume S.,T.Toharmat ; Effect of coostra β-carotene an vitamin A on vitamin an heath status of newborn caves. Livestock Prouction Sci. 68:61-65 (1) 2) 和牛子牛の損耗防止マニュアル (7) 3) 清水悟 小財千明 ; 和牛子牛哺乳育成試験奈良県畜産試験場研究報告第 号 18-24 (1993) 4) 石田充亮 清水悟 青山譲 朝倉康夫 ; 黒毛和種子牛の哺育 育成技術確立試験奈 良県畜産技術センター研究報告第 31 号 7-12 (5) 5) Kawase M.,Hashimoto H.,Hosoa M.,Morita H.,Hosono A. ; Effects of aministration of fermente mik containin whey protein concentrate to rats an heathy men on serum ipis an boo pressure. J.Dairy Sci. 83:255-263 ()