空間的に非一様なカイラル凝縮に対する current quark mass の影響 東京高専 前段眞治 東京理科大学セミナー 2010.9.6 1
1.Introduction 低温 高密度における QCD の振る舞い 中性子星 compact star クォーク物質の理解に重要 T 0 での QCD の基底状態 カイラル対称性の破れた相 カラー超伝導相 μ 2
有限密度において fermionic condensate が空間非一様になる議論 Deryagin & Grigoriev & Rubakov (1992) の QCD, g 2 < 1 / N C Schӧn & Thies (2000), Ohwa (2002) (1+1) 次元モデル ; の chiral Gross-Neveu model Nakano & Tatsumi (2005), Sadzikowski (2006) その他 NJL model ; current mass = 0. 課題の1つ ; 4 次元のモデルでは current quark mass が有限値の場合がほとんど調べられていない ( Nickel(2009); scalar 型 condensate に限った場合の研究あり ) 3
今回の内容 4 次元のモデルで current quark mass m を有限値にとると基底状態にどんな影響を与えるのか? 特に moderate baryon density 付近を調べたい 4
2. current quark mass が 0 の場合 (Nakano & Tatsumi (2005) の review) QCD の強結合領域を調べるため 有効理論の NJL モデルを使う. ここで 平均場を仮定 空間依存性をもつ点に注意 ( ただしの極限では一様 ) dynamical quark mass, 波数ベクトル カイラル円 ; 5
手法 平均場近似で thermodynamic potential (Proper-Time 正則化を使った ) を計算 の最小値を実現する 基底状態 T=0 の場合の結果 ( Nakano & Tatsumi (2005): 有限温度も計算実行 ) (i) 高密度領域でも chiral condensate は 起こり は 空間非一様 となる (ii) バリオン密度は空間一様 = constant 6
3. current quark mass m が有限の場合 ( T=0 ) Current mass mが有限有効ポテンシャルはの方が下がって複雑な形しかし ここでは簡単のためカイラル円を考える ansatz として 平均場近似後 ここで とおくと 7
もし m が 0 なら位置に依存する項なし計算可能 m が有限のとき に依存する部分が残って計算が困難 摂動法を使う で 主要部 補正部分とみなす ここで Note; chiral limit では補正部分 current mass m は系の最尐のエネルギースケール 8
非摂動項のプロパゲータ S 0 は 4 つの energy pole をもつ ; 負エネルギーの は Dirac sea, 正エネルギーの は 高密度でFermi sea Thermodynamic potential ω の中には Dirac sea からの寄与 ω D Fermi sea からの寄与 ω F などが含まれる 9
の摂動で 1 次までとる ここで ω D, ω F V m の0 次 δω D, δω F V m の1 次の寄与 Input parameter の決定 ( T = 0, q = 0 ) 以下を要請する ; (i) を再現 (ii) 高密度になったときのカイラル相転移が1 次 10
q = 0 のとき ( 空間一様 ) の の振る舞いに注意が必要 が約を超えると となってしまう 物理的に不自然 よって以下ではの領域は扱わない 補足 上記の の振る舞いは Proper-Time 正則化の影響と考えられる 実際 gap 方程式を調べると がある値 を超えると となる ( 3 次元運動量正則化を使った場合 とはならない ) 11
数値計算結果 ( T = 0 ) (1) 空間非一様なカイラル凝縮は起こらず空間非一様なカイラル凝縮は起る 計算例 12
(2) バリオン密度 ( の 1/3 ) は 高密度で空間非一様になる 振動の波数ベクトルはカイラル凝縮のそれと同じ ( カイラル極限のときは空間一様 ) 13
4. Current mass m が与える影響 まず調べ易い 空間一様な場合を考えよう ( I ) homogeneous case と置くと ここで は m 0 によって生じる寄与の一部 14
δω D は φ を 0 へ近づける働きをする ( current mass を導入した影響で φ = 0 が favor される ) φ を δω F は μ が M t を超えて大きくなる程 π へ近づける働きが強くなる 15
δω D + δω F は φ を 0 へ近づける働きを する ただ μ が大きくなる程 その働きは弱くなる 言い換えれば ω の φ 依存性は μ が M t を超えて大きくなる程 弱くなる 以上より current mass が有限値をとった場合でも μ が μ c ( 約 0.7 Λ ) に近いような大きな値をとるときは ω の φ 依存性はとても弱い inhomogeneous な場合に採った ansatz は高密度 μ μ c では妥当であると期待できる 16
( II ) inhomogeneous case ( q > 0 ) ansatz; m の寄与 ( i ) δω D + δω F ( ii ) ( m / 2G ) M t それぞれの寄与を調べる ( i ) δω D + δω F の寄与 (a) 波数 q が小さい場合 (Taylor 展開 ) 17
δω D は q = 0 ( 空間一様 ) へ近づける 働きをする δω F は μ が M t を超えて大きくなる程 q を 0 より大きくする働きが強くなる ( 空間非一様へ ) 18
δω D + δω F は q を 0 へ近づける ( 空間一様の方向 ) 働きをする (b) 波数 q が小さくはない場合 ( 0 < q < 2 μ ) 数値計算の結果 : δω D + δω F > 0 と 常に正の値 以上より δω D + δω F は 空間一様 ( q=0 ) にする方向に働くことがわかった 19
( ii ) ( m / 2G ) M t の寄与 任意の q に対して ( m / 2G ) M t は 任意の q に対して ω を押し下げる働きをする しかもM t の大きな値のところほど大きく下げる よって ( m / 2G ) M t は 空間 非一様 ( q > 0 ) を起こりやすくさせる 可能性をもつ 特に大きな値の M t で current mass が導入されると カイラル凝縮は空間的に 非一様になりやすくなるのかどうなのか δω D + δω F と ( m / 2G ) M t の競合に依っている 20
5. まとめ Current quark mass が 空間非一様なカイラル凝縮の 基底状態に与える影響を調べた モデル NJL model 手法平均場近似 current mass を含む項を補正とみなして 1 次まで摂動計算した 結果 (1) current mass が有限値をとるときでも 空間的に非一様なカイラル凝縮は高密度で起こり得る ( 6.94 G Λ 2 ) (2) バリオン密度が高密度側で空間非一様になる 波数ベクトルはカイラル 凝縮のそれと同じ ( カイラル極限では空間一様 ) 21
(3) current mass が与える影響は 2 つの部分にわけられる ; ( i ) δω D + δω F 空間非一様なカイラル凝縮を起こりにくくする 競合 方向に働く ( ii ) ( m / 2G ) M t 空間非一様 ( q > 0 ) なカイラル凝縮を起こり やすくさせる可能性をもつ 特に大きな値の M t で 課題 (a) カイラル円に乗った ansatz の妥当性 μ c ( 約 0.7 Λ ) に近い程 よいだろう だが もっと適切なansatzをみつける必要あり (b) 有限温度での計算 (c) 22