274 コバス TaqMan48 を用いた液体培地からの抗酸菌検出 澤村卓宏 1) 森部龍一 2) 社会医療法人大雄会第二医科学研究所 1) 社会医療法人大雄会総合大雄会病院 2) [ 目的 ] 我々はコバス TaqMan48( ロシュ ダイアグノステックス ) を用いた液体培地からの抗酸菌検出に関する基礎的検討を実施した [ 対象および方法 ] 対象はマイコアシッド ( 極東製薬工業 ) にて陽性と判定された 25 例を用い 判定後の液体培地を生理食塩水にて 100 倍および 1000 倍に希釈し 100μL を 13000 g にて 5 分間の遠心後のペレットを解析に供した 試料の調整はアンプリコアマイコバクテリウム検体前処理試薬セット ( ロシュ ) およびタックマンマイコ用検体処理試薬添加剤セット SOL-M ( ロシュ ) を用いて能書に従い実施した 処理後の試料はコバス TaqMan MTB( ロシュ 以下 MTB) およびコバス TaqMan MAI( ロシュ 以下 MAI) を用いてコバス TaqMan 48 で増幅 検出を行い AmpliLink ソフトウエア ( ロシュ ) にて判定し さらに TaqMan MYCO 内部コントロール ( ロシュ 以下 IC) の Ct 値の解析を実施し 得られた Ct 値と TaqMan MTB(+) コントロール ( 以下 MTB),TaqMan MAV(+) コントロール ( 以下 MAV) および TaqMan MIN (+) コントロール ( 以下 MIN) の Ct 値を比較した 併せて direct sequence 法で得られた結果と判定とを比較した [ 結果 ] 判定は M. tuberculosis 1 例 M. avium 12 例 M. intracellulare 9 例および混合感染 1 例の陽性を示した MTB では 100 倍希釈で 6 例の IC の増幅不良 (Invalid) を示したが 1000 倍希釈およびコバス MAI ではいずれの希釈倍率においても IC の増幅を認めた コントロールにおける IC の Ct 値 (mean ± SD) は TB, MAV および MIN でそれぞれ 37.5 ± 0.4, 36.8 ± 0.4 および 37.4 ± 1.3 を示した 試料における Ct 値は TB の 100 倍および 1000 倍で 38.7 ± 1.7 および 37.6 ± 1.0 となり MAV および MAI では 37.0 ± 1.4 および 36.7 ± 0.8 を示し MTB の 100 倍において高値傾向を示した direct sequence 法の結果よりコバス TaqMan48 の判定は妥当であった [ 考察およびまとめ ] コバス TaqMan48 による液体培地からの抗酸菌検出は可能であると考えられた TB における IC の増幅不良および IC の Ct 値の高値傾向から 当院のシステムは試料の 1000 倍希釈が適切であると考えられた
275 長期療養型病院における耐性菌の解析 基質拡張型 β ラクタマーゼ (ESBL) とメタロ β ラクタマーゼ (MBL) 大竹京子 1) 松村充 2) 医療法人社団富家会富家病院 1) 帝京大学医療技術学部 2) 目的 近年 各種抗菌薬に対し耐性を獲得した菌株が出現し 院内感染の問題となっている 当院から第 3 世代セファロスポリン耐性の Escherichia coli Proteus mirabilis Klebsiella pneumoniae イミペネム耐性の Pseudomonas aeruginosa が検出され それらの株について解析を行った 方法 2013 年 11 月 ~2014 年 2 月に提出された検体 56 件を対象とした 第 3 世代セファロスポリン耐性 E.coli P.mirabilis K.pneumoniae および イミペネム耐性 P.aeruginosa について基質拡張型 β ラクタマーゼ (ESBL) メタロ β ラクタマーゼ (MBL) の確認試験を武蔵臨床検査所に依頼した ESBL が陽性と判定された株については PCR 法による耐性遺伝子解析を実施した 結果 セファロスポリン耐性 3 菌種のすべての株は ESBL 陽性と判定された 検体材料は 喀痰 尿がほとんどを占めた 菌種は P.mirabilis が半数を占め 次いで E.coli が多かった 耐性遺伝子は CTX-M1 型 16 株 CTX-M2 型 21 株 CTX- M9 型 7 株 SHV 型 2 株 不明 6 株であった 材料別にみると喀痰では P.mirabilis が大半を占め 全て CTX-M2 型であった 尿は E.coli が半数以上を占め CTX-M1 型が多かった イミペネム耐性 P.aeruginosa は 32 株 主に喀痰から検出され そのうち 3 株が多剤耐性緑膿菌 (MDRP) であった 3 株のうち 1 株から MBL 陽性菌が検出されたが 材料は尿であった 考察とまとめ 本邦では CTX-M9 型が最も多く検出されるが 当院では CTX-M2 型 次いで CTX-M1 型が多かった 現在 MBL 陽性菌および MDRP は検出されていない 当院の患者は半数が気管切開 大半がオムツを使用するため人の手を介する患者が多い そのため 医療従事者が菌の伝搬をしている可能性が示唆される 医療従事者のみならず 全職員が知識の共有 周知が必要と考える 今後 臨床検査技師ができることとして薬剤感受性結果のチェックや 耐性遺伝子の解析をすることはますます重要になると考えられる
276 Loop-mediated isothermal amplification (LAMP) 法を利用した GyrA 遺伝子変異の検出 梅谷昌司 1) 松永洋 1) 中嶌雅信 1) 馬場義広 1) 国立療養所沖縄愛楽園 1) はじめに :Loop-mediated isothermal amplification (LAMP) 法は一定温度で DNA を増幅できるため特別な機器を必要とせず簡易 迅速 精確な検査法で感染症の簡易迅速診断が可能となり臨床検査の現場にも多く導入されている LAMP 法は 6 つ領域にプライマーを設定することにより感度 特異性に優れ LAMP プライマーの設計は専用ソフトを使用し比較的簡単にプライマーの設計が可能である そこで耐性遺伝子解析に LAMP 法の適用を図った 目的 方法 : 本研究では Escherichia coli の GyrA 遺伝子を標的 DNA としてプライマーを設計し LAMP 法により増幅する その増幅産物から標的 DNA の塩基配列の確認ができることを検討する 対象は当園で分離した株を使用した 結果 :65 40 分の反応において LAMP 産物の増幅を確認した 今回はループプライマーを使用していないので増幅曲線の立ち上がりが 32 分前後から認められため 60 分に反応時間を変更した LAMP 産物を電気泳動にて確認した LAMP 産物はループ状に増幅されるため泳動像はラダーパ ターンを示した また DNA シークエンス解析は読み始めの 10~30 塩基はエラーが起こり 80 塩基前後からシグナルの減少が起こった 塩基を読めたのは 180 塩基前後までとなった 3 つの株 (E4,18,21) の塩基配列を解析すると GyrA 83,87 に塩基配列の変異を確認した まとめ : 今回我々は LAMP 法を用いて任意の DNA 領域を増幅し DNA シークエンスを解析することができた LAMP 法ではプライマー設計が大きな壁となるが プライマーエクスプローラー により比較的簡単に設計することができた LAMP 法の使用目的のほとんどが検出用であると思われるが プライマーをどの領域に設定するのかによって検出だけに留まらない 今後は使用目的が広がり応用範囲は拡大するものと考える 連絡先国立療養所沖縄愛楽園研究検査科梅谷昌司 0980-52-8331
277 当院における POT 法を用いた MRSA の分子疫学解析の検討 森崎隆裕 1) 中井依砂子 1) 黒田亜里沙 1) 幸福知己 1) 川口正彦 1) 一般財団法人住友病院 1) はじめに MRSA は院内感染対策上 最も重要な耐性菌のひとつであり 当院では 2003 年より入院時 術前 化学療法前 血液内科病棟および ICU 入室時などを対象とした 鼻腔による MRSA アクティブサーベイランスを行っている 2014 年 8 月から POT 法を導入し 入院 外来問わず新規検出 MRSA 全例の POT 型を解析したので報告する 対象 当院にて 2014 年 8 月以降に検出された新規 MRSA 60 株を対象とした 方法 菌株をヒツジ血液寒天培地( 日本 BD) にて 24 時間培養後 シカジーニアス分子疫学解析キット ( 関東化学 ) を用いて POT 値を測定し POT 型を決定した 結果 新規検出 MRSA60 株は 34 の POT 型に分けられ 60 株中 28 株は 1 株ずつ独立した POT 型を示した 同一株が複数見られた型は 6 種で POT 型 106-137-80 が 20 株と最も多く 次いで POT 型 106-183-40 POT 型 106-9-80 が 3 株 POT 型 93-217-56 POT 型 64-24-80 POT 型 70-18- 81 が 2 株であった 考察 POT 型 106-137-80 の 20 例の内 入院 48 時間以 降に検出された 2 例は 院内伝播が疑われる事例であった 残り 18 例の内 17 例は 外来または入院時の鼻腔スクリーニングからの検出で その内 10 例は当院への入院歴があり 入院中に院内伝播した可能性が否定できず 残り 7 例は 当院への入院歴はなく 市中での流行株の可能性が考えられた まとめ POT1 が 106 の MRSA は 市中感染型と言われているが 今回解析した結果 POT 型 106-137-80 の株は 市中での流行株もしくは院内での定着 伝播の両方の可能性が示唆された 今後症例数を増やし 院内や地域における MRSA の POT 値の分布などを解析し POT 法の有用性についてさらに検討していきたい 連絡先 :06-6443-1261( 内線 6040)
278 当院における外来患者由来 MRSA 株の POT 法による解析について 小川将史 1) 奥田和之 1) 笠井香里 1) 大畑加恵 1) 西本瑛紀子 1) 東良子 1) 角坂芳彦 1) 高橋伯夫 2) 関西医科大学附属枚方病院臨床検査部 1) 関西医科大学臨床検査医学講座 2) はじめに メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA) は代表的な院内感染の原因菌であり 感染制御上重要な菌である Phage Open Reading Frame Typing 法 (POT 法 ) はマルチプレックス PCR により MRSA クローンを簡便に同定できるため MRSA の院内伝播を把握する上で非常に有用である しかし健常者においても MRSA 保菌者は散見されるため 検出された株が院内感染によるものかを同定することはしばしば困難である 近年 院内型 MRSA(HA-MRSA) と比較して非常に強い病原性を持つ市中感染型 MRSA(CA- MRSA) が問題となっている そこで 今回 我々は市中における MRSA クローンの実態を把握するため 新規に外来患者より検出された MRSA 株について POT 法ならびに毒素産生遺伝子解析を行ったので報告する 対象および方法 対象は 2013 年 7 月 ~2014 年 11 月までの外来患者より新規に検出された MRSA89 株 POT 法は鈴木らの方法に従い また PCR により各種毒素産生遺伝子 (PVL TSST- 1 ETA ETB) の有無を調べた 結果 外来患者由来株について POT 法を実施した結果 59 種類の MRSA クロ ーンが検出され そのうち複数クローンは 10 種類検出された 数種類のクローンにおいては 同時期における入院患者からも複数検出された また 毒素産生遺伝子についても検討したが POT ナンバーとの関連性はなかった また CA-MRSA において特に問題となっている PVL 産生遺伝子についても調べたが 今回測定した株では認められなかった 考察 外来患者より検出された MRSA 株を用いて POT 法を実施した結果 院内でも検出されたクローンが複数検出された また POT1 の数値は MRSA クローンと相関しており いわゆる院内感染型と言われる株も多数検出されたため 入院時におけるスクリーニングや入院歴の把握が重要であると考えられた 今回の検討では PVL 産生遺伝子を持つ MRSA は認めなかったが 本邦においても CA- MRSA による症例は報告されており 今後増加することが予想されるため毒素産生株について詳細に把握することは非常に重要と考える 連絡先 (072)804-0101( 内線 3259)