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ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 そもそも 膠原病って何? 本来であれば自分を守ってくれるはずの免疫が 自分自身を攻撃するようになり 体のあちこちに炎 症を引き起こす病気の総称です 全身のあらゆる臓器に存在する血管や結合組織 ( 結合組織 : 体内の組織と組織 器官と器官

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

164 章血管炎 紫斑 その他の脈管疾患 表皮 A-2 B-3 真皮 A-1 B-2 A-1: 皮膚白血球破砕性血管炎 A-2:IgA 血管炎 B-1: 結節性多発動脈炎 B-2: 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 B-3: 多発血管炎性肉芽腫症 皮下組織 B-1 図.2 炎症の主座となる血管の深さと血

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検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

くは不育症プラス特異的自己抗体をもって APS と定義するシンプルな構造になっているこ と 続発性または二次性という用語は使用せず それぞれに合併した APS と表現すること を推奨している点です APS の症状 APS の頻度の高い症状として 脳 心臓 肺などの動静脈血栓症 習慣流産 血小板減少

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認識できない外来性の抗原 ( 食物 薬剤 吸入性抗原 ) の体内への持続的侵入によるもの 2 生体内に何らかの異常があるにもかかわらず蕁麻疹との因果関係を認識し得ないもの ( 病巣感染 消化管障害 抗 IgE レセプター抗体の出現など ) 3 全身性疾患の部分症として蕁麻疹が出現している場合 (SL

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

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診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

感染 発症 ALT 血清 IgG 抗体 糞便中 HAV 血液中 HAV 糞便中 IgA 抗体 血清 IgM 抗体 月 A 型肝炎ウイルス感染時の各指標の変動 B 型急性肝炎の経過 HBc 抗体陽性 14 7 HBV-DNA 陽性 HBs 抗原陽性 HBc 抗体

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

異常に起因する紫斑病 2) 小児に多く成人には比較的まれ 1) 本症の紫斑の特徴は手に触れる紫斑 palpable purpura で発熱 関節痛を伴いながら 主として四肢 顔面 躯幹に現れ 特に四肢では関節部に多く 丘疹状紅斑でその中心部から出血がみられることである 1) 本症に特徴的な紫斑は 1

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己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス

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平成24年7月x日

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針刺し切創発生時の対応

した つまり 従来から研究されてきた IgE/Fc RI を介した活性化経路は 肥満細胞活性化の一面に過ぎず むしろ生体防御の見地からすると 感染に対する防御こそ肥満細胞の機能の中心的な役割である可能性も出てきたのです この一連の研究は 肥満細胞は何もアレルギーを起こすために存在しているのではなく

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

適応病名とレセプト病名とのリンクDB

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ン病 虚血性視神経症など 4. 治療法続発性の APS では 原疾患に対する治療とともに抗凝固療法を行う 原発性の場合には抗凝固療法が主体となる 抗凝固療法は 抗血小板剤 ( 低容量アスピリン 塩酸チクロピジン ジピリダモール シロスタゾール PG 製剤など ) 抗凝固剤( ヘパリン ワルファリンな


IgG4 関連疾患 IgG4 関連疾患診断基準 IgG4 関連疾患 厚生労働省 IgG4 関連疾患に関する調査研究 班 ポケットブック版にてご覧いただけます. お問い合わせフォーム IgG4 関連疾患の診断は基本的には,

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日本内科学会雑誌第98巻第12号

MTX を使用している患者に発症するリンパ増殖性疾患は WHO 分類では 移植後リンパ増殖性疾患や HIV 感染に伴うリンパ増殖性疾患と類縁の Other iatrogenic immunodeficiency associated LPD に分類されている 関節リウマチの治療は 近年激変し 早期の

2009年8月17日

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

はじめに 全身性エリテマトーデス (SLE) は患者数が少なく 治療法の確立が難しいことから 難病 に指定されています かつては命にかかわることも少なくない病気でしたが 現在では治療法が進歩して 長く付き合うことになる病気に変わってきています この冊子では SLE の病態とその治療法をまとめました

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日産婦誌58巻9号研修コーナー

とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

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ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

がん登録実務について

要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 6255 人 2. 発病の機構不明 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根治療法なし ) 4. 長期の療養必要 ( 身体機能低下の進行抑制を目標に治療が必要である ) 5. 診断基準あり 6. 重症度分類悪性関節リウマ

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

第1 総 括 的 事 項

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル


資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

5. 予後我が国のコホート研究に登録された新規患者 33 名の6か月後の寛解導入率は 97% であった 一般に 副腎皮質ステロイドの副作用軽減のためには速やかな減量が必要である一方 減量速度が速すぎると再燃の頻度が高くなる 疾患活動性の指標として臨床症状 尿所見 PR3-ANCA 及び CRP など


1. クリニカルクエスチョン設定表 1. 臨床所見 唾液腺病変と口腔乾燥 涙腺病変と眼乾燥 腺外病変 腺外病変 腺外病変 腺外病変 腺外病変 臨床課題作成したCQ P I/C O 診断 治

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クリオグロブリン血症 (140617) クリオグロブリン血症について復習 クリオグロブリンは in virto では 37 以下で析出沈殿し 温めると再溶解する免疫グロブリン (immunoglobulin:lg) である 1) クリオグロブリン血症は血中にクリオグロブリンを認める状態をいい 基礎疾患やクリオグロブリンの種類によって病態が異なる heterogeneous な疾患である 1) クリオグロブリン血症は主として細動脈レベルに生じる全身性血管炎を生じる疾患で 極めて C 型肝炎ウイルスとの関連が強い 3) C 型肝炎ウイルス (HCV) の発見以降 80% 程度の症例が HCV 感染症と関係があることが判明し 病態の解明が進んだ 2) 構成する免疫グロブリンによってⅠ~ 皿型に分類される Ⅰ 型は血液疾患 混合型 (Ⅱ~ 皿型 ) は C 型肝炎ウイルス (HCV) 感染症を代表とする慢性感染症や自己免疫疾患によるものが多い 2) クリオグロブリン血症は Brouet らによって clonality とグロブリンのクラスから 3 つに分類され 基礎疾患や臨床像との相関から有用性が高いこともあり 現在まで用いられている 2) ( 参考文献 1 より引用 ) Type I クリオグロブリン血症はおもに血液疾患を背景としており MC ( mixed

cryoglobulinemia:mc) は自己免疫疾患や感染症と関連していることが多い 1) Ⅰ 型はモノクローナル lg 自体が寒冷沈殿したもので 大半は IgG または IgM からなる Ig どうしの抗原抗体反応はみられず リウマトイド活性もない Ⅱ 型はポリクローナル IgG とモノクローナル Ig(90% の症例において IgMκ 型 ) の混合型である 抗グロブリン活性を有する IgM( リウマトイド因子 ) が 何らかの外来抗原や内因性抗原に対して複合体を形成した Ig( 通常は IgG) を凝集させたものが CG を形成している Ⅲ 型は 2 つの多クローン性 lg からなる 多くの場合 ポリクローナル IgG とポリクローナル IgM からなり Ⅱ 型同様リウマトイド因子活性をもつ Ⅲ 型はⅡ 型へ移行する前段階であるとも考えられており ポリクローナル IgM がモノクローナル IgM に移行する可能性を示している Ⅱ 型 Ⅲ 型を合わせて混合型 CG 血症と呼ぶ 2) C 型肝炎ウイルス (hepatitis C virus:hcv) はクリオグロブリン血症の主要な原因であり 日本では C 型肝炎の 37~42.5% にクリオグロブリンを認め 多くは typeⅡクリオグロブリン血症を呈する 1) 従来は 血液疾患や Sjögren 症候群等の膠原病に合併する続発性と 原疾患のない本態性に分類されていたが 1989 年に C 型肝炎ウイルス (HCV) が同定されて以来 大半は HCV 感染症を合併することが明らかとなり 本態性は 5% 未満であるとされる したがって 日常遭遇するクリオグロブリン血症は半数近くが HCV 関連クリオグロブリン血症といえる 3) 自己免疫疾患ではシェーグレン症候群 (Sjögren syndrome:ss) に腺外病変と関連して高頻度にクリオグロブリン血症を認め ( 約 17%) B 細胞リンパ腫発症のリスク因子となっている 1) 慢性感染症のひとつとして AIDS ウイルス (HIV) 感染症が原因となりうることも忘れてはならない 2) 原因疾患の同定ができない場合は本 + 態性クリオグロブリン血症とされ 約 10% を占めるという報告がある 1) Ⅰ 型 CG 血症では 寒冷刺激によって生じる CG 沈殿による物理的な血管閉塞に 免疫複合体沈着による炎症性血管炎および過粘調症候群が合わさった病態をきたす 1) リンパ増殖性疾患による B 細胞の腫瘍性増殖や 自己免疫疾患や感染によって惹起された B 細胞 clonal expansion を背景にクリオグロブリンの産生が増加すると思われる 1) クリオグロブリンによる組織障害には補体のはたらきが重要であると考えられ HCV コア蛋白 クリオグロブリン (lgm と抗 HCV-lgG の複合体 ) 補体 Clq Clq 球状ドメイン受容体の複合体の存在から HCV クリオグロブリンが補体を介して血管内皮障害 組織障害に影響を与えていることが推測される 1) クリオグロブリン血症の多くは無症候性である 1) 臓器障害を起こす機序には 1 lg 沈着による血管閉塞 2 免疫複合体による小血管レベル

の血管炎がある 1) 古くから triad として 触知可能な紫斑 倦怠感 関節痛が知られていたが 多くは皮膚 関節 神経 腎などが侵される 紫斑や関節炎などがみられる軽症のものから 糸球体腎炎や全身性血管炎を認める劇症型まで存在する 2) 軽症例から全身性血管炎や膜性増殖牲糸球体腎炎をきたすような重症型まで 幅広い臨床病型が存在する 2) 過粘度症候群と関連して Ig 沈着による血管閉塞による臓器障害を認める 過粘度症候群はおもに血液疾患に伴う type I クリオグロブリン血症に関連してみられる レイノー現象 紫斑 指尖壊死 網状皮斑などの皮膚所見や 頭痛 めまい 運動失調 意識障害 脳血管障害といった中枢神経症状 網膜出血や視力障害といった眼所見 聴力障害などの耳症状 鼻出血などの鼻症状を呈する 1) クリオクリオグロブリン (CG) 血症性血管炎は CHCC2012 では小型血管炎に分類される血管炎 2) クリオグロブリン血症性血管炎 (cryoglobulinemic vasculitis:cv) は MC に伴って発症し 低補体血症 ( とくに C4) と RF 陽性を認めることが多い 発熱 倦怠感 体重減少のような全身症状に加え 障害臓器によってさまざまな症状を呈する 関節痛はしばしば認められるが 関節炎は少なく非びらん性である 頻度の高い症状はレイノー現象 紫斑 潰瘍 壊死などの皮膚所見 腎障害 末梢神経障害である とくに下肢に好発する点状の紫斑は CV の最もよくみられる所見である 低頻度ではあるが 肺胞出血や腸管虚血は生命予後が悪い 1) 皮膚病変 : 他部位の症状に先行することが多い 下腿にもっとも好発し ほかに四肢や耳介などの寒冷刺激部位に網状皮斑 紫斑 潰瘍などの症状を呈する その他 Raynaud 現象 寒冷蕁麻疹 蕁麻疹様血管炎など多彩な病変をきたしうる Ⅰ 型では血管閉塞による症状としての壊疽 チアノーゼ 網状皮班 潰瘍などが多くみられる ⅡおよびⅢ 型では壊死性血管炎による症状が出現するが 一過性の経過で消退する 皮膚病変は早期に 比較的非侵襲的に診断に至るきっかけとなるため 上記のような皮膚病変を認めた場合には積極的に CG 血症を疑う必要がある 2) 特に C 型慢性肝炎患者において皮膚病変を認めた場合には注意が必要である 3) 腎病変 :Ⅰ 型では腎病変を認めることは少なく ( 微小血栓による障害 ) 特徴的な腎病変は免疫複合体が関与し Brouet らによればⅡ 型 (31%) およびⅢ 型 (12%) でみられるとされている 2)

( 参考文献 1 より引用 ) CV はおもに小血管 ( おもに毛細血管 細静脈 細動脈 ) を障害するため 皮膚生検 腎生検 神経生検など障害臓器の病理組織所見は血管炎の診断には有用である 1) 現在 診断基準はなく 血管炎や血栓塞栓部位からの CG 検出が困難であるため 血清中での CG の検出と基礎疾患の存在や症状 病理所見などの組合せで診断していることが多い 2) クリオグロブリンの検出では採血以降の温度管理が重要である 血清採取用チューブに採血し 遠心後に血清を別容器に移すまで 37 を下回らないようにする 1) 不適切な採血や検査中の温度管理によって偽陰性となりうるため クリオグロブリンが陰性であっても臨床症状からうたがわしい場合は複数回検査をくり返す 1) 健常人の血清中にはほとんど認められない 3) 血中のクリオグロブリン濃度は変動することもある 健常人の一部でも低濃度のクリオグロブリンを認めることがある 感染に伴って一時的に検出されることもある 1) 赤沈の亢進 CRP 上昇 リウマチ因子陽性がみられる また 古典的経路あるいはレクチン経路を介しての補体活性化のため C4 Clq CH50 の低下を認める C3 の低下は C4 に比べ軽度である CH50 のみの低下でも CG 血症の可能性を否定できない CG の測定および HCV を中心として B 型肝炎ウイルス (HBV) や EB ウイルスおよび HIV などのウイルス感染の検索も行う 2) CG が検出されれば免疫電気泳動によりモノクローナルかポリクローナルかを判定したり

CG を単離した後 Ig クラスやサブクラスの同定を行うこともある 2) 鑑別すべき疾患としては Henoch-Schnlein 紫斑病や ANCA 関連血管炎などの全身性血管 炎 抗リン脂質抗体症候群などの血栓症 血栓性微小血管障害 膠原病の血管障害 クリ オフィブリノゲン血症などがあげられる 2) クリオグロブリン血症の病態解明や 免疫療法の進歩に伴い治療のオプションは増加しつつあるが 確立した治療法がないのが現状である 3) 治療の考え方として HCV 感染や血液疾患などの原疾患に対する治療をおこないながら クリオグロブリン産生を抑制する治療 血管炎の治療を目的とする 1) 治療法は病態 ( 過粘調症候群か血管炎か ) 病状の重症度によって異なる Ⅰ 型の場合には基礎疾患であるリンパ増殖性疾患などの血液疾患の治療が優先される 混合型であれば治療法は大きく分けて免疫抑制療法 抗ウイルス療法 生物学的製剤の使用からなる 2) HCV 関連クリオグロブリン血症においては特に治療法の進歩が見られる 3) ( 参考文献 3 より引用 ) 非 HCV 関連 CV に対する治療は臨床試験による裏付けは十分ではないが ANCA 関連血管炎などの他の小血管炎に対する治療に準じて高用量ステロイドを投与し 重症度や治療反応性に応じて免疫抑制薬 ( 寛解導入期にシクロホスファミド 寛解維持期にアザチオプリンなど ) を併用する 血漿交換は過粘度症候群や 急速進行性糸球体腎炎 肺胞出血 腸炎な

どの重症の CV 例の初期治療として限定的におこなわれることがあるが 基礎疾患の治療もしくは血管炎に対する免疫抑制療法を併用する 1) 自己免疫性疾患やリンパ増殖性疾患を中心とする血液疾患による続発性の場合には原疾患に対する治療を行う 皮膚症状に対しては 寒冷暴露をさけて保温に努めるよう生活指導を行うことが必須となる 全身性血管炎や活動性の高い腎炎を呈した場合には ステロイド薬やシクロフォスファミド等の免疫抑制薬を用いたクリオグロブリン産生抑制療法が行われる さらに Ig は半減期が長いために 免疫抑制療法により抗体産生が低下しても体内からの除去には時間を要することから 急性期に不可逆的な臓器障害を来しうる病態にある場合にはクリオグロブリンの速やかな除去を単純血漿交換 二重濾過血漿交換 (DFPP) やクリオフィルトレーションなどを用いて行う 3) 近年抗ヒト CD20 モノクローナル抗体製剤であるリツキシマブ (RTX) がクリオグロブリンを産生する末梢 B 細胞クローンを抑制することで クリオグロブリン血症症候群に対する有用性が示されている 1) 有効性に関する RCT(randomized controlled trial) 等の臨床成績は多くはなく 長期使用による免疫抑制の影響に関しても不明の点が多いなど今後の課題も多い 他の自己免疫疾患においても抗 B 細胞治療は効果を上げつつあり 研究の進展が待たれる 3) 参考文献 1. 久保かなえ. クリオグロブリン血症. 炎症と免疫 21(3): 258-264, 2013. 2. 岸誠司. クリオグロブリン血症性血管炎 HCV との関連を中心に. 医学のあゆみ 246(1): 65-71, 2013. 3. 岸誠司, 土井俊夫. クリオグロブリン血症. 日本内科学会雑誌.Vol. 100 (2011) No. 5