1.2005 年 1~9 月期のロシアの乗用車市場 2005 年 1~9 月期もロシアの乗用車市場では 外国車の販売の好調さが目立った 一方 ロシア最大の純国産メーカーであるAvtoVAZ( ヴォルガ自動車工場 ) も 年初以来の不振から脱却し 9 月の生産量は前年同月比 2.5% 増の6 万 6,343 台に達した ただ その他の純国産メーカーはいずれも大幅に生産を減少させており もはや失地挽回が困難と判断されるメーカーも少なくない 外国車 Vs AvtoVAZ の構図がより鮮明になりつつあるといえる 純国産メーカーの生産状況原材料価格の高騰を理由に大幅値上げを実施したことが原因で 2004 年後半から多くの純国産メーカーが販売不振に陥り 在庫調整のための減産を余儀なくされた 純国産最大手のAvtoVAZ( ヴォルガ自動車工場 ) も 2004 年末ごろまで何とか減産を回避していたが 2005 年に入り 製品の大幅値上げが原因で売行きが急激に落ち込み 減産を余儀なくされた ただ ディーラー主導 ( ディーラーのマージンを縮小するという形 ) で主力モデルの値下げが実施されたことなどもあり AvtoVAZ 車の売行きは5 月頃から回復しており 9 月末時点では在庫台数が3 万 5,000 台と基準値の4 万台を下回った ( 最も多かった今春には8 万台に達していた ) そして 市場では最近 AvtoVAZ 車に対する品薄感すら出始めている その他 今年約 2 万台 来年には約 6 万台の生産が見込まれている新モデル Kalina ( 価格は約 8,000~8,500ドル 最終的には年間 20 万台が生産される見込み ) の市場での人気も上々のようで 需要に供給が追いつかない状況が生じているようである もっとも この人気の根強さに気をよくしたAvtoVAZ 側が しばらく凍結していた工場出荷価格の値上げを近いうちに実施する意向を表明しており それが再び売行きの低迷につながる可能性も否定できない ちなみに 現在のAvtoVAZ の乗用車の 46 ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号
データバンク モスクワでの平均小売価格は クラシックと呼ばれるモデル群 (2104 2105 2107) で5,300ドル サマラと呼ばれるモデル群 (2108 2109 等 ) で7,800ドル 2110シリーズといわれるモデル群で8,600 ドルとなっている AvtoVAZ は2006 年には2110 の後継モデルである Priora の生産を開始することになっているし 2010 年前後には現在のクラッシク シリーズ サマラ シリーズ NIVA に代わる新モデルが投下される予定になっている これらの新モデルが市場に受け入れられ かつコスト削減努力 (AvtoVAZ の従業員数は現在約 12 万人にも達している ) が効果的に行われれば AvtoVAZ は今後も市場でのプレゼンスを維持できるかもしれない しかし AvtoVAZ 以外の純国産メーカーでは極めて厳しい状況が続いている たとえばSOKグループ傘下のIzh-Avto( イジェフスク自動車工場 ) は 市場での人気が急落したオリジナル車 (Izh-2126( オダ ファブラ )) の生産中止を余儀なくされ 今後は 生き残りをかけて外国車 ( 韓国の起亜のスペクトラというモデル ) のアセンブリーに本格的に取り組むこととなっている スペクトラの生産は8 月 22 日より開始されており 年末までに8,000 台が生産される予定となっている (2006 年には4 万台の生産が予定されている ) ちなみに このスペクトラ生産プロジェクトは投資家の間で高く評価されているようで 2005 年 8 月末には ロシア最大の投資ファンドのひとつであるアルファ カピタルがIzh-Avtoの増資を引き受ける意向を表明した その他 同じSOK グループ傘下のロスラーダは 現在 中国車のアセンブリーを行うことを検討しているようであ る ( 第 1 表 )2005 年 1~9 月期の純国産メーカーの乗用車生産量 ( 単位台 ) 2004.1~9 2005.1~9 AvtoVAZ Izh-Avto GAZ ZMA UAZ ロスラーダ SeAZ 1) その他 538,257 73,900 52,369 27,006 25,175 12,007 13,819 1,497 525,709 33,001 38,770 20,647 18,865 17,385 10,847 582 合計 744,030 665,806 ( 注 )1) その他に含まれるのは PSAブロント AK デラウエイ ラーダ ツール スペル アフトの 4 社 である ( 出所 )ASMホールディング ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号 47
( 第 2 表 )2005 年 1~9 月の外国車生産メーカーの乗用車生産量 ( 単位台 ) 2004.1~9 2005.1~9 GM-AvtoVAZ フォード ロシア TagAZ AvtoTOR アフトフラモス 41,435 20,039 18,577 10,973 471 40,049 21,987 34,581 13,219 4,240 合計 91,495 114,076 ( 出所 )ASM ホールディング 外国車の生産を行っているメーカーの状況ロシア国内での外国車の生産状況は第 2 表のとおりであるが 意外に生産量が伸びていないとの印象が強い 中でもGM-AvtoVAZの不振が目立つ その主因のひとつは 2004 年秋から生産が開始されたセダン Chevrolet-VIVA の市場での人気が低迷しており 2005 年 1~9 月期の同モデルの生産量が1,645 台にとどまったことにある GM-AvtoVAZは2005 年中に7,500 台のChevrolet-VIVA を生産することを目標としていたが このままでは目標達成は不可能であろう 同モデルがランサー アルメーラ カローラといった強力なライバルたちが群雄割拠する価格セグメントに属することを勘案すると 今後も苦戦が続くのは必至だと判断される その他 販売価格の値上げ等が主因となり 主力のChevrolet-NIVA の売行きも芳しくなく 1~9 月期の販売台数は前年同期比 13.4% 減の3 万 2,938 台にとどまった このままの状況が続けば GM-AvtoVAZの2005 年の生産量が前年の数字を下回るのは確実であろう フォード ロシアの場合は 思い切った低価格戦略が効を奏し 旧型フォーカス 新型フォーカス ( フォーカス2) とも売行きが好調であるが 生産能力が限界に達しており 生産量自体はそれほど伸びていない ちなみに 同社の工場の生産能力は2 交代制で年産 2 万 5,000 台となっている 現在は3 交代制が導入され 年間生産台数は3 万台を超えている 3 交代制の他 土曜日の操業も行っているようである ただ それだけでは需要への対応が困難なので 今後 生産設備の増強工事が実施され 2006 年には年産 6 万台を達成することを目標としているようである その他 2005 年 9 月末に表面化した労使の対立も 若干ではあるが生産に否定的影響を及ぼしたようである 労使対立の主因は ベースアップ率にあるといわれている ( フォード ロシアの労働組合発表の数字によれば 労働者の給与は現在 月間 1 万 ~1 万 7,000ルーブルとのこと ) フォード ロシアでは 毎年 インフレ率を勘案したベースアップ ( インデクセーション ) が実施されているのだが 2005 年については雇用側が15% を提示したのに対し労働組合が30% を要求 48 ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号
データバンク して対立し 一時は本格的なストにまで発展するのではないかと懸念されていた 物価の上昇を背景とする給与の引き上げ要求の高まりは フォードのみならず他の自動車工場にとっても今後 深刻な問題となるのではなかろうか ロストフ州のTagAZ( タガンログ自動車工場 ) は1998 年 9 月に操業を開始した年間生産能力 12 万台の近代的な工場であるが 2004 年より生産を開始した現代のアクセントとソナタの売行きが非常に好調で 生産量が劇的に増加している このテンポで生産が伸びていけば 2007 年もしくは2008 年の段階で設計生産能力である年産 12 万台を達成することも不可能ではないだろう ただ 今年に限定すれば 夏以降の韓国でのストライキの影響を受け 生産量が目標 (2005 年の生産目標は約 7 万台といわれている ) を下回る可能性が高い アフトフラモス ( ルノーとモスクワ市の合弁企業 ) では2005 年 4 月からロガンの試験生産が開始され 7 月より販売が開始された 小売販売価格は9,000ドル~1 万 2,000ドルであるが 9 月末までにすでに2,200 台以上が売れ さらに約 5,000 台の予約が入っているそうである 滑り出しの好調さに気を良くしたアフトフラモス側は 現在 6 万台 / 年となっている工場の設計生産能力を 12 万台 / 年にまで増強することを検討し始めたようである ただ 業界の専門家の中には いくら低価格車とはいえ 年間 12 万台も販売することは困難と指摘する者も少なくない ( 第 3 表 )2005 年 1~9 月期に販売台数が多かった上位 15 社 (GM-AvtoVAZを除く) ( 単位台 ) 2004.1~9 2005.1~9 増加率 % 現代 33,627 トヨタ ( レクサス除く ) 30,323 大宇 (Uz-Daewoo) 26,493 三菱 21,049 フォード 26,593 日産 18,952 ルノー 10,804 起亜 14,636 マツダ 5,151 シボレー 777 VW 5,314 オペル 7,198 スズキ 4,767 プジョー 6,754 ホンダ 4,436 ( 出所 )gazeta.ru 2005.10.15 等 68,745 45,418 39,733 39,064 37,253 32,905 18,533 16,958 13,382 13,001 9,571 7,043 6,792 6,410 5,763 104 50 50 86 40 74 72 16 160 1,573 80 2 42 5 30 ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号 49
外国新車のメーカー別販売状況昨年来続いているアジア メーカー優位の状況が2005 年 1~ 9 月期にも観察された 上位 10 社のうち7 社が日本および韓国メーカーであった ( 販売台数の大半をGM 大宇製のラセッティおよびアベオが占めるシボレーを含めると8 社 ) ただ 現代 起亜等の韓国メーカーの場合は 先に紹介したストライキの関係で 第 4 四半期には販売台数の伸びが鈍化する可能性も否定できない アジア メーカー以外ではフォードとルノーがベスト10 入りしているが 周知のとおり いずれもロシアでの現地生産を行っているメーカーである 不振の欧州メーカーの中では VWが例外的に大幅に販売台数を伸ばしているが これは 主力のSUV トゥアレグ とパサートの販売が好調だったためと推測される( 販売台数は順に2,436 台と1,990 台であった ) 売上げ上位ベスト10に入ったメーカーのうち 日本および韓国メーカーを中心に 2005 年 1~ 9 月期の各社の主要モデル別の販売状況を以下で紹介しておく 現代に関しては ロシアで販売されている現代車は TagAZ で現地生産されているモデル ( アクセント ソナタ ポーター 3) ) と輸入車 ( ゲッツ エラントラ タクソン マトリックス ) に大別されるが 主力は現地生産モデルのアクセントで前年同期比 122% 増の2 万 8,757 台の販売を記録した 以下 ゲッツ ( 輸入車 ):1 万 1,456 台 エラントラ ( 輸入車 ):9,915 台 ソナタ ( 現地生産車 ):8,252 台 小型 SUV タクソン ( 輸入車 ):3,477 台 マトリックス ( 輸入車 ):2,719 台 SUV サンタフェ ( 輸入車 ):1,915 台 と続いた トヨタでは 主力モデルのカローラの売行きが非常に好調で 前年同期比 94.1% 増の1 万 6,983 台の販売を記録した その他 主要なモデルの販売台数は カムリ :9,914 台 ( 前年同期比 44.2% 増 ) アベンシス:6,397 台 (47.7% 増 ) RAV4:4,977 台 (12.9% 増 ) ランドクルーザー プラド: 3,354 台 (48.9% 増 ) ランドクルーザー 100:3,448 台 (9.7% 増 ) カローラ ベルソ( ミニバン ): 230 台 ハイエース :145 台となっている レクサス ブランドの車は 前年同期比 43% 増の3,699 台の販売台数を記録した レクサス ブランドの中で最も販売台数がよかったのはSUVのRX-300で 2,060 台が売れた 以下 GS300( セダン ):629 台 LX470(SUV):426 台と続いた ウズベキスタンのUz-Daewooはネクシアとマチスの2モデルをロシア市場に輸出しているが いずれもその価格の安さ故に根強い人気を誇っており それぞれ 2 万 7,629 台 ( 前年同期比 48.9% 増 ) と1 万 2,104 台 (52.4% 増 ) の販売を記録した 三菱では 主力のランサーが前年同期比 120% 増の2 万 7,108 台の販売を記録した これは 2005 50 ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号
データバンク 年 1~9 月期の同社の総販売台数の約 7 割に相当する 以下 アウトランダー :2,977 台 (28.7% 増 ) コルト:2,429 台 パジェロ スポート :1,735 台 パジェロ :1,697 台と続いた 日産では アルメーラ ( 日本名はパルサー ) の売行きが非常に好調で 前年同期の81.3% 増の 1 万 4,839 台を記録 これは 2005 年 1~9 月期の同社の総販売台数の約 45% に相当する 以下 プリメーラ :7,029 台 (29.9% 増 ) X-Trail:5,329 台 (160% 増 ) と続いた マツダの場合は マツダ6とマツダ3が主力で 前者は前年同期の2.1 倍の6,259 台の販売を 後者は前年同期の3.3 倍の6,610 台の販売をそれぞれ記録した シボレーは 2004 年末にロシア市場に登場したアベオ (GM 大宇のモデル ) というモデルが主力で 6,076 台の販売を記録した アベオの人気は市場に登場して以降 急激に高まっており 2005 年 1 月時点では402 台であった月間販売台数が同年 9 月には1,195 台に達した このままの勢いが続けば アベオが近々 モデル別販売ランキングのトップ10 入りするのは確実であろう シボレーのもうひとつの主力はラセッティ ( やはりGM 大宇製 ) というモデルで 5,025 台の販売台数を記録した その他 トレイルブレーザー (SUV) が723 台 タホ (SUV) が484 台売れているが これらは 恐らくカリーニングラードのAvtoTOR で生産されたものであろう スズキの主力はSUVのグランド ビタラで3,303 台 ( 前年同期比 43.3% 増 ) の販売を記録した 以下 リアナ :2,321 台 (44.9% 増 ) XL-7:337 台 ジムニー :335 台と続いた 外国新車のモデル別販売状況モデル別の販売状況を見るとアジア メーカー優勢の傾向がより一層鮮明に感じ取れる トップ15のうち実に14を日本および韓国メーカーの車が占めている ( 第 4 表 ) 日本メーカーの車も韓国メーカーの車も そのコストパフォーマンスの高さが評価されていると考えてよいが コストパフォーマンス の内容が異なるように思われる すなわち 日本の車の場合は その品質と信頼性が評価されており 韓国の車の場合はその価格の安さが最大のセールスポイントになっているように思われる たとえば ロシアで販売されているネクシア マチス ( いずれもウズベキスタンのUzDaewooで生産されている ) アクセント ソナタ( いずれもTagAZ で現地生産されている ) は 最新型ではなく 一世代もしくは数世代前の車であるが そこには モデルチェンジを行えば 通常 その車の価格は上昇する 価格の安さを武器にしている韓国車の場合 そのことが販売の不振に直結する可能性が高いので 旧型モデルを市場に供給し続けるほうが得策である との判断があるのではないか ちなみに 現代の場合 今後 10 年間は旧型のアクセントの部品をTagAZ に供給することが可能だといわれている ( ザ ルリョム ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号 51
誌 2005.9) また 新型のソナタ( 韓国からの輸入車 ) はロシアでは別の名前 ( 現代 NF) で販売されることになっている 価格帯でみれば やはり1 万 ~1 万 5,000ドル前後のモデルのシェアが圧倒的に大きいことがわかる 今のところ 1モデルで年間 3~4 万台以上売るためには価格を1 万 5,000ドル未満に抑えることが必須条件であるといえる 外国メーカーの現地生産プロジェクトの多くが 価格 1 万ドル前後の安価なモデルを対象としているのは決して偶然ではないのである ただ 1 万 ~1 万 5,000ドル前後の価格セグメントは非常に競争が激しく シェア確保のためには利幅を圧縮する必要性が生じる可能性がある ( 第 4 表 )2005 年 1~9 月期に販売台数が多かった上位 15 モデル (Chevrolet-NIVA を除く ) 2003.1~9 2004.1~9 2005.1~9 価格 1) 1.Hyundai Accent 3,926 12,969 28,757 10,390 ドル ~ 2.Daewoo Nexia 9,378 18,553 27,629 8,700 ドル ~ 3.Mitsubishi Lancer 821 12,183 27,108 15,000 ドル ~ 4.Ford Focus 9,342 19,178 23,133 11,720 ドル ~ 5.Toyota Corolla 6,209 8,746 16,983 17,400 ドル ~ 6.Nissan Almera 1,877 8,182 14,839 15,000 ドル ~ 7.Daewoo Matiz 4,807 7,940 12,104 6,300 ドル ~ 8.Hyundai Getz 2,827 7,775 11,456 12,250 ドル ~ 9.Hyundai Elantra 1,230 5,128 9,915 15,390 ドル ~ 10.Toyota Camry 4,342 6,873 9,914 29,800 ドル ~ 11.Hyundai Sonata - 4,278 8,252 18,990 ドル ~ 12.Nissan Primera 約 2,300 5,409 7,029 21,400 ドル ~ 13.Mazda3 345 1,986 6,610 17,700 ドル ~ 14.Toyota Avernsis 1,430 4,330 6,367 24,400 ドル ~ 15.Mazda6 758 2,899 6,259 23,200 ドル ~ ( 注 )1)2005 年初頭時点の標準装備車の価格 ( 出所 )gazeta.ru 2005..10.12 等 52 ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号
データバンク ユーロ2の導入決定最後に ロシアの自動車産業をめぐる最新の動きを いくつか紹介しておく ユーロ2( 排ガス規制の基準 番号が大きくなるにつれて規制が厳しくなる 現在 ロシアではユーロ1が適用されている ) の導入の話は以前より存在した たとえば 2002 年に採択された文書 ロシアの自動車産業発展構想 では ユーロ2 ユーロ3の段階を経て2008 年までにユーロ4に移行する旨が記されていた ただ この文書自体には強制力がなく ユーロ2の適用を義務付ける政府決定もしくはそれに類する文書の発令が待たれていた 間もなく当該の政府決定が発令されるという噂はこれまで何度も出たが ユーロ2 基準への対応に手間取るロシアの純国産自動車メーカーのロビー活動もあり 結局 最近になるまで当該の文書は発令されなかった しかし 2005 年 10 月 6 日になり 政府はようやく当該の決定を採択し 2006 年春からのユーロ2への移行が正式に決まった これは 2006 年春以降 ユーロ2の基準を満たしていない自動車の生産および輸入が禁止されることを意味する ( しかし すでに稼動中の車にはこの基準は適用されない ) その他 この決定では2008 年初頭からのユーロ3の導入 2010 年初頭からのユーロ4の導入 および 2014 年初頭からのユーロ5の導入が規定されているが こちらのほうは 実際に期限どおりに適用されるかは微妙である なお 2005 年 10 月 10 日付けの プロフィール 誌によれば ロシアで現在走行している車のうち約 30% がすでにユーロ2の基準を満たしており さらに ユーロ3 以上の基準を満たした車も 10% に達するとのことである すなわち 同誌の説によれば ユーロ2の基準を満たしていない車は全体の60% ということになる ユーロ2への移行に関しては オカを生産しているZMAやSeAZ 等の一部のメーカーを除き ほとんど純国産メーカーで対応の準備ができているようである ( すでに移行が終了しているモデルも存在する ) ただ 一部の純国産メーカーのモデルはユーロ2への対応措置の結果 数百ドル値上がりする可能性があるといわれている その他 ガソリンについても ユーロ3の段階を飛ばし 近いうちにユーロ4への対応が義務付けられるといわれている 右ハンドル車を狙い撃ちした輸入関税引き上げの動き右ハンドル車の輸入を規制しようという動きは以前より存在するが 10 月初めにも それに類する動きが観察された 10 月 5 日より ウラジオストクの極東関税局が 製造後 7 年未満の右ハンドル車を法人が輸入する場合 ( この場合は 輸入関税率はインボイス価格の25% となるようである ) の規則を突然変更したのである イ ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号 53
ンボイス価格を特定する際に税関側がそれまで使用していた日本車の標準価格リストが突然廃棄され 全般的に価格が高く設定された新しいリストが採用されることになったのである その結果 日本車 ( トヨタ車と三菱車 ) の通関コストが大幅に値上がりし 大混乱が生じた そして 翌 6 日よりウラジオストクでは 新標準価格リスト導入に反対する大規模な抗議行動が始まった この抗議行動に驚いたロシア連邦関税局が10 月 12 日に新標準価格リストの導入を見合わせることを発表したので事態は収拾に向かったが 依然として いずれ新標準価格リストが導入されるのではないかという警戒心は消えていないようである 人材育成に関する興味深い傾向最近 AvtoVAZ はニューモデル Kalina の生産を開始したが そのラインで働いている労働者の大半が 自動車アセンブリー未経験の新規雇用者 ( 平均年齢は 30 歳強 現在 Kalinaのラインでは約 1,600 名の労働者が働いている ) だということである AvtoVAZ 側の説明によれば Kalinaの組み立てには従来にない高度な技術が必要となるので 既存のモデル ( たとえば2110) のラインで働いていた労働者を再教育するよりも 新規採用した労働者をゼロから教育するほうが得策であると判断したとのことである 従来のロシアの自動車工場の常識が身に染み付いてしまった労働者では 高いレベルの自動車の組み立ては困難と判断した との解釈も可能である フォードもGM-AVtoVAZも 現地工場立ち上げの際に 極力 ロシアの既存の自動車工場で働いた経験のある労働者を避け 専ら未経験の若者を育成することに重点を置いたといわれているが そこにも同じような 判断 が根底にあった可能性が高い 自動車部品の輸入関税引下げ措置一定の条件を満たす自動車アセンブリー工場および自動車部品生産工場が外国から工業アセンブリー用の部品を輸入する場合 関税上の特典を供与することを規定した政府決定第 166 号が2005 年春に発令された トヨタの他 Izh-Avto セヴェルスターリ アフト TagAZ AvtoVAZ 等が 当該の特典を享受した上で自動車の生産を実施することを検討しているのは周知のとおりである また 最新の情報によれば フォードやルノーも この特典の享受を希望しているといわれている ( ヴェードモスチ 紙 2005.10.21) しかし この政府決定には 1 特恵関税の対象となる部品のリストが不十分 2 部品メーカーが当該の特典を獲得するための基準が不明瞭 ( エンジン メーカーとトランスミッション メーカーについてのみ簡単な言及がなされているにすぎない ) 等の多くの欠点や空白地帯が存在し その広範な適用までにはまだ時間がかかりそうである 54 ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号
データバンク ロシア政府は現在 産業構造を多様化することが必要との観点から 加工産業の育成に力を注いでいる 中でも自動車産業の振興には非常に強い意欲を示している ただ 明言は避けているが 打ち出してきている措置から判断すると 外国の自動車メーカーおよび自動車部品メーカーを積極的に誘致することによりその目的を達成しようとしている可能性が高い 換言すれば 純国産メーカーにとっては困難な方向に事態が進展しているといえる 最近発表されたユーロ2 導入措置も 純国産メーカーにとっては逆風となる可能性が高い しかし 問題は外国メーカーがどの程度ロシアに進出してくるかである 特に 今後は 部品メーカーの進出状況が非常に大きなポイントとなってくるであろう 外国の完成車メーカーだけが進出しても 裾野の広がりがなく 最終的な目的である産業構造の改善につながらない可能性が高いからである 外国の部品メーカーがロシアへの進出を決断する上でのポイントとなる要素としては 1ロシア政府側が打ち出している優遇措置の具体的内容 2ロシア国内での提携先の有無 (M&Aか合弁か あるいはグリーンフィールドか) 3ライン用部品の市場規模 4アフターマーケットの市場規模等 が考えられる ( ロシア東欧経済研究所調査部次長坂口泉 ) ロシア東欧貿易調査月報 2006 年 1 月号 55